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三回目に起こるイレギュラー  作者: Dark Revenger
二章:文明は斯く偉大なり
27/50

第二十七話:なんとなく貴重な邂逅

 前回に引き続き二龍目、来ます!

 もっとも、最後の方でチラっとだけだけどね!

 さて、いつまでも無邪気に喜んではいられない。地上についたからには説明しないわけにもいかないだろう。


「その前に……すまないな、トリゼェイソン、キャステラウム。せっかく来てもらったっつうのに」

キシキシ

キシ


 いや、気にするなと言われても……まあいい。


「ありがとな。それじゃ、しばらく周辺の角突き兎を狩っていてくれ。くれぐれも、角突き兎以外には手を出すなよ」

キシキシ

キシ


 頷くように頭部を動かしてすばやくこの場から離れる二体。オークでも良さそうだけど、美味いかどうか分からん。不味かったら効率的には正解だとしても士気的にアウトだ。なら、味は兎とほぼ変わらないアルミラージの肉を集めるのが正解だろう。幸い、長沢には兎肉の焼き方を教えたし、実際に成功している。失敗する可能性があるリスクより数撃って当たらないリスクを取る方が賢い選択って訳よ。


 っと、そういや武器とか散らかしたまんまだな……


(ゴグリオス、今からイメージする場所に他のゴブリン達と共に来い。ちと掃除を頼みたい。回収したものはひとまとめにしておいてくれ)


 具体的な言葉が伝わったかどうかは知らん。でもなんとなく俺の意思とかイメージが伝わったような気がする。相変わらず世界の法則さんは働き者でご苦労様です。


 ちなみに、ゴグリオス達に装備の回収ではなく掃除をしてくれと頼んだのは、この広場が良い訓練場になりそうだからだ。上位の龍が根城にしていた場所に他の魔獣がノコノコと近づくはずが無いし、ある程度の広さが確保出来るから同時進行で監督付き訓練を行える。今回は俺直属の曲芸師(ピエロ)を作る必要があるし、拠点より少し離れた場所にあるここはうってつけなのだ。


「カ、カ、カン、シャ……ス、ル。ア、ネ、ル」


 そこまで考えていたとき、不意に白いワイバーン……いや、まだ前足は生えてないけど理性は芽生えたし、古飛龍と呼ぶべきか。

 白い古飛龍が頭を垂れ、たどたどしい日本語で感謝の意を示してきた。


 俺はそれに気にするなと手を横に振る。


「お前が守りたい物。それが生物なのか別のものなのか分からない状況だったんだ。当然の判断だよ」

「ア、ネル……ハ、カ……シコ、イ、ノダ、ナ」

「まあな。他のヒトどころか人間や神、悪魔や竜ですら俺と並ぶ賢知の持ち主はそういないだろうと断言できる」


 実際、いくら賢かったり頭の回転が速かったりしても所詮は世界規模の話。俺はその先、『世界』の事を自分で見つけ出したんだ。性格上あまり傲慢な態度は取れないけど、これだけは、な。


「で、今の感謝でお前が守りたいものが子供か番だって分かった。案内してくれ」


 俺がトリゼェイソンとキャステラウムに周囲の『魔獣を狩れ』ではなく『角突き兎を狩れ』と命令したのは、つまりそういう事だ。古龍となる前の龍の子ならまだ魔獣の範囲内だし、トリゼェイソンとキャステラウムが勘違いしてしまう可能性もあった訳だ。もっとも、理性発生から五分も経っていない内にその事を理解する飛竜も大概賢いのだけど。


 ていうか、老齢の竜でも普通は本体のままでは人語は話せない。その点を加味すれば、この古龍がいかに特別な個体であるかが察せられる物だ。まあ『白髪赤眼』の力……『灰の原色』を応用してるんだろうけどね。流石は竜の上位称号『ドラゴン』と並ぶ古龍へ成る寸前の龍だった奴だ。


「ワカ、タ。コッ、チ」

「ああ、サンキュー。ちなみに、俺は角突き兎の事をアルミラージと呼ぶ。覚えておいてくれ」


 日本語が覚えられたからと言って全ての単語を知れる訳ではない。進化によって人語を得る種族は多数存在するけど、古龍はその中でもかなりアバウトで、初めて聞いた言語の文法と単語がランダムでインプットされるだけなのだ。それだけでも十分凄いけど。


 ちなみに、代表的なのが天使や小悪魔で、神や悪魔になると古龍と同じように自動的に言語を取得する。まあ、存在がどちらかと言えば俺らよりよっぽどオカルトに近いんだからそれ相応の特性があっても不思議じゃないよな。ヒトだって、誰に教えられずとも天才は独学で学んでいくものなのだから。


「ア、ル、ミラ、ァジ?」

「そうそう」


 なんて言葉を最後にお互い無言で歩き出す。古龍となってまだほんの七分も経過していないこいつに無理をさせる訳には行かないから、打倒なところだろう。まあ、その、ちょっと、ほ~んのちょっと、尻尾とか、翼とか、鱗とか、撫で回すくらいなら対してストレスにもならないし良いよね!


