第虹話 隊の中の交換日記
おはこんばんちわ、石清水斬撃丸です。
今回は本編第弐話以来全く出てきていない虹番隊のはなしです。
サブタイ通りだと思ってください。
では、どうぞ。
四月三日、嵐山宅寝室で作戦?会議が行われていた。
「では、これより作戦会議を始めますわ」
床の上で七体の小さなからくりたちが会議を開いていた。その進行をしているのは、この中で一番綺麗好きな紫色の髪をしている紫苑だ。手には箒……ではなく先端が赤い矢印になっている指し棒を持っている。
「ねぇ~」
会議早々、陽気な声で質問をしてくるからくりが一人いた。橙命だ。
橙命はこの中で一番仕事をしないからくりだ。日中は女子生徒をナンパし、夜は主人である嵐山鈴の入浴を覗こうとする変人だ。
「なに? まだ話はしていないのだけど?」
「いやさ~、これって会議することなのかと思ってねぇ~」
そう橙命が言った瞬間、紫苑以外の5名が一斉にうなずく。全員考えていたというよりも、思っていたことは同じだったらしい。
「ねぇ、これでわかったでしょ?」
「う、うるさいですわ! あなたは少し黙っていて下さい!」
「うっ、そうやってボクを孤立させるんだね……。なんて女なんだっ……」
橙命の巧みな言葉使いによって馬鹿にされる紫苑。
そんな時だった。このやりとりに飽きれたのか赤い髪のからくりの赤翔が割り込んできた。
「いいから、早く進めようぜ。青群が寝ちまうだろ」
「わ、わかっていますよ! さ、橙命も早く席について!」
「仕方がない……また今度遊ぼうか?」
気を取り直して、会議が再開した。さっそく紫苑が緑蘭に指示をする。
「では、まずはこの会議を開く動機を出した緑蘭に説明してもらいますわ」
「お前じゃないのか紫苑?」
「私は進行を頼まれただけでございますわ赤翔。私だったら一人でやりますもの」
赤翔が少し驚きながら紫苑に聞いた。が、紫苑は即、その質問に答えた。
「すいません、紫苑さん。私、その、あんまり進行とか得意じゃなくてホントにすいません」
と言いながら、緑蘭は頭を下げた。
「謝る前に早く進めてちょうだい。青群が寝てしまいますわ」
そう紫苑が緑蘭に指摘すると、緑蘭はまた頭を下げながら謝った。
そして、話を進める。
「す、すいません。えっと今回の議題はですね……今年からみんなで交換日記をしようと思います」
「交換日記だと?」
黄粉が頭の中に疑問を浮かべながらそう聞いた。すると、緑蘭は、
「す、すいません」
「いや、謝るなよ。同じ性別なんだから」
また頭を下げ謝るのでだった。
その様子を黄粉の隣で聞いていた金藍が励ましの言葉を緑蘭に送る。
「私達……同じからくり……気を遣わなくていい……」
「す、すいません。謝ってばっかで……」
緑蘭はまた謝る。その後には反省の言葉らしきことも言っていた。
「いいから、早く進めてちょうだい」
「す、すいません」
「また謝っちゃったねぇ、緑蘭……」
「す、すいません」
「ていうか、どうしてあなたは逃げ腰なんですの?」
「えっとその……」
「まあ、そんなに気を落とすな緑蘭」
「き、黄粉さん……」
「……気にすることはない……」
「ちょっと! 私のことは無視ですの!?」
「やっぱ紫苑はおしゃべりが下手だねぇ~。練習台になろうか?」
「はっ、誰があんたなんかと! だいたい私はですね、あなた達とあまり喋らないだけであって――」
会議をするどころか、どんどん崩壊していく。学級崩壊ならぬ会議崩壊が今まさに起きていたのであった。
「なあ、青群。いつになったら会議始まるんだろうね……?」
「…………(知らんがな)」
その光景を見ながら二人仲良く体育座りで待っている赤翔と青群であった。
「ふぅ……仕方がないですわね、書いて差し上げましょうか……」
結局あの後、会議が始まったのは30分後であった。そのときには青群は完全に爆睡しており、六人での会議となった。その時の司会進行は赤翔が取っており、とてもスムーズに進んだ。そして、最初に書くことになったのが紫苑ということになり、今に至る。
