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三回目に起こるイレギュラー  作者: Dark Revenger
二章:文明は斯く偉大なり
19/50

第十九話:なんとなく恐ろしげな検証

 今日は間に合いました。いつも時間が定まらなくてすみません。

 さて、そんな訳でやってきましたスライムの池!


「……相変わらずしっちゃかめっちゃかだな」


 二十一個もの核を内包した蠢く薄水色の液体を見ながらポツリと呟いた。流石のスパコンでも入力が重なり続ければエラーを発生させるか。二、三体なら大丈夫そうだけどな。


「とりあえず核の回収だ。スラリン、任せてもいいか?」

ぷるぷる


 ルカン兄さんの護衛としてついてきたスラリンに核の回収を頼む。前のような緊急事態ならともかく、今はスラリンという上位存在がいるのだ。使わない道理は無い。


 それに、スライムの種族特性は恐らく世界毎で異なる。魔素の塊であるかもしれないし単にナメクジとかが粘液状に進化したとか、ルーツも様々な可能性だってある。正直データが足りないから下手に配下に入れようとして逆に食われるとか簡便願いたい。


「キャステラウムとイルトミルジスは周囲を警戒しつつ待機。中森は周囲の魔獣の排除だ。トリゼェイソンはその護衛。ただし、出来るだけ手を出すな。骨折程度は許容範囲内だ」

キシ

「クゥクゥ!」

「こ、骨折は嫌だけど……了解」

キシキシ


 うむ。皆忠実で何より。


「ニシキ、ボクは何をすればいいの?」

「ルカン兄さんはここにいるだけで良いよ。スラリンもルカン兄さんが近くにいないと言う事聞いてくれないしね」


 そう、スラリンが俺の言う事を聞くのは単に俺を気に入っただけじゃなく、俺の指示がルカン兄さんの為になると判断しているからだ。ただし、ルカン兄さん直属の護衛ということもあり、ルカン兄さんが離れればスラリンもそれに付き従い離れていく。作業を進めるためにはルカン兄さんをこの場に留めて置かなくてはならない。


「分かった。ニシキがそう言うならここでスラリンが仕事を終わらせるまで待つね」

「うん。そうすると良いよ」


 そう言ってルカン兄さんは俺の肩に座る。実際、ルカン兄さんは戦闘能力に劣る『妖精』だしジョブも『命術士』と戦闘向きではないため、よっぽどの事が無い限り単独行動は厳禁だ。そのためのスラリンには仕事をしてもらわなくちゃいけないし。


 そんな訳でスラリンはごちゃまぜとなったスライム達へズルズルと近づいていった。上位下位はあれどちらも同じスライム。どんな方法で核を回収するのか。見ものだな……


「そういえば、スラリンってどんな種族なの? ただのスライムとは思えないけど」

「スラリンは上位雷電粘体竜エレクトリック・スラゴンっていうオリジナルの種族だよ。雷獣と雷電竜を喰らったのが決定的で、進化したんだよ」


 ほぉ! 竜殺しか! どうりで性能が桁違いな訳だ。竜殺しの呪いで半竜になったスライムか。あるいは魔王種にすら匹敵する力を持ってるんじゃねえか?


「それは凄いね。『ジョブ』は『スライム』のままなの?」


 ちなみに、よっぽどのことが無い限り一度なった『ジョブ』と他系統の『ジョブ』につくことは出来ない。そこまで世界のキャパが大きいわけではないとか。


「ううん。『上位粘体竜』っていうジョブ。『スライム』の上位互換のさらに上だよ」


 なるほど。やはり竜は付く訳か。

 というか、『妖精』の種族特性って便利だな。竜と龍の違いもはっきり分かるし。


「お、動くみたいだ」


 一言でお喋りを終わらせてスラリンの動向を観察する。

 俺たちが有意義な雑談を交わしている間に何かしら準備をしていたのか、深い青色の体にパリパリと黄色い雷が走る。何やら電撃のお姫様のようなご様子だけどもしや……

 ズバン!

 あっという間にスライム達の池が五割ほど消失した。なんだ今の。レーザーか何かか?


