第三十五話:なんとなく休憩な嵐前
さて、色々と面倒なやり取りはあったものの、フォグザヌちゃんとレミスタンさんへの説得は成功した。フォグザヌちゃんだけは渋ったけど、俺が魔王の養子であると思い出させたらプルプル震えながら首を縦に振った。う~ん、フォグザヌちゃんの中でパパがなまはげみたいな扱い。魔王だから当たり前といえば当たり前だけど。
俺は現在、寝ているルカン兄さんの近くで本を読んでいる。右にイルトミルジスとファロ、左にナヴァンとセカロドを侍らせて。いやはや、ハーレムを築くとは俺も出世したものだよ。この世界では無職だから甲斐性なんて欠片も無いけど。ていうか、セカロドはオスだ。あ、でも男の娘枠でいけるか。
ここ二日ほどすっかり手をつけられなかったけど、もともと俺は物読だ。世界のどこにでもいる、本を愛する男。それが伊能錦である。だというのに忙しさにかまけて本を読む時間を作らなかったというのはあまりにも情けない。せめて、今日くらいは読んでおくべきだろう。例え、四分の一しか読めなくても。
既に周囲はグールの夜目を持つ俺にとって読書に差し支えるような暗さは無くなり、朝特有の涼しさもあって実に良い読書時間だ。これでやっと近い将来ロウソクモンスターの称号を賜る少年の活躍が読める……いや、もはや実際に視ていると言っても過言ではない。俺の108ある特技の一つ、目で読み込んだ小説の情報を卓越した妄想力で脳内に出力し、あたかも現実に起こっているかのように五感と第六感を偽る『0D映像』によって。欠点は痛覚も再現する事だな。腰が痛い……
やがて物語は少年の旅立ちとなり、第二章が始まる所でルカン兄さんの意識が覚醒に向かっている気配を掴み取る。タイミング良いな、やはり俺とルカン兄さんの相性は抜群だね。と思いながら本に栞を挟んで肩掛け鞄にしまう。ゴグリオスに言って(念じて)持ってきてもらったやつだ。
「うにゃ、む……ニシキ? おはよー……」
「ルカン兄さん、おはよう。良い夢は見れた?」
俺の問いに鈍いながら確かにコクリと首を縦に振った。そうか、それはよかった。
「……あれ、なんか増えてる」
ぼーっとした表情で周囲を見回したルカン兄さんは、ナヴァンに視線を移したところで固まった。そういえばルカン兄さんはヴルムと戦闘した辺りから寝てたね。ナヴァンのことを知らなくても仕方ないか。
「紹介するよルカン兄さん。栄光なる古龍ヴルムと栄光なる古龍フォグザヌの娘、そして俺の名付け娘アニャヴルザルムレインだ。愛称はナヴァン」
「そうなんだ、よろしくねナヴァンちゃん……この森の古龍が一龍から二龍に増えてる。もしかしてニシキが?」
特に驚いた様子を見せないルカン兄さん。まあ古龍と遭遇程度なら『世界』的に見てそう珍しい事でも無いし、この森に古龍がいることは知っていたみたいだから俺が接触していてもおかしくはないと判断したのだろう。ヅィ・スコロペンドラとのアレコレを見ていたのも判断材料の一つになったんだろう。
「ああ。最初はただのワイバーンだったけど、古龍になる寸前の意志が見えたからね。ちょっと手助けして古龍にした」
「そうだったんだ……今会えるかな? 一応挨拶はしておきたいよ」
「良いよ。だけど今は元々古龍だったフォグザヌちゃんとなら会話可能。俺が古龍進化を促したヴルムは人化の練習中」
「早いね。人化の技術を生み出した竜でも成竜になってから練習させるのに」
「ヴルムは頭が良いから。それに、ナヴァンが俺に懐いちゃったから同行させる必要が出てきた」
「それは、ニシキの心にいる堕霊と関係してるの?」
おっと、バレちまったか。
「まあね。ほれ、挨拶せい幼女ならぬ幼龍に取り憑いて二度と戻れなくしたジャック君」
『その言い方やめろ! オレが度し難い変態のロリコンみたいだろ!』
度し難い変態のシスコンが偉そうに。
「ジャック君? もしかして『切り裂きジャック』?」
「やっぱり知ってたんだね。その通りだよ」
『……こりゃ驚いた。本当に妖精王ルカリオンがいるとは』
何? 妖精王?
