再起①
お久しぶり。やっと時間に余裕が生まれたので、執筆できました。お詫びということで二回分を投稿します。黒守勇人(最後に妃もちょっと)の話です。そういえば黒守って、「クロス」と読みます。「クロモリ」ではありませんw
「くっ、強い……」
青年が大きく後ろに吹き飛ばされて尻餅をつく。その表情はとても悔しそうだ。相対する存在が彼のことを無表情に見下ろす。その無表情が気に入らない。誇ることも嘲笑うこともない。ただただ普通に戦って負けたということが何より悔しい。だから……。
「もう一度だ!」
魔力を使って跳ねるように状態を起こす。手にした両刃の剣を、今日来たばかりの新入りに向ける。そうすると相手も表情を変えずに剣を構えた。つまり再戦。しかしたとえ何度やっても……。
「くそ!」
まだ剣を構えようとする彼。その肩に手がかかる。振り返る彼の頬に金色の綺麗な髪が優しく触れた。
「サン、残念だけど彼の方が強いわ。そしてあなたが敵わないなら、私たちは絶対に勝てない。リーゼさんの提案を吞みましょう」
「……そうだな、エリアナ」
サンが頷くと、二人は先ほどまで戦っていた黒髪の青年に近づく。そして少し気に食わなそうな表情である紙を差し出した。
「おまえ、たしか黒守勇人と言ったな。納得はできないが、それでもリーゼさんに約束しちまった。受け取れ。次回の任務時の指揮はおまえに任せるよ」
黒守勇人はそれに少しだけ驚いたような表情をした。今、彼が差し出しているのはここにいる子供たちが任務時に従う者をサンであると認める証となるもの。すなわち指揮官としての証明書。それを新入りの自分に実力だけで渡すというのか?当然のことだが自分のことをここにいる誰一人として信用していない。にも関わらず、信頼が命の指揮官を自分に任せるというのか?いや、そもそもなぜこんな話になっているのか?事態は彼がゼフィールの屋敷について三時間ほど経過したときに始まった……。
「来ていただいて早々で悪いのですがお願いがあります」
図々しく人の部屋(先ほどまでは自分のではなかったが)に入ってきて、人のベッドに寝転がっているメイドが話し始める。行動とは裏腹に、声が真剣なことから大事な話なのだろう。
「行動とは打って変わって真面目な話です」
「だったら行動も真面目にしてください」
「あなた……このベッドで寝ましたか?」
「一時間程度仮眠しましたが?」
「なるほど……これがあなたの匂いですか……」
「普通に気持ち悪いからやめろ」
「話は以上です」
「ま、まじで?」
「嘘です!」
嬉しそうにニッコリと笑うリーゼ。呆れて言葉もない。怜だったら発狂しながら刀を振り回している。以前、勇人が怜の香水か何かに「いい匂いだな」と言ったら顔面にグーのパンチを食らったくらいだ。そういえば……怜はどうしているだろうか?