「昨日は少し気を取り乱してしましたわ……」
そう言い、その後は日記をしばしば書いた。
「次、あなたの番でしたわよね?」
「…………(そうだよ)」
紫苑がそう言い、日記を渡す。が、青群は受け取らない。
「なにか喋ってくれないかしら?」
「…………(俺、恥かしがり屋だから喋れねんだよ)」
紫苑がそう言うが、青群は答えない。
「ていうか、起きなさいよ!」
あまりの反応のなさに紫苑はキレた。が、青群はうんともすんとも言わない。現実では。
「…………(しょうがないだろ! 目を開けただけで消費量がバカにならないんだから!)」
「……ここに置きますわよ」
「…………(それでいいんだよ。ていうか早く仕事に戻れ。ウザいんだよ、ですわ女!)」
そう心の中で言うと、青群は日記を持ち、目を閉じながら自分の仕事場に戻った。
○月△日
今日から交換日記をつけることになったので、一応書きますわ。でも、いまいちよくわからない。本とかの場合は日付がこんな感じに書かれていたような気がするので、こんな感じに描かせてもらいますわ。最近遭ったことは、蜂みたいなからくりを撃墜したことぐらいですわね。書くこともないので、今日はもう寝ますわ。
では、さよならさよならさよなら。
「…………(なんだこれ?)」
消費量がバカ高い目を開き、読み終わった青群はそう思った。
「…………(とりあえず、書くか)」
「…………(これ)」
「おう、ありがとな青群」
青群は黄粉に無言で日記を渡した。それを笑顔で受け取る黄粉。なにか癒される物を感じた瞬間だった。
「とりあえず、今読んでみるか」
「やめろ読むな……」
「えっ……今のって――」
黄粉が声に気付いた時だった。正面で青群がパタリと倒れていたのだった。
「おい! どうしたんだ! しっかりしろ! しっかりしろって!」
どうやら燃料切れのようだ。黄粉の助けを求める声でなぜか全員集まらなかったのはどういうことなのだろうか。謎だ。
「今日は大変だったな……」
そう言いながら、黄粉は椅子に腰を掛け日記を読む。
○月△日
書き方がよくわからないので紫苑と同じ書き方で書いてみることにした。何か書けと言われても書くことがない。が、紫苑はですわ口調を治した方がいいと思う。あれにムカつくのは俺だけじゃないはず。早く紫苑を殺らなければ。
「どんな日記だ!」
黄粉は驚きの表情を隠しきれなかった
「はいこれ」
「おう、ありがとよ」
赤翔は、黄粉から日記を受け取り、懐にしまう。
「はっ……」
「どうした?」
「いや……なんでもない……」
黄粉はそう言うと、その場から急いで立ち去った。
「なんだあいつ……おかしなやつだ」
「なんだこりゃ!」
四月六日
今日は、突然青群が倒れた。びっくりした。もしかしたら、赤翔のことを思い出し興奮して倒れたのかと思ってしまった。そしたら私の方が興奮してしまい、今日の夜が楽しみになってしまったのだ。赤翔と青群……あの二人は今日の夜にいったい何をしているのか……。非常に楽しみだ。ハア……ハア……ハア……。
「あいつっっっ!」
怒りマークがおでこに点火された。
「す、すいません。わざわざ持ってきてもらい――」
「いや、いい。それより黄粉見なかったか?」
赤翔は緑蘭にそう尋ねる。が、返って来た答えは、
「いや、見てませんけど……。すいません、力になれなくて……」
「いや、大丈夫だ。お前はよく力になってくれたと思う。ここにいないという事が分かったからな」
赤翔は緑蘭にそう言うと、仕事に戻ろうとした。その時だった。本棚の陰から、橙命に絡まれる黄粉の姿が見えた。
「黄粉ちゃ~ん、待ってくれよぅ~」
「ちょっと、仕事のじゃまだ」
黄粉を見つけると赤翔はすぐに向かった。
「おう赤翔。暇なら手伝ってく……れ……?」
「見つけたぞぉぉぉ!」
その姿はアフリカ大陸を駆けまわるオグロヌーのようだった。
「なんだか今日は騒がしいですね……」
「今日もすいませんと言ってしまった……」
緑蘭はそう話すと、席に腰を掛け、日記を開いた。
「おお、これは……」