「今のは雷電竜のブレスだよ。前に見たときより消耗が無さそう」

「たぶん手加減しただろうね。核周辺だけ残しているし」


 それでもまだぐっちゃになったままのスライム達。しかし、支配圏が狭まり指令重複濃度とでも言うべき密度が濃くなったためかもうピクリとも動いていない。

 これならルカン兄さんでも核が採れそうだ。溶けるから絶対させないけど。


 その思いはスラリンにしても同じだったのか、濃い青色の触手を伸ばしてさっさと核を回収してしまった。


ぷるぷる

「ありがとう、スラリン。良い子良い子」


 まるで俺に対するイルトミルジスのようにルカン兄さんに頬(スライムだから正確な部位名は知らん)ずりして頭を撫でてもらうスラリン。ぐぬぬ……働かざるものなんとやらだけど羨ましい。


ぷるぷる

「お、サンキュ」


 とはいえ、本当に働いていないのだからそんな感情は理性に埋もれて消えた。

 スラリンは体を伸ばして俺の足元にスライムの核計二十一個を置いてさっさとルカン兄さんにじゃれつきだした。おのれ粘体生物……


「クゥクゥ!」


 なんて歯軋りしながらスラリンを見つめていると、どことなく不機嫌で可愛い鳴き声が聞こえてきた。発生源を見ると、イルトミルジスはぷいっとそっぽを向いてしまった。


「ああ、大丈夫だよイルトミルジス。俺がイルトミルジスに向ける愛情はイルトミルジスだけの物だ。だけど嫉妬する姿も可愛いな」


 実際、ルカン兄さんに向ける愛は家族愛だし。スラリンに対する嫉妬も姉に兄を取られてしまった的な自分で言うのもなんだけどかわいい類の嫉妬だからな。


「よしよし……さて、ここからが本題だ」


 まず、スライムとはどういう性質を持つのか? それをまず調べなければいけない。


「ルカン兄さん、しばらくスラリンと遊んでて。また何か頼むだろうし、長年放っておいた分、思いっきり遊んであげて」

「え、良いの? でも……」

「じゃあルカン兄さんは作業の邪魔。だからどっかいってて……こういう建前は?」

「うっ……分かった。それじゃ、行こうかスラリン」

ぷるぷる

「声が届かない場所には行っちゃだめだからねー!」


 ……まったく、遊びたくて遊びたくてたまらないって顔してたくせに。もうちょっとわがまま言っても良いんだよ? ルカン兄さん。


「さて、核同士だとどういう反応を取るのかね?」


 足元に置いてある核の内二つを手に持ち、擦り合わせてみた。特に変化は無し。パパからもらった上質な紙で作られたメモ帳に記録。こういう一見役に立たなさそうな実験結果もきちんと記録する事が新兵器開発への第一歩だ。


 次は一個だけ地面に叩きつける。それなりに全力で叩きつけたにもかかわらず砕けたりはしていない。意外に頑丈、と。

 斬撃耐性はどうだ? 腰からナイフを抜いて核に刃先を押し付ける。あ、傷ついた……おろろ? 色が灰色に変化した。こりゃ……劣化か? 一応サンプルとして確保しておこう。


「衝撃耐性はあるけど斬撃耐性は低い。さらに傷がつくと変化する、と」


 ふむふむ。分からない事だらけだって事が分かったな。これ以上はガルハイシュに任せよう。


 ああ、念のためそこらに散らばったスライムの体液に触れさせてみるか。


「さて、どんな反応が……」


 核の一つをポーンポーンと野球ボールみたいに投げ上げ掴み取り、スライムの体液へと投げ入れた。すると、スライムの核がピクリと振るえ、周囲の体液が核に集まりだした。へぇ、まだ死んでなかったのか。まあとりあえず回収。復活されても面倒だし。


 ……いや、この際復活させてみるか。トリゼェイソンやイルトミルジスもいるし、一匹だけならなんとかなるだろ。


 思い立ったが吉日。拾いかけた核から手を離し、しばらく様子を見る。


 ジーーーーーーーーーーーー…………




 約三十分後。


キシ

「お、やっと復活したか」

「くぅ……くぅん…………」


 キャステラウムに促されてようやく気付いた。

 最初の十分は観察し続ける事が出来たけど、すぐに飽きてナデナデスキル(レベル5)でイルトミルジスを可愛がりまくった。兎なのに艶めかしい鳴き声をもらしながらピクピクと痙攣している姿は俺の劣情を刺激するのに十分だ。おい、俺もう紛う事無き変態じゃん。今更だと分かってはいるけどちょっと恥ずかしいな……


ぽ、よ……ぽよ


 劣情を振り切り復活したスライムを見ると、ツヤハリのある普段の姿とは打って変わりドロドロの……現代日本でもおもちゃ屋とかで普通に売っている冷たくてネトネトで化学物質満載のスライムみたいな惨状になっていた。腐った巨神兵みたいだな、おい。


