第七話:とりあえず俺の言う事を聞いてくれ
さて夜が明けた。
モシャスという特殊体質が発覚してから様々な検証と技術の研磨を続けるおり、同級生及び先生の警戒のため焚き火場に戻った俺は早速居眠りをしていた見張りの生徒を文字通り叩き起こして見張りとは何たるかを力説し、再び検証に戻る。そして妖精に模力がどれくらい回復しているかどうか聞いて使えなくなるまで検証してから再び警戒に戻り別の居眠り見張りを叩き起こして説教……これを三回繰り返し、四回目に突入するかという所での夜明けである。
事前に妖精と話し合って決めた化かし時間まであと少し。皆が起きてから冷静に考えられるよう十時頃(どうやら時間の概念は同じのようだ)に姿を現そうというルカリオンの提案を却下し、まだ頭がぼんやりとしている夜明けちょい後くらいに来いとゲスな考えを巡らせた結果だ。
まあ、あえて妖精達には言わなかったけど、下手に頭が冴えている状態で事情を説明すると逆ギレされて協力関係を拒まれるという懸念もある。備えておくに越した事は無いだろう。
それにしても本当に気持ち良さそうに寝てやがるなこの見張り生徒。しばき起こしてやろうか。
いや我慢だ俺。ここで諍いを起こせばギスギスした雰囲気を持った生徒が話しに立ち会うことになる。そうすると作戦の成功率はグッと下がる。私情は慎め。
まあ、これから起こること全て私情みたいなもんだけど。
ちなみに、同級生と教師はバリケードの壁で男女を分けて眠っているらしい。流石にこの状況下で襲うような馬鹿はいないだろうと思うけど、壁があると思うことで安心出来るのも事実。
……その安心材料を構築しなければいけなくなった原因の一人はウチの専科にいるのだけど。
あ、イルトミルジス以外のアルミラージは自分の角を折った野郎の近くで丸くなって寝てるな。ちっ、豚に真珠だ。
お、何人か起きてきたな。女子の方も何人か一斉に起きているみたいだし、スマホでタイマーかなんか設定していたのか?
自前のスマホを取り出して確認。すると時刻は七時ジャスト。相変わらずアンテナは一本も立ってない。4GもWi-Fiも。
「おーう! 皆起きろー!」
大音量の音洩れと共に起きた大谷先生が大声で起床を呼びかけた。あんた見張りもせずに何寝てたんだよ。
……いや、俺が最初に見張りを叩き起こした時と寝ていた場所が違う。というより大谷先生の周囲はヒトの体が一定時間留まった形跡が無い。恐らく俺が警告しに来た時以外で定期的に起きて見張りをしていたのだろう。さりげない努力、良いと思います。
大谷先生の号令に従い徐々に起きていく同級生達。若い先生……野原先生も眠たそうに欠伸をしながらふらふらと起きてきた。おう、あんたもやってたのか。お疲れさん。
「点呼するぞー、いない奴は返事しろ!」
やがて同級生が全員起き上がった時、いつもの授業どおり大屋先生がボケて同級生全員が大小はあれ笑みを浮かべて反応する。うん、どうやら統率は取れているみたいだな。流石普通じゃない奴らだぜ。
「伊能はいるかー?」
「誰だ、伊能って?」
「そんなヤツ学校にいたか?」
「え……皆、何言ってるの?」
「そうだよ。ほら、昨日酷い演説をした……」
「一人芝居はやめろ! いるんだな、伊能!」
まあ、一番普通じゃないのは俺ですけどね。てへぺろ。
「は〜ぁ〜い! 皆のアイドル、ニシキちゃんです♪ ぶいっ」
「お前はほんっとうに多芸だな……」
人生を繰り返している俺を舐めるな。一歳の頃から発声練習してたからな。
……一時の拘りのためにとんでもないことを仕出かしたおかげだけど。
っと、そろそろ舐めとくか。
ジージャンの胸ポケットから一粒の飴玉を取り出して口に含む。正体はちょっとしたコネで手に入れた特別な喉飴だ。流石に複数の声音を使い分けるのは声帯的にNGだからな。日頃のメンテナンスは大事だと某変態グルメも言っている。
……そういえばこの飴の調達も出来なきゃヤバいんだよな。誰かのジョブを『薬士』にさせるか。この飴、成分配合変えると軽い薬になる(って聞いた)からな。多様性という面でも『薬士』なら説得も容易だ。
「とはいえ、伊能のおかげで場は解れたな」
え、硬くなってたのか?
