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三回目に起こるイレギュラー  作者: Dark Revenger
二章:文明は斯く偉大なり
47/50

第四十七話:なんとなく主人公な中森(後編)

 すみません!

 ちょっと個人的で情けない事情により投稿が一週間遅れてしまいました。とにかくごめんなさい。

 うっ、うぅん……ハッ! ルェダ!?


「ルェダ! どこにいるの、ルェダ!?」

「ウルサイゾ、ニンゲン」


 跳ね起きて周囲を見回しながら叫ぶと、後ろから最早聞きなれたクールな声が。

 振り向けば、そこにはルェダがいた。


 ……なんだか少し機嫌が悪い?


「無事だったんだね……よかった」

「怪我は無いヨウダガ、どこかおかしなところはナイカ?」


 怪我が無い? え、えーっと、確かルェダを受け止めた後、吐血して……痛っ! なんだ、口の中を切っただけか。ふぅ、よかった。あのこみ上げるような感覚はきっとジェットコースターに乗ったときの浮遊感がランダムで襲ってきたからで、別に内臓が傷ついたわけじゃなさそうだ。改めて、よかった。


 僕が体の安全を認識し終えると、不意にルェダが一枚の紙切れを差し出してきた。


「コレ、キサマの主人カラダ」

「主人……! そうだ、イノウ様!」


 こんな事言うと近衛失格だと言われそうだけど、忘れてた。

 ていうか、なんでイノウ様がここにいたんだろう? まさかのダブルブッキング? イノウ様も資源を探していて、たまたま行き先が一緒になったのかな?


 うぅ、だとしたら僕はとんでもないことをしちゃったぞ。

 イノウ様の邪魔をしたばかりか、その命まで危険に晒してしまった。これじゃ本当に近衛失格だよ。ああ、トリゼェイソンさんやイルトミルジス様に合わせる顔が……


「ストーキングとやらをシテイテ、巻き込まれたソウダ」

「何してんですかイノウ様ぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 ストーキング!? ストーキング!? それってヤバイ奴でしょ!? おまわりさんが関わる事案って奴でしょ!?

 い、いや、イノウ様は無駄な事をしない。これも何か理由あっての事だろう。うん。真実はやっぱり当人から聞かないとね!


「ところで、イノウ様は?」

「脱出経路を探すとイッテイタ。どうやら元来た道を引き返す事は出来なさそうダゾ」

「え!?」


 慌ててもっと深く周囲を観察してみると、どうやら地下水脈の一種みたいだ。僕が寝かされていた場所のすぐ傍にチョロチョロと湯気の立ち上る水が小川と呼べるくらいの幅の中を流れていて、その先を辿ると自然、壁から土砂がはみ出ている場所が見つかった。恐らくそこから僕達はここに出たのだろう。


 下手に構うと二次災害が起きそうだし、脱出経路を探しに行ったというイノウ様に頼るしかない、か。


 ……ウィル・オー・ウィスプは消えてないみたいだね。


「ニンゲン、いい加減受け取ってクレナイカ?」

「あ、ご、ごめん! ええと、何々……『テケスタ』?」


 そこには血と思われる赤い何かでただ一言、『テケスタ』と。なんだろう、たまにトチ狂った(らしい)時に叫ぶ独自言語かな? いや、まだ二回しか見たこと無いけど……どれも寝言っていうのがイノウ様の異常性を表してるよね。


 ……あ!! これ、反対から読むと『タスケテ、助けて』になる!?


「大変だ! イノウ様ですらわざわざ書面に移して僕に頼むような奇天烈な展開になってる!」

「いきなり何を言い出すのだニンゲン。奴なら折れた右腕を強引に繋げながら意気揚々と去ってイッタゾ」

「それはそれで大変だよ!」


 っていうか折れた右腕を強引に!? それはあれですか!? 翼の生えた新機動戦士を操る青年の真似事ですか!?


「って、あれ? これ……裏にも何か書いてある?」


 何となく嫌な予感を覚えつつ紙をめくると……


『というのは一度やってみたかったネタだ。卵とトマトと調味料と米とフライパンが揃ったら同じ事をやるつもりだ』


 やっぱりね! 一割くらいそんなこったろうって考えてたよ! ちくしょう!


