計画
ちょっと長い
一同が目を瞑る。その日、登校してきた生徒たちは早々に講堂に集まり黙祷を捧げた。全校生徒約二千人のうち百人ほどの生徒が命を失った今回の戦い。あれだけの攻撃を受けたことを考えれば、被害は少なかったと言えよう。しかし亡くなった大半の生徒が上級組の精鋭だったことを考えれば、その損失はあまりに大きい。また今回の襲撃によって多くの生徒がその現実にショックを受けた。恐れからか、或いは悲しみからか三日間で学園に寄せられた退学の届けは五百を越える。それでも救いだったのは退学者の殆どが一般課程の学生であったこと。上級組、中級組の生徒は以前にも増してやる気に満ち溢れている。
「皆さんそれぞれ色々と思うことはあるでしょうが……それは敢えて口にはしません。言うことがあるとすれば、それは今後のことです。今日ここに集まったあなたたちなら心配ないでしょう」
初めに校長、教頭が一通り、今回の襲撃の詳細や敵の意図などについて述べた後、笠原が壇上に上がる。そして手に持った紙の束をペラペラとめくった。一通り目を通すと、一切表情を変えずに再度マイクを握る。
「正直どうでも……よくないので聞いて下さい。今年度のスケージュールに今のところ変更はありません。そうなると皆さんにとって直近の大きな面倒ごと……じゃなくて催しは海外の魔術学園との合同演習および選抜メンバーによる模擬戦ですか……ね」
そう言う彼の表情は三日前に開いた模擬戦の発表のときとは打って変わって、非常に退屈そうだ。こちらは例年開催されているもので文化や宗教などによって異なる魔術を経験することを目的としている。そうすることでいざ他国の魔術師と共闘することになったときに役立つそうだ。まあ表向きは協調性のある目的だが、実際は選抜メンバーによる国別対抗戦が注目されていて、こちらがメイン。騎士団幹部のいる七か国とドイツ、南アフリカ、ブラジルの計十か国で争われる団体戦で、五チームのうち三チームが勝利することで総合的な勝ちとなる。こんな状況でやることでもないが、他の国にとっては支障があるわけではないし、かといって自体というのも日本の魔術師全体の顔が立たないということでの参加なのだろう。笠原は別の教員から一枚の紙を受け取る。するとその紙を見た笠原はニヤリと笑った。三日前に浮かべた笑みにどこか似ている。
「で、その選抜メンバーなんですが、例年ですと学内の模擬戦の結果を参考に生徒会と教員で話し合って決めていました。しかし今年は知っての通り、候補だった優秀な生徒が残念ながら出ることができません。よって今から読み上げる五チームが今年の選抜です。ではお願いします」
「読み上げます。緋ノ宮妃チーム……」
他の教員によりチーム名が呼ばれていく。和也はその様子をボーっと眺めていた。自分には関係のない話だ。以前ならもう少し気になっていたかもしれないが、今はそれより優先して考えることが山ほどある。それはもちろんこれからの活動のこともだが……。
「黒守音羽チーム。なおこのチームには一人不足が生じているため、新しくメンバーを一人加入させます。あとで本人から紹介があるので快く迎えるように」
音羽のチームが呼ばれる。彼女の優秀さなら不思議ではない。それに和也にとってこれはとてもラッキーなことだった。正直、彼女をこれ以上巻き込みたくはない。きっと彼女は協力してくれるだろう。いや、何がなんでもすると言うに違いない。だからこれはいい口実となる。選抜の模擬戦は昨年の経験からかなり壮大なものとなることは知っている。となればさすがの音羽もそちらに気を向けなければならないし、何よりそれが本人にとって、そして勇人にとって一番だ。だからぜひとも彼女には模擬戦で活躍して、表舞台に出て、そして幸せになってもらいたいものである。ちなみに去年は久方ぶりに日本が優勝した。理由は簡単だ。緋ノ宮妃チームと黒守勇人チーム。この二チームが居る限り、三戦で一勝すればいい。でも今年はその勇人も……。
「最後のチームを発表します」
