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三回目に起こるイレギュラー  作者: Dark Revenger
二章:文明は斯く偉大なり
49/50

第四十九話:なんとなく愉快な探索

 さて、ルー・ジェヴォーダンも大分元に戻りつつあることだし。


「コラ中森。勅命忘れて何イチャ付いてんだ。チクるぞ」

「あの流れからその発言は無いですよっ、イノウ様!」

「っ!」

「冗談だから落ち着け。それとルー・ジェヴォーダン。確かに気恥ずかしいのは分かるけど、だからといって酸弾を俺に放つのはやめろ」


 当たっても死にはしないけど、盾代わりに使った腕をもがなくちゃいけなくなるだろ。映画だとその後顔面に寄生されて化け物産まされるんだ。流石にゴメン被るぞ。


「チッ……もう少し羽を休めていたかったンダケドナ」

「そういう事は中森のぷるぷる震える腕を見てから言うんだな」


 そう言って悲鳴を上げている中森の腕を指すと、視線で指した方向を見たルー・ジェヴォーダンが慌てて中森から離れた。


「ス、スマナイ。ワッチとしたコトガ、気弱如き踊らサレテ……」

「気にしないでよ。僕が好きでしたことだし、この程度で折れる止まり木じゃないからね」

「ソ、ソウカ……」


 赤面して俯くルー・ジェヴォーダン。うむうむ、順調に恋が育ってきて何よりだ。


「正味な話、イチャ付くのは結構だ。むしろ推奨。だけどPTOを弁えろ。いい加減先に進め」

「い、イチャ付いてなんて……」

「世界は主観。お前がイチャ付いて無いと思っていても俺にはイチャ付いているように見える。そこら辺は諦めろ、主人公」


 どうせこれからも二人は確実に増やす……いや、パパに頼んでおいた混血のドラゴニュートちゃんはともかく、絶対勝手に引き寄せられる女(に限らないかもだけど)が現れる。その尽く(ことごとく)を切り捨てる事が出来たとしても、一人二人は必ず中森に惚れて、振られた場合に悲しい思いをする。中森はそんな彼女らを切り捨てられる程の度胸が無い。ていうか、押しかけられたら押しのけられん時点でアウトだ。


 今から諦めて、開き直らないとやってられねぇぞ。

 間違いなく胃がボロボロになる。


「しゅ、主人公って……僕はそんなんじゃないですよ」

「いーや、お前は絶対に主人公だ。素質があるし、なにより俺が育てる。つうか、主人公の素質持ちを放置しとくなんて危なっかしくて出来ねぇよ」


 そもそも素質自体は普遍的な物だ。『物語の主人公』は(良くも悪くも)運が特に強く、また(これまた良くも悪くも)環境に恵まれていたからこそ魅力が生まれるというもの。


 前世堕落系の主人公が転生してチートするのはこの辺りが原因と言っても過言じゃないだろう。まあ、普遍的と言ってもそれは『世界を知る者(ハエレシス)』視点からすれば、という注釈が付くけど。


 今更ながらナチュラルに自分の中で話が逸れた。

 ようするに、いくら素質と運に恵まれているとはいえ、まだまだ危なっかしい中森を放置する訳にはいかない。という事だ。


「なんですか、主人公の素質って……」

「まあそこらの説明を始めると長くなるから、今はこの状況を打開する策を聞かせてくれ」


 なおも納得の行かない様子で訊ねようとしてくる中森をバッサリ切り捨て、わりかし差し迫った案件を解決するよう命ずる。中森はブツブツ言いかけながらもキッチリと従う姿勢を見せた。


「……とりあえず、川上に進むしか無いと思います。土砂で塞がった入り口以外の横道もありませんし」

「異論は無い」

「ワ、ワッチモダ」


 微妙に訊ねるようなニュアンスの方針にそんな返事を返しつつ、もはや川と呼んでも差し支えないような水の流れを見る。

 ノームちゃんを呼び出した時と同種のハプニングが起きないとも限らないんだし、ウンディーネぐらいは呼んでもいいと思うけど……まあ、中森の召喚速度と俺の直感力その他があればよっぽど大丈夫か。最悪土色美人の部屋まで流されて、ド叱られながらも助けられるのだろうし。


 しかし、流石にこのまま進むような愚は冒さないらしい。


「ありがとね。リペトレイション・カーバンクル。サモン……化け蟹?」


 ……まあ、確かに水場の斥候はいれば便利だけど、その呼び方はどうよ? 別にヤオザミでも良いじゃん。中森の人生を出版する訳じゃないんだし、別に怒られる事でも無いぞ?


