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パーティー

「やっと見えてきました。あれがカラマの町です。」

 馬車を引きながら遠くに見える町の方向をに指をさしコールマンが首とつながっているように見えるほど蓄えてある顎を震わせ、まるで何年も帰えってこなかった故郷を見るように感慨じみている。

 エポルカからカラマまでの距離はそれほど遠くなく、かけてきた時間も約二日と長くはなかった。

 だけどそれがとてつもないほど長く感じるほどの濃密な時間を俺達は過ごしてきた。時間も明け方に動き出したせいか、まだ昼前にも関わらず気分は一日が終わるような気分だ。

 初めはただの護衛任務で皆ここまで苦労するとは思ってなかっただろう。ボロボロの身体の負傷者に動ける者があと少しだ、と励まし肩を貸しながら歩いていく。

 そして町の入り口にある門を見ると皆少しずつ元気を取り戻していった。

 怪我人含めた二十五人のパーティーは拘束した山賊達を率いて、七十人近くとなって町の門へと向かうとちょっとした騒ぎになった。山賊たちはもう抵抗する気力もなくただ俺達に従いついてくる。


 憲兵に山賊達を預けた後、無事クエストを達成した俺達の中に、今日はもうエポルカに戻ろうという気力があるものはいなかった。

この戦いで結束ができたメンバーは帰りもこのメンツで帰ることに決めて明日集まる場所と時間を決めると今日は各自自由行動にすることにした。

 解散すると治療を受けに病院に行くグループ、旅路の素材をコールマンに売りに行くグループ、そしてその他、各自がそれぞれの目的のために行動するグループに分かれていった。俺は町の中から割と高めの値段のする宿屋にチェックインをして部屋で少し休憩するとカラマの町へ繰り出した。