ここまでは至極全うなチーム選抜。すべてのチームが上級組で、音羽たちを除く三チームは三年生だ。そういえばさっきから左隣の列に並んでいる雨堤雫さんがチラチラとこちらを申し訳なさそうな目で見てくるのは何故だろうか。
「水瀬和也チーム。以上でチームの発表を終わりにします。前回の模擬戦同様、各チームのリーダーにメールで詳細を送る。正式な国際行事に匹敵する場となる。抜けのないようにきっちりと確認しておくこと」
笠原優一が、緋ノ宮妃が笑う。そして水瀬和也は項垂れる。
講堂での集会の後、授業は簡単ながらも行われた。できるだけ早くもとの生活に戻ることが大事らしい。休み時間が訪れるたびにクラスメイトに「やったね♪」や「頑張って!」と声をかけられた。意外だったのは自分が選ばれたことに疑問を抱くものがほとんどいなかったことである。生徒会長や魔物との戦いが過大評価されてしまったのかもしれない。
「あの……水瀬くんいる?」
授業後のHRが終わった瞬間、隣のクラスからダッシュしてきたと思われる雫が和也を呼んだ。一瞬クラスの全員の視線が雫に向くが、用件を察したのかすぐに各々が活動を再開する。
「雨堤さん……じゃなくて雫。今行く」
和也がそう言って智花を見る。すると智花は少し慌てながら教科書等を鞄に詰めて、最後に鞄についている狐っぽい縫いぐるみのコン吉さんを撫でると立ち上がった。一緒に雫のもとに歩いて行く。
「とりあえず集まって色々話さないとな。これかなり予想外だし」
「ええ、八田くんはなにやら用事があるみたいだから終わったら学生ラウンジに来てもらうように言っておいたわ。先に行きましょう。笠原先生も来るわよ」
さすが雫だ。行動が早い。特に笠原先生と話ができるのはいいことだ。現状、自分たちの目的は彼のものとほぼ一致している。今回のことについて聞くのも大事だが、それ以前にそもそもどうやって“虹の欠片の回収”などという難題をこなそうとしているのかを聞く必要がある。
「そういえば今回のチームの選抜って笠原先生関わってないよな?」
「ええ、たぶんね。朝のあの反応を見る限り、知らなかったんだと思う。でも、もしそれで予定が狂うようなら、あの男は強引にでも取り消すか、あるいはそもそもこんな状況を作り出さないわよ。つまり“問題ない”もっと言えば“ラッキー”くらいに思っているかもしれないわよ」
「ええと……もしかして……模擬戦出場は確定かな?」
「ちょっと……嫌なこと言わないでくれよ、智花」
歩きながら話す三人。ちなみにラウンジというのは所謂休憩スペース。多くの生徒が勉強他、作戦を練ったりに使っている場所だ。いい部屋だとホワイトボードがある。雫に案内された部屋にはすでに笠原先生がいた。珍しく眼鏡を外している。
「皆さん、とりあえず掛けてください」
笠原に言われ、三人が椅子に座る。和也がいの一番に声を上げようとしたが笠原がそれを身振りで制止した。
「言いたいこと、聞きたいことはわかります。質問は私のプランを聞いてからでどうでしょうか?」
三人は黙ってうなずく。同意を確認すると笠原はどこからともなく四枚の呪符を取り出し、部屋の四隅に向かって投げた。
「イリスの結界」
笠原の言葉と同時に部屋を魔力が駆け抜ける。部屋そのものに結界が張られたのだ。それもかなり強固な。
「急に申し訳ありません。話しの内容が外に漏れないようにするための魔術です。害はないので安心してください。それでは始めましょうか」
その場に緊張が奔る。
「第一に……やはり“あの娘”のことから話しましょうか」
“あの娘”とは当然彼女のことであろう。笠原に連れられて向かった学園内に存在する研究所。そこに存在する魔女“プルウィウス・アルクス・イーリス”と全く同一の魔力が検出される水晶から現れたと思われる銀髪の少女。彼女はあの後、笠原たち研究員に預けられた。和也から離れることにかなりの拒否反応を示したが和也自身が説得することでどうにかその場は承諾してくれた形だ。
