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奴は俺を知らない

エポルカの町中のちょうど中心にある広場は毎年祭りや行事に使われるほどの大きな広場で、普段は毎週日曜日にバザーを開いていて多くの人々でにぎわっている。

 しかし今日は平日にも関わらずバザーや祭りにも負けないほどのたくさんの人々が集まっていた。

それはこの広場で行われる、決闘を見るためだ。

 そして俺は今、人だかりでできた円の中心に立っている。


「へえ、あいつが今日ギルドで騒がせたっていうオールG男か……」

「見た目も実力通りのブッサイクな顔だな」


 周りの人たちはオールGで知れ渡った俺に興味を示してるようだ。

 当然だがいい意味で興味を持っているわけではない、

 オールGとはいったいどれほど酷いんだろう?一体どうやって戦うんだろうと

面白半分で笑いに来たのだろう。

 ただ俺はそれでもいいと思っている。興味を示してくれるなら。


 少し遅れて向こうからウイグルがやってきた。


「随分とギャラリーが集まったもんだなぁ。まあオールGなんてなかなか見れないからな」

 ウイグルが横目で周りを見回しながらこちらに向かって来て。

ちょうど向かい側に立つとそれに合わせて周りから声援と野次がまじりあった声が聞こえた


「ウイグル―、少しは手加減してやれよ!じゃないとすぐに終わっちまうからな!」

「そのブサイクの顔をボコボコにしてすこしはカッコよくしてやれよ」

「オールG!俺はお前を応援してるぞー!」

「そうだ、精一杯抵抗してみろー!」


声援の中には俺にあてた声援も適度にあった。

俺への同情心なのだろうが、ウイグル自身を快く思っていないやつも多々いるのだろう。

「おいおい、こんなブサイクに声援送るバカもいるのかよ……」

ウイグルがギャラリーの方を見てつぶやく。

「まあ、一番のバカはお前だけどな、お前、俺が一体誰だかわかって戦いを挑んでいるんだろうな?」


――俺が誰だかわかってるかって?


――もちろん知っている。


 俺はこの男、ウイグル・ワーグナーを知り尽くしている。

ギルドランクはCランクで得意スキルはBの剣スキル。使う武器この町で3000ギルで売っている両手剣のモスクリ

魔法も少しは使えるようだが基本は剣のみで戦う。得意技は剣を上段に構え振り下ろして放つ真空波。 

 実力、名声ともどもこの町のギルドでは上位に入っている。普通にやればまず勝てないだろう……


だが俺はやつを知り奴は俺を知らない。

 弱者が強者に勝つためにすることは何か?それは野球でも決闘でもどんな戦いでも同じ、

それは相手を知ること、情報は戦いにおいての最大の武器だ。

 この世界では今のところカメラのような技術は見当たらなかったので

俺はグルドナにいた時に度々行商人についていってはこの町のあらゆる人物の事を調べ上げていた。

 そしてその中でも俺にギルドで絡んできそうな輩を絞り重点的に調べ上げた。その中でもこのウイグルは俺以外にも普段から度々新人冒険者に絡んでは戦いを挑み、何人もの新人冒険者をつぶしている。

ウイグルは絡んでくる男の筆頭候補だった。


 そう、このウイグルが絡んでくるまでが俺の計画だ。

 普通に行っても俺のスキルじゃまず冒険者にさせてもらえない。

 だからどこかで実力を見せる場が必要だった。

 ……ちなみにもし誰も絡んでこなかった場合はこちらから難癖つけて絡む予定だった。


 俺とウイグルのにらみ合いが続いていると人ごみの中から立会人と思われる鉄の鎧を着た兵隊がやってきた。どうやらギルドが派遣してくれた傭兵らしい。


「両者ともご準備の方はよろしいですかな?」

 立会人の言葉に二人が頷く


「ルールは時間無制限の相手が再起不能、もしくは負けを認めるまでの1本勝負、それでは、始めてください!」

 ゴング代わりの立会人の合図に周りから一斉に声が沸き上がる。


 俺は始まると早速マジックトートの中からボールを1つ取り出した

これは特に大したものじゃない、ウイグル戦で使う予定で作ったコショウ入りの特製ボールだ


 奴の倒す算段はできている。

ウイグルは新人とやるとき……つまり格下の相手との戦い方はどれも同じだ。

まず相手に隙を見せて攻撃させ、それを剣でガードすると相手の武器を剣で弾き、そこからは一方的に暴力を奮う。相手の自信とプライドもろもろ壊すつもりなんだろう。


「なんだ?それをぶつけるつもりか?面白いあててみろよ」

ウイグルはボールを見るなり手を広げ隙だらけをアピールするかのように挑発してきた


――これで勝負は決まった

 予定通り……いや、予定以上の奴の行動で勝利を確信した。まさか手を広げてまで隙を見せてくるとは思いもしなかった。


 離れている距離はおよそ10m。距離的には遠くはないが向こうは避ける自信があったのだろう


 だが奴は俺を何も知らない

 俺のステータスを知らない

 俺の投げる球の速さを知らない

 俺の制球力を知らない。

 俺が異世界から来たことを知らない。

 異世界には投げることの関した技術があることを知らない。


 奴の敗因は完全な油断と俺を知らな過ぎたことだ。


 俺は1歩後退するとステップを踏みウイグルの顔をめがけコショウ入りボールを投げ込んだ。


ボシュッ

向こうが驚く間もなくボールが当たると中のコショウが爆発しウイグルの顔を大量のコショウが襲う。

ウイグルが思わずコショウの痛みに目を瞑ったその瞬間俺はウイグルのそばまで駆け寄った

「な、速っ⁉」

向こうは俺の素早さに驚いている。

この世界の大半はステータスとスキルは比例しているらしいからな。ステータスも低いと思ったんだろう。

俺はそのまま袋から箒を取り出した。

なんてことはない、ただの箒だ。刃がついてるわけでも鉄でできているわけでもない、

ただ掃除するために存在するただの「アイテム」 武器スキルの影響は受けない。

俺は箒を持って構えるとそのままウイグルの顔めがけて振りぬく。

そして箒が顔に当たる瞬間マジックリングを使い箒を棍棒に替える。

ここまできたならもう動作はいらない。勢いに任せた棍棒が相手のを顔を打つ。

――イメージはバックスクリーン……

――いや、ムカつくやつの顔面を殴るイメージで……


ドカッ!

ウイグルの顔を砕いた音と感触と共に俺の心が爽快感で満たされた……



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