むしろ嫌煙されてる気がするんだが……
「えへへ♪ クラスのアイドルニシキちゃんにかかれば……誰だ!」
八つ当たりに戯れを続けて和を引っ掻き回してやろうかと思った瞬間、俺の視界にあるものが映った。その重要性を瞬時に察した俺は未だ気の緩んでいる同級生と教師二人を差し置いて視界の先に居る存在へと問いを発する。
雰囲気が変わった俺の様子に何人かの生徒が冷笑を浴びせているけど他の同級生と教師は俺の視線を手繰って彼の存在へと目を向ける。冷笑を浴びせていた生徒もそれに釣られるようにそちらを見る。
そこにいたのは……
「皆さん、気を静めてください。こちらに害意はありません」
ルカリオンだ。
だけど、俺は警戒を緩めない。
「生憎と言葉だけで人を信じられるような人生を送ってきたわけじゃないんだ。あんたの正体と目的を告げてもらおうか」
演技だけど、その重要度故に心から入る。その為に俺は腰からナイフまで抜いてルカリオンに問う。
演技に集中するあまり敵意まで出ていたのか、ルカリオンは若干怯んだ姿を見せるも打ち合わせどおりの言葉を紡ぐ。
「ボクの名前はルカリオン。『妖精』さ。キミ達は異世界から来た子供達だね?」
妖精発言と訳知り発言に場が沸く。
「……その姿なら妖精っつうのは嘘じゃないだろうな。だけど何故俺たちが異世界から来たと分かる?」
「ボク達は、キミ達を救うよう神に使わされたんだ。キミ達の特徴を知っていても不思議じゃないでしょ? 伊能錦君」
「ッ!」
何故、俺の名を……的な驚いた表情を作っていっそうナイフに力を籠める。
「……キサマが神とやらに助けるよう使わされたのなら何故昨日の内に助けに来なかった? 異世界の知識があれば、あるいは俺はたった一人でじんめんじゅと戦わずにすんだかもしれないのに」
わざと皮肉っぽく訊ねる。
が、コレに謝罪付きで答えられれば同級生も教師も納得はしないかもしれないけど理解はするだろう。
「ごめんね。でも、ボク達の神は万能じゃなくて、キミ達が出現した時に予知が発動して初めてキミ達の事を知ったんだ。ボク達はそれから今までずっと休み無く飛行してきたんだ」
見れば妖精達はどことなく疲れたような顔――当然俺のメークアップだ。炭で簡単に再現した――でこちらを見ている。
どうやら休み無くっつうのは本当らしい。という表情を作りながらも未だ疑う体勢を崩さない。
「…………」
「伊能、疑るのは良い事だが、その妖精は本当の事を言っていると思うぞ」
ここで大谷先生が口を突っ込んできた。正確には誰かが口を突っ込むまで待っていた。
「……そうですね。神という単語が全能的なんで早とちりしてたみたいですね」
「分かってもらえたかな?」
ルカリオンのおずおずといった態度に同級生がほんわかした空気を出し始めた。まあルカリオンって見た目が可愛い系だからな。
よし、心を掴む事に成功した。
「それで、ルカリオンとやら。俺たちを救いに来たと言ったな? それは元の世界に戻してくれるという意味か?」
俺の言葉に同級生の表情が喜色に包まれた。
悪ぃな。その希望は叶わない。
「ごめん、本来の力ならボク達の神はキミ達を元の世界に返してあげられるんだけど、今は訳あって養成しているんだ。だから元の世界にはまだ返してあげられない」
しょんぼりとしたルカリオンに怒るどころか逆にフォローしだす同級生。お前ら、今詐欺に遇っているぞ? こっちの神族は殆ど『魔王』に駆逐されたそうだし。『神』なんて言わずもがな。
「ハッ! だったとしたら態々その程度の事を伝えるためだけに来たのかよ?」
あえて空気を読まない俺の発言に可愛らしい敵意を向けてくる同級生十数名。気持ちは分かるぞ。
まあ、段取りだから勘弁してくれや。
「ううん。キミ達には、ある重要な知識を授けに来たんだ」
「それって魔法か?」
