表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹の誓約  作者: mosura
1/44

日常①

初めての投稿です。ぜひ目を通してみてください。投稿した理由としましてはやはり多くの感想をいただきたいからです。なので感想を書いていただけるとこちらとしては大変うれしいです。誤字、脱字、文法的なミスやストーリーの指摘等々もありがたいです。この作品、実は結構な量をすでに執筆済です。なので先もすぐに楽しんで頂けます。まあ、とりあえず読んでみてください。お願いします

七色の曲線が空を覆う。赤、オレンジ、黄、緑、水、青、紫。とても鮮やかな七本の線が世界を覆った。この世のものとは思えないほど美しい色だ。思わず彼女はその光景に目を奪われてしまう。空の下から音が聞こえる。高い音、低い音。うるさいほど大きい音に消えそうな音。彼女はそんな下の様子が気になったのか少しだけ下を向いた。そこには赤が広がっている。空の赤とは違う醜悪な赤。黒と茶色とその他とにかく汚い色を含んだ赤。そこから永遠に続くのではないかと思われる不快な音が吐き出されている。彼女は思わず顔をそむけてしまう。ふと周りを見ると彼女の周りにはいくつもの点が浮かんでいた。わずかな光を放つ点。彼女を囲うように、閉じ込めるようにそれらは少しずつ距離を詰める。

「何かしら?」

彼女はそっとそれに触れるように手を伸ばす。すると急にそれは弾けてしまった。弾けた場所から下から聞こえた不快な音と汚い赤が噴き出す。不思議な顔をして首をひねる彼女。何度も触れようとするがそれらは彼女が触る前に弾けてしまう。そのたびに生まれる不快な音と色に彼女が顔を歪めた。それから空を見上げる。そこに輝く美しい七色にほっと気持ちを落ち着かせる彼女。その時だ、彼女の目の前に七つの点が現れる。それらは先程のものとは比べものにならない強力な光をそれぞれが放っている。空に浮かぶ線と同様、美しい七色の輝きだ。

「綺麗!」

彼女はそれらに触れようと手を伸ばす。しかしもう少しで手が触れるという場所で手を引っ込めた。

「あれも私が触れたら弾けてしまうのかしら?」

そう言って自分の手を見つめる彼女。そこにはいつもと変わらない自分の手がある。肌色で皺のある小さい手だ。

「No7……いや、プルウィウス・アルクス・イーリス。おまえが見ている光景は綺麗か?」

自分の名前が呼ばれる。その声は自分の正面にある青い光から発せられた。重みのあるずっしりとした声だ。彼女は質問に答える。

「ええ!とても綺麗!世界はこんなにも美しいのね!」

「そうか。しかし私にはそうは見えない」

きっぱりと否定する声の主。彼女はもう一度下を見る。

「確かに……下は綺麗ではないわね。何でかしら?」

彼女が残念そうな顔をしてそう言う。するとその言葉に反応するように目の前の青の光が大きくなる。

「私が言っているのは空に浮かんでいる七色のことだ。その不気味さに比べたら下の赤の方がよっぽど現実的で綺麗ではないか?」

「変なの」

今度は彼女がきっぱりと否定する。と同時に青以外の六色も青と同様にその光を大きくする。

「ではおまえの光景と私たちの光景、どちらが美しいか試そう」

そう青が言うやいなや、七色の光が彼女に向かって動きだす。彼女はそれを見て嬉しそうにほほ笑み、もう一度空を見上げる。

「ああ!綺麗な七色。これが虹ね!ありがとう、ユーイチ」

七色の光が彼女に触れる。彼女は笑う。そうして世界は白に包まれた。






「で、あるからして今君たちはこの学園でよくわからない文字の解読に勤しんでいるわけです」

そう言うとその男は教室を見まわし、先程から睡眠に勤しんでいる男子生徒、水瀬和也の方を見る。身長百七十、黒い髪に中肉中背のごく普通の生徒だ。男は「はぁー」とため息をつき、何やら呟きながら手を横に動かす。すると和也の隣に座っている女子生徒の机の上の大量の消しゴムのカスが和也の方へ飛んできて彼の頭の上に散らばった。和也はそれによって目が覚めたのかゆっくりと顔を上げる。

(消しゴムのカス?この魔術が発達した世の中で?せめてチョークとか黒板消しとか定番のやつにしてくれよ)

