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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

最後に

作者: 結城 空

もう、無理なんだ。

自分の限界を感じたのは不幸か幸いか、六連休という自分の会社では考えられない程の休みを言い渡された次の日だった。

今日死に損ねても、それを発見されるまでには力尽きていることだろう。

ぼんやりと、ただ淡々と考える。

朝起きて、会社へ行き、上司の愚痴を延々と聞かされ、帰宅し、寝る。

学生の頃は良かったなんて、最後に口にしたのはいつだっただろうか。

どんどん灰色になってゆく私。

友達はそんな私を見かねて頻繁に飲みに行こうとか、アウトドアはどうだろかとか誘ってくれていたけれど、それが実現したことはない。

休むことを忘れ、生きることを忘れ、誰かの言葉を借りるならば、私は生きる屍だ。

短かった。私の人生、短かった。

こうなったのはいつからだっただろうか。

ふわふわする頭で考える。

あぁ、君がいなくなってからだ。

いつも隣で笑ってくれた君がいなくなってからだ。

君を思い出す時はいつも、あの夏に見た満天の星空がセットだ。

星空なんて、最後に見たのはいつだろう。

そういえば、今日の夜は数百年に一度の流星群が見れると上司が大声で話していたっけ。

なんて、人生の最後に思うことはそんなくだらない事なんだなと自分に呆れる。

もっと、来世はこうなりたいとか、やり残したこととかを考えよう。

来世は、君とまた出会いたい。

やり残したことは、あの去ってゆく君の背中を追いかけなかったこと。

くだらない、くだらない。

君がいなくなってから私は生きてなんかいないのに、まだ息をしている。

くだらない。

あぁ、ひとつ思い出した。

君に謝らなければいけない事がふたつ。

ひとつは、君が過去に死にたいと言った時、その言葉に耐えきれず頬を叩いてしまったこと。

ひとつは、そんな事をした自分が今、死のうとしていること。

許してくれるだろうか。

なんて、呆けた頭で考えながら、いつの間に手に持っていたか分からない銀色の刃物を首にあてる。

この瞬間を、私は何度想像しただろうか。

ひんやりとした感触にゾクッ、と背中が震えた。

ぐっと力を入れると、ちぃ、と、皮膚が切れる音。

それなりに力を入れているはずなのに、まだ目指す所は傷を付けられずにいるようだ。

ぐ、ぐっ、と、徐々に力を強めていく。

まだ。もう少し。

早く早くと高鳴る鼓動に、自然と頬が緩んだ。

さよなら世界。

さよなら愛する君。

どうか幸せになってください。

バッと赤く染まった世界、遠ざかる意識、ふと頭に浮かんだ君の笑顔。

さよなら、さよなら。

また逢う日まで。

久しぶりの投稿です。

読んでくださりありがとうございました。

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