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三回目に起こるイレギュラー  作者: Dark Revenger
一章:憧れの異世界が効率レベリングの場に変わるまで
15/50

第十五話:とりあえず状況を教えてくれ

 お待たせしました。

 夏の色々な用事がほぼ片付いたので普通に投稿できるようになります。


 さて、ヅィ・スコロペンドラ達の性能テストは終了した。


 センチピルダーは突進を主軸に戦う熱血型。ここから突進に磨きをかけさせる事が出来ればさらなる強さを得るだろう。


 オズマンタスは気質が戦い向きではないけど咄嗟の判断は悪くなかった。となれば、消費アイテム製作班の護衛にすれば良いか。そのための技術も学ばせよう。


 トリゼェイソンは技巧派の強者。戦闘に関しては文句無しだが、『白髪赤眼』の特徴として体が弱い……つまり防御力が低いという弱点を、せめて魔石がある部分だけでも克服させないとな。これに関しては後で『鍛治士』の同級生に俺の鍛治技術を伝授して異世界の金属で出来た鎖を作らせ、『裁縫士』にハイバンダナのような防具を作ってもらえば問題は無いか。


 サンクティスは相手の意表を突く対人専門。その体色的にも暗殺者辺りが適切か? そのメカメカしいフォルムに暗器を仕込める箇所を作ってやれば完璧だな。


 セネクトウテは地面を潜って常に奇襲する強襲タイプ。だが俺程度でも感知できる音を出すっつうことは猫型の魔獣辺りには通用しないだろうな。ここは無難に地下道を作るか落とし穴を作ってもらうかにするか? とりあえずマジェスティアザクに量産機としての動きを学ばせよう。


 キャステラウムは卓越した剣技で敵を葬る剣聖タイプ。トリゼェイソン同様ある意味で完成された強さだが、『ただの特殊鋼』で作られている俺のナイフを切り落とせなかった所を見るにあまり切れ味はよろしくなさそうだ。これも後で『鍛治士』にオプションパーツを作らせよう。ムラサメライガーのように大きなブレードをつけるのも良いかもしれない。


 マジェスティアザクは練兵だ。俺が手出しするようなところは無い。せいぜいが魔石持ちにするくらいか。武器と防具を強化するのも良いかもしれない。


 って所だな。コイツラのおかげで俺もまだまだ強くなる余地があると思い知らされたし、実に有意義な試合だった。


 うん、普通に優秀すぎる。

 まあでも俺の実力(正確にはドロロの実力だが、ドロロも俺が生み出したんだから俺の実力と言っても過言ではない)で従えたわけだし、チートではないな。俺の存在がチートかどうかはさておき。


 で……いい加減に向き合わなくてはいけない現実がある。


「トリゼェイソンとキャステラウム以外のヅィ・スコロペンドラ達はここより少し離れた場所でマジェスティアザクに戦場での動き方を習え」

キシキシ×5


 俺の前で整列しているヅィ・スコロペンドラ達に指示を出す。サンクティスは微妙だけど練兵の動きは知っているだけでも実戦での動きに違いが出てくる。やって意味の無い事ではない。


「ゴグリオス、お前の配下のゴブリン達は今何をしている?」

「ガギグ、ギギグゲガ」


 俺の問いにゴグリオスは何かをかき集めるジェスチャーをする。世界の法則的に主従関係となっている恩恵か、なんとなくヒトをどうにかするという意思を言葉から感じられたため、恐らく散り散りになった同級生及び教師を集めているのだろう。なんて出来るゴブリンだ。


「なら保護したヒトも含めて全員ここに集まるよう伝えてきてくれ。ルカン兄さんも『妖精』達を集めて。ウラガットはガルハイシュと合流して指示に従え。トリゼェイソンとキャステラウムはここで警戒行動。俺の配下以外の魔獣は全てぶち殺せ。イルトミルジスは俺と一緒にあの戯けを迎えに行くぞ」

「ゴゲグ、ギガゲゴ」

「分かったよ」

わさわさ

キシキシ

キシ

「クゥクゥ!」


 そう、向き合う嫌な現実とは同級生と教師の現状確認だ。

 いい加減誰がどの『ジョブ』についたのかを把握しなきゃいけないし、あの馬鹿に洗脳されて強制的に『ジョブ』につけさせられた奴がいる可能性もある。もしかすれば誰か死んでて人数計算が狂うかもしれんし、面倒だけどやるしかない。


 後、ドロロだけが起きていた時の事情聴取もしないと。俺が起きた時にはルカン兄さん達しかいなかったからな。詳しい状況が知りたい。


 さて、保険によりなんとか生きながらえた……なんとかって言う馬鹿は、どうやら最後の最後にドロロによって頭を潰されたらしく、それまでにドロロが行った凶行と相まって俺に従属したらしい。なんとなくだが不快な繋がりを感じる。ヒトの配下との繋がりがナチュラルに不快だと感じられるとは、自分の事だが人間不信極まれり、だな。