 さすが、商業の街と言われるだけあって、街中は商人と客のやり取りや、活発な客引きの声で騒がしくなっている。

 道具屋も多数あってそれぞれが違う品ぞろえを用意しており、普段は買えないような品物も置いてある。 ただ、今自分が欲しているものは今のところ見当たらない。

 今回の戦いで思ったのはやはり集団相手になれば自分の力では勝ち抜いてはいけないことだ。この戦いで俺が直接活躍したことは何一つなかった。

 この品ぞろえ豊富な町に行けば爆弾や拳銃に似た武器、もしくはそういうものが作れる素材でも扱っているかと思いきやそんなものは見当たらない。

 まあ、もしそんなものがあったのなら敵も使っており、俺はとっくにやられているだろう。

 俺は攻撃アイテムの事は諦め、回復アイテムや使用したアイテムの補充を済ませると激しい客引き争いの光景を楽しみながら宿屋へと帰って言った。


――次の日の朝

 まだ日が昇って間もないというのに、もう商人たちは店を開き、町は喧騒にまみれていた。

皆と落ち合う場所の門前に行くともうほとんどの人が集まっていて、仲良くなった者同士で各自雑談をしていた。

クエスト開始当時は冷たくあしらわれた女性たちも俺に気が付くとこちらに向かって手を振ってくれた。

パーティーが~とか一夫多妻制が~など焦っていた事は、今はもうどうでもよくなり本来の目的も忘れて

手を振ってくれた彼女たちに手を振り返す。

 集合時間が近づくにつれてメンバーが集まってくる。その中には怪我をしていた負傷者たちもいて驚くくらいの元気な姿を見せていて正直驚いている。

 いくら一日休めば回復する世界でも回復の速さが異常だ。重傷を負っていたモーリアも怪我をした右腕の調子を確認するかのように腕をグルグル回している。

「よう、キド、おはようさん」

ペレス一味がこちらに気づくと声をかけてくる。

「モーリア、体は大丈夫なのか?」

 俺が体を気遣うとモーリアは年齢に合わない老け顔で豪快に笑った。

「ハハハ、大したことないって言っただろ……っていっても本当はあいつのおかげなんだけどな」

そういうとモーリアは後ろを振り向き親指で後ろを示した。その指を辿るとそこには再びフードをかぶって微動だにもせず突っ立っているドリスがいた。

「あいつ、あの後病院に来て負傷者に回復魔法をかけてくれてな、変な方向にばっか、かかるから病院中の怪我人が大方回復したよ。」

 俺はその言葉を聞くと思わず口元が緩む。口数も少なくエルフということで敬遠しているのかあまり溶け込もうとしてなくて少し不安だったが今の話を聞いて安心した。

「で?あの娘とはどうなんだ?パーティーは組めそうなのか?」

「え?」

 リッドが冷やかすように俺の胸板を右肘でつつくと、俺は本来の目的を思い出す。

「戦いでの連携は見事だったな」

「ああ、ドリスの短所をうまく補えてたし、いいコンビだったぞ」

 ペレスとモーリアと言った、二人の猛者にお墨付きをもらえる。

 確かにドリスは強いし、他の女性陣のように顔を毛嫌いすることもない分、パーティーは組みやすい、

 ただこれからもパーティーを組むのかと言われれば話は別だ。

「まあそろそろ出発するから、帰り道、頑張って口説きな」

 そういうと、ペレスが俺の背中を軽くドリスの方へ叩くき俺に向かって親指を立てる。

 なんか恋路を応援されるかのような気分だ。

 とりあえず俺はドリスの方へと向かった。それに合わせてペレスは皆に出発の号令をかけた。


 帰りの旅路は皆それぞれが楽しそうに話しながら帰る。

 山賊が全員捕まったこともあり安心しているようだが少し不安にも思えた。だが敵が現れると皆息の合った連携で敵を倒していき、俺の不安は一気に解消された。

 特に怪我人メンバーはあまり活躍できなかったこともあってか率先して敵を倒してくれたおかげで俺達は楽をして帰れている。

 みんながそれぞれ仲良くはなったのだが、俺とドリスはまた無言の状態が続いていた。

――は、話しかけづらい

 別に気まずいとか、仲が悪いという理由で話しかけづらいわけじゃない。本来ならここでパーティーの誘いをするのがいいのだろうが、何故か余計意識してしまう。

――落ち着け落ち着け、別に告白をするわけじゃないんだから。

 俺は一度息を吐いて落ち着くとまず初めに怪我人の手当の件に関して触れ始めた。

「そ、そういや、モーリアの怪我を治したのドリスなんだって?」

俺の発した言葉にふと顔をあげるドリス。そしてしばらく沈黙が続くと思い出したかのように話し始めた。

「ああ、別に大したことしてないわ……やることがなかったから手伝いをしていただけよ……野営ではあまり役に立たなかったから」

そう言って彼女はクールに振る舞うが小さな仕草から、内心は照れているのが分かる、

 それを見てニヤけている俺を見て気づいたのか話をそらし始めた

「そういえば昨日寝ているときに気づいたんだけどあなた……変わった戦い方するのね」

――今頃になってやっとそこに気づいたか。

 だが、そのおかげで話をこっちに持って行けそうになる。

 俺はこれをきっかけに今までの経緯をドリスに始める。

 皆が一番食いつきそうな異世界から来た事の話をしても、あんまり、大きなリアクションはなかったが、ドリスは俺の話に対して意外なところに食いついてきた。

「女神?ドッジーナ?」

そう、ドリスは俺を連れてきた女神の名前に反応したのだ

「ああ、つってもあだ名かなんかで本当はドリーヌって言うらしいんだけどな」

その言葉に少し過剰に反応したかと思うとドリスは少し考え込む。

初めはドリスだからと大して気にしなかったが、のちに意外な事実が発覚する。

そして俺はこれから本題に切り出す。

「ところでドリスは旅をしているのか?」

俺の言葉に何故分かったと言わんばかりの表情をしている。

もちろん知っているわけではない、あくまで推測で聞いてみたのだ。ドリスは俺が街を調べたときには情報はなかった、あれほど実力があるなら例え実績はなくても自然と知られてくる。だがこのメンバーは誰もドリスを知らなかった。なら町に住んでいる人ではないのは確かで、何か目的があって旅をしているんじゃないかと考えている。