「ご、誤解だって。『妖精』達のリーダーだから一部の人からそう呼ばれているだけで、ボクはいたって普通の『妖精』だよ」
なんだ、そうなのか。
「ほらジャック君、挨拶は?」
『その口調やめてくれよ、あの恐ろしい笑顔がフラッシュバックするだろ!』
「ニシキの声ってなんでそんなに色々使い分けられるの?」
とかなんとか言って、実は一時期近所のお姉さんに甘酸っぱい憧れを抱いていたくせに。そしてお姉さんが結婚して街を出て行きその穴を埋めてくれた妹にのめりこんじゃったんだよね。ふむ、確かにトラウマとなっていても仕方ないか。
「でも却っ下♪ ルカン兄さん、ヒトって造形が良いと声もよくなるんだ。ヒトにとって良い声っていうのはちょうど良い具合に高い物で、俺は生まれつき半端イケメンだった。その後、度重なる美容促進を重ね第二次性長期が始まる前に去勢したから、喉仏が出来ないまま今に至っているんだ。つまり練習する時間が増えたって事だね。そして俺はループ者であり才人だ。答えとしてはそんなとこだよ」
「なるほど……」
まあ、去勢したことで女性ホルモンと男性ホルモンのバランスが良い感じに出たっつう部分もあるけどな。たぶん常人がやったって同じ結果は出せないだろう。確率的にはそう低くないと思うけど。
「それよりルカン兄さん、話しておかなくちゃいけないことがある」
「なにかな?」
そうやって警戒もなく訊ねてくれるルカン兄さんが俺大好き。
「今日からルカン兄さんとレミスタンさんと古龍夫婦、それとジャック君に長谷川、怜悧さん、中森夫婦とそのパートナー、後サフェリエかな? コイツラ以外に情報規制を布く。当然、該当者も情報を洩らすのは禁止。理由は分かるよね?」
「えーっと、お父さんの敵に情報を渡さないため?」
正解。小さく首を縦に振る。
「規制内容は主に『世界』の情報とジャック君にまつわる全てと俺の邪狂、それにパパの勢力について。そして今後入ってくる流れ」
「最後のは具体的にどんなこと?」
「あぁ、同級生共の目に触れることなく俺の陣営に加わった奴や製作した武器防具兵器あたりだな。言い忘れてたけど、ヴルムとフォグザヌちゃんにはアネルって名乗ってる。本名はもう伝えたけど」
二体きり(数え方が違う種族同士では原則『体』で統一するのがマナーだ)の時はアネルの方で呼んでもらってるけどね。
しかし、この世界の名を伝えた俺にルカン兄さんが返してきたのは、想像以上の厄介ごとであった。
「アネルって……ニシキ、それ勇者の名前だよ!?」
……頭が痛くなってきた。誰か頭痛薬くれ。教師持ってないの? 今度長谷川に作ってもらおう。後、胃薬も。
「……具体的に、詳しく、説明よろしく」
「一万年前、ある占い師がいてね。『フォーチュンテラー』のレベルが13だった」
レベル高! 天才が10程度って話だから、一応信憑性はある占いだな。
それにしても一万年か……この世界の人間の歴史も意外に古いな。パパがこっちに来たのって六千年前だから、その時点で既に四千年以上もの歴史を築いてきたのか。
「そのヒトがね」
ヒトかよ!? どんだけ歴史古いんだよ!
「こんな予言をしたんだ。『世界が虚に侵されるとき、四人の若者が現れる。一人は人々を纏める王の子。一人は種族の垣根を越えた混の子。一人は自然を愛し全ての物に好かれる理の子。そして最後の一人が混沌と破壊をもたらす我が名アネルドラを騙りし狂の子。四人の若者は我が目、我が耳である霊山へ証を携え集い、数多の裏切りと苦難を乗り越え世界を救わん……故に、四人の若者は勇者と呼ばれるであろう』って」
……その『アネルドラ』某、俺じゃね? 未来の俺が過去に跳んでそんな予言をしたとか、そういうんじゃないの? だってほら、四人の若者とか初代FFっぽいじゃん。絶対俺だよ。どうせ証もクリスタルの欠片とかそういうオチだろ? アネルドラといかにもな名前にしたのも、有象無象に『アネル』を騙らせないためだよね? なぁ、そうだと言ってよルカン兄さん!
