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上級魔法

町の外から西の山まで続く道なりを、二十五人の大所帯で進んでいく。

依頼主のコールマンの素材を高値で買うというニンジン作戦により、敵が出没すると周りの冒険者達が眼の色を変えて敵に戦いを仕掛ける。

――周りを煽って士気を上げさらに自分は商品になる素材が手に入る。

さすがやり手の行商人だけあってやりくりがうまい。

だがあいにくオルメニクスで稼いだ俺は金に困っておらず戦いには参加していない。

このクエストでパーティーを組んだドリスも戦闘には参加するつもりはない様だ。内心、実力が見たいこともあり少し残念だった。

しかしパーティーを組んだと言ってもさっきから一言も会話がないままの状態が続いている。


――やばい、この状況どうにかしないと……

俺の目標はあくまでクエスト後もパーティーを組むこと。

そのためにも少しでも打ち解けておかないと……

俺は必死で話題を探す、しかしこの世界での女性に共通できる話題を知らない。

若い女性でこの世界でまともに話せたのはルウとアルくらいだが……

ルウとの話題は俺の世界の話がメインだったしアルは素材とダジャレばかりと個性が出すぎている。

クールで寡黙なドリスにいきなり異世界の話や、素材やダジャレを言っても会話は弾まないだろう。

――戦闘に参加できるならな……

俺は今更ながら戦闘に参加していないことを少し後悔する。

もし一度でも戦えば戦闘の話から会話に持っていけるのに……

残念ながら現在は1匹の小柄なモンスターに対し、それぞれのパーティーが人が奪い合う形で挑んでいる状況だ。

当分機会はないだろう……

俺はがっくりとうなだれながら道なりを歩く。


――西の山ふもと

町を出てからからどれくらい歩いただろう?出発時に東寄りにあった太陽はちょうど頭の上に上っており時間帯には昼を過ぎていると思われる。

俺達は西の道なりをひたすら歩いて盗賊が出ると言われている山に到着した。

「みなさん、ここが朝言っていた盗賊のいる山です。実力は大したことはありませんが、いつ盗賊が出てくるかわかりませんので十分ご注意を……」馬の手綱を軽く引き馬車を一度止め、警戒を呼び掛けたコールマンの言葉におしゃべりをしながら歩いていた護衛の冒険者ご一行は気を引き締める。