ドリスは無言で首を縦に振った。

「何か目的があるのか?」

もし目的があるなら強くは誘えないがもし共通する目的ならしばらくはパーティーは組めるのではと考えた。

俺の言葉にドリスが、ん~と唸りながら考えた後、今度は首を横に振りながら答える

「いえ、特にないわ。ただ、に当てもなく旅をしてるだけよ、五百年ほどね」

――いや、そろそろ落ち着けよ。

 いきなり来るエルフトークに思わず心で突っ込む。

 だがそれと同時に障害は何一つないことが分かった

「なあ……ならさあもしよかったらでいいんだけど」

おれは言いづらそうに誘い始める

「なに?」

「もしよかったらこれからもパーティーを組まないか?」

その言葉に反応するものの何も言葉は発しない、なので俺はそのまま話を続ける

「俺はさっき話したように魔王を退治しなきゃならないんだが、俺一人では無理に等しい、だから仲間を募っている、もしよければでいいんだけど、魔王討伐に力を貸してくれないか?」

 思い切って打ち明けた俺の言葉にドリスは何も返さない、そしてしばらく沈黙を続けたあと答えを返した

「私はこの戦いで見せた通り、うまく攻撃はできない、きっといつかあなたに迷惑をかけるわ……。」

「でも今回ドリスと組んだおかげで何とか勝てた、迷惑なんて掛かってなかった」

 今までの失敗を理由に拒んだドリスに俺は今までの成功を理由に食らいつく。

「しばらく、考えさせてちょうだい」

真面目な顔つきで言ってきた言葉に急かす必要はない、俺は期限を設けずドリスの答えを待つことにした。


 朝から歩いてきた道なりが目的地にたどり着いたのは夕日が沈んで間もないころだった。

いきしは二日かかった道のりを帰りは一日でたどり着く、何事も問題なく行くとこれほど早く着くのかと皆驚いていた。

そして皆が拠点としている町エポルカに着くと足並み揃えて、ギルドへ向かう、

二十五人全員が一斉に報酬を受け取るために受付に並んだため今ギルド内では小さな行列ができていた。、そして俺の番になると受付嬢のミレイはすぐさまポケットから四つ折りにした紙を取り出し人には見えないように机の下に隠してちらちら覗いている。

――とうとうカンペまで作り出したか。

ぶっちゃけここまでされると逆に申し訳なる。そして書いてあると思われるセリフを確認すると一度深呼吸し俺の顔を見て話しかける。

「いらっしゃいませ、ブサイクさん」

――いや、もう堂々とカンペ見ろよ

自己最短発言を記録したミレイはいつものように慌てて謝ると、クエスト完了の手続きをして報酬を渡した。

皆がそれぞれ、報酬を受け取ると酒場へ足を運ぶ。ただドリスだけは出口の方へと向かっていった

「ドリスは打ち上げ参加しないのか?もしかしてお金ないとか?」

後ろから声をかけるとドリスは俺の言葉に足を止める。

「私、あまりそういうことしたことないから……それにあまり話すのも得意じゃないし雰囲気を悪くするかも……」

ドリスが少し寂しげに言う。すると俺がそれを否定する前に後ろの方から声が上がった。

「大丈夫だよ、そんなことないって」

「そうそう、今回の立役者はお前じゃないか」

「ドリスがいなかったら今頃ここに帰ってすら来れてないしな」

「怪我治してくれてありがとー」

酒場中から聞こえる男女混合のねぎらいの言葉にドリスは一歩も動けなくなっている。

「ほら、そこのブ男、あんたがいるからドリスちゃん来れないじゃないの!あんたもさっさとこっちに来なさい。」

「ここからは女の子の領域なんだから」

女性陣からの野次に俺は少し笑いながらしぶしぶその場を離れる。

そして俺の代わりに女性陣がドリスを席へと誘った。

そして俺達は周りの客をも巻き込んでしばらくの間クエストの達成を祝う宴会を行った。


「こうやってみんなでつるむのも、悪くないわね……」


皆に聞こえない程度の声でドリスがそっと呟いた

後日、ドリスが俺の部屋を訪ねてきたのはまだ日が立って間もない頃だった。





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