「で、お話なんですけど」
リーゼがいつの間にか自分と向かい合わせの椅子に座っている。勇人は重心をわずかに落とした。
「見てのとおり、ここには子供が多くいます。全部で百人近く、様々な理由で親に捨てられたり、あるいは親が死んでしまったりといった、そういう子供たちを集めているのがここです」
確かに多くの子供がここにはいる。あのゼフィールならそういう活動を進んでやっていてもおかしくはない。しかしそれなら孤児院などの他の団体がやればいい。ではここは……。
「子供か……。正確には魔力を宿した子供かな?」
「……はい」
「しかも特殊なタイプの子供ですね?魔力の制御が上手くいかなかったり、そもそも魔力が容量に対してあまりにオーバーしていたり、さらには」
「そこまでわかるのであれば話は早いです」
リーゼが少し強めの口調で勇人の言葉を遮った。会話にわずかの間が生まれる。彼女と話すときはこういう間は生まれにくいが……。
「あなたの言うように多くの特殊な子供がいます。ゼフィールは彼らを保護していますがただ保護しているのではありません。魔術師として訓練させているのです。そしてその過程で時には任務を与えています。任務は簡単なものから危険なものまで多種多様です」
ここで言っている任務とはおそらくゼフィールの受け持っている区域での戦闘などであろう。どのレベルまで担当しているかはわからないが魔物との実戦ならばご苦労なことだ。
「それで俺にもその任務をこなせと?」
「いいえ、それだけならあなたをこんなところに連れてきませんよ。どの部隊でも大歓迎でしょうからね。あなたにお願いしたいことは一つ、彼らのリーダーとなってあげてください。これはゼフィールからのお願いでもあります」
「……」
勇人にはわからなかった。なぜ自分がそれを任されるのか?なにを根拠に他国の高校生にその役目を任せようと思ったのか。
「意味がわからん。何もわからないやつに付いてくる者がどこにいる?」
「ええ、でもゼフィールは黒守勇人だと言いました。ならばあなたなのでしょう」
「あなたがやればいいだろう。実力も信頼もあるじゃないですか」
「え?」
リーゼは勇人の言葉に心底驚いた表情をして、そして……笑う。「アハハ」と笑う。勇人は何がそんなに可笑しいのかわからなかったが、しかし……顔を上げた彼女の顔を見て一瞬でそれを悟る。なるほど、これは可笑しい。
「勇人さん、私に任せるって言いました?それはいけません。だって、私はですね。あの餓鬼共のことなんて微塵も愛しておりませんもの。所属の国連軍に言われれば今すぐにだって皆殺しにできますわ。いいえ、足を引っ張るような奴がいただけでも殺してしまうかもしれません」
千二百。これはリーゼが戦場で殺した数。人を。彼女の前にいるものに味方も敵もない。ただただ刺して貫いて、そして引き裂いて。故に国連軍中隊長である彼女の部下は……0である。
「これでゼフィールがあなたを選んだ理由の一つがわかりましたか?私に殺されない者。私を止められる者。それが資格の一つというわけです。あなたの力はさきほど見せてもらいました。これで安心です」
可愛らしい笑顔だ。怖い、怖い。
「おまえがふさわしくないことは十分過ぎるほど納得したがな、さっきも言ったようにぽっと出が指揮を執るなんて誰も納得しない。そこが一番の問題だ。リーダーの必要不可欠事項だろう?」
「ええ、ですのでとりあえず信頼してもらいましょう。ち・か・ら・で☆」
リーゼに言われた通りに部屋で待っていると二人の男女が訪ねてくる。サンとエリアナという子供たちを仕切っている男女、要するにリーダーだ。お互いが軽く自己紹介をする。サンが十六歳で、エリアナが十七歳。共に年齢にしては大人びた雰囲気を持っている。特にエリアナは話し方から身のこなしまで非常に落ち着いていて、リーゼと同い年と言われても違和感がないほど。リーゼが、勇人をリーダーにすることを提案すると、サンは当然の反応を示した。