「一応真面目な指示もあるけど……『資源入手経路確保ニ邁進セヨ』、か。こっちもこっちで微妙にネタに走ってる気がする」


 とはいえ、これはイノウ様が出した最新の命令だ。と言うことはつまり、この極限状態で僕に出来る事はそれしかない、という事だ。

 うぅ……ていうか、コボルトとノームさんどこいったし。召還されちゃったのかな? どっちも無事なのは確かだと思うけど……あ、制御が生きてる。二体共無事……イノウ様(の手)にメロメロ、か。


 ……右腕が折れている状況でどうやって二体の魔獣(ノームさんは違うみたいだけど)を手懐けたんだろう? ちょっと怖くて聞けない。


 しばらくそっとしておこう。色んな意味で。


「ん~っと、そういえば鉱脈の中にはマグマに熱せられた水が運んできて、地表近くで冷えて固まって出来たって奴があった筈」


 もしかしたらこの、若干湯気が立ち上っている水の道を辿れば何かの鉱脈に辿り着ける……かも。

 他に当ても無いし、なんとなくあのコボルト以外のコボルトを使うと思うと嫌な予感がしてならない。どうしようも無くなったら呼び出す方向でやってみよう。


「僕はこの水の元の方を探してみるよ。ルェダはどうする?」

「ワ、ワッチハ……ツイテクヨ」


 んん? 一瞬何かを言いかけたようだったけど……気のせいかな?

 ともかく、ルェダが付いて来てくれるなら百人力だ。広さ的にシャサを呼ぶことは出来ないっぽいし。呼び出そうと思えば呼び出せる気がする辺り、シャサもきちんと生きているんだって分かる。


 寝かせていた下半身に力を籠め、起き上がる。うん、ちょっと痺れてるけど少し歩けば治るだろう。

 気休めというか、反射的にというか、とにかく少しだけ痺れの残っている足をさすりながらルェダと一緒に水の道を辿って歩き出すのだった。




 道中。段々と水量が増してきた水の道を川と呼ぶ事にしよう。

 そう決めた瞬間、ルェダに押し倒された。


「ちょちょちょちょちょ! ななな、何すんのさ!?」

「アア? ウルサイゾ、ニンゲン。ワッチはストリーガダ。ニンゲンの男を押し倒してスル事と言えば一つしかナイダロウ」


 い、いきなりそんな事言われても!? やめー! やめー!


「ちょっ、ズボン脱がさないで!」

「ウルサイゾ」

「お、おかしいよルェダ! いきなりこんな事するなんて、どうしちゃったの!?」

「ウルサイ!」


 ズボンを押さえながら必死になって呼びかけるもまったく意に介さず、強引に脱がそうと力を籠めるルェダ。本当に、いきなりどうしちゃったんだ!?


「くっ……ごめん、本当はやりたくなかったんだけど」

「ウゥッ!? ナ、ナンダ、アタマガ……」


 僕のズボンに手をかけていたルェダが突然頭を抱えて呻き声を上げ始めた。


 『召喚士』の本質は『目的を達成する為に何かを呼ぶ』事。


 元々何かを呼ぶ立場にいる者が、その者に対する拘束力を持たない筈が無い。

 僕が使ったのは、そういう力。


「……僕には、由奈っていう素敵な恋人がいるんだ。こ、婚約……うん、婚約もしている。だから、不誠実を働くような真似はしたくない」


 言ってから、湧き上がる強烈な自己嫌悪に思わず自分の頬を殴りつけてしまった。


「ぐっ……ごめん。本当ならイノウ様のモンスター辞典をもっとよく読んでから召喚すべきだった。そうしていれば、僕はルェダに不快な思いをさせずに済んだのに」

「ニンゲンが偉ソウニ……何をシテイルノダ!?」

「贖罪って訳じゃないけど、僕に出来る事はこれくらいしか無いからね」


 そう言って噛み千切った腕を差し出す。とめどなく流れる赤い血と痛みが酷い。口内に残った僅かな肉片と血が鼻と胃を刺激して、今に戻してしまいそうだ。

 けど、これくらいいつものイノウ様に比べれば、点で大した事は無い。


「さ、吸って。それと、帰りたくなったらいつでも言って」

「…………じゅる」


 言葉を無視し、僕の腕を穴が空くほど見つめ、ついには涎まで出てきた様子のルェダ。やっぱりえっちぃ事より血を吸う事の方が大事なんだろう。完全に理性の色が消えている。


 ……今更だけどこれ、吸いつくされたりしないよね?


