第天話 七夕の願い
「そう言えば今日七夕か」
武蔵はよく買い物に来る通りで呟いた。
七夕なんかもうほとんど信じてないんだけどな。昔はよく山から竹一本持ってきて村の皆でよく願い事したものだなぁ。村のみんなは今年もやっているのだろうか?
「七夕ですか~。そう言えば、去年からくりの間でやりましたね」
「からくりの間でもそういう話題出るんだなぁ」
赤姫の発言に興味をわかせる武蔵。
ほほう、それは興味深い。ぜひ聞きたい、いや聞かせてもらおうじゃないか赤姫よ。
「はい。回線を全員一カ所の所につないでおもしろかったですよ」
「……それは七夕なのか?」
なんか違う。俺が思っていたのとなんか違う。
俺が想像していたのは、竹を丸ごと刈ってきてそしてやっているものだと思っていたが、まるっきり違ったな。なんか残念だな。
「赤姫、ここで本物の七夕をしよう。回線じゃなくて」
「えっいいんですか?」
「ああいいぞ。時間なら問題ないからな」
赤姫はそう聞くとうれしそうだ。頭の上にあるアホ毛がうねうねと動いている。
赤姫もやる気みたいだし、早速短冊をもらって書くことにするかな。
武蔵と赤姫は短冊をもらい、空いている席に座った。
「なにを書くかな……」
武蔵が願い事に悩んでいる最中だった。ここから二つ後ろの席から聞きなじみのある声が聞こえた。
声が聞こえた方向を見てみると……
「姉さん、あまり近付かないでよ。字が書けないんだけども」
「大丈夫よ夜桜! お姉ちゃんが夜桜の目になってあげるから!」
「そんな無茶苦茶な……」
あいつらか……。
武蔵はだいたい把握した。
二つ後ろの席で話していたのは、疾風のからくりである紅桜と夜桜だったのだ。
邪魔をしちゃ悪い。ここからあの二人の事は暖かく見守っていてあげよう。
そう思うと武蔵はまた作業に戻る。
だが、作業に戻ったはいいが、あまり思いつかないので武蔵は少し耳を後ろに集中させた。
「ねえ姉さん」
「なに夜桜?」
「ただの質問だよ? なのになんでボクの太ももを触ってくるの?」
紅桜……どんだけ弟の事が好きなんだよ……。赤姫でもそんなことしてこないぞ。
「ん? そんなの決まってるじゃ~ん。お姉ちゃんは夜桜が大好きなんだよ~」
「それは知っているけど、最近過激だと……」
「過激じゃないよ~。これは愛だよ愛! あなたに対する愛情なんだよ~」
「それならいいんだけど……」
いいんだ!今承諾したね!夜桜、心広いな!ま、まあ。それは姉だからなんだろうけどね?そうなんだよね?
武蔵の頭の中でいろいろな感情が生まれていく。
「その、姉さんは――」
「なに?」
「まだ何も言ってないよ? そのさ。姉さんはなんでそんなにボクの事が好きなの?」
「う~ん、弟っていうのも理由にはあるんだけど……やっぱりどこか小動物的な何かがあるからかな?」
「そ、そうなんだ……」
「それに短冊にもちゃんとそう書いたからね」
「えっ!」
「当たり前じゃん。……ずっと一緒にいたいからね。たとえ機能を停止しても」
紅桜の発言もこうしてちゃんと聞いてみるといいこと言ってるもんなんだな。意外だ。
「……ありがと」
「か、か――」
「ん?」
「かわいいいいいい!!!」
「ええええええ!!!」
「やっぱり夜桜って天才! ……あのクソ主人とは違って……ホントに天才!」
「ちょっと姉さん!?」
「はあはあ……はあはあ……ちょっとこっちで遊ぼうか? ねえ夜桜?」
「ひ、ひいいいいい!!!」
紅桜の愛情が爆発したな。大変なことになりそうだ。
武蔵はなにかが思いついたらしく、短冊に書いていく。
「ご主人書けましたか?」
「おう、書けたぞ。とても良いのがな」
武蔵はそう言うと席から立ち上がり、短冊を掛けに行った。
「これでよしっと」
「叶うといいですね!」
「だな!」
武蔵はそう元気良く返事をすると、赤姫と仲良く帰って行った。
短冊内容の一部
もっと早く、もっと速く動けるようになりたい
琵琶之秦
世界の蜂蜜、全制覇へ!
音無蜂
普通以上の弁当をもっと作って皆で食べられますように
白羽乃つばさ
つばさ殿とずっと一緒にいたいでございます!!!
鬼兜
あいつらがもっと成長し、オレももっと強くなれたらいいな
駿河丘疾風
夜桜とずっと一緒にいられますように!(嫁に!)
紅桜
姉さんと一緒に平和な日々を送れますように!
夜桜
ご主人と幸せな日々をもっと送れますように
赤姫
日常がずっと続いきますように
火花武蔵