「結論から言うと彼女はイリスと殆ど、同じ者です。容姿から検出される魔力まですべて一致しましたので。ただし決定的に彼女には抜けている者があります。おそらく皆さんも予想が付くでしょう?」
「感情……かな?」
智花が答える。笠原はそれに首を縦に振った。
「そうです。観察の結果、彼女にはいくつかの感情が抜けていることがわかりました。でも残っている感情もあります。例えば喜びです。彼女は水瀬君に抱き着いていたときに最大限の喜びを示していましたから……」
そう告げる笠原の表情は悲哀に近い物だった。彼女のこととなると彼はこういった表情を見せる。彼にとってはそれだけ大事な存在なのだろう。
「で、どうするのよ、その娘。私達にわかることは水瀬君が異様に好かれていることくらい。それはおそらく“虹の欠片”が所以でしょう?」
「結論から言うと……水瀬くんと一緒にいるのがいいかと。いや、まあ水瀬くんもそんなこと突然言われても困ってしまうと思いますが……」
皆の視線が和也に注がれる。和也はそれに困惑の表情を浮かべた。彼女と自分にどれくらいの因果があるかはわからない。だからどうするのが正解なのかは彼にはわからない。しかし和也は先日彼女と別れる時に“必ず会いに来る”と言ってしまった。おそらく彼女はその言葉に期待して待っているだろう。
「先生、彼女はいまどんな状態なのでしょうか?」
「あなたの予想通りです。「和也に会わせて!」と言いながら顔面を三回蹴られました」
「ですよね……」
和也は智花を見た。その表情は困ったような、悲しそうな、そんな表情。それでも和也の視線に気づいたのか彼女はすぐにいつもの笑顔を取り戻し、微笑み返えしてくれる。
「どうしようか?和君」
「先生たちも大変だろうし、彼女と約束しちゃったから……」
「うん、わかった」
「でも智花は……いいのか?もし彼女が俺と一緒にいるとなると……」
「いいよ。和君の選択なら」
智花はあまりにも簡単に承諾してくれた。気を使ってくれているに違いない。自分の周りの人たちはとても強い。ここ数日でそれを大いに実感した。だから自分も強くならなければならない。
「雫もいいか?チームの活動で邪魔になっちゃうこともあるかもしれないけど」
「まあしょうがないでしょうね」
雫も了承する。笠原は全員の了承を確認すると指をパチンと鳴らして結界を解いた。
「わかりました。では彼女を学園の生徒として入学させます。クラスは水瀬君と同じとなるのでよろしくお願いしますね」
「今更なんですけど……その大丈夫なんですか?彼女は結構ヤバイ存在ですよね。先日あんなことがあったばかりだし、狙われるってことは……」
「安心してください。ここ三日で侵入を試みた三十人弱のスパイとみられる者は全員殺しましたから。これからもそういう輩はいるでしょうが確実に潰します」
どう考えてもやっていることは大丈夫ではないが、守っていてくれると考えれば安心だ。と、そのとき結界の解けた部屋の扉が何者かによって叩かれる。
「和也、いるかー」
八田の声だ。用事を終えたのだろう。和也が返事をして、ドアをあけようとしてドアノブに手をかける。
「死ね!水瀬和也」
声とともにドアを透けた刃物が和也の首に迫る。和也はそれに反応できない。その動きは勇人や妃ほどは早くはないがそれでも和也を殺しうるには十分な速さ。
「ああ、やっぱり様子見なんて馬鹿な真似はしない方がいいですね」
笠原がそう呟いた瞬間、和也に迫っていた刃が黒い何かによって消し飛ばされる。それとともに笠原は手をドアに貫通させ、対面にいた男の心臓を抉り取った。あっという間に絶命したその男。それは現代文担当の教員だ。一年生の頃は毎週のようにこの先生の授業を受けていた。
「……」
あまりに一瞬、それでもって衝撃的な出来事に和也は言葉を発することができない。智花も驚いて口をあけている。雫だけは右手にバタフライナイフを握って、和也の前に出ていた。
「え、ええと……」
「大丈夫ですか?水瀬くん。すぐ処分するのでちょっと待っていてください」
