このなんちゃって女神がああああああああ!!
「あの……あまり気を落とさないでください」
女神が申し訳なさそうに言う
「気を落とすなって?ここの世界と俺相性最悪だぞ?」
この世界と俺の相性の悪さはもう嫌というほど体に染みついてる
剣も使えない、弓も使えない、魔法も使えない、石をぶつけるかフルスイングをするでしか攻撃できない、おまけにブ男扱い……この状態でどうやって魔王を倒せと?
「た、確かにもうあなたを元の世界に返す力はありません……でも残りの力を少しでもあなたの冒険の役に立つようにとあなたに力を与えたんです」
「え……力を与えた?」
その言葉で思わず顔を上げると、女神は優しく微笑む
「はい、実はあなたを雪山に落としたときにはもうあなたに与えてたんですが。何かこの世界に来て変わったことに気づきませんでしたか?」
――こいつ今完全に落としたって言ったよな。
だが今はそんなことはどうでもいい。もし本当に俺に力を与えたって言うならばまだ使っていない力があるはずだ。
俺のスキルは最悪だがステータスは普通より高い、その与えたっていう力をうまく使えば十分やっていけるはずだ。
絶望の状態から希望が湧いてきた。
「その力って戦闘に役立つことか?」
「はい、戦闘ではとても重要なものですよ。それとは別にこの世界の生活にも役立つ力です。」
女神は少し自慢気に言う。
――でもなんなんだ?戦闘の際には何も感じなかったが。
「で、いったいどんな力をくれたんだ?」
食いつくように聞き入る。
「はい、実はですね、余った力で戦闘で重要なあなたの武器スキルのパワーアップとどんな相手でも虜にする魅力を与えたんです」
――ピキッ
女神の言葉を聞くと同時に俺がこの世界で感じていた不可解に思っていた問題が脳裏をよぎった。
全く使えないスキルと、みんなからブサイク扱いされていること
そしてこいつはドジっ子女神……
確認は取れていないが確定的だ……
――こいつが原因だ
俺の心情とは裏腹に女神は話を続ける。
「この世界ではスキルというのは戦闘ではなくては欠かせないものなのです。高ければいろんな武器が簡単に使えます。
そして魅力の力ががあればいろんな方が力になってくれますしモテモテにもなれます。この世界では一夫多妻制度が設けられていますので、すごく欠かせないとは思いませんか?殿方はそういうの好きですよねえ?」
――一夫多妻制だと……⁉
余計に怒りがこみ上げる
「どうですか?これで少しはこの世界での……」
「……ってんぞ。」
「へ?」
「その力、効果が逆にかかってんぞ!」
「はい?一体なにをいって……」
首をかしげながら手帳を除いた女神がみるみる青ざめていく……
「ああぁ⁉逆の魔法がかかっているー⁉」
「このなんちゃって女神がああああああああ!!」
「なっ⁉」
心の言葉がとうとう声に出てしまう。
「じゃあ何か⁉今まで俺がこの世界で受けた最悪な現象はぜんぶおまえのせいなのかぁぁぁー」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ、今すぐ魔法をかけなおしま……あ⁉もう力がない⁉」
女神も涙目になりながらパニクッている
「クソッ!ならばせめてその魔法を取り除いてくれ?」
「ああ、それならば」
もし、今までのことがすべてこれが原因なら、女神の力を取り除けば本来のスキルに戻り周りの俺を見る目も元に戻るはず。
俺は解除の呪文を唱える女神を見守る
――落ち着け……落ち着け……
しかし呪文を唱える女神の体が透け始める
「ああ、時間が⁉」
「落ち着け、まだ時間はある!」
「は、はい」
俺の言葉に女神はいったん落ち着くと再び呪文を唱え始める。
すると俺の周りに白い光を放つ魔法陣が浮かび始めた
「我の力を与えし天の子よ……我の力をひとたび開放……」
女神がもう見えなくなりつつある
――大丈夫だ、落ち着け、まだ間に合う…
俺は自分に言い聞かせる
「ひとたび力を開放せ……へ、へ……」
「へっくしょん!……あ、」
――バッッカヤロォォォォォォォーーーー!!
まるで図っていたかのようなタイミングでくしゃみをした欠陥女神は
俺の周りの白い魔方陣を真っ黒に染め上げたあと、その姿が見えなくなるまで何度も頭を下げ続けた……
…………俺は恐る恐るスキルカードに目を通した……
ー
剣スキルG
打撃スキルG
乗馬スキルG
槍スキルG
魔法スキルG
弓スキルG
G
G
G
G
……オールGだ……
――終わった……今度こそ完全に終わった……
俺はそのまま肩を落とし膝をつきながらうなだれた
そしてこの状態を見てもう一つの事におびえる……
……2時間後
俺はいきしに通った道を倍の時間をかけて山を下りた……
歩いてる途中小さなモンスタ―たちが俺の足をポカポカ叩いていたがお構いなしで歩いてく……
山の入り口付近まで行くと人影が見えた。
オッズだ
俺はそれが見えると一度立ち止まり、そこから1歩1歩ゆっくりと足を進めていった。
――俺は今、どう見えているんだろう。
前の状態でいろいろ言われてたんだ、今はもっとひどい状態に違いない。
俺は深呼吸をすると何食わぬ顔でオッズの元へ寄った
「や、やあオッズ……」
「おう、どうだった?ドッジーナ様には会えたか?」
「え?あ、ま、まあな」
どこか様子がおかしい俺を見てオッズが首をかしげる
「どうした?おまえなんか顔が悪いようだが……」
グサッ
オッズの言葉が心に刺さる
――大丈夫だ、ただの言い間違いだ……言い間違い
俺がそう言い聞かせてると向こうからルウが手を振りながらやってきた
「キド様、お帰りなさい」
「あ、ああ、ただ今……」
「ルウか?どうした?」
「別に、キド様が見えたので声を掛けに来ただけよ?」
親子がやり取りをしている間、俺はまた心をなだめていた
――大丈夫だ、……何も変わっていないはず……
落ち着かない俺を見てルウが心配そうな声で言った
「どうしました?キド様?何やらお顔がブサイクですよ?」
「ん?」
「あれ?」
普通の話の内容から来た唐突な罵倒にオッズはもちろん言った本人も驚いている。
――……ボキッ!
俺の心が折れる音がした……




