モテる話はやはり盛ってますね……
「エポルカから外に出て、大体1時間弱くらいで着きますよ、ここら辺の魔物は対して強くないのでグリズリー目的に集中すれば大丈夫ですよ……どうしたんですか?キドさん?町を出てからずっと顔が醜いですよ?」
――アルの言葉に突っ込む気力も出ない……
俺は唯々後悔していた……
魔法使いというキーワードと女の子と冒険という憧れのシチュエーションに魅了されかつての悪夢と再びあいまみえることに
グリズリー……俺が初めてここにきて1番初めに遭遇した敵だ……
大人の強戦士が大人数で戦っても勝てず一か八かの攻撃で何とか倒せた相手
当時は生き残るためにがむしゃらに戦っていたが今度戦って勝てる自信なんかない。
しかも子供二人でなんてなおさらだ。
そしてついつられてしまったこのシチュエーション……
想像していたものとは遥かに違うものだ
女の事二人きりで冒険と言っても
アニメの主人公みたいにモテるわけでもない、所々で定期的に罵られるだけだ。
しかもこいつ意外と毒舌だ
そして憧れていた魔法も……先ほど敵と遭遇した際に行われたのはいたってシンプルだった
「えいっ」
アルのその一言で放たれた魔法は敵の一つ目ラビットを瞬時に燃やし尽くしてしまった
「そんなけ?なんかこう……呪文とかないの?」
「ありませんよ?少なくとも私の魔法では唱えません」
アルは淡々と語る
――こんなけのために引き換えにした戦い……
そう思うとまた溜息をついていた
その姿を見ていたアルがさすがに心配そうにみる
「そんなにグリズリーが嫌なんですか?」
「だってあのグリズリーだぞ?あの大熊だぞ?」
再びあの戦いの光景がよみがえる
「大丈夫ですよ、さっきの戦いでもしっかり戦えてたじゃないですか。」
「さっきの敵とはわけが違うだろ。!5メートルの化け物だぞ?剣も弓も効かないし……」
「いえ、そんなに大きくないですよ?弓も剣もしっかり効きます」
「え?」
アルのあっさりした否定の言葉に思わず聞き返す
「グリズリーの体長は大人でも大体3メートルくらいです。そして今回狙うのはまだ成長途中のやつだから
大体2メートルくらいのやつですね」
――……はあぁぁぁぁぁぁぁ⁉
その言葉に耳を疑ってしまった
「だって俺が戦った時は……」
「戦った相手が異常だったんですよ一体どうしたらそんな熊と戦えるんですか」
ひょうひょうと言うアルの言葉に気が抜けるとそのまま呆然と立ち尽くしていた。
「どうしました?早く行きましょう」
「あ、ああ」
俺は一気にかが抜けるふらふらと足を前に進めた
「それにしてもなかなか面白い戦い方しますね。」
アルが先ほどの俺の敵との戦いについて振り返って言った。
俺が対峙した敵は大きなモグラのようなモンスター、オオグリというやつだった。
俺はオオグリが穴に掘ろうとしていた時に石材を数個ぶつけて怯んだ直後に背後に回り棍棒を1発食らわせ仕留めた。
「まあ、店でも言ったが俺はああいう戦い方しかできないからな。」
「でもしっかり攻撃はできてましたし、何より投げるのすごく速かったですね。」
俺は投げたスピードにアルは感心していた、この世界に来てから少し力が上がったのか以前よりもも早くなっていた気がする。石材でも160は出ていたのかもしれない。
「まあ、あれだけのために頑張ってきたからな」
俺は手のひら中にできた豆とボロボロの爪を見せてみる、これは今まで俺がやってきた
何万回という素振りと投げ込みの証だ。
「すごいですね……手ががボロボロじゃないですか、顔の横に並べられるとどれが顔かわかりませんよ?」
――……こいつなかなか鋭い棘のある言葉を放つな
「しかし一体どうしてそんなになるまで投げる練習なんかしたんですか?」
「ああ、俺は野球してるからな」
「ヤキュウ?」
アルが初めて聞く言葉に首をかしげる
――ああ、そういえばこいつには話してなかったか
俺はアルに今までの経緯について話し始めた。
話を聞いたアルは未だ信じられないという表情を浮かべひたすら唸っている
「異世界から来たなんて信じられないけどこれで辻褄が合ってくる……ムムム、……わかりました、その話、信じましょう、ただしキドさんがモテモテという話だけは信じられません!そんな醜い顔で!そんなひどい顔で!そんなブサイクな顔で……イタッ!」
俺は顔を罵り続けるアルに対し思わず頭にチョップを食らわした。
「すみません、言いすぎました……しかし、そのモテる話はやはり盛ってますね……もてるだけに……」
ピシッ!ピシッ!ピシッ!