同級生の一人が俺に先んじて質問した。まあ、シチュエーション的にはそうなるわな。たぶん異物たる俺を制しておきたいという無自覚故だろうけど。
「似たような物だよ。この世界では『ジョブ』って呼んでるけど」
ルカリオンの言葉で同級生の中に波が発生する。どうでもいいけど『妖精』って自動言語適用の特性でも持ってるのか? 今まで問題にしてなかったけど普通に日本語喋ってるぞ。それともこっちでは日本語が標準語なのか? 可能性は無きにしもあらずだけど……いや、都合よく考えるな。これから会うヤツらは基本的に全員言葉が通じないと思え。
「『ジョブ』は想いの結晶。何かになりたい、何かをしたいと強く想う事で世界に自分を認めさせる。そうすると、自分の想いに応じたジョブが使えるようになるよ。例えるのなら魔法が使えるようになりたいと想った人は『魔法士』になる、とかね」
同級生の中にどよめきが走る。
そりゃそうだ、この能力のキモは『想いの丈により能力が決まる』って所だ。夢を諦めなきゃならない、もしくは自分には能力が足りないと嘆いていた仕事が想うだけで手に入ると言われたようなもの。普通に魔法がチート級に使えるとかより遥かに喜ばしい朗報なのだ。
だけど、ここで無秩序にジョブを生み出されては困る。
「って事は、スマホやタブレット、それにパソコンなんかのエネルギーが補充できるような能力が使えるようになるって事か!?」
俺の言葉にほぼ全ての同級生が反応を示した。
まあ、電波とかの関係で連絡は取れないだろけどさ。
「その、すまほとかぱそこんっていうのが何かは分からないけど」
嘘吐け。そういう存在くらいは知ってるだろうに。
ルカリオンにはペテン師の才能があるな。
「エネルギーを補充するジョブならあるよ。『蓄力士』ってジョブだね」
ルカリオンの肯定により同級生から歓声が上がる。そりゃ元は通話用とはいえ電波無用のゲームとかメモ帳くらいは使えるし、これから先時間が確認できるのはとてもありがたいからな。腕時計とかは電波来ないからガラクタだし。
「おお! それじゃあ俺たちの代わりに戦ってくれる魔獣を呼び出す『召喚士』や『ゴーレム使い』も出来るんだな!?」
俺の追い討ちに同級生のうち昨日の演説で腰を抜かしていた奴らがピクリと反応する。そりゃ現代日本人なら誰しも自分は戦いたくないと思うもんだからな。彼らの反応は当然だ。
「うん。それに、物理攻撃に特化した『戦士』や手先の器用さが上がる『盗賊』、金属製の武器を作る事が出来る『鍛治士』に食べると特別な力がつく料理を作れるようになる『調理士』とか、生活にも戦闘にも役立つジョブは一杯あるよ。変わったところで言えば『吟遊詩人』や『闘僧』、『魔獣使い』に『開拓士』なんかもあるよ」
選択肢の広さにますます喜色を浮かべる同級生達。
……さて、ここからが本題だ。
「……先生、それと各リーダー。ちょっとこっち来い」
教師二人と予めマークしておいたリーダーにそろそろと近づいて彼らだけにしか聞こえないくらいの音量(しかもそれぞれ声音を変えて)で秘密の会議に誘った。
それぞれ訝しげな表情と言葉、それとほんのちょっぴり(虚偽の可能性あり)の恐怖を向けてきたけど、路地裏の不良どころかその手のヤバイ人たちですら見た瞬間に眼を逸らす俺の眼光に怯んで素直に着いてきた。うん、やはり持つべきものは友達ではなく無言の威圧だ。
それなりに同級生達と離れた場所で教師二人に各リーダー四人と対峙する。彼らの眼に浮かぶのは困惑と疑惑と恐怖。いや、若干一命恐怖は無いけど。
また俺が何かするつもりだと恐れているんだろうなぁ……
ちなみに、俺たちが離れている間、それなりに雰囲気の出るスピーチをルカリオンにしてもらう予定になっている。
「今の話、聞いてたか?」
俺の言葉に何を当たり前のことを聞いている? という表情を浮かべる六人。ああもう、これだから平和ボケしたパンピーは!