「ちなみに、彼女だよ」
…………ガァァァァァァァァ!!
「運命のクソ馬鹿野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「……まさか彼女の予言の子がニシキだったとはね。これも運命って奴かな」
ちくしょう、本当に運命とやらは俺を苦難に立たせたいようだな! この俺が、よりにもよって勇者だと!? 俺は魔王になりたいのに!! そっちのほうが寿命も延びて強いし!
「クソッタレが……そういえばその占い師、『フォーチュンテラー』とか言ったな。どうして横文字なんだ?」
若干現実逃避気味に今までの法則から外れた『ジョブ』の理由について訊ねる。
「上位の『ジョブ』の証だよ。『魔法士』だったら『ウィッチ』または『ウィザード』。『裁縫士』だったら『テイラー』。みたいな感じにね」
なるほど、効果の高低を呼び方で区別するわけだな。納得だ。日本語と英語なのは翻訳の結果だろう。
「…………俺がアネルを騙る事まで分かってたっつうと、やっぱ運命かねぇ」
運命は空間に属する事象。運命に見定められたのなら、それはどれだけ先の未来だろうと確実に引き起こされる。無論、それは過去に対しても言えること。空間は基本時間に干渉されないのだから。こんな性質が運命のクソッタレにありやがるから占いというのも馬鹿には出来ん。むしろ実力次第で天気予報より信用できる物になる。黙って受け入れるしかあるまい。どんな実力者であれ――『神』の父『世界神』や『勇者』の長『勇者王』だろうと例外ではない――運命には逆らえないくらいだしな。よく物語で残酷な運命を跳ね除けるとか言うけど、そういう事言う奴は大抵『過去の空間において残酷な運命が執行』された後だから跳ね除けられるのであって、本人の意思とかはあまり関係ない。もっとも、意思を持たなかった場合の運命もよっぽど狂った存在じゃなけりゃ存在するけど。
まあ、運命だけは絶対誰にも支配出来ないからそういう意味では安心出来る。運命を一部変更したり変化を加えたりする力はあるけど、どっちにしろ所属世界に多大な負荷を与えるからルカン兄さんが気づかないはずも無い。敵もそこまで大物じゃないだろう。すくなくとも『世界神』や『大魔王』クラスの力は無いはずだ。
「占いの最初、もう一度聞かせてくれないかな?」
「良いよ。『世界が虚に侵されるとき、四人の若者が現れる』」
「……世界が虚に侵されるって、まず間違いなく現在進行形でルカン兄さん達を悩ましている問題だよね」
「……そういえばそうだね。いくら彼女の予言とはいえそこまでの規模になるとは思ってなかったよ。てっきり『食尽タイプ』のセムセジだと思ってた」
セムセジ……数多の『種族』に害を与える敵性存在、か。まあ、確かに『虚に侵す』と言われたら奴らの『食い尽くすことで種族に害成すタイプ』を思い浮かべるよな。少なくとも奴らの大半は『世界に影響を与える者』じゃないから『能力』頼りの占いでも比較的出てきやすいし。
そういえば俺が想い着いた世界の地球におけるマヤの予言も『大質量の脅威を持って種族に害成すタイプ』のセムセジを指していたという設定だったな。
「……敵は予言を知らないの?」
「それは無いと思うよ。予言じゃなくて物語として受け継がれているはずだから」
なるほど、童話として教訓の形で伝わっているわけか。それなら知っていてもおかしくはないな。
だとすると……
「ラッキーだ。敵は運命を捻じ曲げたり視覚化したりする力の類を持っていない」