笠原がそう言うやいなや三人のスーツを着た男女が現れ、笠原によって殺された男の死体を回収していった。魔術によって痕跡も綺麗に消されている。
「彼は五年前から教員として学園に潜んでいたロシアのスパイです。泳がせて情報を逆に得ていたのですが……ここらで大きく動いてきましたね。想定内なのでご安心を」
「何が想定内よ!水瀬君死にかけたじゃない」
「いえいえ、これからこんな感じのことは日常茶飯事になりますので。いい練習になったと思ってください。ということで皆さんもう少し力をつけましょう。今のところ及第点なのは八田くんだけですよ」
そう言って笠原は真っ赤に染まった手袋を外してゴミ箱に捨てる。そしてスーツのポケットから新しい手袋を取り出して手にはめた。そんな悠長な笠原に和也と智花はついていけない。襲われてから二人は動くことすらできていないのだ。そこに少し焦った様子の八田が走ってくる。
「大丈夫か?なんか騒がしかったけど」
「お、八田か……。用事は済んだのか?」
「おう!で、いまどんな状況?」
八田がその場にいる四人を見回す。その八田をニコニコと見返すのは笠原。
「今、皆さんにこれからの覚悟を決めてもらったところです。では八田くんもきたことですし、次の話に移りましょうか」
八田も加わり、五人がさきほどのテーブルを囲んで椅子に腰を掛ける。智花はいまだに青白い顔で覇気のなさそうな様子であり、和也は心配したが、本人が大丈夫というので引き続き話に加わった。おそらく話というのは国別対抗の模擬戦のことだろう。このことはある意味いまの襲撃よりも意外だったのだから。
「それで先生、模擬戦に俺たちは出場していいんでしょうか?先生が言ったように俺たちっていうか……俺は今みたいな襲撃を受ける確率はありますよね?国際的な催しとなると出場はかなり危険なんじゃ……俺が……」
「ええ、なので私も最初は渋ったのですが……実はメリットも結構あるので参加を承諾したのです」
「メリット?水瀬くんの命と釣り合うほどのもの?」
「説明しましょう。メリットは大きく二つあります。ちょっとお待ちを」
笠原が立ち上がって部屋の外に出る。その間、和也は八田に、イリスの今後についてとさきほど起ったことを説明した。イリスについてはあまり意識していなかったのか和也に言われて思い出したみたいだ。イリスと和也が一緒に行動することにもあっさり承諾してくれる。
「お待たせしました。こちらをどうぞ」
一分ほどして戻ってきた笠原が配り始めたのは薄い冊子。何かの試料だろうか。細かい字でずらっと文字が連ねてある。和也はそれをペラペラとめくって軽く目を通していく。殆どの単語は見慣れないものだったが、“騎士団”や“虹の欠片”といった既知の単語もあった。おそらくはそれなりに重要な試料なのだろう。その場の四人が軽く目を通し終わったことを確認して笠原は再び話を再開する。
「まず目標となる虹の欠片について、七つの欠片がどこに存在しているかを説明します。資料の一ページを見てください」
和也がペラッと紙をめくる。そのページの頭には「虹の欠片の所在」とわかりやすく題が記してあった。
「虹の欠片の一つは知っての通り水瀬和也くんが所有しています。では問題なのは残りがどこにあるか、誰が所有しているのかです」
「残り六つってことですよね?場所わかっているんですか?」
少し驚いた表情で聞く和也。それもそうだろう。一番の難関はありかの特定だと思っていたのだから。それが発見済みとなれば出だしからして予想よりも大きく前に進んでいることになる。
「ええ、わかっていますよ。三つは騎士団の幹部が所持しています。アメリカの賢王、ゼフィール・エクスフォード。インドの預言者、アラ・カルナ。イギリスの騎士王、アルフレッド・スティンガー。この三人です。はっきり申し上げてこの三つは最難関なので後回しにします」