「フゥゥゥ!」


 やがて我慢が限界を超えたのか、鳥と犬を合わせたような唸り声を上げながら僕の腕に飛びつき、一心不乱に血を舐め始めたルェダ。


「はふぁ、ふぁ……っ、サモン・カーバンクル!」


 血管から荒々しく抜かれる血液の感覚に軽い目眩を覚えつつ、万が一を想定した魔獣を呼び出す。

 一拍置いてこの場に現れたのは、兎の耳にハムスターの体、馬の尾を持つ青い体毛の小動物。その額にはルビーのように赤い宝石が讃えられていて、つぶらな瞳はこんな状況だというのに思わずほっとしてしまう程の癒しを秘めている。


「キュ?」

「あ、はは……見ての通り、だからさ。僕が気を失いそうになったら回復してくれないかな?」

「キュ!」


 ほっ。どうやらこの世界のカーバンクルは僕の認識上のカーバンクル――癒しの力を持つ幻の獣――とほとんど同じようだ。安心安心。


 ……してる場合じゃない。

 とりあえず、ずり下げられたズボンを元の位置に戻さないと。




「…………何故ダ」


 カーバンクル召喚からおおよそ二十分。二回ほど気絶と覚醒を繰り返したけど、後悔は無い。


「何故って、何が?」

「トボケルナ。キサマらニンゲンは吸血という行為に嫌悪を覚える生き物ダ。だというのにキサマは自ら血をサシダシタ。ソンナヤツ、元恋人の同族が吸血鬼と化した類の物語でしか見たコトガナイ」


 そう言ってルェダは唇を塗らす赤い液体を指で拭い取る。その姿は何とも妖艶な魅力に溢れていて、恥ずかしい事に一瞬落とされかけた。うぅ、もっとしっかりしろ、僕!


「贖罪とか……償いとか、対価とか、そういうの。同族がどうこうって問題は、むしろルェダが純粋な吸血鬼じゃなくて人間から変化した吸血鬼だったらしなかったよ」


 今回の場合、ルェダは唐突な性欲(というより吸精欲?)の高ぶりを抑えきれずに僕を襲った。それを静める為と今までの不誠実を清算する為に僕は血を与えた。ただそれだけの事。さらに言えば、ルェダは純粋な吸血鬼。つまりは生まれたときから吸血が常識になっている種族。だから僕の血だろうと精だろうと、吸い取っても罪悪感が発生しない。つまり、心を縛る事が無いって事だ。心の問題を清算する為の行動なのに心を痛めつけてしまうってのもおかしな話だし、僕的には十分常識的な……


 あ、そういえば僕は普通でも常識的でもなんでもなかった。


「……ア、アッハハハハ! ナンダ、ソレハ!? 己の同族デモナイ、ニンゲンの血が無ければ生きながらえる事すら出来ないワッチだから血を吸わせたダッテ!? イカレているゾ、ニンゲン!」


 はぐおっ!? う、く……狂人の第一人者みたいなイノウ様からならともかく、本来なら人類の敵である魔物にまで狂ってると言われるなんて……まあ、普通じゃイノウ様の近衛は務まらないか。そう、ポジティブに考えるしかない。


「アッハハハハ!!! アッハハハハ!!」


 ジクジクした心を抱えながら誰にとも知れない言い訳を重ねていると、唐突にルェダが叫び出した。まるで内に巣食う何かを吐き出すかのように、とても気力の乗った声で。


「アッハハハハ! アッハハハハ……」


 やがてその声は小さくなった。


「ぁ、ァハ、はァ、ぁぁ……」


 まるでそう、嵐前の颪が如く。

 ……っ、でも……由奈…………僕は、君を……イノウ様……由奈……っ!!


 ちくしょう、何を迷っている! ここでルェダを放置すれば、僕は絶対に後悔する。知っているんだ。十二年前、幼心に後悔を覚えた事を。後悔が、毒と化して身を蝕む事も。

 一時の後悔と永遠の後悔なんて、天秤にかける必要も無い。


「ルェダ」


 僕はルェダの羽毛に覆われた体を抱き寄せた。


「っ!」


 一瞬息を呑み、突き飛ばそうとしてくるルェダを渾身の力で抱き止める。

 僕より大きいはずの体が今はどこか小さく感じるのは、個人的な理由により首を反らしていなければキ、キスしてしまいそうな程に俯いているから?

 ……僕は馬鹿だ。


「ルェダに何があったのか、何で取り乱しているのか、僕には分からない」


 けれど、この異変とも言える変化はきっと何かがあった筈だ。十中八九イノウ様が関わってそうだけど、あの人がヒトじゃない存在に辛く当たる事なんてほぼ無い。あったとしても無意味な物じゃ無い。そういうヒトだ。


 だとするなら、ルェダは何か問題を抱えていて、イノウ様がそれを指摘して精神が不安定になっているとかそういうオチと考えるのが妥当。


 ……あの人わざとやってるんじゃないだろうな。


「けど、少なくとも僕によりかかるくらいなら許されると思うんだ」


 ルェダは大人だ。それは見た目や言動からも窺えるし、雰囲気みたいなふわふわした理由もある。そんなルェダに、僕を頼りにしろとか、支えるとか、相談に乗るとか、上からの目線で言う事なんて出来ない。召喚で呼び出した魔物だから常に一緒にいる事も出来ないんだし、無責任な事は言えない。