もし持っているとしたら俺はこの場にいないだろう。たぶん圧力関係の法則あたりがひん曲がった異次元とも言える世界に飛ばされて死ぬ。『妖精』にすら気づかれないまま事を運んでいた敵が、大昔の予言を物語とはいえ対策を取らないはずがないからな。異世界から尖兵を呼べるような存在なら尚の事。
「俺が勇者っつうのは納得行かんけど、懸念材料が一つ減ったと考えれば良いか」
勇者でも『魔王』にはなれるし、さっさと『未知の世界に影響を与える者』を滅殺して『魔王』になろう。ただ、面倒なのは勇者種をどうやって集めるかだけど……
「って、その予言の証ってどんなものなの?」
この世界にも隠居した勇者種はいるだろうけど、それよりもっと出会いやすいのが予言の若者。後に勇者と呼ばれる彼らだ。いや、彼女らかもしれんけど。
『魔王』になるためとかじゃないけど、そいつらの事も気になる。
「それはボクにも分からない。ただ、彼女は四人の若者が揃ったときに自然と現れるって言ってたよ」
……という事は、まだ揃っていないのか? いや、存在が揃っただけじゃ意味無いか。予言で言う霊山へ集う実力を得る事も大事だし、なにより運命は空間に属する事象。多少のタイムラグがあってもおかしくは無い。
「そうか……ん、分かった。他に似たような伝承ってある?」
重複でもされたら面倒すぎるから一応聞いておこう。
「無いよ」
「良かった……ここで別の勇者に選ばれたとかなったら最悪だからね」
たぶん、勇者の力の反発に体がもたん。パパクラスの肉体を得れば大丈夫だとは思うけど、それまで運命が待ってくれる保障はどこにもない。
「話が大分逸れたけど、とりあえず情報規制については納得してくれた?」
「え? あ、うん。大丈夫。他言しないよ。でもなんでサフェリエも?」
うっ、そういえばルカン兄さんに恋する乙女って事で自然と身内に入れてしまったけど、良く考えれば合理的理由がどこにもない。どうしようかね……
「サフェリエは……なんとなくだよ。俺の直感が囁いている、サフェリエは信用出来るって」
「そうなんだ……」
結局こんな言葉で濁す事しかできない俺を許せサフェリエ。
……しかしルカン兄さん、どことなく嬉しそうなのは朗報ですかな? もしかして両想いなのかなワクワク。
「サフェリエは今なにしてるの?」
「今は寝てると思うよ。その前は俺の指示で薬作りの材料を集めてもらってる」
もちろん嘘だ。サフェリエは俺アドバイスを実践してみようと材料を集めている。集まったら『裁縫士』に頼んで作るそうだ。うんうん、俺のアドバイスが役に立って良かったよ。
「へぇ、そうなんだ」
「そうだよ」
途切れる会話。俺は再び本に視線を落とし、ルカン兄さんは何やら考え事をしている。ジャック君は早々に俺とルカン兄さんの会話に飽きて俺の心の中で眠っていた。一体いつの間に……
それから少し経ってルカン兄さんはフォグザヌちゃんに挨拶をしにいった。一緒にいるヴルムが人化に成功していたら連れて来て欲しいとも言っておいたので俺はここで本を読む。
と思ったんだけど……
ぷるぷる
「どうしたエース・スライムことスラリン。俺に何か用か?」
スラリンが俺の前で摩訶不思議な踊りを踊っている。体をクネクネぷるぷるグニョグニョと変形させ、見る者によっては素晴らしいと評価できるスライム独特の舞だ。ここまで自身の粘体を制御できるとは、流石魔王直属のスライム。
ぷるぷる
「何を伝えたいのかはイマイチ分からんけど、踊りは見事だった。パパ喜んでるよ」
ぷるぷる!
さらに動きが激しくなった。主を褒められて嬉しいのだろう。可愛い奴だ。
ぽよぽよ×2
「おう、二体ともスラリンのように立派なスライムになるんだぞ」
ぽよぽよ!×2
「……ある意味で幻想的な光景ね」
ビクッ
な、なんだ怜悧さんか……もう眼が覚めたのか?