笠原が「やれやれ」と呟く。騎士団を相手にするのはそれだけ困難を要する。幹部の戦闘能力が強力なのはもちろんだが、国によっては国家戦力が騎士団のそれとほぼ同義というところもある。それはつまり一国を相手にしなければならないということだ。笠原の言うことが嘘でないなら自分たちは日本国軍が味方になっていてくれているので、戦力的には互角かもしれないが、かといって迂闊に戦争を起こすことは避けたい。人間同士の戦争は皮肉にも魔物の出現によって忘れられた。このまま戦争など失われてほしいものだ。
「で、残りの三つです。まず一つは中東の反乱軍というかテロリストを治める少女が所有しています」
「反乱軍?何に反乱してるんだ?」
「さあ?私にも彼らの意味不明な理論にはついていけません。なんでも魔物は神の使いで、人間は彼らを受け入れるべきだとか……。全く、例え神の使いだとしても……いや、神の使いだからこそ抗うべきだというのに」
「残り二つは?」
呆れたような表情の笠原を急かすように雫が聞く。
「エジプトの王妃と……ごめんなさい。実はあと一つはわかっていないのです。しかし安心してください。六つ集めれば、それに導かれるようにもう一つの在り処もわかるでしょう。欠片はそれぞれが共鳴するようになっていますからね」
「それでそれが今回の行事とどんな関係があるんだ?」
「ええ、簡単です。今回のその催し、エジプトから王妃が観戦に来ます」
和也はそれを聞いて嫌な顔をする。笠原の言葉で何となくやることがわかってしまったから。
「それはつまり……」
「ええ、殺します。で、欠片を回収しましょう。安心してください。殺すのは私がやりますあなたたちは模擬戦で活躍してくれればそれでいいですから」
「いいけど、それ大丈夫なの?王妃なんでしょ?下手をしたら戦争の火種になりかねないでしょう」
顔をしかめながら雫が聞く。
「ええ、その通り。ですので件の反乱軍を囮に使います。奴らが当日会場を襲うようにセッティングしておくのです。そして襲わせる。そうすれば王妃殺害の罪もそちらに擦り付けられる」
「反乱軍はどうする?下手すればそっちに殺されかねないぞ?」
「それも大丈夫。当日は最強の魔術師、ゼフィール・エクスフォードも来るので。彼らにも反乱軍が来ると知らせておけば即座に殲滅してくれます。ちなみにゼフィールが水瀬君を狙う可能性も低いです。彼は秩序を重んじる人間。大勢の目が集まる場で手を打ってくる可能性は非常に低い」
「……」
四人が黙りこくる。作戦が成功するかはともかく、やることが正直かなりエグイ。必要なこととわかっていてもなかなか「よし、それで行こう!」とは思えなかった。
「先程も言ったように、殆どのことは私たちがこなします。あなたたちには模擬戦に出ることとテロリストか刺客によって殺されないようにすることだけです。簡単でしょう?」
「……」
そう簡単に肯定できないのは他三人も同じだ。しかし和也は意を決めたように首を縦に振った。
「前に進まないといけない。そのためにこの作戦は必要なものだ。俺は作戦を実行しようと思う」
和也のその言葉でその場の全員の顔が笑みに変わった。そして智花が和也に近づいていき、和也のとなりに腰かけた。
「私は和君に着いて行くから」
八田と雫も頷く。和也はそれを確認して笠原を見た。
「水瀬和也チームはその作戦に同意です」
「はい、わかりました。ではあなた方は当日に向けて魔術の勉強と練習を頑張ってください」
「そういえば先生、もう一つのメリットって何ですか?」
メリットは二つあると言っていた。一つ目の内容があまりにも重要だったので忘れていたがそちらも気になる。
「ああ、それは簡単ですよ。あなた達が強くなるというメリットです。世界規模の模擬戦です。学生としては最高峰の強者が集まるでしょう。その方たちに後れを取らないくらいには強くなってくださいね。全世界に恥を曝したくないでしょう?」
意気込んでいた和也の表情がたちまち落ち着きのないものになっていく。笠原はそんな和也の表情を見て、ニヤッと嬉しそうに笑った。