「クゥクゥ」

「んぅ? なんだイルトミルジス? よしよし、良い子良い子」


 まるで親に甘えてくる子供のような声で太ももに頬をこすりつけてくるイルトミルジスの背をナデナデする。それだけでイルトミルジスは嬉しそうにクゥクゥと必死に喉を鳴らして応えてくれる。なんて健気で可愛いんだ。もういっそイルトミルジスと結婚して幸せな逃避行を繰り出してしまおうか。などと俺単体ではこれ以上無い幸せな無責任を頭の中で展開してしまうほどだ。


「ま、そんな訳にも行かないんだけどな」


 ルカン兄さんと契約を交わした。その対価も貰った。だというのに、こちらが対価を払わないまま一方的に破棄出来るわけが無いだろう。理屈的にもそうなのに感情的に俺はルカン兄さんを裏切りたくない。義務的にも同級生や配下を見捨てる訳にはいかないし、そもそも将来的に世界を弄くる可能性がある『未知の世界に影響を与える者』を放っておけば最終的に俺とイルトミルジスにも被害が及ぶ。これだけ揃っていて逃げるなんて、頭が悪いにもほどがある。

 まあ、最後のは『魔王』にすり替わる可能性も無きにしもあらずな訳だけど。なぁ~んか『魔王』が原因で世界が蝕まれている気もしないんだよね。


 実際、俺も元の世界で『未知の世界に影響を与える者』を想定していなかったわけでもない。

 その中に、ヒトを惑わす存在である悪魔に相当する『悪魔』がいる。


 悪魔の時点で人間を誘惑する力を持つのだから、『悪魔』ともなれば『世界に影響を与える者』ですら惑わす事だって不可能ではないだろう。なら、ルカン兄さん達が『魔王』に世界を蝕まれている、と勘違いするのもおかしな事ではない。『神』と相反する存在であるが故に『神』のような制限も無く世界を好きに出来る『悪魔』なら、そこらの偽装なんて簡単すぎるレベルだろう。


 もっとも、俺の想定が及ばない『世界に影響を与える者』である可能性もある。一方的に『悪魔』の仕業と決め付けるような愚か者ではないつもりだ。そこらの見極めは慎重に行う必要がある。


 もっとも、ルカン兄さんとの契約では『魔王』を排斥する事は決定している。どちらにしろ『魔王』にはご退場願わなければならない。理不尽だろうけど、これは決定事項だ。そういう契約だからな。


「でも俺、イルトミルジスがいれば頑張れる!」

「クゥクゥ!」


 うにゃ~ん! 難しいこと考えるの、実は俺の仕事じゃ、っな~い! だから慣れない仕事した俺を慰めて! イルトミルジス!


「モフモフ~♪モフモフ~♪ わしゃわしゃわしゃわ……おい、何見てんだよ」

「ひっ! ご、ごめんなさい!」


 チッ、俺とイルトミルジスの楽しい時間を……


「たかが精神支配……いや、精神強奪能力者如きが勝手に目ぇ開けてんじゃねえよ。世界が穢れるわ。いっそ貴様が穢れていて俺が見るに耐えんわ。ヒト的に最ド底辺のクソゴミ野郎が」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 まったく、壊れたお喋り人形のような奴め。アホ臭いくだらん事しよってからに。


「イルトミルジス、これから尋問に入るから周辺警戒。魔獣が出たら無理せず俺に伝えろ」

「クゥクゥ!」

「ひっ、ひひゃ、き、ひ、どいこと、は、や、やめ、やめて」


 よろしい。

 ところで、ヒトという種族の特徴的場所である頭と心を破壊されて、元通りに再生されたはずの貴様は何故俺に怯えている? いや、怯える事が出来る程度に回復したということか? 壊れた状態では反応すら見せないか。全身が自分の血と肉で真っ赤黒くなってる状態でも気にせず俺に平伏する姿はある意味で何かが壊れているようにも思えるが……どうでもいいか。


「安心しろ、貴様のような愚物は俺の言葉に逆らえない。その程度、貴様如きでも分かる世界の常識だろうが?」


 土下座の格好で何度も頭を地面にこすり付けることで返答とした底辺奴隷。今まで現代日本で生きてきた鈍感ド平和ボケでも分かるって事は配下のほうがその辺の事には敏感なのか。