「おはよう、錦君」
「おはよう、怜悧さん。気分はどう?」
「首が痛いわ」
だろうな。いくら弱めだったとはいえヒトが気絶するくらいの威力はあったんだから。
「悪かったな、寝てもらうためとはいえ乱暴な手を使って」
「本当よ、責任はとってもらおうかしら?」
「結婚関係以外ならどんな責任でもわっちいぃぃぃぃぃ!?」
あつぁあつぁあつぁあつぁ熱ぁ!?
「ふふ、これで許してあげる」
「熱つつ……ライターか?」
「ご名答」
そう言って怜悧さんは安っぽい百円ライターを手の中で弄ぶ。なんて危ないことをしてくれたんだこのヒトは……って。
「無駄遣いしたってことは、力の感覚が掴めたのか?」
「ええ、そうよ。リルムルスが言うには普通の物質の練習で感覚が掴めるのは天才だけらしいわ。ね?」
「ええ、その通りよ。でもイノウ様に当たるのは良くないわよレイリ」
ん? ああ、怜悧さんのパートナーか。
「いや、罪に対して罰は必要だ。俺グールだし、ライターの火程度なら火傷もしないから良いよ」
「でも熱かったでしょう? 謝るわ」
お互い頭を下げる。どっちも禍根は無いので形だけだ。
「しかし、凄いな。いくら『ジョブ』とはいえ質量エネルギーまで溜められるようになるとは」
『ジョブ』『蓄力士』とは、力を溜める能力だ。力とはエネルギーの事であり、極めれば物質を補充する事だって可能なのだ。なのだけど、それをレベル1でやりとげるとは……まあ、今回の修行は完全に補充するのではなく既にある物質を一箇所に溜める段階だから難易度は下がるけど。
ちなみに、土とか水的な意味の質量エネルギーならわりと簡単に生める。
「それより、何しに来たんだ? というか他の同級生共はもう起きたのか?」
「早起きな人たちはもう起きているわ。アタシがここに来たのはただの暇つぶし」
そう言って極自然にナヴァンを撫でる怜悧さん。俺とは違うも優しげな撫で方に目を細めるナヴァン。嬉しそうだ。
ナヴァンの異様な姿でも気にせず撫でる怜悧さんの姿はあまりにも自然すぎるけど別段驚きもしない。同好の志だし、最近の外国文学ではドラゴンが味方にいることもおかしくないからな。
「紹介する、あの龍達の子供のナヴァンだ。見ての通り体が弱いから、なるべく誰にも言わないでおいてくれるとありがたい。ナヴァン見たさに集まられても困る」
さりげなく口止め。まあ実際物珍しさで来てもらってもナヴァンにストレスが溜まるだけだし、方便としては申し分ないだろう。
「ええ、分かったわ」
「伝えて良い奴もいる。『薬士』の長谷川と『召喚士』の中森、それに『調理士』のな、長沢だ」
一瞬中森妻と言いかけた。危ない危ない、まだ婚約は発表してないんだから気をつけないと。
「りんりんは? 『命術士』だから今のラインナップなら加えても良いと思うけど」
「そのりんりんとやらが誰かは知らんけど、やめといたほうがいい。ルカン兄さんもいるし、ナヴァンの虚弱体質は回復の類じゃ意味無いタイプの物だから咄嗟に体調悪くなった時にかけられて逆効果になったら目も当てられない」
俺の説明に納得したのか一つ頷いてナヴァンに意識を向ける怜悧さん。ま、この様子だと心配することも無いかね。
さて、同級生共は起きているか。だったらそろそろ行くかね。中森夫妻の事やらヴルムとフォグザヌちゃんの事やら色々説明しなくちゃいけないし、『ヴィルキット』サーカス団という建前の為の人材を特別扱いする理由も言わなくちゃならない。沢山のヒトの前に出て堂々と説明するのかと思うと気が滅入るけど、やらなくちゃいけないのだから仕方ない。
隣でナヴァンを撫でる怜悧さんを見ながら、愚痴のように心の中で呟く。
はぁ……早くパソコン使いてぇっつか小説書きてぇ……
USBは見つかったのですが、諸事情により毎週月曜朝7:00の更新とさせていただきます。ちょっと他の小説に刺激されて休憩的な意味で書いていた物がなんとか形になりそうなので、もしかしたらそちらも更新するかもしれません。