「……殺してやるか」


 なんとなくぴくぴくぽよぽよしている姿が屈辱を感じているみたいでとても可哀想だ。仮にスライムに性別があったとして、このスライムがメスだったらこんな屈辱に耐えられないだろう。いやヒト換算の考えだけど。


「往生してくれ……すまんかった」


 実験の為とはいえ、屈辱的な姿を見せさせたのだから謝罪は必要だ。例え相手がスライムでも、いや、ヒトじゃないからこそ、幻想を追い求めて小説家になった俺は誠意を持って対応しなければならないのだ。単に情が移っただけとも言える。


 再び腰からナイフを引き抜き、眼下のスライムの核を貫く。腐っても酸の体液がナイフに僅かなダメージを与えるだろうけど知った事ではない。こっちの世界に来てから何回も酷使したせいで大分ガタが来ているため、しばらく戦闘では使わないつもりだからだ。ええっと……そう、伊藤だ。伊藤が俺レベルの鍛治師(と言ってもせいぜいが鋼を鍛えるくらいしか出来ないけど)になった時にでも修理を頼……………………


 ……おい。


ぽよぽよ

「なんの変哲も無く復活してんじゃねぇよ……」


 しかも配下になってるし。魔獣を多く従えて慣れたのか、そこら辺の感覚が敏感になっているらしい。


 意表は突かれたけど成果は上々か。


「ふむ……一度体液から核を引き剥がしてからトドメを指す? いや、それだとさっき変化した核のスライムも配下にならなければおかしい……そうか、核が白い状態ならまだスライムは生きている。だけど到底スライムとは呼べない状態だ。つまりはスライムという存在自体を壊したと言える。そして再び体液に核が戻され辛うじてスライムという存在が維持されていたところでその中心点も破壊した。これで種族の特徴全てを破壊したということになるのか」


 なるほど。肉体と心臓を分かたれて尚生きているどころか心臓を再び肉体に戻せば生き返る『スライム』という種族ならではの裏技だな。


「物は試し、もう一体で実験してみよう」


 足元の核を一つ掴み、先ほどと同じようにスライムの核を体液に触れさせる。やはりピクリと核が動き周囲の体液が核に集まり出した。この体液……再現出来ない物かね? 体積増加は戦力増強の基本なんだけど。ガルハイシュの仕事が増えたな。


「さて、どうせまた三十分くらいかかるだろうから、今度はスライム自体について検証しないとな」

ぽよぽよ


 俺の意を配下として汲み取ったのか、俺が手を伸ばしやすい位置に移動してきたスライム。ふむ、まずは名前か。


「スライムだから……スラリンはパパが使っちゃったし……プルッピ? いや、流石にそこまでパクるのもなぁ……」


 ふむ……特に俺の小説でよく使う言葉で名づける必要性も感じられないな。ゴグリオスみたく適当にそれらしい名前も思いつかないし……よし、外国語シリーズ行ってみようか。


「えぇっと……スライムは確かドイツ語でシュライム、スペイン語でファンゴ、ラテン語でリームス、ギリシャ語でラピス、ポルトガル語でロードだったな」


 他にも覚えてはいるけど俺が思い浮かべるスライムっぽい名前はこんな感じだ。さてどれからつけてやるか……


「披見体一号という側面もあるな。そこらも混ぜるか?」


 英語だとスライム・ナンバーワン。ラテン語だと…………リームスイノウ、か? なんか綴りが違う気がする。いつもならスマホで翻訳アプリ使うとこなんだけどな……流石に単語は覚えられても文法まで全て把握するのは無理だ。いずれやろうとは思っているけど……世界各国の言葉で小説を書くのが大きな夢の一つだからな。


「むむ……響きと単純さでラピス・ワン……駄目だ」


 ラピスラズリは誕生石じゃないけど俺にとって特別な意味を持つ。いくら配下といえど、たかがスライムの一匹につけるには恐れ多い名だ。


 とある宝石によって領土が決められる島国において、外国人の俺でも馴染む事が出来る領土はラピスラズリの領土だ。その島国を舞台とした物語は、俺が初めて読んだ小説であり、生涯をかけて目標とするに相応しいある意味で完成された物語だ。その骨子……それも大黒柱級の構成要素の一つであるラピスラズリは、俺にとって大きくてあやふやな、されど大切な物だ。