「ここからが本番ね。」

ここまで会話のなかったドリスが口を開いた

「ああ、そうだな。ただの山賊だからって油断しないようにしないと。」

「ところであなたは前衛?後衛?」

「基本的には後衛かな……」

「そう……なら私が前衛ね」

そういうとドリスは剣を抜き刃を自分の視線に持っていく。

――魔法剣士ってすげぇ

魔法も使えるし剣も使えるし前衛でも後衛でもできる、まさに二刀流だ。

これほど頼もしい味方はいない。

俺は刃こぼれの確認のため剣の刃を上から指でなぞっていく姿に思わず見惚れてしまった。


登っていく山道は少し幅が狭く列は自然と細くなる。山道を登り進んでいくとちょうど山の山頂近くまで来ており少し道が広くなる。

――襲ってくるならここだな

俺は正面を他のメンバーと歩いていたペレスと目が合いお互い小さくうなずく。

そして山の山頂へとたどり着いた。

「危ない!」

ペレスの言葉と同時に正面からこちらに複数の弓矢が放たれる。普段の癖かペレスの言葉にいち早く反応したリッドとモーリアが馬車の前に立ち弓矢を弾いた。

「ほう……やるじゃねーか」

言葉とともに現れたのは大剣を肩に担いだ上半身裸のガラの悪い男と弓や短剣を持った大勢の山賊たちだった。

――かなり数が多いな、三十は越えている。

山賊の頭と思われるガラの悪い男が前に出て剣をこちらに向ける。

「俺達はここを拠点としている山賊だ。命が惜しくば金目のものと、あと女を置いていけ」

男がそういうと後ろの山賊たちが武器を構える。

「み、み、皆さんよろしくお願いします!」

そういうとコールマンは馬車を登ってきた山道まで走らせ後退し近くの岩陰に隠れる。

「行くぞ皆!山賊を蹴散らせ!」

ペレスの言葉で冒険者と山賊たちがあいまみえる。

それぞれ初めに組んだパーティーで連携しながら戦っていく。

ソロのメンバーも多いさながらここに来るまでにしていた魔物狩りのおかげかどのパーティーも連携がかみ合っている。

だが俺とドリスのチームは上手く行ってるとは言い難い、ドリスが前に飛び出しすぎていて俺の声も援護も届かない場所にいる。

――クソ……仕方がない、

ドリスなら山賊相手に後れを取らないだろう、そう考えた俺は代わりに苦戦しているパーティーを中心に石を投げ遊撃を開始する。

――ちと分が悪いな。

初め聞いていた情報よりも相手は手練れが多い、それに数も多く地形にも慣れているせいか前衛はかなり苦戦している。

そしてこちらが後ろから援護していると一部の敵が回り込んできた

「しまった敵か⁉」

気づいてきたときにはもう遅く回り囲まれている。俺はすぐさま閃光弾を取り出そうとするが背後から敵の刃が襲い掛かる。

「死ねぇぇ!」

俺はすぐさま振り返り左手で剣を防いだ。

「なんだ……こいつ?」

手で剣を止めたことに敵は驚いている。

今俺の左手にはアルに鋼の硬さを誇るオルメニクスの素材で作ってもらった手袋をしている。

俺はそのまま手で剣を弾くと右手で煙球を投げ隙を作り相手に最近買ったエポルカで一番高い棍棒を顔面にお見舞いする。

――ふう……

何とか襲ってきた敵を撃退するも全体的な戦況はかなりやばい状態だ。

特に向こうの頭の男はかなりの手練れでモーリアが相手をしているが押され気味だ。連携自体はは悪くないがやはり、ペレスの指示がない分いつもより動きが悪い、まさかこれほどの相手だとは思ってもみなかった。

俺が再び遠距離で敵を攻撃していると前衛にいたドリスが後ろに後退してきた。

「ドリス⁉何かあったのか?」

「……少しまずいことになったわ」

その言葉を聞いて少し動揺する。

ドリスほどのスキルを持つ冒険者が身を引いてくるとはただ事ではないはずだ。

「剣がすっぽ抜けて崖に落っことした……」

――ドジっ子かよ!

クールな口調のドリスから聞いたドジっ子発言に心で突っ込みを入れる。

だが今はそんなこと言ってる場合じゃない、それにドリスには魔法もある。

「なら、魔法で攻撃してくれ」

「わかったわ」

そういうとドリスは目を瞑りは両手を地面へとむけて重ね魔法を唱え始めた

「大地で眠る炎の王よ我は天からの使いなり……」

その言葉と共に地面に赤い魔方陣が出現する。

その魔方陣を見て戦闘中の敵味方が動きを止める。

「天に反する因子を裁くため今その力を解き放て……」

徐々に地面から熱が帯び始める。

「やばい、この魔法は上級魔法だ⁉野郎ども、ずらかれ!」

「こ、こんな魔法が使えるやつがいるなんて聞いてねーぞ⁉」

山賊たちが戦いをほっぽりだし一目散に逃げだし始める。

――すげえぇ⁉これが上級魔法か

まだ唱えているだけだが地面に熱さを感じ始めどれだけ強いかが伝わってくる。

そしてドリスは最後の一文を唱える。

「あふれる炎は岩をも焼き尽くし大地をも焦がす……その姿、魔獣となりて現わさん」


「イフリート!」

その言葉と共にドリスが敵方向へ人差し指を前へ突き出すと身体からまがまがしい黒い炎があふれ出す

そしてその姿はまるで魔獣のような姿形に変わっていく。

姿を変えた炎は咆哮のような唸り声をあげると

ドリスの指さした方向とは全く違う、上方向へと飛んでいき、そしてその後、姿を見せることはなかった。


…………


敵が逃げ去り一応窮地を脱した俺達にとてつもなく気まずい空気が流れこの戦いの戦場となった山頂にはひと時の静寂がさえわたる……

そしてドリスはこちらに振り向くと小さな声で囁いた

「言ったでしょ?戦闘に必要なのはいかにスキルをうまく使いこなせるかって……」


……

あまりの出来事に言葉が出ない

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