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三回目に起こるイレギュラー  作者: Dark Revenger
一章:憧れの異世界が効率レベリングの場に変わるまで
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第十六話:とりあえず管理させてくれ

 俺の体が震えた。

 これが、俺の主人公達と同種の存在。

 全ての同種におけるカルマの一線を越える『負の感情』の顕現者。


「は? たいざいにん? 初対面の……しかも魔王に対する言葉じゃないだろ」


 魔王が、言う。何の捻りも無い呆れの声なのに、何故か心の底が揺さぶられる。ずっと聞いていたい、というよりは、心地よい中毒性のある軽やかな声。愛じゃない。でも、それに近い親愛の情が湧いてくる。


 間違いない。コイツは『世界に影響を与える者』の一人、『大罪人』だ。もっとも、『大罪人』という概念は知らないようだけど。


「あ、ああ……」


 ……作家として、一人の幻想を追い求める小説家(盲目の愚者)として、これほどの歓喜があるか。あるいは狂喜。己の主人公……子供達が、ほぼ全員この威光を備えているかと思うと……


「お、おい。どうした? 涙が……片方だけ?」

「っ……すみません」


 気づけば右目から涙があふれ出ていた。左目の涙腺は喧嘩でドジって潰れたから、涙は無い。


「大丈夫。ちょっとナーバスになっただけだ。問題無い」

(なっさけないね~。こんなイカレた姿を見ただけで泣くなんて、失礼極まりないねぇ)


 ウィルフィールがからかってくる。そりゃ、俺だって他の誰かが同じような事をしていれば怒り狂ってそいつを八つ裂きにしているだろうからな。

 でもさ、仕方ないだろう?


 実際に見ることなんて出来ないと思っていた子供達の、悲しい哀しい晴れ姿の一部を見ることが出来たんだ。例えるなら死んだ子供の成人式を見るような物。これが泣かずにいられるものか。


「……子供が気張るんじゃない。いくらクミオエット・J・エベミスだろうと、やはり人の子だったか。俺の姿を見て泣くとはな」

「ふざけんじゃねえ。そういう意味で泣いたんじゃない」


 だいたい、たかが腐敗した死体に異形の竜と鳥の片翼をくっつけ、禍々しい鋭角な蛇腹爪と爬虫類が如き縦長の瞳孔を持っているだけだろう。むしろカッコイイわ。


「俺は作家だ。そこら辺のパンピーとは価値観が違うんだよ」

「パンピー……古っ!」


 ほっとけ。


「……さて、気を取り直して説明してもらおうか? 『狂気』とは一体どういう力だ?」

「……『狂気』を感情としてじゃなく力として捉えているとか、やはりクミオエット・J・エベミスか」

「あのさ、確かに俺の栄名はクミオエット・J・エベミスだけどよ。だからこそ日常で使って欲しくないんだが?」

「いや、俺としてはクミオエット・J・エベミスで慣れているから今更変えられない。諦めろ」


 ……? いくら元の世界で知っていたとしても、それだけで慣れたから変更出来ないなんてあるか?


 まさかとは思うけど……


「そんな事より、お前には『狂気』の力を支配してもらう。異論反論抗議質問口答えは認めない」

「ほう、そのセリフ……中々どころか極上々レベルで良い趣味だな、魔王よ」

「だろうだろうとは思っていたが、やっぱりお前もか。あれは人類皆読むべき聖書だよな」

「だな。流石は魔王、分かっているじゃないか」

「フフフ」

「きしし」


 お互いニヤッと忍び笑ってガシリと握手を交わす。うんうん、あれの素晴らしさを理解しているとは、この魔王は確定的に元俺の同類(有能な社会不適合者)だな。そういう奴は大抵が拙くも物の道理を心得ているのがデフォなヒトばかりだ。ある意味で簡単に信用して良い数少ない人種と言える。もっとも、一般人の目にはただの肯定的なぼっちとしか写らないだろうがな。


「って、話が逸れたな。有意義ではあったが……おっと、人を集めているんだったな? 『狂気』の説明には短くない時間がかかる。まずはそっちの用事を片付けてからだな」


 ふむ……そういえばそうだったな。早く知りたいけど魔王と俺の狂気を見られるデメリットが大きすぎる。宿題理論でさっさと片付けるか。


「分かった。だけど、後でルカン兄さんをロクル様の元に向かわせる。しっかり親子の絆を取り戻せ」


 そう言うと、今まで落ち着きながらも飄々としていた(俺的に演技だとバレバレだったけどな)魔王の気配が若干揺らいだ。あ、少しだけカリスマ的オーラが和らいだ。


「……殴るんじゃなかったのか?」


 悔し紛れがバレバレでっせ。


「そうだな、じゃあ……歯ぁ食いしばれ!」


 ドガッ!!