「アネ、ル…………」


 ビクッ!

 すみません! やっぱセクハラは失礼でした! ゴメンナサイ!


 と、わりとマジで心の底から謝罪の念が湧き上がり、思わず片膝付こうと思った、直後。


「ワ、レニ……キョーミ? アル、ノ、カ?」


 と。

 この白い古飛龍さんが言ってくれたではないですか!


「ある。すっげー興味ある。出来るならナデナデしたいし抱きつきたい。でも今それをやっている時間が無いからせめてセクハラは許して!」

「ナ、デナ、デ? ワカ、タ。ス、キニ……シ、ロ」

「ナデナデって言うのはこれの事だ。それより言質取りました! ヒャッハー!」


 ナデナデの意味を実演で教え、直後に世紀末な叫び声を上げて白い古飛龍の翼や尻尾や鱗を一心不乱に撫で回す! どうもグールには申し訳程度の夜目があるらしいから近くによって見る分には問題ないし!


 うみょぉ! これが……本物なのか! これは脳内だけでも詳しく描写せねば!


 まず翼。

 ワイバーンらしく前足と一体化しており、胸の筋肉と捩れて繋がっているように見える。腕部に相当する部位は平均的なヒトの男ほどの長さでくの字に折れ、その先は二メートル程もある。先端部分に手首らしき器官があり、なんと後ろ向きについているらしい。その先はコウモリと同じで、長く発達した指と指の間に薄くも強靭な皮膜が形成されている。驚いた事に指は翼の先端から伸びていているらしく、先端からやや外れた角度に広がる親指、それから少し間をおいて人差し指、翼の真ん中を支える中指、胴体に一番近い位置に伸びる最も長い薬指がある。普通のワイバーンはくの字に折れたところに手首があるものだけど……なるほど、テコの原理を無視出来るほどの筋肉の質を持つ事で圧倒的な握力を得ている訳か。側が後部を除いて分厚く膜を保護している事もあの飛行能力を生む要因の一つであろう。ただし、やはり翼は翼という事で爪はついてないようだ。

 腕部の感触は硬質ながら柔軟で、筋肉の熱が心地よい。膜の感触はどんな布をも超えるとだけ言っておく。正直俺の語彙じゃ説明しきれん。流石は未知。


 続いて尻尾。

 こちらは背中の延長といった感じで、長さはなんと三メートルほどもある。どうやら逆鱗が尻尾にあるタイプらしく、一箇所だけ逆向きに生えた鱗があった。逆鱗部から徐々に鱗に覆われた面積が増えていき、九十センチほど離れると全面が鱗に覆われていて、まるで白蛇のようだ。

 驚いた事に先端部には出し入れ可能な副翼があり、許可をもらって広げてみると左右それぞれ一メートルもあった。ふむ、強度はそれほどでも無さそうだけど指と同等の器官がそれぞれ九つもあった事から操作性は相当な物だと思われる。翼の質といいこの機構といい、長距離飛行にも対応しているな。半覚醒した『白髪赤眼』のワイバーンだったからなのか、それともこの世界のワイバーンの標準的な特徴(装備)なのか。少し興味が湧いたな。


 そして鱗。

 どうも蛇の鱗と似たような感じで、鱗の一枚一枚が独立した基部から生えている。なるほど、一箇所に攻撃が当たってもその部位だけが綺麗に剥がれ落ちるから飛行中に狙撃されても問題ないという事か。実に機能的だ。

 形状は蛇同様槍の穂先を二つ組み合わせたようなひし形で、頭から尻尾にかけて重なるような配置だ。腹面に鱗はほとんど生えておらず、首にそれらしき硬質な部分があるのみである。強度は恐らく鋼を簡単に上回り、俺の手持ちじゃ傷つける事は出来なさそうだ。たぶんドロロなら鱗と鱗の隙間をつくとかいうふざけた精密度の攻撃が出来るから通るだろうけど。