「そいつがどんな奴かはまだわからない。良い奴かもしれないし、悪い奴かもしれない。有能な奴かもしれないし、無能な奴かもしれない。だから別に俺らはそいつを否定したりはしません。でもその提案は呑めないです。それは当然でしょう。俺の持っている権利はここにいる皆の命を背負っているんですよ?」
(あまりに正論過ぎて返す言葉が見つからないな)
ふと、サンの隣にいるエリアナに目を移す。彼女もまたサンと同様の表情……と思われたが、特にその表情に変化はない。落ち着いた佇まいで、サンを見ながらうっすらと笑みを浮かべている。ふと彼女は勇人の視線に気づいたのか、目だけで会釈をする。日本の美人には慣れていたが、外国の美人には慣れていない。少しドキッとした。そういえばリーゼには……。
「ではこういうのはどうですか?しばらくの間、試しに任務でリーダーをやっていただくのです。もちろんお二人がサポートしながら。それである程度認められたら交代していただく」
「認められなかったら?」
サンが少し戸惑ったような様子でリーゼにそう尋ねた。リーゼはそれに笑って応える。
「認めますよ。彼はあなたよりもずっとふさわしい」
サンがその言葉に動揺したのがわかる。
「でも……あなたが駄目と判断したなら仕方ないでしょう?そうしたらまた考え直しますよ」
サンは……少し自嘲気味の笑みを浮かべ、視線を落とす。勇人にはその表情の意味がわからない。エリアナがサンの頭に手を置く。サンはエリアナの手を黙って取ると、そっと頭から下した。そして、勇ましい表情で勇人を見る。
「どちらにしても確かめたいことがある。その出来によっては考えてやらなくもない」
(ああ、あのメイド最初からこの展開を狙っていたな)
そうして今に至る。サンが提案したのはタイマンによる勝負。リーゼは煽るようにサンとエリアナでの、一対二を提案したが、それはサンのプライドが許さない。リーゼが戦闘という形を狙ったのも、彼のそういう性格を全部わかってのことだろう。大人気ない上に、平気で人の心理を利用する。こういう男がつい最近まで自分の近くにいたのを思い出した。提案された戦闘形式はシンプルだった。魔術の使用なしでの、得物を用いての勝負。勇人は自分のものとは違う日本刀、サンは自分の両刃のバスターソードで挑んだ。勝負の内容はもはや勝負ともいえないものとなった。勇人の刀があっさりとサンの剣を弾き飛ばす。技術も、スピードも桁が違った。そうして勝負がついた後に、サンがとった行動に勇人は驚く。
「おまえ、たしか黒守勇人と言ったな。納得はできないが、それでもリーゼさんに約束しちまった。受け取れ。次回の任務時の指揮はおまえに任せるよ」
勇人はそれをすぐには受け取らない。後方でその様子を見ているリーゼを確認すると彼にだけ聞こえる小さな声で、短く伝える。
「今日の夜に、俺の部屋にもう一度来てくれ」
サンは一瞬驚いたような顔になるが……小さく頷く。それを確認した勇人は素早く手渡されたものを受け取って、リーゼの方に振り返った。
「これで次回の任務時の指揮は俺が執ることになりました。もういいですか?」
「はい。ではリーダーとして頑張ってくださいね。お二人も彼を支えてあげてください」
リーゼは笑って答えると屋敷の中へと歩いていく。勇人はその背中が見えなくなるまで、鋭い目つきで見送った。
「なあ、エリアナ」
サンがエリアナに話しかける。二人は屋敷の廊下を歩いていた。向かっている先は黒守勇人という新入りの部屋。圧倒的な戦闘能力を見せつけられ、比較的シンプルに指揮権を譲った。彼にとって何ら不服のない形をとったつもりだったが、おそらくは何かに納得いっていないのだろう。
「あいつ何の用だろうな?」
「……」
戦った感触でわかる。あれは自分たちとはまた別世界に生きるような存在だ。ゼフィールの屋敷に集められたものはいわゆる劣等生と言っていい。本来はここカルフォルニアやニューヨークの魔術学校で魔術の基礎を学ぶはずのところをそれすらできない、その価値すらないと見限られたものの集まりである。そんな場所に彼は到底ふさわしくない。
「俺ら……殺されたりしないよな?」
「それはありません」