「良いか、俺の質問には全てイエスかノーか名詞で答えろ。まず、貴様の名前は?」

「く、倉田永治ですぅ!」


 恐怖で歯の根が合わず喉が引き攣ってんだな。


「よしクラタ。貴様、誰か殺したか?」

「い、いえ……い、ちが、ノー!」


 いや、別に日本語でも良いよ。別に訂正もしないけど。


「次だ。誰かに『ジョブ』を押し付けたか?」

「ノ、ノォ!」


 ……そうか。


「危なかったなぁクラタ? 『ジョブ』は時に鐘のように『世界』をかき乱す『想い』が昇華されて顕現する、俺如きが言える範囲であれば世界で一番尊い存在だ。それを貴様如きのくだらん思考で穢していたというのなら……心の底から生まれてきたことを、後悔させてやる」

「ひ、ひひゃ……ヒィィィィィィ!?」


 アニメや小説に出てくる半端悪役が言うのとは訳が違う。俺が言うのならそれは本当の事だ。父親から受け取った物や母親が注いだ愛。それら全てに気づかせ感謝させ自分は幸せ物だと余韻に浸らせた直後に両者のおぞましい姿や悲惨な姿を見せ、それら全てが自分のせいだと突きつけ、自分を殺させる道具を用意して千回死んでも生き返えらせて地獄を見せつけ、未来を絶望に覆いつく……」


「クゥ!」

「……っ、すまないイルトミルジス。少し傲慢だった」


 気づけば俺の眼からは透明で赤い液体が溢れ出していた。俺の厳命を無視してまで俺に正気を取り戻させてくれるなんてな……ダメだ、別の意味で涙が出てきそうだ。


「そうだな、もうやめよう。そんな八つ当たりみたいなIF」


 いつだったかなぁ、こんな言葉で表現できる程度の想いを抱いて家族に幻滅した時期があった。

 でも、その家族とはもう会えない時空に俺はいる。それに、今では異世界単位で現世の家族とも離れている。今更自己生産した憎悪に塗れていても意味は無い。分かっている。分かっている……


 クソが。これだから、俺は最低なんだ。


「……まあいい」


 いつまでたっても治らない俺の本性、心、思考に失望しながらも脳の冷静な部分が状況を動かせとさざめいてくる。

 俺の理性はその波に流された。


「次だ。テメエの行動原理は同級生と教師を支配して自分の王国を作りたかった。で合ってるか?」

「イイ、イ、イエス!」


 ふむ。だとすると、得た『ジョブ』は『使役士』……つまりは対象を精神的に操る能力だな。『詐欺士』や『操像士』とは違った運用が必要だな。さしあたっては士気向上やちょっとした揺さぶり程度か。


「そうか。じゃあそう思った前後に何かおかしな事は起こっていなかったか? 言っておくが『妖精』の出現や異世界への転移、モンスターの群れの侵攻は別だからな」

「イ、イエス!」


 ……っ! 魔王か? こういう事態の対処能力を調べるにはもってこいだが……もしかして、直接監視されている?


 いや、魔王と決め付けるのは早計だな。


「では、その異変について詳しく答えろ」

「ひゃ、はい。俺が、いえ私がこの力を得る少し前に……あれ? 何があったんだ? あ、ひゃ、しゅ、しゅみましぇん! お、覚えてませんんん!」


 まあそれがセオリーどころか洗脳テンプレートに乗るくらい当然の事だから正体が掴めないのは想定の範囲内。


 となると……


「良し、尋問は以上だ。流石にあんだけやらかしたテメエを同級生の前に出すような面倒くさい真似はしねえ。これから同級生共を集めるが、ここにいれば見つからないだろう。野生の魔獣が出たら能力を使って対処しろ。ヒトに効いたのならここらの魔獣にも効くだろう」

「イ、イエス!」


 うむ。従順で何より。


 クラタをその場に釘付けとし、ヅィ・スコロペンドラ達と試合をした場所に戻る。チラホラと『妖精』、ゴブリン、ヒトが集まっているところを見ると、やはりゴグリオスは優秀だしルカン兄さんは人望があるね。えへへ、兄さん……ハッ。


「あ、伊能。これから何が……」

「後で説明するから今は放っておいてくれ」


 何か聞きたがってきた同級生を無愛想に切り捨てて何やら魔獣人で遊んでいるスライムのスラリンに近寄る。どうもこのスライム当初の想定より遥かに高性能らしく、コウガルンの衣服関係はまったくダメージが無いのにむき出しの部分だけが何やら新品というより汚くなった部分を削って下の綺麗な層を出して誤魔化した壁画みたいな事になってる。ミクロの世界で間違えでもしたら即ダメージとなるだろうに、それを遊びに使うなんて俺とは別の意味でイカレてやがる。