 触り心地は結構良い。鉄とも木とも違った生物的な堅い感触で、程よく手に引っかかるザラザラ感がまたなんとも言えない。ただ、思いっきり叩きつけられたらとっても痛そう。


 結論。

 カッコイイ。


「ツ、ツ、イタ。コ、コガ、ワガネ、ドコ、ダ」


 ……おお、もうそんな時間か。ふむ、しかし有意義だった。実に有意義だ。どれだけ有意義かって言うとガンダムにMCを施したレベル。


「案内ありがと。この洞窟の奥にいるんだな?」

「アア。ソ、コガ、イ、イ、イリ、グ、チ、ダ」


 入り口? つまり、この洞窟の奥自体にいる訳ではないという事か? というか、ワイバーンの巣が洞窟にある訳ないか。ならこの洞窟は……なるほど。


 洞窟の上を見ればちょっとした山がある。見たところ結構大きそうで、巣を隠すにはぴったりな場所だ。

 大方、洞窟と山頂にそれぞれ入り口があり、その中間地点に巣を作っているのだろう。馬鹿正直に山頂に作ればグリフォンやドラキー辺りが白いワイバーンの留守を狙って子供を攫うだろうし、洞窟の中に作れば今度はヅィ・スコロペンドラの餌食だ。やはり龍の時点で賢い個体だったんだな。


 そのまま俺と古飛龍とで洞窟の中に入る。

 龍の住む洞窟と聞くとモンスターやトラップ、宝箱を想像する物だけど……やはり無いか。当然と言えば当然だけど。まあ、この森自体にヒトが入り込まないらしいし、この洞窟だけにそういうのがあるとも思えん。もしかしたら他の地方のダンジョンにはあるかもしれない。一応期待しておこう。夢を失ったら人生終了だ。


 やがて行き止まりにたどり着いた。見上げれば火口のように空いた天井が目に写り、その途中に横穴のような場所を見つけた。


「ア、ソコ、ガ……ワガ、ネド、コ、ダ」

「ふむ……若干上向だな。下から登ると大変そうだ」

「ダ、カラ、ケモ、ノ、ヤ、コオ、ニガ、ハイ、リ、ヅラ、イ」


 道理だな。飛行系生物にとって理想に近い寝床だろう。


「アネル、ワガ、セ、ニ、ノル、ガ、イイ」

「光栄だ。そんじゃ、乗せてもらうとするよ」


 白い古飛龍が左翼を下げて俺が登りやすいよう体を傾ける。尻尾や翼の長さに見合う体であるため、若干登るのに苦労したけどなんとか首にしがみつく事が出来た。乗りやすさは翼がピカイチだけどそれすると白い古飛龍が飛びづらいだろうからな。幸い、なんとかギリギリ掴めるくらいの太さだったから問題は無い。


 白い古飛龍に揺られるまま上昇を続ける中、ふと思った。

 ――名前が無いと不便だな。


「お前、名前あるのか?」


 というか、名前も聞かないで友とか。俺も大概馬鹿だな。


「ナ、マエ……ナイ、ナ」


 むむ……やはりか。元々名前が無くても問題ない種族だったし、当然だろう。


「アネル、ガ……ツケ、テ、クレ」


 だけど、こんなことを言ってくるのは予想外だった。


「良いのか? 名前っつうのは個体に意味を与える大切な物だ。それを他者である俺に任せるつもりなのか?」

「ワレ、デ、ハ……ゴイ? ガ、タリ、ナイ。カ、シ、コキ、アネル、ナラ、ヨキ、ナヲ、ク、レル、ダロ、ウ?」


 ほう、そこまで言ってくれたか。なら、期待に答えるのが粋ってもんよ。


「ならば……白き古飛龍よ、汝に“ヴルム”の名を授けよう」


 勿論のこと虫ではない。

 とある、竜の系譜だ。分かる人には分かるだろう。な? ウィルフィール。あ、もう主導権奪われないからな。


(ケチ~)

(やかましい)

「ヴ、ルム……ヴルム。ヨキ、ヒ、ビキ、ダ。アリ、アリ、アリガ、トウ」

「そう思ってもらえれば光栄だ」


 成り立てとはいえ、ヴルムは古龍だ。それがどれだけ希少で偉大なのか、この場には俺とヴルムしかいないのだから語る必要は無いだろう。ルカン兄さんがいれば嬉々として解説したかもしれないな。