そこに書かれていたのは、呪いのように書かれた日記だった。
四月七日
俺はいけない物を見てしまった。あの黄粉がBLだったとは思いたくない。そりゃ、あいつも女だが、妄想の域があそこまで凄いとは思わなかった。とんでもない。まさに悪魔だ。悪魔としか言えない。
とりあえず天に願おう。
死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死死。
「赤翔さん、気合入ってますね」
どこか思う所が違う緑蘭だった。
「これどうぞ」
「……ありがと……わざわざ……」
緑蘭はそう言いながら、金藍に日記を渡す。
「いえこれくらい当然です」
「……緑蘭は……ホントに……頭がいい……」
そう金藍に言われ、照れながら仕事に戻る緑蘭。その時だった。
「いてっ」
きれいに転んだのであった。しかも何もない所で。
「……大丈夫?」
「うん……大丈夫……」
四月八日
今日はみんなとても楽しそうだった。
「……短い……学級日誌並みに短い……」
金藍は、寂しさに包まれながら日記をいっぱい書いた。
「……これ」
「おう、ありがとねぇ~」
「……どさくさにまぎれて、頭を……なでないでほしい……」
橙命は日記をもらうと同時に、というかぞの前からずっと頭をなでていた。そして今もなでている。
「いいじゃないか~。嬉しいんだろぅ?」
「……うぐぅ……」
この頭なでなでは結果的に一時間続いた。
四月九日
やっと今日が終わった。退屈な今日という日が終わったのだ。今日は緑蘭とまず話をしていた。話をし終わった後に、緑蘭は綺麗にこけていた。その時の彼女はすごくかわいかった。
その後は普通に仕事をしようとしたら、倒れているからくりがいた。見た目からは蜂みたいだったので、そのまま焼き殺そうと思ったが、やめた。火事にでもなったら、僕の身が危ない。
そのからくりを秘書室まで運び、青群と看病している時だった。いつも黙って寝ている青群が今日は珍しく起きていて喋ってくれた。僕は、「なんでいつも寝ていたり黙っているの?」と聞いたら、「それは、消費燃料がバカにならないからそうしてるんだよ」と答えてくれた。へぇっと思った僕だったが、青群の手には丸い円が作られている縄があった。「その縄はなに?」ときいたら、「この縄はね、スルメ作りごっこをするときに使う縄だよ」と言っていた。それなら、納得した。青群は頭がいいと思う。
そんなこんなでいろいろあったけど、おもしろかった一日だった。
もう眠い。だから寝る。スルメ作りごっこの夢を見ながら僕は寝る。
「うわぁ~、青群死にたがってんなぁ~」
橙命にはスルメ作りごっこの意味が分かっていたのだった。
次の日の夜のことだった。
四月十日
紫苑よ……お前、意味わかってねえな。やっぱりお前は日記でもおしゃべりが下手だねぇ~。
「くぅ~、あの野郎……」
「えっとその、どうですかその後は?」
「もう最高だよぉ~。続けたいね~」
「……夜が好きになった……」
「まあ、一応俺もおもしろかったと思うな」
「…………(俺もだぜ、やっふぅー!)」
一周回ったぐらいのある日の夜、会議が開かれていた。緑蘭が全員に聞くとだいたいのからくりには好評だった。
「私的には、あいつに腹が立ったわ」
「……私は強襲を受けたわ……」
一部、不評の声もある。が、緑蘭が今ここに確立する。
「では、交換日記は続行という事でいいですかね?」
「いいよぉー」
「……問題ない」
「まあ、いいか。こういうのも」
「…………(全然問題ナッシング!)」
「……仕方がないわね」
「……日記は問題ないからね」
こうして、虹番隊の中に新たな規則ができた。
虹番隊 規則更新
・交換日記で仲間と親睦を深め、報告をする。
いかがでしたでしょうか?
面白かったでしょうか?
個人的には面白く書けたと思います。
基本、短編はシリアスな方にはいきませんのでご安心ください。
なごみです。なごみ。二回言わせてもらいました。
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