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集団クエスト

「そっちに行ったぞ!」

町の北側にある広大な草原が広がる大地にゴーグルをつけた弓使い《シューター》ペレスの声が響き渡る。

「リッド!モーリアは前後から挟み撃ちで攻撃し、レッグは魔法で援護しろ!」

ペレスの指示にリッドと呼ばれた赤髪の若き剣士が前進し、屈強な槍使いモーリアが後ろに周り込む、そして小柄な魔法使いレッグが魔法の準備を始める。


標的は大怪鳥、ククール。討伐ランクDの体長2メートルを超えるカラスの姿をしたモンスターだ。


基本的に人間に危害は加えないが、光るものに目がなく、よく町に来る商人達が金目の物を奪われる事件が多発していたので討伐依頼が出されていた。


ククールを正面からリッドが切り付け、敵が避けた直後に後ろからモーリアが槍を連続で突き出す。

敵が空に飛び逃亡しようとするとレッグが火の魔法で攻撃し、ペレスの弓で撃ち落としにかかる。

ククールはかろうじて4人の攻撃をかわすとそのまま遠くに飛び立った


「キド!出番だ!」

「あいよ」

ペレスの声に返事をすると俺はボールを袋から取り出し。投球フォームを構える。


――狙うのはでかいカラス……


俺はふとかつて試合中に鳩にボールをぶつけた投手の事を思い出しフフっと笑う。


――イカン、集中集中……



俺は再び集中するとどんどん小さくなっていく巨大カラスの後ろ姿目がけ腕を振りぬいた。

カラスとの距離は推定130m、更に動いてるのでどんどん離れていき、

普通ならまず届かないだろう。


だが俺の投げた球はアルに作ってもらった特性ボールで距離が遠ければ遠くなるほどスピードが上がっていく特殊なボールだ。俺はこの球を野球の決め球の名前にちなんでウイニングショットと名付けた。

ウイニングショットは回転に風を巻き込みどんどん加速する。

そのスピードは最早銃弾レベルにまだ達して、そのままククールの身体を突き抜けた。


身体を貫かれたククールは白目になりながら息絶えそのまま地面に落下する。


「……すっげえ」

「よくあの距離を狙って当てられるもんだ。」

「ああ、全くだ」

落下していく鳥を見ながら仲間たちが次々と俺に賛美の声を上げていく……


だがその声は届いてない。

俺は今、投げたボールを拾いに必死で広大な草原を走っているからだ。


――効率悪すぎ!



――ギルドの酒場


「皆、グラスは持ったか?それじゃあかんぱーい!」

ペレスの音頭と共に5人がククール討伐依頼達成の祝杯をあげる。


「……プハッ、やっぱクエストの後の酒が生きて帰ってきたことを実感させてくれるぜ!」

酒を一気に飲みほしモーリアが上機嫌に呟く。

そしてそれぞれも酒やジュースを飲みながらがやがやと騒ぎ出す。


改めて紹介する

今日一緒にパーティーを組んでいたメンバー

革の帽子とゴーグルがトレードマークの弓使いの《シューター》ペレス。

ギルドランクはCで年齢は22歳、このパーティーのリーダーをしているさわやかな好青年だ。

仲間からの信頼も厚くこのメンバーをうまくまとめ、戦闘では指示を出す。


次にこのメンバーの切り込み隊長のリッド。

ランクはD。髪は赤色の短髪の片手剣を扱う剣士で年齢は16歳と若く結構なお調子者だ。そのせいでまだ危ういところがあるが、正義感あふれる行動力と修行に対して真面目なところは好感が持てる。


次が殿を務める槍使い。モーリア、

まるでプロレスラーを訪仏させる強靭な肉体と威厳あふれる無精ひげとは裏腹に心優しい青年だ。

見た目の老け顔に比べ年齢は25歳と若くペレスとは幼馴染に当たる

ただ戦闘になるとその見た目通りの怪力と槍さばきを発揮する。


そして最後は魔法使いのレッグ年齢は15歳

ランクはD。小柄な体に眼鏡とそばかすと言った見た目通りのおとなしくて少し気弱な少年だ。

しかし戦闘では初級魔法を使いパーティーのサポートをうまくしてくれる頼れるメンバーだ


アルとの冒険からもうすぐ一か月、俺は今、このメンバーと一緒にクエストを行っている。

……と言っても正式にパーティーに入ったわけではない。


あの戦いの後、俺はギルドから正式にオルメニクス撃破の確認通達が来ると

1000000万ギルの報酬とDランクの昇格を得た


初めはとてつもない報酬額とランク昇格に戸惑っていたが本来ならこの倍くらいの報酬を剣聖に払う予定だったらしく。ギルドとしては安上がりな方らしい。この報酬をアルと二人で山分けして

俺はこのお金で宿代として払おうとしたが。お人よし夫婦は何かのためにとっておけとお金を受け取らなかった。


この1件で俺は一気に知名度が上がり様々なパーティーから勧誘を受けることとなったが正式に加入はせずすべて臨時加入の助っ人としていろいろなパーティーとクエストをこなした。

おかげで今いる酒場の大半は顔なじみの相手ばかりだ。今でも俺をブサイクやオールG呼ばわりする奴はいるが初めのころのように悪意はなく親しい人に向けたあだ名のようになっていた。