 その古龍に、名を付けた。

 これで興奮しない奴は『ハエレシス』じゃない。もしくは竜の系譜が嫌いな奴だろう。


 それから少ししない内に俺たちは横穴へとたどり着いた。


「コノ、サキ、ニ、ワガ……ツマ、ト、マナ、ムスメ、ガ、イル」


 ほう、ヴルムはオスなのか。そして子龍はメス、と。


「アネル、コノサ、キハ……ワガ、ドク? デ、イッパ、イ」

「満たされている、のか? 満たされているというのは、その空間の中にある物がいっぱいある状態の事だ」

「ソウ、ダ。シバラ、ク、イキ、ヲ、トメ、テ、クレ」


 なるほど、防衛機構としては最適だな。だから下りるよう指示をしなかったのか。


「了解。いつでもOKだ」

「オー、ケイ……? ワカッ、タ、トイウ、イミ、カ?」

「ああ、そうだ。ちなみに、OKというのは俺たちが今話している言葉ではなく英語と呼ばれる別の言語だ」

「オーケイ……デハ、イクゾ!」


 その宣言が聞こえたと同時に思いっきり息を吸い込み呼吸を止める。肺活量は少ないけど、我慢する力なら一角の物だと思っている。問題ない。


 そう考えたのは既に加速に入ってからだった。ヒュ~、これが古飛龍と飛ぶ感覚なのか。この風……想像以上に気持ち良い!

 あ、戦いを忘れたりはしません。


 しかし……凄いな。見た限りだと白い毒沼が二十メートルは広がっている。恐らく毒のブレスを応用した仕掛けだろう。沸点が低いのか、ボコボコと泡が立ち毒々しい蒸気が沸いている。なるほど、息を止めろとはこのことか。これなら地を這う魔獣も空を飛ぶ魔獣も等しく命を刈り取られる事だろう。


 だけどさっき戦った時は蒸発していなかったよな……あ、そうか。平地とこの場所、若干だけど気圧が違う。その若干程度で融点が変わるような物質くらい異世界に存在していても不思議じゃないだろう。それに、竜の系譜のブレスはブレス袋から生成される半能力物質だ。もっとも、『白髪赤眼』+龍+ブレス=サンプルが足らんので正確な判断は出来ないのだけど。


 やがて白い毒の沼を抜け、斜め下に進路が変わった。なるほど、気圧が高くなって毒霧が液体に戻り空気が清浄になる、と。

 そして予測どおりというかなんというか、再び上昇するヴルム。タレ落ちてくる毒もここで防がれる、という訳だな。恐らく本能で作ったのだろうけど、良く考えられている。改めて自然の驚異を感じるな。


「モウ、イキヲ、シテ、モ、イイ」

「……ケハっ……ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」


 ……う~ん、やはりグールになっても心臓の弱さに変わりは無いか。不自然に心臓がバクバク言ってるな。相変わらず。


 どうも俺の心臓は一定の年齢に達すると診断書に書かれない程度に弱るらしい。なんかの病気かと思ってたけどグールになっても治らないって事は、たぶん呪いに近い能力だな。大した強度じゃないから何らかの条件に当てはまった奴に自動でかける、設置型の能力だな。うちみたいな田舎にそんなしょうも無い物があったとは……最初の人生の死因は心臓発作じゃなくて呪殺か。


「ドウ、シタ? カラダ、ガワル、イ、ノカ?」


 二十秒経ってもまだ息を整え続けていた俺にやや心配そうな声音でヴルムが訊ねてきた。うん、とっても嬉しい。


「だ、だい、ハァ……だい、だいじょぶ。いつもの、ハァ、事だから」

「サン、ケツト、イウ、ショ、ウ、ジョウ、ダナ。カゼ、ノ、マジナ、イヲ、カケ、ル。ラクニ、ナルダ、ロウ」


 言うが早いか、ヴルムを中心に風が巻き起こった。これは……空気を圧縮して酸素濃度を上げている、だと? どんな魔力と制御力だよ……ありがたいけど。


「ハァ……ハァ。ふぅ……ありがと、大分楽になった」

「ソウ、カ……ヨカ、ヨカッ、タ」


 きしし……嬉しいなぁ。自然と笑みがこぼれるよ。

 なんだろう、このルカン兄さんやパパと接している時とはまた違う多幸感は。あれかな、とんでもなく憧れていた存在に出会えたばかりかあまつさえ親しくしてくれるという、通常ではありえない状況が生んだ奇跡の瞬間だからかね? あえて例えるのなら大魔法使いと邂逅した見習い魔法使いと言ったところか。いや、神に出会えた信徒? それともJリーガーに出会った野球少年? どれに近いにしろ、悪く無い。