 出版して欲しいなら、良い感じに誤魔化してやるが。


「サモン・ガイアトカゲ」


 お次は陸戦用だろうか。土色に苔を散らしたような配色の蜥蜴が出現した。大きさは蟹と同じく一メートル前後。色はともかく、見た目は完全にコモドドラゴンだな。地竜系にしてみれば冗談抜きでコドモドラゴンなんだろうけど。


 いや、でも蜥蜴って一応の繋がりがあるだけで竜の系譜との遺伝子的な接点はほぼ無いから……実にどうでもいい。


「それじゃ、地雷除去装置(マイン・ローラー)よろしくね」

カチカチ

シャシャ


 二者二様の反応を見せるも、共通して中森の指示に従い道の先へと歩を進める二体。てか、地雷除去装置(マイン・ローラー)て……意外と良い性格してやがる。

 まあ、俺やルー・ジェヴォーダンはともかく、中森に効く各種トラップをアンデッド系や虫系で防ぐというのも無理がある話だ。妥当な判断と言えるだろう。責めるのはお門違だ。


 個人的に蟹とか蜥蜴って好きなんだけどな……


「これで水辺と陸地からの奇襲は大丈夫。上はルェダに期待して良いかな?」

「ン……アア、マカセロ」

「それと……ノームさん、地面や壁からの奇襲を警戒……出来る?」

「そのていどの事は~かんたんですよ~」

「それじゃあ、お願いね」

「分かりました~」

「イノウ様は殿をお願いします」

「任せろ」


 ふむ、全方位への警戒網か。基本とはいえ、人員の割き方が的確だ。勝手に俺を護衛対象と認識しなかった所も評価出来る。

 惜しむらくは中森自身に暗視能力が無い事か。そのせいでウィル・オー・ウィスプという光源が必要になり、僅かな光で視界を確保出来る魔獣にすれば格好の獲物だ。とはいえ、エンカウント率が高くなるだけだから現状では無問題だけど。


「それじゃ、出発!」

「ゴー、レディ、ゴー!」

「「「……」」」


 やべ、ネタに走ったとはいえ返事を返したの俺だけか。これはかなり恥ずかしい。まあ、ネタに生きる男としてはむしろご褒美なんですけど。




 移動を開始して、そろそろ三十分か?

 いくら後衛職とはいえ一応は中肉中背の男子高校生、中森雄一郎。特にへばった様子は見られず、今回の件で負った諸々の傷も悪さはしてないみたいだ。


 カーバンクルの癒しと千単位の時を重ねた『命術士』の回復があったとはいえ、『そういう類の傷を負った』という精神的負担っつうのは案外馬鹿に出来んのだけどな。にも関わらず特段無理をしているようでもない様子、って事はまあ、要するにご都合主義なまでの高精神力を持つ『物語の主人公』。って事だな。


 内心で中森の主人公的評価を改めていると、(くだん)の中森が三秒後停止のハンドサインを送ってきた。ノームちゃんやルー・ジェヴォーダンに動きは無かった。という事は、地雷除去装置(マイン・ローラー)の内どっちかが反応を見せたな。いつのまに召喚した魔獣と以心伝心出来るようになったんだよ……またいくつレベルを上げたんだか。


 同時に声をかけていたノームちゃんとルー・ジェヴォーダンが止まり、俺もきっちり三秒後に足を止めた。


「トカゲと何かが接触。ただ、戦闘には入ってないから警戒するに留めて近づこう」


 なにやらよく分からん情報だな。

 こんな地下水脈でなんらかの魔獣と目される蜥蜴と接触して、交戦にならない存在ってなんだよ。川元にウンディーネでもいたか? まさか。いくら川があるとはいえ、大半が大地の領域であるこの山に、他のエレメンタルがいる意味は無い。火山や水没林じゃあるまいし、そう属性が重複するような場所じゃねぇ。