「メリケンサック付けたまま殴るな!」


 いつつ……威力は申し分ない上に直突――対象を殴りつける直前に攻撃を終了させる事で力を百%相手に届ける殴り方――までしたのに身じろぎ一つしねぇ。流石は魔王なだけはある。


「だが、なんだ……ここ六千年は確実に感じたことのない……痛み? アンデッドの俺が……?」


 当たり前だ。ちっとは才能あると言われた『生命の力』も乗せた拳だからな。今の一撃は体や心だけじゃなく、『魂』にまで届いたはずだ。


「分からねえのか? それが俺のルカン兄さんへの愛だよ」

「愛……だと?」

「いや嘘だけど。ロクル様が知らない力みたいなもんだよ」


 つうか六千年も生きてるのかこの魔王は。その長い年月の中で一度も『生命の力』に出会っていないときたか……やっぱ自力で『生命の力』を発現した人間がいる世界は珍しいんだな。もっとも、この世界のこの星の人間がまだ発現していないだけで他の星だとわりとポピュラー(当然才能如何の問題も含みつつ)なのかもしれないけど。


「ま、ルカン兄さんに対する愛ゆえの力も含まれているからあながち嘘でも無いとけどね」

「……コウガルンは懐いたと言っていたが、懐きすぎだろ」


 ともあれ、納得はしたみたいでスラリン(INコウガルン)を引き連れて少し離れた場所へと移動するロクル様。方向は覚えた。後でルカン兄さんにサプライズだ♪




 約七分後。


「よし、集まったな」


 トリゼェイソンの上からゴブリン達とオーク二匹にドラキー三匹、『妖精』達、同級生、教師を見下ろしながら呟く。マジェスティアザク達はまだ修行中、ルカン兄さんは親子の感動の再会、ウラガットとガルハイシュと他妖精何人かはグリフォンの羽とスライムの体液集め、クラタのボケは隔離。というそれぞれの理由でこの場にいない者もいるため、『ヴィルキット』全員が集まったわけではない。ちなみに、後から聞いて知ったけど『妖精』の中には多少戦闘をこなせる者もいるらしく、下位のスライム程度なら問題なく倒せるそうだ。元々自衛の手段として『召喚士』や『ゴーレム使い』を使っていたらしい。それを応用すれば作業のように魔獣を駆逐する程度なら問題無いそうだ。闘争心が働かない状況を作ってやれば面白い使い方が出来るかもな。


「よく集まってくれた。同級生諸君は既に各リーダーや教師から事情を聞いていると思うが、念のため訊ねておく。俺に忠誠を誓わない奴は挙手……いない? ならいい」


 ほう、各リーダーや教師も中々やるじゃないか。もっとも、あの忌々しいクラタへの凶行が恐怖を植えつけたからかもしれないけど。それならそれで清く正しい恐怖政治が行えるからいいけど。


「今回お前らに集まってもらったのは、色々と確認を取るためだ。まず、『ジョブ』持ちは手を挙げろ」


 ……おい、なんで必須『ジョブ』持ち十五人以上の挙手数なんだよ。そういう勝手な事は……ああ、『妖精』達から『ジョブ』について聞いたときに発現した奴らか。まあその時は俺の奴隷では無かったし、仕方ないか。時系列に逆らっても意味ないし。


「そいつらは全員こっち来てヒヤマ某に名前とジョブを報告し、学生証を提出しろ。俺は他人を覚えるのが苦手だからな、紙媒体にしないとお前らの固有名詞が『鍛治士』だの『蓄力士』だのになっちまう」


