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Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜  作者: 皆実 景葉
愛しい想いと体の関係 Ⅰ
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愛しい想いと体の関係 5





 しかし、そんな遼太郎を「危なっかしい」と感じてしまう、友達思いの佐山は、やっぱり遼太郎を放っておけなかった。


 そして、遼太郎に新しい彼女が出来たと知って、やはり気になってしまうのは、前の彼女である彩恵だった。


 彩恵は、遼太郎ときちんと別れないまま新しい彼氏を作ったのはいいが、その彼氏とも半年足らずで別れてしまっていた。原因は彩恵のワガママだったとか…そう言う噂も流れたが、それ以降は彩恵も特定の相手がいない状態が続いている。



 遼太郎と道子が、キャンパスを連れ立って歩く不釣り合いな姿。そんな二人を、立ち止まり遠目で見つめている彩恵に、佐山は遭遇する。



「…やっぱ気になるんだ。遼太郎のこと。」



 佐山から声をかけられて、彩恵はビクッと体をすくめた。そして、愛想笑いもせずに、遼太郎から佐山へと視線を移す。



 彩恵は、自分が佐山から良く思われていないことは、この軽蔑するような目で見られていることからも感じ取っていた。



「……別に、狩野くんが誰と付き合おうが、それは狩野くんの勝手だし……。」



 そう言って自分の気持ちをごまかしてはいるが、彩恵の落ち着かなげにしている表情は、まだありありと遼太郎に未練たっぷりだった。



 彩恵にとって遼太郎は、初恋の相手ではなかったけれども、初めてちゃんと付き合った人だ。

 一緒にいた時は、遼太郎の感情を束縛したいばかりで自分を見失ってしまった彩恵だったが、他の男と付き合ってみて、改めて遼太郎への想いは確かなものだと再認識していた。



「……どうせ狩野くんは、あの人のこと好きじゃないと思うし……。何か、事情があったんじゃない?」



 さすが元彼女だからか、真実を見抜いている彩恵を、佐山は意外な顔をして見つめ返す。



「遼太郎じゃなくても、そもそもあんなブス、好きになる男なんかいねーよ。」



 単に道子のことが嫌いなのか…。佐山は、聞きようによっては彩恵を励ますような言い方をした。


 それを聞いて、彩恵もふっと失笑して息をもらす。



「相手があの人だとか、ブスだとかそういう問題じゃなくて、狩野くんには私たちに出会う前から好きな人がいるんじゃないかな?…忘れられない人が…。」


「…へえ?案外ちゃんと遼太郎のこと理解してたんだな。」



 佐山は彩恵に対する意外さを、隠すことなく口に出した。



 彩恵の指摘は、佐山自身も何となく感じ取っていたことだった。

 遼太郎から時々醸される何とも言い難い〝影〟のようなもの、その影の中に見え隠れする〝忘れられない人〟の存在。


 それをきちんと認識しているところを見ると、彩恵は彩恵なりに遼太郎を理解しようとしていたらしい。

 それに、遼太郎とその後の彼氏…、二人と付き合った経験は、彩恵の思考に良質な変化をもたらしたみたいだ。



「だてに何カ月も一緒にいたわけじゃないから。『彼女』にならなければ解らないことも沢山あるのよ。」



 彩恵はそう言うと、佐山の知らない遼太郎と自分だけの世界を垣間見せた。



 彩恵の後姿を見送って、佐山は彼女が発した言葉の意味を考える。


 彼女にならなければ解らないこと…。

 それは逆に、彼氏にならなければ解らないこともあるはずだ。遼太郎はまさに、道子のそれを理解しようとしているのかもしれない。




 自分から進んで不特定多数の男と関係を持つ、道子の不可解な思考を、根本的なところから理解したいと思っているのかもしれない。


 そして、優しい遼太郎は、自分を傷つけるような行為を繰り返す道子を、救ってあげたいと思っているのだろう…。



 彩恵のおかげで、佐山は遼太郎のことをそんなふうに思うことはできたが…、今一つ釈然としないものが残る。



「遼太郎……、お前ってやつは……。」



 佐山にとって、〝自己犠牲〟ともいえる遼太郎の行動は、本当に感服に値した。





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