俺は再びアルの頭に無表情のまま3度のチョップを食らわす
「うぅ……まあ、しかしあれほどの速さで投げられるなら。これから作る予定のアイテムも威力を増すと思いますよ。作り甲斐があります。」
彼女は頭をさすりながらそういうと少しうれしそうに意気込んだ。
「なあところで思っていたんだがそれって武器認定されないのか?」
俺はこの世界の武器のアイテムの分別の仕方に疑問を思っていた。
何故投げるのはセーフで武器での攻撃はダメなのか?
投げるものでも殺傷力があるものは武器ではないのか?
そこの判断が分からなかった
「されませんよ?私が作る予定のものは投げることをメインにしたやつで直接的じゃないですからね」
「そもそもスキルって何なんだ?」
これも思っていたことだ。初めは異世界なら当然だと思って気にしていなかったが
武器とアイテムの判別するためには知っとかなければならないことだと思った。
「そうですね……では少し説明しましょう。まずスキルというのは簡単に言うと人間だけが持つ特性なんです」
「特性?」
いまいちぱっとこない
「この世界では大抵の生き物が「特性」という種族の特徴的な性質を持ってます……例えば水をかぶることで巨大化するモンスターやピンチになると体が硬くなるモンスター……このように人間も武器を手にすることでステータスとは別に力が変化したりするのです。」
「つまり今の俺は武器を使おうとすることで能力が低下しているということ?」
「まあ少し違いますね変化するのはその武器を持つことに対する力だけです。ランクの高い人はそのランクの武器に対し体が適合しその武器を自分の手足のように動かします。逆に低い人は体が武器を拒絶し、武器を使うことができなくなります。攻撃スキル以外のスキルでも同様です。ちなみにこの武器の適合力は遺伝で決まると言われています。」
「適合力ねぇ……なら体が途中で武器と適合し始めたりするとスキルは上がったりするのか?」
「もちろんしますよ、大抵の人は皆そうです。」
「え?そうなの」
予想外の言葉に驚く
「なら俺も頑張ればスキルが上がるのか……」
「他のスキルなら大丈夫ですけど武器スキルは難しいと思いますよ?適合させていくには言葉通り体で覚えさせる……つまりその武器を使い続けなければならないのですから。」
「つまり……武器をこれっぽっちも使うことが出来ない俺はスキルを上げることはできないと言うことか……」
ショックを受けてる姿を見てアルがクスリと笑う
「まあ、このようにしてアイテムと武器の判断も体が勝手に判別するんです。アイテムと武器の認識の判断はやはり殺傷力だと言われてます。体がものに触れ、これに殺傷能力があると判断すれば武器として判断し、なければアイテム扱いです。」
「でも石材もやり方次第では殺傷力があるんじゃ……」
「はい、多分それを持って殴ろうとすればスキルは発動しますよ、ポイントは直接かどうかです。
どの武器も全部攻撃するときは手に持って攻撃……つまり体に触れています、それに対し、投げて当てるという行為は手から離れた後、相手に攻撃したことになるのでスキルは発動しないのです。だから投げるという方法でならスキルに関わらずどんな武器でも使えますよ。まあ普通の武器はそんな使い方しても役に立ちませんけどね」
「なるほどね、つまり簡単に言うと相手に攻撃という行為をしなければ武器は使えるんだな?」
「まあ、そういうことになりますね」
「フム……」
この情報はでかい……やり方次第ではこの先普通の武器でも戦えるようになる。
「そして今回作ろうとしているのは投げることに特化したアイテム……つまりスキルの影響が全くない、投げるために作る武器です!そしてこれは投げることを極めたあなただけにしかうまく扱う事が出来ないものです。まさに選ばれしものしか使えない武器……そしてこれは使い方によってはどんな武器よりも強力かつ便利な武器になります!」
彼女は力強い口調で言い放つ。
――俺にしか扱えない武器……
彼女の言葉に思わず胸が高鳴る……
「どうです?この勢いで本当の勇者を目指しませんか?」
もしかしたら彼女の口車に乗せられてるだけかもしれない……だがその言葉がどこかで眠っていた俺の厨二心を目覚めさせてしまった。
「勘違いで呼ばれた勇者が本当の勇者になる……面白いサクセスストーリーじゃないか」
訳の分からん言葉を言い始めた俺に対し彼女もノリノリで対処し始めた
「では行きましょう醜い勇者様……世界の常識を覆す武器を作るために……グリズリーとオルメニクスを倒しに……」
何か倒す相手に聞き覚えのない強そうな敵の名前が聞こえたがノリノリの俺にはもはや取るに足らないことだった。
一応頑張って説明を書きましたが
わかりにくかったら編集します