 ……ルカン兄さんやパパのいる場所では決して言えた事じゃないけど、俺の名前は伊能錦じゃない。何も哲学的な意味ではなく、実際に戸籍に書かれているのは別の名前だ。そっちが本名。最初のループにおいて自分という存在の価値が主観的(・・・)に見つけられなかった時代の象徴。それでも今の俺を形作った大事な土台として、忌まわしいと思いつつ捨てることの出来ない名前。

 その名に、ラピスラズリ……すなわち瑠璃を指す漢字が紛れ込んでいる。


「思えば、伊能錦を作った時は九月だったな。となれば、ある意味で誕生石と言えるのか?」


 中二病の下らない面や意地、潔癖過ぎる考えに自業自得な背景。そんなものは分かりきっている。一々表に出てくるな。ちょっと関わりがあっただけで特別扱い、それをエコヒイキと呼ぶ事くらい知っている。そこにどれだけの意味が……善悪含めあらゆる意味が籠められているかという事も知っている。


 ……うるさい


「……流そう。相変わらず心の無駄な動きっつうのは厄介だな」


 放っておけば過去の記憶を閲覧し取り留めも無い考えを浮かべる脳みそを恨みながら理性で溜め息を吐く。デモニックの苦悩というのは、案外こんなどうしようも無い物なのかもな……だから、意識を切り替えろって。


「……うっし! それじゃ、お前の名前は今日からファーストロードだ」


 パンッパンッ! と、気を入れなおすように頬を叩き、眼下のスライムに名を授ける。今後はセカンドロード、サードロード、フォースロードと発展していく形だ。この際国家の枠組みを越えた名前をつけても良いよね? そもそもラピスとラズリも別言語だし。前例があるのだから問題ない。


「愛称はオスの場合ファルド。メスの場合ファロ……ファロだな」


 水色の体から触手が伸び、○マークを形作ったところで決定する。本当に俺の意を汲むのがお上手だこと。世界の法則じゃなくて何らかの能力だったら即解析して全権限を俺の支配下に置きたいレベルだぜまったく。


 まあ、俺が出来るという事は誰かが出来るという事でもあるからな。幸い、出来なくてラッキーとでも思っておこ……


「待てよ? 今、俺は重要な事に気が付いたか?」


 独り身特有の独り言に驚愕と恐れが混じる。あるいは心で言ってしまっては、恐怖を全面的に認めてしまう事になるから呟いたのだろうか。この嘘が平然と吐き出される口から出てきたのなら、まだ杞憂で済ませられるのではないかと。


「ルカン兄さんが俺に救援を依頼してきたのは、確かこの世界が『魔王』に侵食されつつあるからだったな。という事は、『魔王』が世界そのものを手に入れつつあった、ということになる……」


 あかん。詐欺師に正論を語られた詐欺被害者の如き心の働きが生まれちまった。


 なんでかなぁ……なぁんで俺の頭ってこんなネガティブな可能性ばかり思いつくのかねぇ……


「つまり、『魔王』……いや、恐らく『未知の世界に影響を与える者』が世界を手に入れてしまえば、『その個の種族の特徴を破壊した者にその個が従属する』という法則すらも手中に収められてしまう……事になる」


 本来、あらゆる存在を凌駕し、干渉はうけども決して完全掌握など出来る筈が無い世界に対して行える事じゃない。でも、俺は知っている。例外などいくらでも存在するという事を。


「……ある、非常に珍しいけど科学のみが発達した『世界』がある。その『世界』は、機械の分際で異世界の存在を解き明かし、長い年月をかけて全ての異世界を統べた存在を生み出した。機械の力は、やがて『世界』が存在するための力や、世界を構成する『灰の原色』、存在という概念が存在する全てに宿る『世痛の波』をも把握し、その全てを吸い尽くし、消滅した」


 物語のラスボス……っぽく見える中ボスに語らせる予定だった一つの破滅を思い出す。その『世界』では能力があっても認められない世界ばかりしかなかったせいで、本来ならば能力的存在である『灰の原色』や『世痛の波』に対する能力的見解が出来ず破滅したのだ。ある意味で、『世界』に住む『種族』全員が『世界を知る者』であったにも関わらず。


「破壊する存在が理論上や仮想上に存在する限り、それはマーフィーの法則的に起こりえる可能性だ。つまり、その反対に創造する存在も居る可能性があり、破壊と創造が可能ならば、もしかすれば支配する存在があらわれないとも限らない」


 ああ、クソ。こりゃ本格的にレベリングを優先せにゃならん。早いとこ『世界に影響を与える者』基準に引っかかれる『ジョブ』を獲得しないと。視神経強化系なら『能力』でも格上と同規模の『眼』を手に入れられるし、思念情報伝達系なら全を個とみなす『複数からなる巨大な個』を作ることで三段階上の相手でも十分相手取れる。例え多様性の代わりに強度が足りない『能力』でも使い方によれば四強能力全てに勝る可能性があるのだ。