そんなことを思いながら和也が自分の頭に消しゴムのカスを降らせてくれた男を見る。

「森谷さん。いくら隣の馬鹿にむかついても消しゴムのカスを投げてはいけませんよ。幼馴染の君にそんなことされたら彼、不登校になっちゃいます」

そう言われた智花は今にも泣きそうな顔で和也の方を見ていた。森谷智花。和也の幼馴染の女子生徒だ。百六十センチというこれまた一般的な身長の可愛らしい女の子。鞄には常に二種類以上の縫いぐるみをつけている。彼女は口をパクパクさせて何とか声を振り絞った。

「和君……不登校になっちゃ嫌だよ……」

和也はふざけた教員のふざけた言葉を鵜呑みにしてしまった幼馴染を気の毒に思い、その教員の方に向き直る。

「先生。俺はともかく智花をからかうのはやめてあげて下さい」

「よかった。馬鹿な君でも今の魔術には気付くようですね。不登校にならなくて済みそうです……ちっ!」

こいつ本当に教員か?と疑いたくなるこの男の名前は笠原優一。家庭科と戦闘魔術(どういう組み合わせだ?)担当の教員。生徒に対して寛容的なことに加え、割といいルックスと高い魔術の使い手であることから生徒に人気がある。和也自身も徹夜レポートのせいで寝てしまったがこの先生の授業は独特で好きなほうであった。

「せっかく水瀬くんが起きたところですが今日は切がいいのでここまでにします。皆さんの待ちわびた昼食の時間ですよ。そうそう、誰か水瀬君と一緒にお昼ご飯を食べてあげて下さい。これ以上ぼっち飯を続けていると不登校になってしまいますからね」

クラスメイトが「ははは」と笑い、笠原が教室を出ていく。和也は言い返すのを半ば諦めて笠原を見送り、何も出ていなかった机に呆れながら、その上に自宅で作ってきた弁当を置いた。すると智花が慌てた様子で話しかける。

「和君。一緒にご飯食べよ!これからも一緒にご飯食べてあげる。だから……学校来てね」

「あのインチキ教師の言葉は間に受けなくていいぞー。不登校になるわけないだろ。あ、でも今日弁当だから一緒に食べようか?」

「うん!」

嬉しそうに返事をする智花。返事を聞いた和也は時計を見る。

「早く終わったから勇人も誘う?」

「今日は上級組の人は一、二限に実戦訓練だって。だから食事も現地で摂るんじゃないかな?」

「そっか。やっぱり上級組は大変だな」

この魔術学園には上級、中級、一般の三つのコースがある。和也や智花は中級組だ。まあ所謂平均的なところ。ちなみに一般は魔術の使用はできるが戦闘に応用できるレベルではなく、最低限の制御や日常でのわずかな利用を目的とした組。逆に上級組は将来的に有望で、強力な魔物はおろか魔女本体との戦闘も仮定して訓練される組である。上級組の中には各国軍、国連軍の幹部や独立組織「騎士団」の一員になる者すらいるらしい。二人の親友である黒守勇人はその上級組にいる。

「和君、どこで食べようか?」

「食堂でいいんじゃない?」

「うーん……中庭にしない?今日は早く終わったから中庭の席もきっと空いているよ!何より静かで二人きりになれるし……」

「そうだな。じゃあ行こうか」

自慢じゃないが学園の中庭は中々に立派だ。元々広大な敷地を有する学園だが「気分転換は重要」という校長の方針でスペースを多く取っている。おまけに机と椅子まであるので昼食時は大人気で席の取り合いになることもしょっちゅう。二人は中庭に着き、樹の下の日陰の席に座って弁当を食べ始めた。

「うーん……智花の弁当はやっぱり立派だな。それ自分で作ってんだろ?」

「うん。いいお嫁さんになるには今から料理の腕も上げておかないとだからね!」

「はは。なんだ、それ」

和也は智花の答えに軽く笑う。しかし彼は智花が切なそうな目で自分の弁当を見ているのに気付く。

「和君……お弁当自分で作るんだよね?」

「ああ。親父は仕事で忙しいからな。そのくらいは自分でやらないと」

十二年前の雪の降るクリスマス、水瀬和也が五歳の時彼は母親を失った。母親の名前は水瀬薫子。当時はちょうど魔女の進行が収まり始め、人々の不安も徐々に消え去っていた頃だった。大量の魔物が東京タワーの上空の「空間の歪み」から出現したのだ。東京にクリスマスプレゼントを探しに来ていた母親と和也も当然それに巻き込まれた。国内屈指の魔術師であった彼女はこれに応戦。国軍が来るまで和也を守り抜くもその引き換えに命を落とすこととなった。当の和也はこの時のことを殆ど覚えていない。医者が言うにはショックで忘れてしまったということらしい。ちなみにこの事件以前は魔女が空間すら操れるということが知られていなかったため、判明後は一時的に世界中で大パニックがおきた。