「了解。念のため俺も前に出ておくか?」

「えぇっと……イルトミルジス様と子供ドラゴンさんで殿は勤められますか?」

「それを言われるとな……そうだ、便利な奴がいたじゃん」


 という訳でカモン、ジャック君。


『オイオイオイオイ! 人間の殿なんかまっぴらごめんだ!』

「うわっ! なな、なんですか、これ?」

「紹介してなかったか? 俺に取り憑いたジャック君だ。堕霊……幽霊の一種だから暗闇は得意領域だ」

『だから嫌だっつてんだろが!』

「幽霊を使役シテイル……ダト? ユウイチロウも変わってイタケド、キサマは最早常軌を逸してイルナ」

「褒め言葉として受け取るぞ。それより……ジャック君? また狂気ないないの刑に処されたくなければ……」

『マム・イエス・マム!』


 お姉さん的な声で処刑宣言をすると、見事な敬礼を見せて指示を実行するジャック君。まあ、ヒトにとって「酸素ないないの刑にしましょうね~」と同義だからな。当然と言えば当然だ。


「なんで女声なんですか。というか狂気ないないって全体的に意味が分かりませんけど!?」

「ジャック君はお姉さん系にトラウマがあるらしいのよ。だから言うことを聞かせる時はこんな口調と声音にするの。狂気ないないについては……知らない方が幸せだろ」

「相変わらず破天荒というか支離滅裂というか……」

「俺にとっては最高の褒め言葉だな。どっちも常人の称号じゃねぇし」

「偉そうなMだな面倒くさい!」

「ほう、言うじゃねぇか……反論できねぇ」

「え、本当にマゾなんですか?」

「マジレスすると、創作業なんて多少Mの気質が無いとやってけん。どこかの真っ黒ハサミ女とか無表情和服芸術作家とかは別だけど。ちなみに、大抵の主人公もMの気がある」

「僕を巻き込まないでください!」

「どっちかと言えばSだもんな。将来を誓った女に内緒で女を落として、これから何度も奥さんを泣かせる(予定の)中森は」

「クッ!! 殴りたい! ていうかカッコ予定のカッコトジって言う必要あるんですか!?」

「そりゃあるよ。主に読者の皆さんやネタの為に」

「まさかのメタ発言!? それって大丈夫なんですか?」

「どうだろうな……正味な話、俺やお前の物語が誰かに見られていないとも限らないんだ。自分の物語の地の文が聞こえてくるようになった会計捜査官の物語を描いた映画があってな。アレを見てから俺は自分の人生が誰かに読まれているんじゃないかと考え、たまに言語上の伏字を使ったり読者の存在を考えて喋ったり行動する事があるんだ」


 大抵はウィルフィール辺りに無意識に説明するよう妨害されてるだけなんだけどな。あいつらも俺の目を通して大体は分かるはずなのに、一々暇な奴らだ。


「何その自意識過剰……とは言い切れない、のかな?」

「人類=宇宙人の実験動物説や『神』の玩具説がある以上、可能性はゼロじゃねぇ」

「今年最悪の話を聞いちゃいました」

「いいだろ、今年は最愛の彼女が出来た年なんだから」

「っ……それを言われると反論出来ないじゃないですか!」

「まあ、この後ハーレムが増えて苦悩する年でもあるだろうけどな!」

「ちくしょう! やっぱ殴らせてください!」


 俺と中森がコント紛いのことをしていると、腑に落ちないような様子でジャック君を見やるルー・ジェヴォーダン。なお、既に歩は進めている。


「ワカラン……本来ならゴーストほど末恐ろしい存在はいないトイウノニ、何故こうも怖くナインダ……」

『うるせぇ! これでも千五百年前は切り裂きジャックの恐れ名を欲しいままにしてたんだよ!』

「……切り裂きジャック? どこかで聞いたヨウナ……思い出せナイナ」


 ふむ……ルー・ジェヴォーダンの一族に物語として伝わっているのかもしれん。もしくは千五百年前の惨事を怪談みたいな扱いをしていて、それを小耳に挟んだとか。そう考えると、十三日の金曜日に現れるゾンビ(正確にはミイラか?)や鈎爪ロリショタサド野郎と似たような存在なのかもな、ジャック君は。