 そんなスライムを配下に置く魔王、か。


「スラリンよ、ウチの学生に手出ししてないかどうか魔王に確認を取ってくれないか? 俺の願いなど聞き入れる価値が無いと言うのなら出すぎた真似を許して欲しい」


 俺は眼前のスライム(INコウガルン)に頭を下げて要求と謝罪を同時に行った。父親としての姿はともかく、スラリンを配下に置く彼の相手は圧倒的上位者。その立場に敬意を払うのは当然の事だ。まあ、打算があろうがなかろうが見知らぬ俺を直々に鍛えたいと宣言した彼の魔王は、恐らくだが尊敬に値する魔王だと思うからどっちみち頭は下げるけどな。


『やれやれ……聞きしに勝る有能さだな』


 と、スラリンの一部が口のような形に変形して、やけに深みがある落ち着いた男性の声が聞こえてきた。


 これがこの世界の頂点か。

 なるほど。


「お初にお目にかかります、偉大なる魔王ロクル様。我が名はニシキ・イノウ。あなた様の勅令に従わず、直にお会いして伝えられない無礼をお許し下さい」

『……お前、本当に日本人? 礼の仕草が下手な宮廷騎士より優雅なんだが?』


 やはり魔王は元日本人だったか。だが、今はそんなことどうでもいい。

 俺の精神力を持ってしても全てを持っていかれそうな圧倒的カリスマ。フランクな言葉遣いになってなお滲み出る圧倒的な惹きつける力。おいおい、これで『大罪人』じゃねえのかよ……こりゃ実際の『大罪人』に出会ったとしたら別の意味で発狂してしまうかもしれん。


 ……あ、待て。もしかしてルカン兄さん、『七つの大罪人』しか知らないのか?


『まあいい。あのクミオエット・J・エベミスに常識は通用しない』

「我が栄名を知っていてくださったとは、有り難き幸せ」

『その堅苦しい喋り方はやめろ。絶対遊んでいるだろ』


 バレたか。

 でも敬意をはらっているのは事実だぜ?


「ではお言葉に甘えて……単刀直入に言う。コウガルンとスラリン以外でコチラに手を出したか?」

『ああ。お前がルカリオンの味方をするなら乗り越えなきゃいけない試練だったからな。そういう側面を持つ敵だ、あのクソッタレなゴミクズ共は』


 なるほど……こりゃ、秘密主義にならざるを得んな。こっちの人間社会へのコンタクトどうしよう……ペインの二乗で頭痛が痛い。


「……そういう事なら良い。幸い、こっちに死人は出てないし反乱分子を俺の配下に置けたしな」

『本当に日本人の思考方法なのかよ? もしかして二十二世紀から来た?』

「2000年生まれのピチピチ十七歳ですっ☆ キララン♪」

『……コウガルンが言っていた男の娘要素はこういう意味だったか』


 っと、つまり魔王様は俺らと百年単位で同年代か? 案外某スライムの魔王様だったりしてな…………実際そうだったら俺の全てを投げ出してでも忠誠を誓うんだけどな。


「それで、ロクル様。コウガルンより伝え聞いたあなたの提案ですが……」

『分かっている。スラリンは純真無垢だが愚かじゃない』


 既に知っていたか。食えないお方だ。


「では……」

『だが駄目だ』


 おい。理由を含めて承知済みじゃねぇのかよ。即答で断んな。お前絶対言い合いで相手泣かすタイプだろ。ほら、某氷の女王的に。


 だが、魔王の次の句は。


『少なくとも、『狂気』の制御だけはしてもらう』


 ……っ!

 今、感情である「狂気」ではなく『狂気』と言ったか?


 何だ、何だというのだ。


「何を知っている、魔王?」

『彼のクミオエット・J・エベミスでも知らない事があるんだな? なら尚更お前を放置する訳には行かない。少しスラリンから離れろ』


 少し勝ち誇った声音が耳に届いた直後、スラリンの体が輝き始めた。混乱する心の中、魔王の警告を理性が処理して体を後ろへと動かした。


 スラリンの輝きが極まった、途端。


 それは圧倒的。全ての倫理を吹き飛ばし、あらゆる理性を引き剥がし、心の底より湧き上がる謎の親愛。傍らのイルトミルジスですら、無意識に頭を下げ足を向けかけるほどのとてつもないオーラ。


 ……クク、きははは


「きは、きひ、きししし」


 クク、ククク。事前知識が無ければ、俺は引き込まれていたかもしれないなぁ。


 確定だ。眼前の魔王は


「……お前は違うんだな。なんか、最近初見の相手は俺を前にすると勝手に跪くようになっていたんだが」


 悪と強者のカリスマ、生ける罪、罰をその身に宿す者。


「……『大罪人』」



 とりあえず、投稿していない間にちょくちょく書いていた奴を今日、明日、明後日と連続投稿します。

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