「……おお、よく見て見ると所々光苔と水晶があるな。ヴルムが集めたのか?」


 内心の照れを隠すように話題転換を試みる。もっとも、事実気になっていたのだけど。


 水晶と言ってもそう綺麗な物じゃない。

 恐らく元々の透明度も大した事無い代物に皮脂か何かが付着してさらに白く濁った色をしている。元の世界で売りに出したとしてもせいぜい300円程度で騙し売れたらラッキー程度の価値しか無いだろう。


 だけど、どうしてか俺にはこの水晶群が無価値な物だとは思えない。まるで何か風水的意味を持つ何かのような……


「イ、イヤ。ワガ、ツマガ、アツ、メタモ、ノ、ダ。イマダ、リセ、イノ、ナ、カッタ、コロ、ヨク、コワシ、テ、ツマニ、オコラ、レタ、モノダ」


 そう言ってゴロゴロと空気を震わすヴルム。もしかして笑っているのか?


 って、そうじゃない。

 今なんつった?


「奥さんに……怒られた?」

「アア。ツマハ、カシコ、イ、メス、ダカラ、カチ、トヤラ、ガ、ワカ、ッテイ、タノ、ダロウ」


 …………龍の嫁が水晶の価値を、ね。

 断定は危険だけど、恐らく古龍だな。


「ツマ、モ、リセイ、ヲ、エタ、ワレヲ、ヨロコ、ンデ、クレル、ダロウ。コレモ、アネル、ノ、オカゲ、ダ。カンシャ、スル」

「いいや、お前だって後三十年もすれば自力で古龍になっていただろうさ。まあ、確かにこの手の話は早いほうが良いだろうけどな」

「チガイ、ナイ」


 ヴルムはゴロゴロと、俺はきししと笑い合う。

 無垢な心を忘れた現代人には嫌味かただの世間話程度に聞こえるだろう。しかし、ヴルムは穢れを知らない新たな古龍。それは経験的な意味でもあり、今のヴルムはユーモアという概念は知っていてもどのような言葉が面白いのかどうかは判断がつかない状態だ。竜の系譜は例外もいるけどヒト以上にユーモアを好む種族。その傾向は、子竜にさえ適用されるほどに。


 だけど、それは理性ある竜や古龍である場合の話だ。

 ほんの二十分前まではただの上位龍だったヴルムが、なんてことの無い話にユーモアを感じた。それはヒト……いいや、あらゆる人間が思う以上に凄い事なのだ。少なくとも、竜の系譜にとっては。


 俺か? 俺はそんな凄いことを引き出せた事の嬉しさと、俺なりのユーモアを解してくれる親友レベルのこの古龍との出会いに喜んで、な。


 そんな感じのやり取りを何回か繰り返しながら歩き続けること十分。

 前方に、強い気配が感じられた。


「モウスグダ。ワガツマト、マナムスメガ、イル」


 大分日本語も流暢になってきた。やはり古龍は賢い。それこそ下手な竜より。


「くふぅ……楽しみだぜ。ヴルムの奥さんと娘さん、さぞかし美龍さんなんだろうなぁ」

「……ソウダナ。ツマハトモカク、アネルナラバ、ムスメヲヤッテモ、カマワヌゾ?」


 うお……マジか。一瞬「不束者ですがよろしくお願いしますお義父様」とか言いそうになったぞオイ。いや、流石にそれは伊能錦としてどうなんだ? と思い返したので言わないけど。


「おいおい、娘さんの意向も関係無しにそういう事を決めるもんじゃねぇぜ? それより、早く会わせてくれ」

「オーケイ」


 それ、よっぽど気に入ったんだな。口癖になるんだろうな……だけどそれがいい。


 さてさて、いくら光苔と夜目があるとはいえ、流石に洞窟の中じゃあまり遠くを見るには適さねぇ。つまりヴルムの奥さんと娘さんはまだ見えないということだ。ある程度近づけばヴルムが魔法で光を出してくれると言うし、サプライズ的に考えて滅茶苦茶楽しみだぜ☆




 ……と、思ったのがいけないのか。


「あなた! 何で人間如き……それに日本人なんて……夫から離れろ! 腐った人間!」


 どことなく聞き覚えのある、怨念の籠もった、日本語が、聞こえたと思った瞬間……


 光苔に照らされた、黄土色の酸液が食らい尽くさん勢いで俺に迫ってきた。

 ――ほんの一瞬見えた龍の体は、とても見覚えのある黒色をしていた。


 なんか話が暴走してきたのであらすじ変えときますね。興味があったら見てやってください。

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