「だったらなんで危機感浮かばないんだよ!?」
俺の必死さが籠もった声音(当然演技)が意外だったらしく、六人は驚いたのか呆気に取られたのかよく分からない表情を浮かべた。俺が焦るとそんなにおかしいか。
「あの『ジョブ』とかいう能力はヤバイ。ハッキリ言ってそこらのドラゴンよりヤバイはずだ。何故だか分かるか?」
首を横に振る六人。ちったあ自分で考えろよな……
「妖精……ルカリオンとやらによれば『ジョブ』という能力は自分の『想い』を実際の力にする、という種類の能力だ。つまり『相手を従えさせたい』という想いを誰かが抱けば、それは実際に力を持った能力としてそいつに宿るって事だ」
後半で彼らは青ざめた表情を作って否定の言葉を吐く。曰くそんな事をするやつは居ないだとかそこまでするはずがないだとか。
そんな不確定要素を信じられるわけないだろうが!
「こんな極限状態の中で、正常な理性だけが育まれるとでも思っているのか!? 事が起こってからじゃ遅ぇんだぞ!?」
実際、誰か一人でもそんな事を想えばその途端にこのクラスはそいつの王国になる。そんなのは俺的に絶対許せないし、何より俺が操られれば何も出来ない。そして、恐らく『妖精』ですらその対象になってしまうだろう。
一つでも種が残っているのなら、土ごと排除しなきゃ安心出来ねえ。
「だ、だけど、どうすればいいんだよ?」
稲田が問い返してくる。他のリーダー三人も同じ事を聞くけど、教師二人は険しい顔つきのまま俺を咎めるように聞いてきた。
「まさか、その『ジョブ』とやらを押し付けるつもりか?」
「伊能君、君が管理するって言うのかい?」
そう。その通り。
俺に従っていれば全て丸く収まる。な~んて幻想は持っちゃいねえけど、少なくともそこらの大人よりは頭がいい自負はあるし、世界のことについても知っているから色々とアドバイスが出せる。
と、言ってやりたいけど、そこまで晒すと俺がただの妄想野郎だと思われるからな。別の言葉で代用する。
「違う。だけど、各専科のリーダーはそれぞれの班でそういう『ジョブ』を得ようと考えるような馬鹿がいたら別のジョブを勧めてやってくれ。先生方はこのクラスのボスであると宣言していただいて、その上で俺を参謀に上げてください」
俺にしては比較的穏やかな提案に眼を丸くする六人。しばいたろか。
「だ、だけど、じゃあどんなジョブにすればいいんだよ? って聞かれたらどうするのさ」
稲田とは違う名前は忘れたリーダーに問われる。
「そういう馬鹿は出来るなら単純な戦闘役にして欲しいけど、そんな事を言い出すヤツは恐らくヘタレなチキン野郎だ。直接戦闘だと役に立たない可能性が高い。単純に補助系魔法職の『付与術士』か生産系の何かがいいな。例えば『裁縫士』や『細工士』あたり。『魔法士』はやめろよ。トチ狂ってフレンドリーファイアーでも起こされたらたまったもんじゃない」
前半の罵倒の嵐に若干顔を顰めるも最終的には頷くリーダー。教師二人が何か言いたそうだったけど結局何も言わなかったのでスルー。
「だ、だが、俺たちがトップって……」
「甘い。ここは民主主義国じゃないんですよ大谷先生? 三十何名で構成された一つの国のようなものです。たった三人が勝手な真似をするだけで実に国の一割が暴徒と化す状況なんですよ? ひとまず帰還方法が確立されるまでは大人が上から押さえて言う事を聞かせる必要があります。ただし、詳しい説明が無いとすぐに限界を迎えて爆発するんで、理論的だけでもいいので何かをするときはきちっとした説明をしてください。もしくはさせてください」
他に文句あるヤツは? いない? というより反論材料を潰された? じゃあいい。