そして今いるこのパーティーからは定期的に助っ人依頼とパーティーの勧誘が来ている。

実はこのパーティーと俺が前に決闘で倒したウイグルのメンバーとは少し因縁があるらしく

俺がウイグルを倒したのを見て俺の事を気に入ってくれていた。


俺達はそれぞれの食べ物をほおばりながら今日の戦いについて振り返っった。


「リッド、お前は少し大振りが目立つ、もう少し片手剣を活かした戦いを身に付けろ」

「んなこと言っても気が付いたら大振りになってて……。」

「それを直せと言っている。レッグはもうちょっとキビキビ動くように」

「はっはい」

ペレスが若い二人に説教を行う。

そして今度は俺の方を見る。


「……助っ人だからって気にすんな、なんか気になることがあったなら言ってくれ」

「いや、特にないよ、今日はお前に助けられたからな。」

「うむ、今日の相手を倒した攻撃、見事だった。」

「ああ、あんな遠くから普通あてれねえよ。」

「うん本当に、すごかったよ」

皆が俺の活躍を絶賛してくれた、はっきり言って歯がゆいが少し誇らしくて鼻をかく。

俺もここに来てから随分と戦闘をこなしたせいか投球の制球力もスピードも一段と良くなり、アイテムも使いこなせるようになっていた。


「なあ、どうだ?これを機に正式にパーティーに……」

「却下、前にも言ったはずだ。」


俺は4度目の勧誘にも首を縦に振らなかった、一応これには理由がある。

確かにこのメンバーでこの先戦っていくのも楽しいだろう。

今はここの生活も慣れて前の世界の生活に引けを取らなくなってきている。

だが、俺の本来の目的は女神の魔法解除と魔王討伐、クエストをこなしてきままに生活しているこのメンバーを危険な魔王討伐には誘えない。


……というのは理由の一つでもう一つ違う理由があった。


「くそう……またダメか……何が理由だ?」

断られ悔しがるペレスの横からリッドが口を挟む

「そんなの決まっているじゃん!女がいないからでしょ」


思わずその言葉にメンバーから目をそらす……なぜなら図星だからだ。


そうもう一つの理由は女の子とパーティーが組みたいからだ

俺はアルの冒険で女性との冒険に興味をなくした、だがまたもや憧れを抱かせる事件があった

それはとあるパーティーから助っ人要請が来たとき。


俺が組んだパーティーは男一人と女三人のパーティーだ

アルとは違い大人の魅力のある三人の女性にもしかしたら一人くらい仲良くなれるんじゃないか、そう思っていた。だがそれは叶わなかった……


三人ともその男の嫁だったのだ!


俺は重大なことを忘れていた!この世界は一夫多妻制を設けていることに!


俺はその後、いちゃつく4人の邪魔をしないように空気のように居座っていた。


――うらやましすぎる!


俺は再び女性とパーティーが組みたく様々な女性に言い寄ったが女性は大概が俺を毛嫌いしている。

最終手段のアルはどこかへ修行に出かけたらしくしばらくは会っていない。


例え罵倒されようがゴミを見る目で見られようが構わないって!俺は女性とパーティーを組みたい!そう思っていた。


「女……そうなのか?」

ペレスの質問に黙秘券を行使する。


「う~ん、なら女性を一人入れるか?」

「パーティーを組めるのは5人までですよ?」

「大体入れてどうすんだ?」

メンバーの話し合いに割り込まないようにテーブルに出された鶏肉に手を出す。


「でもさあ?どうやってキドは女性とパーティーを組むつもりなんだ?」

――グサッ

リッドのその言葉が俺の心に刺さる


「そうだな……キドは女性陣からはパーティーを組むことを拒まれている」

――グサグサッ

「性格も実力もいいのに顔だけであそこまで嫌われる奴も珍しいよな~」

――グサグサグサッ

俺の心は棘だらけだ


「じゃあ集団クエストとかは?」

――ピクッ

レッグの言葉に耳が反応する。


集団クエストとは

ギルドから要請された大掛かりなクエストで上限までの人数ならパーティー問わず何人でも参加できるクエストだ。


「集団クエスト?なんでまた?」

レッグの言葉にモーリアが反応し、俺も聞かないふりをしてばっちり耳を寄せる。


「え?だって集団クエストってパーティーメンバーで来る人も個人で参加する人もいるでしょう?そこで一緒に戦った時に相性とかが良くてそのままパーティー組む人もいるんじゃない?」


「なるほど……」

レッグの説得力のある言葉に言葉にみんなが頷く。


そして視線は俺の方に向けられた

「……ということらしいぞ、どうするんだ?」


もうみんなにばれている……ならばはっきり言いだすしかない


「……でもさあ……ほんとに行ってもいいのかなぁ……」

と思ったが俺は少し心の中でためらいが生まれている


「は?なんでさ?」

「だってさぁ……そんな女の子目当てでクエストに参加するのって……依頼主に失礼じゃないかなぁ?」

俺は今ちょうど女の子目当てや野球部員目当てでマネージャーになろうと野球部に入ってくる奴がいたことを思い出した、当時は怒ったが今やろうとしていることは同じではないだろうか……そう思うと躊躇してしまう。


「いや、別にいだろそれくらい、」

「そうだよ、皆してるよ、多分だけど」

「でもなあ……」


踏み出せない俺にしびれを切らしたのか勢いよくペレスが立ち上がった。


「ああもう!じゃあ全員でそのクエストを受けよう!女の子目当てで!」

ペレスの言葉に思わず目を細める


「ああ、もちろんいいぜ!女の子がかぶったら早いもんがちな!」

話にリッドが乗っかる。


「ぼっぼくの……せっかくだから」

もじもじしながらレッグが手をあげる


「うむ、そうだな、おれもそろそろ2人めの嫁が欲しいと思っていたところだ」

話に合わせてモーリアが爆弾発言を投下する


そして皆が俺を見つめる

「さあ、お前はどうする?」


……みんなの言葉に俺の勇気をふさいでた壁が崩れ始める


――俺はいい友を持った。


「ああ、行こうか集団クエストを受けに!」

決意を固めた俺達はゆっくりと受付のところまで歩いていく……









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