 少し笑いが起こった。ここ笑う場面じゃな……オイコラ何サムズアップしてドヤ顔してやがる各リーダー&教師&元スパイ候補現忠臣の同級生数名。さてはサクラだな。機転も利くじゃねえか。伊達で各専科のまとめ役をしていたわけではないということか。



|名前    |ジョブ    |補足

|日山明菜  |『裁縫士』  |班長の一人

|野原玲二  |『結界士』  |教師

|大谷慶介  |『楽曲士』  |教師

|稲田拓人  |『細工士』  |班長の一人

|奥山怜悧  |『蓄力士』  |班長の一人

|伊藤雄太  |『鍛治士』  |班長の一人

|中森雄一郎 |『召喚士』  |忠臣

|長沢由菜  |『調理士』  |忠臣(中森由来)

|川越妃奈  |『人形士』  |忠臣

|長谷川拓斗 |『薬士』   |忠臣

|青峰春野  |『翻訳士』  |忠臣

|赤木正太郎 |『魔法士』  |忠臣

|枦山霧彦  |『転送士』  |特になし

|郷田武志  |『武士』   |特になし

|竹丘春海  |『木工士』  |特になし

|岡田浩二  |『発掘士』  |特になし

|中野友里亜 |『吟遊詩人』 |特になし

|萩沢燐   |『命術士』  |特になし

|小野寺海斗 |『蓄力士』  |特になし

|小林映奈  |『変身士』  |特になし



 そんなこんなで完成したリストがこれか。以外に忠臣や班長で必須十五『ジョブ』が固められているな。その他のヒトも班長が特に信頼を置ける奴だというし、結構したたかだな。必須十五『ジョブ』の一つ『ゴーレム使い』は認識の違いからか『人形士』に変わったみたいだけど。まあいい、後で誰か適当に見繕って『ゴーレム使い』に押し込めばいいし。


「よし、協力ご苦労。では『妖精』よ、自らのパートナーを選ぶがいい」


 言うが速いか『妖精』達は元々見定めていたらしいヒトへと駆け寄った。何故か俺のところにも『妖精』が来たけど。なにやってんだよサフェリエ。


「お、一人もダブリが無いな。まあお前らがそれで良いなら良い。さて同級生諸君、諸君ら一人ひとりに『妖精』を付けたのは他でも無い、各人の『ステータス』を見る力が『妖精』にあるからだ」


 俺の言葉におお~というサクラ無しの声が上がった。まあ、ウチの学校に来る奴は大抵ゲームとかに正通してるだろうし、ゲームをやらん奴も聞いたことはあるだろうからな。その重要性に思い至ったのだろう。


「ただし、HP102とか筋力60みたいに細かい数字は把握出来ない仕様だから気をつけろ」


 これを言っておかないと後で不満を抱える奴が出てきかねないからな。


「――さて、俺はお前らに言っておかなくちゃいけないことがある」


 『妖精』とのコミュケーションや『ステータス』に興奮を覚えていた同級生達が静まり返る。まるで何かに怯えるような、しかし何かに縋るような弱者の気配だ。まったく、どこまで甘ちゃんなんだか……だが、そのおかげで制御しやすいのだから文句は言えねえな。


「はっきり言う。俺は元の世界に帰りたいとは思わない!」


 チラホラ、不満と恐怖の表情が見えるな。


「だってそうだろ。この世界には魔法があるし、名誉も力で手に入り、がんばれば王様にだってなれる。そんな世界を手放してあの窮屈な世界に帰りたいだなんて、俺からしたらドマゾの境地にいる人間としか思えない」


 少し肯定的な表情が増えたな。それでもさらに不平不満、怯えが強まった奴もいる。


 安心しろ、別に帰らないとは言っていない。


「だが、俺は元の世界に帰ってやらなくちゃいけない事がある。皆知っているだろうけど、俺は小説家だ。俺の物語を待ってくれている人がいる。たったそれだけの事で俺は何が何でも小説を書いて本にしないといけない。それに、心配してくれる家族がいる。お父さんは俺がいないと家族の中で味方がいないから可哀想だし、お母さんには色々と苦労をかけたから親孝行をしないといけない。妹二人は可愛いからもう一度会いたいし、叔父さん二人ともう一度ゲームや談話で盛り上がりたい。従兄弟に年長者として慕われる快感を味わいたいし、おばあちゃんやおじいちゃんに思いっきり甘えたい」