「次に、幾つかのジョブは誰かに押し付けてでも確保しておきたい」
今度こそ非難が飛ぶかと思ったけど、どうにも葛藤だけで何も言えないみたいだ。
なら都合がいい。話を進めさせてもらおう。
「その『ジョブ』は『蓄力士』、『転送士』、『召喚士』、『命術士』、『ゴーレム使い』、『調理士』、『吟遊詩人』、『鍛治士』、『裁縫士』、『細工士』、『木工士』、『薬士』、『結界士』、『翻訳士』。以上十四の『ジョブ』だ」
「それは何か意味があるのか?」
意味が無かったら言わないだろうに。
まあ、意味を知りたいのだろうけど。
「意味はありますよ。詳しく言うと絶対忘れそうですので後で資料にして提出しますよ」
俺自身忘れそうだしな。
「俺の要求はここまでだ。何か質問や要求がある場合は挙手を求める」
六つの手が上がった。全員か。
「はい、大谷先生」
「伊能、お前さっき押し付けはしないと言わなかったか?」
今それを言うか。
「あくまで要求です。受け入れられないなら妖精一人拉致ってクラスと縁切りますけど」
「なんだと!?」
「そんなに驚く事ですか? 俺としては理論的にすら信用出来ないヤツとは一緒にいたくないだけなんですけど」
「そんな身勝手は許されないぞ、伊能」
「本当に身勝手なら、俺はこのナイフで同級生を脅してでも要求を受け入れさせますけど?」
ナイフを抜いて眼力を籠めた視線で大谷先生を貫くと、悔しそうな顔で言葉を収める大谷先生。まあ、あの学校基本的に生徒の自由性を尊んでいるからな。仕方の無い事ではある。異世界でそのルールを押し付けられても困るけど。
「はい次。えぇっと……そこの女子」
「あの、ここで男女差別は無しがいいんですけど……」
「俺に対して敬語はいらん。まだ尊敬されるべき存在になっていないからな。で、要求に関してだけど、俺は同級生全員を脅しつけてでも徹底させるから安心しろ。まあ、俺の小説読んでれば自ずと分かるはずだけどな。はい次、稲田」
「伊能はこうなることを知っていたの? なんか動きが早すぎると思うんだけど……」
「あのな、俺はファンタジー作家だぞ? こういう状況を想定していないはずがないだろ? はい次、二回目の女子」
「私の名前は日山。その、『裁縫士』と『薬士』は女子に頼みたいんだけど……」
「あ……そ、そうだな。了解した。はい次、そこの男子」
「ネットは使えるようになるか?」
「『転送士』の仕様次第だ。はい次、そこの女子」
「奥山よ。お風呂が欲しいなんて贅沢は言わないけど、シャワーは浴びれるようになりたいわ」
「生産系のジョブ次第だ。個人的には俺も風呂に入りたいからな……必須ジョブに『発掘士』辺りを追加して温泉見つけさせよう。はい最後、野原先生」
「クラスの運用制度はどうするのかな?」
「帝国制に近い方がいいでしょう。ただ、あまり複雑にすると即対応出来ないんで、何かを決めるときに皇帝と元老が議論する形にするのがいいでしょう。あ、元老は俺で。参謀っすから。はい、他には?」
あれ? 無いのか? もっとこう、俺に反対したり俺の独裁を危惧したりとかは?
反対されないに越した事は無いけど、どうにも怪しいな……
まあいい。要求が通るのならそれで構わない。
「じゃ、解散するか。後で妖精抜きにしてクラス全員で話し合う過程で今の要求をさりげなく出してくれ」
各々の心の中までは図れなかったけど、様々な感情を孕んでいた事だけは分かる「分かった」が六つ。
さてさて、これからどう転んでいくかね……
ひとまず言える事は、小説家としてワクワクしてきた。ってとこだな。
どうにも同級生と教師の会話が不自然になりがち。まだまだ精進すべしと実感した回でした。