エリアナが即答する。その表情はいつも通りの穏やかさで、サンの不安を一瞬で和らげた。魔術の実力ではサンのほうが上であり、任務時の指揮もサンが執ることがほとんどである。しかしそれはエリアナが常に彼を支えているからこそ成り立っているもの。サンにとってエリアナほど信頼できる存在はいない。
「別に疑っているわけじゃないけどさ、何で?」
「あなたも理解したはずよ。彼はとても賢い。リーゼさんとあなたの言い合いにも彼は一言も口を挟まなかった。それはきっとよそ者に意見されたくないというあなたの意を汲んでのことよ。意味もなく人を傷付けるような人ではないわ」
サンは黙ったまま頷く。エリアナの言う通りだろう。で、あれば黒守勇人は何を語るだろうか?彼がリーゼを見る目は……少し怖い目だった。
「おーい。来たぞー」
ドアが開く。中から勇人の少し眠そうな目が二人を捉えた。それからゆっくりと備え付けの冷蔵庫まで行くと、ペットボトルに入ったお茶を紙コップに注いでいく。
「すまない、呼び出しておいて」
「いいわ。時差の影響でしょう?慣れるまではきついわよね」
小さなテーブルを挟んで勇人とサン、エリアナの三人が座布団の上に座った。そろってお茶を一口。サンは飲みなれていないその味に不思議そうな顔をする。
「コーヒーの方がよかったか?」
「いや、大丈夫だ」
サンがグルッと部屋を見回す。勇人の部屋は比較的広い物が割り振られていた。ここにいるほとんどの子供たちは二人以上で部屋を共有している者が殆どである。サンとエリアナでさえ、一人になったのは二年前の誕生日だった。故に勇人の待遇は差別と言っていいほど。
「気に食わないことも多いだろうが……とりあえずよろしく頼むよ」
「ええ、よろしくお願いします。安心して。私たちはそんなこと気にしないわ。ね、サン?」
「あ、ああ」
エリアナに半ば同意を強制するような形で話を振られ、サンが頷く。勇人目線でもこのエリアナという少女はやたらと大人っぽい。性格も……体型も。十六のサンにとって、なんとなく逆らえないというのもわからなくない。
「ま、でも“俺らは”な。他の奴らはまだ子供だ。そいつらがどう思うかはわからない」
「はぁ……。できれば人には嫌われたくないけど」
「ふふ、まあ時機に慣れていくでしょう。あなたもあの子達もね。それより今日はどんな要件ですか?そちらの方が大事な要件なのでしょう?」
勇人はエリアナの言葉に頷くとポケットから指輪を取り出した。サンの目が少し険しくなる。それは昼に彼が勇人に譲った物。この屋敷の中で誰がリーダーであるかを示す証。サンにとっては……。
「それがどうした」
サンが強めの口調で問う。勇人はその彼の言葉を聞くと、手にした指輪をハンカチで少し拭いて……。
「これは返す。おまえが持っているのが一番だ」
サンに手渡した。サンは指輪を見つめたままポカンとしている。エリアナは少しだけ驚いたような表情を見せるがすぐに嬉しそうな表情になった。そして勇人にニコリと笑いかける。
「ど、どういうつもりだ?」
「次の仕事はいつだ?」
「今週の金曜日に中東の紛争地帯で任務があります。それがあなたも参加する最初の物になると聞いています」
「じゃあそのときの指揮はおまえが執ってくれ」
「そういうことじゃない!」
サンが少し口調を荒げる。それで勇人は確信できた。彼が指揮を執るのが最善だということに。
「指揮を任されたのはおまえだ!能力も俺なんかより断然高い。しょうがないじゃないか!何故俺に譲る?憐みのつもりか?」
「それを指示したのはリーゼだろう?あの女は任務に関係ない。おまえが今まで率いてきた者たちにも。だからあの女の指示なんて知らん」
「リーゼさんには逆らえない。それは小さい頃から身に染みてわかっていることだ。あの人は……怖い」
やはりあのメイド……。勇人は目を細める。そしてエリアナの方を見た。悲しそうな表情の彼女と目が合う。
「サン、大丈夫よ。彼女は任務に関わらないし、バレることは考えにくい。それにいまでは強い味方もいるわ。彼がこうして向き合って話してくれているということがどういうことか……。サン、あなたにもわかるでしょう?」