 家族の話を出して、涙を流し始める奴も出てきた。

 構わず続ける。


「それだけじゃない。元の世界にはまだまだ読んでいない小説や漫画、見ていないアニメや映画も沢山ある。もう一度デルトラを読みたいしエラゴンを読んでドラゴンの美しさに酔いしれたい。これから出る未知の小説や漫画やアニメや映画が見たくて見たくて仕方が無い! それに、懐かしいのから新しいのまでお気に入りのアニソンを無限ループで聞きたいしブルーハーツやピンクレディの懐かしい歌を聴いて昔を思い出したい。クラシックを聞いて心を落ち着かせるのも良いし、プラモを組み立ててジェットストリームアタックとか四機掌位とかがしたい」


 おい、その異常なオタクを見るような眼はやめろ。別に幼女誘拐とかしてねぇだろ。俺はロリコンじゃ……無いとは言い切れない。


「後、友人と会話がしたい。親友と喧嘩して仲直りして一緒に社会のゴミを掃除してタイムを競いたい。パトカーをかっぱらって大犯罪者をとっ捕まえてチャラにして警察共に忌々しい表情を浮かばせたいし、クッキーを焼いてホームレスに配る俺超優しいとか優越感に浸りたいし、とにかくまだまだやりたいことは沢山ある」


 やめろ。その大犯罪者を見るような眼はなんだ。俺が捕まえてるっつうの。んで、ほどよく拷問の練習を施してストレス発散した後で他の大犯罪者に罪を擦り付けて警察に情報をリークしていただけだっての。俺は悪く無い。年齢的な子供が無茶を出来ない世の中にした政治が悪い。


「だから、俺は元の世界に帰る……いや、この世界と向こうの世界とを行き来する必要がある。そして、俺はその方法を知っている」


 お、不安や恐れが希望に変わった。これだから民主主義は愚民政治だって言われるんだよ。ちったあ自分でなんとかするくらいの気概を持てよな。


「俺についてくれば、そして『魔王』や『勇者』をぶち倒せば、お前らもおこぼれに預かり元の世界に帰る事が出来る……いや、それだけじゃない。こっちの世界で得た財宝を持って向こうへ行き、金持ちになれるかもしれない。『ジョブ』の力を使って有名人になることだって出来る」


 一部から歓声が上がった。テメエラ何を想像しやがった。


「お前らが選べる選択肢は三つ」


 さて、ここからが本番だ。


「一つ目はこのまま悲嘆にくれて自殺する事。まあこの方法が一番楽だと思うぞ? 名誉も金も元の世界も手に入らないけど」


 誰も賛同しなかった。当然だわな。


「二つ目は俺と分かたれて自らの力でこの世界を生き抜くこと。そうすれば俺に振り回されてやりたくもないことをやらずにすむし、自由を重んじる日本人様ならこれを選んだほうが愛国者だろうな。ま、誰も助けてくれないし元の世界に帰るのは不可能だけどな」


 これまた誰も賛同しなかった。そりゃ民主主義に生きる草食動物さんですもんね~、単独行動はしたくな~い、いざというときは誰かを犠牲にして生き残りた~い。なんてふざけた思想の連中ばかりだからな。いや俺も似たようなもんだけどさ。使い捨てたりするし。


「そして三つ目……俺を主として仕え、全てを俺に委ねて元の世界+αを手に入れる事だ。自由や危険を代償とするが、確実に俺が元の世界に帰る方法を確立し、金と名誉と力をお前らに与える」


 む? 食いつきが悪いな。やはり自由を代償はやめといたほうが良かったか? でもこれは真実の演説だから嘘は言えないんだよな……言わなかったから、では通用しないし。


「さあ選べ! この三つの選択肢の内、どれを選ぶか! それは諸君らの自由だ! 自殺か、自由か、俺か! はたまた俺が想定していない四つ目の選択か! 今一度言う、この選択はお前らの自由だ!」


 今の選択は、な。

 俺に従った場合話が違うと言われても俺を選択したお前らが悪いと言える。それで筋が通る。何事も建前が必要で、この茶番のような演説はその建前を作るための基盤だ。


 それに、俺に従わない連中は俺の……『ヴィルキット』の敵として力で無理矢理傘下に加える事だって出来る。どっちに転ぼうが俺の手下になるしかないのだよ貴様らは! ヤバイ、俺が天才過ぎる。