「あの、イノウ様。切り裂きジャックって?」

「偽名だ。敵性日本人に恨みがあって、少しでも恐怖心を煽る為に名乗っているらしい」

「敵性日本人で思い出したんですけど、ルェダから聖人とかいう強者の存在を聞きました。なんでもヅィ・スコロペンドラの皆さんを圧倒できるだけの力を持つとか」

「マジか。でかしたぞ中森。なるほど、聖人を名乗ってる訳か……待て、『聖人』?」


 ……時に、無実の罪人が普通ではありえない程の根性で真犯人を追い詰めたり、刑務所から脱走したりする事がある。それは愛の力であったりカリスマが周囲を動かしたりした結果でもあるのだろうが、中には偶像崇拝の法則が働いた結果、限定的な力が実際に身に付いた例もある……筈だ。


 石像の神に祈りを捧げても嵐の時の無線電話のように神へ祈りが届き難くなるが、それでも少しは聞き届けられ断片的な奇跡を起こすように。

 『大罪人』という、一種族を滅ぼす力を持った『世界に影響を与える者』の力が、ほんの僅かに罪人に宿る。

 勇者種で無くとも勇者と讃えられれば勇者の力が、魔王種で無くとも魔王と恐れられれば魔王の力が、神族で無くとも神と敬われれば神の力が、罪人で無くとも大罪人と謗られれば大罪人の力が、微弱ながら宿る。

 それが、偶像崇拝の法則。


 実際の犯罪者が力を得る事は無い。そもそも神が石像の神を通じて神の奇跡を呼び寄せる事などありえないのと同じで、例え下位互換とはいえ同種類の存在に力が宿る事などありえないのだから。


 それは、逆に言えば同種類の存在で無けれど、立場が同じになれば力が宿り得るという事だ。

 そして聖人……いや、『聖人』なんて、『罪人』とまったく逆の存在だ。


 ……可能性はある。

 考えてみれば、『生命の力』の対と呼んでも差し支えの無い『狂気の衣』が存在するんだ。『大罪人』の逆、言うなれば『大聖人』なんて存在がいたとしても、不思議じゃない。というか、『魔王』の対として『勇者』が存在するくらいなんだから、他の『世界に影響を与える者』に正反対の存在がいてもおかしくは無い。


 ……マジかよ。

 多分偶然だろうと思うけど、敵性日本人共は『世界に影響を与える者』から微弱ながら力を……というより、力の影響を受けている可能性がある。って事か。


 『世界に影響を与える者』から与えられたチートに加えて『世界に影響を与える者』の力の切れ端。

 パパが殺されなかったのは、あるいは奇跡だったのかもしれんな。


「……でかした、中森。お前は流石主人公だよ。御見それした。これからは中森さんと呼ばせてくれ」

「何がどうなってそんな持ち上げられる事に!? 呼び捨てにしてくださいよ! 名前を!」

「分かった。じゃあ雄一郎、お前には今度褒美を与える。手持ちに今回の功績に匹敵する褒美が無いから今すぐにはやれんが、期待しとけ。『雄一郎最強化計画』にすら加えなかった褒美を与えよう」

「本当になんで名称だけの情報でそんな大層な褒美が貰えるようになるんですか!? 逆に怖いですよ!」

「いや、これは情報ではなくお前の発言自体にインスピレーションを受け、想像もしていなかった事態が思い浮かび、致命的な未来を未然に防ぐ事が出来たからだ。俺自身の敗北を防いだ情報なんだから、それ相応の褒美を与えるのは当然の事だ。簡単に言えばご恩と奉公だ」


 中森……いや、雄一郎は「またやっちゃった……」的な表情で「あ、はい」と呟いた。安心しろ、お前は主人公だから似たような経験がこの先現れる事もあるだろうからな。今回だけじゃないさ。