 だけど、辛そうな顔をしている女の子を前にして、何もしないってのはただのヘタレだ。


「……ニンゲンの分際デ、ワッチを慰めようってのカイ?」


 ……ここで動揺するのもヘタレだよね。平常心、平常心。

 でも、やっぱり心は少し揺れる。


「違うよ」


 テンプレなセリフが許されないからね。

 仮にもイノウ様(人間嫌い)(ちょく)で連なる者として。


「僕は、イノウ様の、直属の近衛で、『召喚士』の、「中森雄一郎」だ。人間……ヒトと、無暗に括ってくれるなよ。それは僕の……僕の主、ニシキ・イノウ様への侮辱だ」


 イノウ様は人間嫌い。

 というより、本人曰くヒト、ヒューマン、ホモ・サピエンスetc……とにかく、そういう人間……ヒトが嫌いだ。

 当然、自分の直属の部下にヒトなんていらいないだろう。


 だけど僕は、どうしたって結局ヒトなんだ。

 だとしたら、人間になるしかない。

 僕は、『人間』だ。全ての人型人種をひっくるめた存在、『人間』だ。


 イノウ様は、『人間』ならば心を開いてくれる。

 だから、イノウ様がセッティングしたであろうこの状況で、ルェダの人間=ヒトと僕を同じにされるって、不忠義なんだよ。


「慰めるってのもちょっと違う。ルェダみたいな大人を僕みたいな子供が慰められる訳が無いからね」

「意味がワカラナイ……何が言いたインダ? ニンゲン」


 そうだなぁ……ちょっとクサイかな? まあいいや。どうせ相手はファンタジーだ。


「獲物を見定める夜の鳥に止まり木の名前を知ってほしい」


 今まで知らなかったのなら、今を切っ掛けに知って欲しい。その代わり、僕は止まり木になる。これから先、ルェダが色々な事を成すための力を蓄える場所に。

 そう続ける予定だったけど、腕の中のルェダがふと力を抜いたから慌てて支える方に力を入れる。俯いていた頭が動き、僕の眼とルェダの眼が平行になった。

 ルェダは泣いていなかった。


 ただ限りなく、潤んでいた。


「アハ、ぁハハハハ……コンナ、こんな事が現実ナノカ? 奴の言うトオリ、ワッチは今までずっと固まったままダッタノカ?」


 奴? んん……話の流れ的にイノウ様かな? 何か固まりがあって、それを僕が解いた?

 いや……どちらかと言えば、溶かした?


「……ユウイチロウ」


 それはこの水脈に閉じ込められる前に聞いていた僕の二人称。それなのに何故か初めて聞いた気がする。

 僕は眼を逸らせなかった。


「ワッチはスコシ……ツカレタ」

「うん、安心してよりかかって。僕はヒトじゃないから折れたりしないよ」

「… ……」


 何か言っていたみたいだけど、小さすぎて僕には聞こえなかった。

 大人のルェダが、涙声で「うん」なんて、言う筈が無いから。


 ……さて、由奈にはなんて言い訳しよう。




 あ、イノウさ……


「しぃぃぃっ」『雰囲気壊すなロミュアルド青年』


 そ、そんな事言われ……書かれたって、そろそろ限界が……

 ……ありがとうございます、ルカリオン(命術士)さん。


 まだ耐えられると判断したのか、イノウ様はあっさりと僕から眼を離してメモ帳を破き、何事か書き込み始めた。あの、ロミュアルド青年って説明無しですか?

 少しして意外に汚い字で書かれたそれを僕の前に翳す。


『とりあえず聞きに徹せ。全部読んだら三回連続ウィンクで知らせろ。俺が探しに行った方向。つまりお前が進んだのとは反対の道だけど、魔獣組がまるで室内インコの如き反応を見せ始めたから毒ガスっぽいものがあると判断し、引き返してみればお前は既に消えていた。ので追いかけてきた。分かれ道も無かったしな。そしたら面白い状況に遭遇しているお前を見つけ、とりあえず筋肉が限界そうだったからルカン兄さんに頼んで回復してもらった。OK?』


 右目でウィンクを三回連続。

 イノウ様は一つ頷き、また何かを書き始めた。どうでもいいけどあの後ルェダが疲れたように顎を僕の肩に乗せたおかげで視線が外れていなければどうやって僕とコミュニケーションをとるつもりだったんだろう? モールス信号はSOSしか分からないけど……手話もちょっと。