 ……まあ、こういう極限状態で、尚かつ俺が異常な力と小説家としての知略を見せ付けた後だからこそ成立する演説だけど。


「一つ目の選択を取った者は前に出て来い! 俺が直々に痛みの無い死を与えてやる……ああ、別に今じゃなくてもいいぜ。死にたくなったら俺のところに来い、殺してやるよ」


 誰も前に出ないどころかドン引きされた。まあ、躊躇無く殺すって言ったし、現代日本人が忌避感を持つのも仕方が無いか。甘々過ぎて砂糖吐けるレベルだな。


「二つ目の選択を取る者は今すぐこの場を去れ。自分の荷物を持っていくのは自由だ。まあ自衛出来るなら、の話だけどな」


 と言ってトリゼェイソンに溶解液を吐かせる。俺の足元に生える草が一瞬でドロドロに溶け、同級生共の中から悲鳴が一つ二つ。


「そして、三つ目の選択を取るものは……」


 さてさて、ここからが伊能錦(嘘つき)盲目の愚者(魅せる者)、そしてニシキ・イノウ(組織の主)の出番だ。


 伊能錦としての演技力による雰囲気、クミオエット・J・エベミス……盲目の愚者としての小説家の存在意義である魅せる技術、ニシキ・イノウとしての組織の主が持つべき責任。

 その全てを、この一言につぎ込む。



『跪け』



 一瞬。

 忠誠高い騎士団を幻視した。


 ……あらら、少し本気出しすぎちゃったか? 同級生及び教師及び配下全員が片膝をついて頭を垂れた。同級生や教師は体勢が悪かったりバランスが悪かったりするけど、そこから見て取れる心の姿勢は俺をして一瞬見とれる程。おいおい、野原先生が俺の事をカリスマとか言ってたけどマジだったのかよ。やべぇ、実は俺も『大罪人』なのかもしれねぇ。


「よし、ではこれより『魔王』排斥及び『勇者』打倒組織『ヴィルキット』を正式に設立する。『ヴィルキット』の意味、それは『栄誉ある帰還者』だ」


 場が沸き立った。

 まぁ嘘だけどね。実際適当な語感で作った自己満足な名前だし、特に暗号的に捻った訳でも無いから正真正銘の『嘘』だ。演説が終わってコイツラが自分で選択したのなら、俺は組織の主として組織管理の一環で嘘を使ってもなんら問題は無い。こういうのを日本の頭空っぽの意識高い系はプロパガンダと呼ぶ。俺? 俺は教養高い系だから問題ない。


 最も、『ヴィルキットという組織』の意味が『栄誉ある帰還者』。であると定義すれば嘘にはならな~い。裁判でも勝てるレベル。


「俺についていけないと思った奴は去れ。この世界で生きるのに疲れた者は死ね。だが、俺は例え一人になったとしても小説家として、また家族を案ずる一人の子供として、あるいは親友と友人に再び会いたい寂しがり屋な男として、そして全ての楽しみに命を懸ける修羅として、元の世界に帰る。そしてついでと言えるほどの気軽さで『魔王』の脅威からこの世界を救ってやる。これ以上は無粋かな」


 俺史上三十六番目くらいの派手さで歓声が上がる。まるで小説が大ヒットした時の祝賀会みたいだ。当然、主賓は俺。


『『『ニ・シ・キ! ニ・シ・キ!』』』


 歓声は同級生だけじゃない。


『『『クミオエット・J・エベミス万歳!』』』

「「「ゴグガ! ゴグガ!」」」

「「プギィィィ!」」

「「「キィキィ!」」」

キシキシ!×2


 俺の愛する配下達も場の雰囲気に酔って歓声を上げ始める。ちょっと、トリゼェイソンはやめて。あんまり動かれると俺が落ちる。


 そして、


「クゥ! クゥ!」

「ああ、イルトミルジス、ありがとう」


 トリゼェイソンの頭の下で、この歓声の嵐に負けないほど俺を鼓舞してくれる一匹のアルミラージも。


 イルトミルジスが天使過ぎる。まんま動物のケモノは流石に無理だった俺でもコロっとイっちゃいそうだ。最悪の場合はルカン兄さんとイルトミルジスとゴグリオスとヅィ・スコロペンドラ達だけでも生き残らせて隠居生活を送ろう。


 そんな未来は俺の矜持的にも『妖精』との契約的にも訪れないと知りながらも、俺はなんとなく眼下の可愛い友を見続けながら思ったのだった。

 ちなみに、この作品で『』内にある存在はすべて別の意味を持っています。

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