 いや、今は五強能力だったな。


「こりゃぁ信念とか筋とか無視してパパに頼るべきだったかね?」


 思ってもいないことを溜め息混じりに告げるのは不安の現れ。あったかもしれない可能性と幻想で形作られた前提なんて意味の無い事だというのに、まったくもって俺という存在は進歩が無い。すべき時ではない時に自己嫌悪に陥るところといい……まったくもって、愚かしい。


「……ファロ、お前の中にコレを入れたらどうなる?」

ぽよ、ぽよ


 科学者的な頭に切り替え、実験に集中する。その一歩として核の山から一つの核を取り出し、ファロに提案してみる。すると、何やらブルブルと震え出し、どことなく恐怖が漂ってきた。ふむ、生きているスライムに核は厳禁、と。また指揮系統が混乱するんだろうなぁ。科学者的に考えるならそのまま突っ込むのが常道だけど、サンプルの数が少ない以上どんなことになるか想像がつけない事はすべきではない。もっと他の消費する可能性の低い検証事項を優先すべきだ。


「ふむ……見たところ体積は標準的なスライムと同程度。周囲の体液に触れても吸収しない上に自らの体液では無さそうな体液も核に集めていたところを見ると、容量限界はあっても個体ごとの体液の違いは無いみたいだな」


 実際、スラリンのブレスで全体の五割が削れたんだ。その中にファロの体液が混ざっていないなんて偶然がどれだけ適用されるだろうか。まだまだ検証の余地はあるにせよ、現段階では確定的事実として扱っても問題は無いだろう。まあ、世界の法則的に種族の特徴部位が復活した可能性は無きにしも非ずな訳ですけど。


「ククク……しかし、調べれば調べるほどスライムっつうのは面白い種族だなぁ~」


 半液体の体に大きさと不釣合いな性能の核。いくら傷ついても核が無事なら同族の物で補充の利く体液。まだ試していないけど、恐らくなんでも食べてなんでも吸収しなんでも己の力へと変える脅威のサバイバルパワー。下位の内ならいざ知らず上位になればオーガや龍を越える事もある発展性。欠点と言えば筋力が無い事くらいだけど、スラリンの例を見ればそこも発展性に期待できる。


 これほど応用力のある種族も中々いないだろう。あえて例に挙げるなら吸収型のキマイラか応用力のあるヒトくらいだろうけど、どちらも肉を持つ体だ。同レベルのスライムとぶつかった場合、まず間違いなくスライムに軍配が上るだろう。何せスライムの平均体積はほぼヒトの三倍。その分体液の層も分厚く、普通の牙爪や槍、または能力では核まで攻撃が届くまい。


「それに部位単体もまた、素晴らしい」


 核は『ヴィルキット』幹部に説明した通り解析して制御できるようになればスパコンを軽く越えるハイパーコンピューターとでも言うような装置が作れる。さらに機械なんかよりよっぽど融通の利く――代わりに威力が下がる――能力由来の機械……いや、魔道具、聖遺物、呪具とでも言うようなオカルトアイテムを高性能な状態で作ることが可能だ。それこそ、彼の聖剣エクスカリバーを越える剣を作る事だって可能だろう。


 また、体液の方も一見硫酸代わりとしか使えなさそうに見えるけど、実は人工筋肉として使う事も可能なのだ。スラリンや眼前のファロみたく触手のように動かすことが出来る……言い換えれば、重力に逆らうことが出来るのなら、非力とはいえ日常生活には困らない義手や義足の代用として利用する事が出来るだろう。あるいはルパン三世もビックリな変装マスクを作ることが出来るはずだ。課題はどうやってスライムが自分の体液を動かしているかの解明とその仕組みを他者に取り付ける事が出来るのかの解明、といったところか。隻腕になったら試してみるかね。

 もしくは技術的に俺の生身を上回ると確認されたのなら、切り落としてでも取り替えよう。


「さて、まだまだ検証の余地はある」


 ふむ、二体目の復活まで後二十分ほどあるな。その間に何をすべきか……


 自分で言うのもなんですけど、スライムって考えようによっては超便利ですよね。後、モン娘のスーが可愛くて便利すぎる。誰か早く品種改良とか遺伝子改変とかで作ってくれないかな。スライムに囲まれる生活、良いと思います。

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