表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Rhapsody in Love 〜幸せの在処〜  作者: 皆実 景葉
愛しい想いと体の関係 Ⅰ
101/199

愛しい想いと体の関係 4



 しかし、遼太郎は間もなく、自分のしようとしていたことを少し後悔することになる。やはり佐山が懸念した通り、道子といても常に居心地が悪かった。


 それは、彩恵と付き合っていた時に感じていた、気まずさの比ではない。思わず逃げ出したくなるほどの、苦痛なのだ。



 教職課程の講義も取っていた遼太郎にとって毎日の日課はとても忙しく、空いている時間や放課後はとても貴重な時間なのだが、道子は〝彼女〟になったのを口実に常に遼太郎を拘束した。



――この人、3年生なのに、就活はどうなってんのかな…?



 目の前でランチを食べる道子を見ながら、そんなことが遼太郎の頭を過ったが、〝深入りしたらマズい〟という本能が働いて、何も道子のことは詮索しなかった。



「食べてるところ、そんなにじろじろ見ないでよ。」



 いきなり道子から、そんなふうに言われて、遼太郎は面食らう。



――じろじろ見たり、してねーよ!自意識過剰なんだよ!



 心の中でそう思ったが、相手は一応先輩なので言い返さないでおく。



 見てないことを証明するために、遼太郎は生協のランチルームから見える紅葉した木々に目をやった。



 みのりと〝ご褒美の焼肉〟を食べに行ったのは、もう少し季節の進んだ頃だった。


 あの時、みのりが食べ物を口に運ぶ…たったそれだけのことでさえ、本当に美しくて可愛らしくて、遼太郎の胸はドキドキと高鳴った。

 食事をするという生理的な行為は、遼太郎のすべての感覚をかき立てて、もうそこから目が離せなかった。


 〝彼女〟と食事をするということは、本来そう言う感覚を伴ったものなのだと、遼太郎は改めて思う。



「だいたい、狩野くん。食べるのが早すぎなのよ。女子は食べるのが遅いんだから、それに合わせてゆっくり食べてよ。」



 道子のドスの効いた声に現実に引き戻され、遼太郎は一つ溜息を吐いた。



――…食べるのが遅い…ってか、食べる量が多すぎるんじゃねーの?



 道子から言われること一つ一つが癪に障り、遼太郎は思わず心の中で苦虫を噛む。


 しかし、遼太郎でなくてもそう思ってしまうほど、本当に道子はカフェテリアの料理をあれもこれも、トレーに載せていた。


 きっと、道子は直感的な欲求に素直なのだろう。食欲に対しても、……性欲に対しても…。


 遼太郎は、道子が食べ終わるのを黙って待ちながら、目の前の道子を観察し、そんなふうに分析した。



 それでも、どうして道子は、好きでもない相手に身を任せることができるのか?

 本来、女性は愛していない相手とそんな行為をするのは、苦痛なはずだ。それなのに、この女はどうしてそんなことを繰り返してるのか…。


 道子のことを詮索したくないと思っているにも関わらず、遼太郎は単純にそれが知りたかった。


 道子とは勢いで付き合うということになってしまったけれど、それを知ることができるまで、とりあえず今の状態を続けていこうと思った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