『前略。これからだけど、お前に指揮を任せる。岩盤ぶち抜くなり川を干上がらせるなり好きにしろ。この探索行はお前の物語っつうのもあるけど、今後お前には俺の近衛兼便利屋として役に立ってもらいたい。その中には当然今回のような資源の探索が含まれるし、サラッと遊撃係になる事だってあるだろう。そして、経験値は大事。これだけ書けば分かるな? 良い機会だし、シャサやヅィ・スコロペンドラ達が使えない状況を知っておけ』


 な、なな……なんて無茶な大役光栄ですって!? ダメだ、落ち着け僕!

 問い詰めようにもルェダの一時的なより所になるって言っちゃったし……うぅ、分かってやったな、イノウ様ぁぁぁぁ!!


 内心で思いっきり怨嗟を吐いていると、三枚目の紙が。


『しかしよくルェダ(本名メンドイ)を落とせたな。これで『雄一郎最強化計画』がさらに進むぞ。ああ、言い忘れていたけどルェダを焚き付けたのは俺だ。中森雄一郎、俺はお前を最強チーレムにしてやる。』


 は、はは、ははははは……はっあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?


『どうも、お前は主人公らしい。そして俺の仕事は主人公を作る事だ。となれば、俺がお前を非離脱クラス転移召喚士最強チーレムにするのは最早必然。土下座なら一緒にしてやるから甘んじて受け入れろ』


 こ、この……っ! ルェダに衝撃を与えちゃいけないって分かっててぶっちゃけたな! 僕なりに覚悟を決めて後悔しない選択をしたって言うのに、これはどういう事だぁぁぁぁぁぁ!?


 四枚目。


『いや、お前の選択は間違ってないと思うぞ。ただ俺のわがままに巻き込まれただけで。ああ、これはただの予想だからお前がハーレム肯定野郎だったら構わず俺をあざ笑ってくれ。俺は軽蔑するから。』


 ぐっ、うっ!? こ、この…………

 うぅ、虚しい。


『ま、俺はお前をそんな軟派野郎だとは思ってないけどな。

 冗談はさておき。正味の話、お前にはマジで主人公としての素質がある。それは最強フラグという意味でもあるし、ハーレムフラグという意味でもある。自覚は無いだろうが、シャサやカサネホルには既にフラグが建っているぞ?』


 …………え?


『そんなもんだから、お前は必ずどこかで女の子を一人にしろ複数人にしろ絶対に泣かせるだろう。どこかのオーガ・イリュージョン・スレイヤーみたいに。だからその可能性を粉無尽に帰すため、周囲を女で囲う。一人(中森妻な)を除いて全員が戦闘要員なら良い虫除けになるし、お前の部隊の人員にも事欠かない。おっと、反論は許さんぞ。現にお前は勝手にルェダを呼び出して勝手にフラグを建てて勝手に落としたんだからな』


 …………反論材料が、使えない。確かに、いくら後悔しないためとはいえ、今回の事は事前に予想がついていた。ルェダが僕に惚れるなんて、自意識過剰もいい所な予想が。

 由奈を……裏切る予想が。


 五枚目。短い。


『ハーレムとはすなわち背徳の道。主の意向に逆らい、吸血鬼と恋人関係を築いていた神父見習いロミュアルド青年と同じように、悩み、悔やみ、傷つき、迷いながら、お前は幸せへの道を探せ』


 ……なるほど。ロミュアルド青年って、イノウ様が知る小説の登場人物の事か。そして彼は恐らく、最後には恋してしまった吸血鬼を失ってしまったんだろう。

 主、って事はキリスト教だよね。神父見習いって言ってるし。それで、吸血鬼と恋に落ちちゃって苦悩するのが背徳。なら、僕が由奈を裏切ったのはロミュアルド青年が神を裏切ったのと同じ。だとしたら僕は、イノウ様の言うとおり、茨の道を歩まなくちゃいけないんだろう。


 ……でも。


『当然、道先案内人は俺だけどな。手塩にかけた(予定の)お前を、後悔と誤解のクソッタレた泥沼に突き落とす気はさらさらねぇよ』


 わざわざ裏にこんな事を書く意地悪なイノウ様が導いてくれるのなら、僕はなんでも出来る気がしてきた。

 なんでも、ハッピーエンドに出来る。って。

 長かった中森回もようやく終了です。

 次回からはニシキ視点に変わります。あと、ロミュアルド青年の件はクラリモンドでググれば出て来るはずです。

 改めて、一週間遅れてごめんなさい!

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