「そうだ!今度から私が和君の分のお弁当も作ってきてあげようか?」

「いや、さすがにそれは悪いよ」

「大丈夫!毎日っていうわけじゃあないし、将来に向けての予行演習だと思えばいいから」

「予行演習?」

よくわからないが結局、和也は弁当を作ってもらうことになった。まあ智花の料理はおいしいし、幼馴染が弁当を作ってくれるなんて喜ぶべきことなのだろう。そのあとはご飯を食べながらいつも通りのとりとめのない会話をする。授業中寝てしまったことを智花に指摘され耳の痛い思いをした。

「そろそろ教室に戻ろうか?」

「あ!もうこんな時間だ!やっぱり楽しい時間は過ぎるのが早いね。ね?和君」

「あ、ああ。そうだな」

教室に二人で話ながら戻る。教室に着き二人が教室のドアを開けると皆がいつもに比べて騒がしい。

「なんかあったのかな?」

「うーん、何だろ。笠原先生に彼女がいたとか?」

「えー」

智花が笑う。

「お!和也。ちょうどいい。それに智花ちゃんも」

和也と智花が後ろからの声に振り返るとそこには茶髪で百八十センチ以上の身長の大柄な男子生徒がいた。

「あ!八田君。こんにちは。みんな落ち着きがないみたいだけど……何かあったのかな?」

名前は八田慎二。ちゃらちゃらした性格で女子にしょっちゅうメアドを聞きまわっている(にも関わらず浮いた話をまるで聞かない)。一方で二年生中級組の成績上位者で優秀な生徒だ。一年生の頃からこの三人は何かと行動を共にすることが多かったので気軽に話すようになった。和也にとっては高校でできた初めての友達である。

「それがどうも実戦演習で高尾に行った上級組が現地で吸血鬼に遭遇したらしいんだよ。で、一人死者が出たらしい。吸血鬼なんて日本で発見されたのは十年以上前だぜ?」

呑気にそんなことを言う八田。和也にはそれがどの程度大変なことかわからなかった。吸血鬼といえば魔女が使役する魔物の中でも特に危険な第一級危険種の一つだ。それほどの魔物が勇人達のいる場所に現れたんだから大変な気もする。

「で、吸血鬼はどうなったんだ?」

ややや興奮気味に和也が聞く。すると八田は指をパチンッ!と鳴らして和也を指さす。

「そう!今回重要なのはそこ!実はその吸血鬼はもう倒されたらしいんだけどさ。なんと倒したのが最初に遭遇した黒守のチームなんだよ!」

「え?勇人が倒したのか?吸血鬼を?」

「まあ正確には遭遇した黒守勇人のチームと後から駆け付けた生徒会長、緋ノ宮妃のチームによってだけどさ。それでも公式の記録では討伐者として黒守の名前が記録されたそうだぜ」

「黒守君すごいね!」

「いやー友達として誇らしいわー」

智花と八田が素直に称賛の言葉を口にする。しかし和也は素直に褒めることができないでいた。十四歳くらいまではお互いの実力の差はほとんどなかった。しかしその後、勇人は凄まじい勢いでその実力を伸ばしていったのだ。結果として彼はこの学年の高等部二年の中で最高の実力者となり、学園内で生徒会長と互角に戦えるのは彼のみと言われるまでになった。和也の心にあったのは劣等感というよりも後悔だった。彼に付いていけば自分ももう少し高みに立てたのではないか?何故あそこで自分は止まっていたのだろう?という後悔だ。

「和君大丈夫?顔色よくないよ?」

「い、いや大丈夫だ。さすが勇人だな……」

なんとか取り繕って言葉を出す。時々勇人に対して抱いてしまうこの感情を和也はどうすればいいかまだわからない。いつものように時が癒してくれるのを待つしかなかった。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