エリアナがサンの手を握る。それにサンは少し恥ずかしそうだ。勇人はそんな二人を見て、なぜか少し嬉しくなった。そしてモヤモヤとしていた頭の中が少しだけスッキリとする。
「おまえはリーゼに逆らえないと言ったが、俺はそれを馬鹿にしたりしない。耐えるということもまた勇気だ。そういう面も含めておまえが適任だと思う。そもそも俺がやりたくないし、向いてない。ついこの前、それを味わったばかりだよ」
勇人が自嘲気味に笑う。どちらも取れなかった自分にリーダーなんて当然向かない。それは間違いなかった。そしてお茶を一気に飲干す。なんかコーラが飲みたくなってきた。丁寧にお茶なんて出さずにコーラを出しておけばよかったか。
「わかった。当日はいつも通り俺が指揮を執る。作戦はいつも年上の5人程が集まって決めているんだ。それに黒守、おまえも参加しろ」
「了解。それともう一つ聞いておきたいことがある。おまえたちはいつ魔術の勉強をしている?誰かに教わっているんだろう?」
勇人は昼間のサンと戦いで気づいていることがあった。それは彼らの戦闘技能が実戦よりだということ。学園の生徒が使うような高度さや美しさはないが、対象を殺すことには長けている。次の任務地が紛争地帯という危険な場所であることから、それは当然かもしれない。
「実は私たちも含めた三人は週に二日、魔術学園の授業に特別に参加しているのです。それ以外の日ではリーゼさんやおじ様の知り合いの魔術師の方達に。それを私たちがさらに下の子たちに教えています。最も学園のレベルには到底追いついていないのですけどね」
この二人とあと一人は特別ということか。確かにサンは弱くはない。単純な戦闘力ならまだ和也や智花より強い。何より武器を使えるのはいい。魔術が多少疎かでも武器の性能で補える。
「俺もそれに……着いて行きたいが……どうだろう?」
「いや、俺らにはわからねーよ。でもおまえなら大丈夫じゃないか?」
「あとでおじ様に聞いてみたらどうかしら?」
その言葉を聞いて、勇人がエリアナをじっと見つめる。さすがの彼女もそれには少し顔を赤らめて目を伏せる
「あ、あのそんなに見られると恥ずかしいので……」
「いや、さっきからそのおじ様って……もしかしてゼフィールのことか?」
「ええ、そうですが?」
この世界でゼフィールを「おじ様」と呼ぶ人はおそらく彼女くらいだろう。仮にも最強と呼ばれる魔術師。少し前までテレビの芸能人のように遠い存在であった。ゼフィールという魔術師の強さは魔術師としての授業のみならず、あらゆる場面で何度も耳にする。テレビで特集が組まれ、「最強の魔術師から学ぶ強さの秘訣」なんてくだらない題名の本が山のように出版。彼が訪れる場所には数多の報道陣が押し寄せる。彼のようになりたいとか、彼の部隊に入りたいというのは魔術師としての夢として非常にメジャーだ。でも勇人は違った。そんな余裕がなかった。目の前のあまりにも大きな問題に立ち向かうだけで精一杯だった。そうしてひたすらに磨いていったその実力をアメリカに来て、ようやく実感する。強かった。さきほどのサンとの打ち合いにおいてもあまりにも彼を弱く感じてしまった。スピードが、力が、技が……。でも……それが普通かもしれない。速く進み過ぎてしまった故に自分はここにいるのだろう。そんな自分がここでできることは……。
「最後にもう一つ。自慢じゃないがおまえたちより幾分、魔術や戦闘技能で優っている。だからわからないことや上達したいことがあれば言ってくれ。手助けするよ。その方が任務も楽になるだろう」
サンがポカンとする。エリアナは感謝の意を込めて軽く頭を下げた。勇人はそれに少しだけ嬉しそうな表情を浮かべる。誰か守れること、守ろうと思えることは幸せだ。少しでも誰かを愛せて、その者たちを助けることができたなら、きっとそれは自分自身も助けることになる。それこそ彼がその刀を携える理由。勇人の見つめる先には、真紅の刀が静かに佇み、確かにその出番を待っている。




