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Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜  作者: 皆実 景葉
夏合宿、恋模様
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夏合宿、恋模様 2




 空港を出たバスは、一路山間地へと向かう。

 一行が最初に訪れたのは、バイオマス発電所。バイオマスといってもいろんな種類があり、間伐材などの木質資源や下水汚泥や生ごみなど、動植物から生まれた再生可能な有機性資源を総称して言われる。


 陽菜が見つけだしたこの場所には、木材を燃焼させての発電所と生ごみなどから発生するメタンガスを燃焼させての発電所とが、同じ市域の中に存在する。


 これら2か所を廻って初日の行程は終わり、宿舎に着いて夕食や入浴の後は、夜遅くまで4年生による卒論の中間発表が行われる。

 担当教官の人柄もあって、学部の中でも真面目で知られるこのゼミでは、毎夜〝宴会〟が行われるようなことはなかった。



 次の日は、やはり同じ市内にある風力発電所に赴いた。山々の尾根沿いに20基ほどの風車が点在する景色を眺望する。



 この街に来て、遼太郎は気が付いた。山々に囲まれている盆地で、大きな川が流れてて…、自分の生まれた芳野の街と似ていると。

 市の中心部をバスで走っている時、まるで芳野に帰っているような懐かしい気持ちになった。



――芳野も、こんな街になればいいな…。



 緑の山々を吹き渡る爽やかな風を顔に感じながら、そんなことを考えた。



 それからは、高速道路を走って場所を移動し、地熱発電所に向かった。何と言っても地熱発電は、地面から湧き出す蒸気でそのまま発電のためのタービンを回すことができる。


 ここは温泉地の特徴を生かした古くからある発電所で、旅行の目的地として初めから遼太郎が目をつけていた場所だった。


 たて続けに色んな発電所を廻って、遼太郎としてはすごく充実していたが、〝再生可能エネルギー〟に関してあまり興味のない者や主体性のない者にとっては、満腹状態の体をなしてくる。

 そして、夜は遅くまで卒論の中間発表があり、ゼミ生たちは一様に疲れていた。



 それでも、この日の宿は、近くに地熱発電所があるだけあって、温泉のある民宿だ。



「温泉♪温泉♪」



 樫原がウキウキして、海を見渡せる露天風呂にスキップしながら跳んでいく。

 樫原だけではなく、佐山やゼミ生の誰もが、この温泉を楽しみにしており、この合宿の目玉でもあった。ゼミ生たちは温泉で疲れと汗を流し、溶けていくように眠りに就いた。



 そして、合宿3日目。

 この日は疲れているだろうと、午前中は「自由研修」ということにして、この温泉地での自由行動とした。

 朝からゆっくりと温泉に入って宿で過ごす者。他の温泉を廻ってみる者。お土産屋の立ち並ぶ風情のある街並みを歩いて見る者。


 様々あったが、遼太郎をはじめとする真面目な一団は、「日常生活における温泉の利用」を調査するべく市役所や関連の施設へと赴いた。



 相変わらず陽菜はさりげなく遼太郎にくっ付いていて、それに伴って何人かの2年生の女子が行動を共にした。

 佐山は宿に残り、樫原は遼太郎のほどの意欲はなかったが、陽菜の動向が気になって遼太郎の側を離れられなかった。


 樫原が気を揉んでいる反面、当の遼太郎は調査に熱中し、陽菜の存在など目に入っていないようだ。それでも、陽菜はめげずに遼太郎の側にいて、かいがいしく世話を焼いていた。



 そして、午後からは本当のお楽しみ。宿からほど近い人工ビーチに、皆で海水浴に出かけた。


 その時、一際目を引いたのは、やはり陽菜だった。ヒラヒラとフリルの付いた水色のビキニが白い肌に映え、完璧とも言えるプロポーションに、ゼミ生の男子達は目が釘付けになった。可愛らしくて程よくセクシーで、おまけに、この夏の太陽にも負けないほどまぶしい笑顔。


 他の海水浴客でも賑わうこのビーチの中で、陽菜は間違いなく誰よりも輝いていた。



「うわ―…。陽菜ちゃん。…可愛いなぁ~。」



という佐山の感嘆を側で聞きながら、遼太郎は特に何の関心も示さず波打ち際へと向かう。



 そんな遼太郎の姿をチラチラと確かめていたのは樫原だけでなく、ゼミの女子たちだ。



「すごく、キレイなカラダ…。」



 ラグビーをして鍛えた筋肉、けれどもラグビーをやめてからは余分な筋肉も落ちて、均整のとれた上半身。その美術品のような遼太郎の身体を見て、女子たちはため息交じりにそう囁き合った。





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