「そもそも無自覚の内に幼女エルフと未来形でアラクネに進化するシャサを落としているんだから、今更だろ」

「心を読まないでください!」


 お、テンプレを予想して言ってみたら合ってた。流石俺。まだまだ捨てたもんじゃないな、この直感。


「……マテ、幼女エルフと……ソノ、シャサとかいうのは誰ナンダ?」

「嫉妬に狂うな、ルー・ジェヴォーダン。雄一郎に惚れたが運の尽き。ハーレムを受け入れるだけの度量を持てば、あるいは中森由奈を差し置いて一位になれるかもしれんぞ?」

「ホ、ホホ、惚レタダト!? ベ、別にワッチハ、ソンナ……」

「…………あ、助けてくれてありがとうございます、イノウ様」

「良いって事よ。流石に今のをテンプレに任せたら面倒か砂糖塗れになるだろうからな。苦手なんだよ、頼りになる筈の大人が嫉妬に囚われるっつうの」


 まあ、韓国ドラマは見るけどな! 韓ドラは設定に無理があったり役者がすぐ泣くからイマイチ物語では楽しめないんだよな。そのおかげでドロドロした感情もあまり重くならない。ルビー○指輪とか滑稽過ぎて逆に笑ったわ。


「イノウ様にも苦手な物ってあるんですね」

「ばっかお前、俺なんて元々ヒト苦手なんだぜ? もうヒトが関わればなんでも極度に緊張して目も当てられない失敗をやらかしていた時期もあったんだ。他にもナスとかキノコとかホルモンとかメンマとかエビとか蜘蛛より足の多い虫とかも苦手だな」

「後半はただ嫌いなだけですよね!?」

「そうとも言う」


 ただ、苦手なのは事実だ。

 特に、身勝手な理由で子供に当り散らすヒトの恥に分類される屑が。


「まったく……って、そろそろです」

「件の蜥蜴と接触した正体不明(UNKNOWN)か?」

「はい……あ、いた」

シャシャ


 噂をすれば影。先行していた蜥蜴が円錐形の尾を壁に刺しながら中森を呼ぶ。一応そいつガイアトカゲとかいう魔獣だよな。俺も大概だけど中森も並以上に魔獣に好かれてるなぁ。それとも『召喚士』はこれがデフォルトなのか?


「えっと……どうやらこの壁に何かがあるみたいです」


 見れば分かる。だが、ここからどういう判断を取るのか……楽しみだな。


「リーダー、採掘に騒音は付き物。それをふまえて今回は何をすべきだ?」

「まだ採掘ポイントって決まった訳じゃないですけど。とりあえずリペトレイション・化け蟹、リペトレイション・ガイアトカゲ。えぇっと……サモン・リザードマン、サモン・オーク」


 中森は地雷除去装置(マイン・ローラー)二体を召還し、代わりに蜥蜴人と豚人を呼び出した。その心は?


「リザードマンは水辺で警戒。オークは陸で警戒。ルェダは空をお願い」

「シャ、シャー」

「ブヒッ、フゴ」

「マカサレタ」


 なるほど。さっきの地雷除去装置(マイン・ローラー)を戦闘力重視に変更した感じか。惜しむらくは、リザードマンは沼地に強いだけで水辺が得意な訳ではない、というところか。まあ、海専門のマーマンやサハギン辺りを呼び出さなかっただけマシか。


「サモン・コボルト。ツルハシ渡して。よし、リペトレイション・コボルト。コボルトは今受け取ったツルハシでこの壁を掘って」


 なんつーえげつない事しやがる。大人のコボルトからツルハシ強奪してさっさと召還するなんて。何か雄一郎の中で妙なジンクスでも生まれたか?


「えっと、ノームさんとジャックさんは念のためそれぞれ警戒」

「は~い」

『おい! なんでオレが人間なんかの……』

「ジャック君?」

『マム・イエス・マム!』

「ははは……イノウ様、その子達は何か採掘に使える能力ってありますか?」

「そうだな……ルカン兄さんは万が一の回復担当で、イルトミルジスが角突きで穴を広げるくらいか。ナヴァンには正直期待するな。まだ子供だからな」

「了解です。それじゃそれで頼めますか?」

「分かったよ」

「イルトミルジス、雄一郎が「やめなさい、それ以上はいけないわ」って言うまであの壁向かって角突きだ」

「言いませんよ! え、ちょ、マジですか!?」

「マジだ。さて、俺は右手の狂気と左手の生命(いのち)で掘りますか」

「釈然としませんけど、了解です。それじゃ、作業開始!」


 さてさて、一体どんなビックリ箱が眠っているのやら。願わくばパンドラの箱でない事を祈ろう……


 私用によりまた一週間お休みするかもしれません。

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