純朴そうな可愛い青年に声掛けられちゃった!
ちょっと読みにくいかも?
『す、すみません! ちょっと待ってください!』
いつだったか、そんな風にいきなり街中で呼び止められたことがあった。
『は? 私?』
その時の私は友達と約束の場所に向かっている途中で、誰かが何か必死に呼び止めてるなあと思うだけで、まさか自分に話し掛けられているとは思っていなかった。
『そうです! いきなりごめんなさい!』
なのに気が付いたのは、真っ赤な顔した青年が目の前に躍り出たからだ。しかも真っ直ぐな眼差しで、私以外にはいない、って言う風に見つめてきて。
『…………はあ』
もし彼が私を呼び止めるために肩でも腕でも私の身体に触って来ていたら、反射的に振り払って逃げ出していただろうけれど。そんなことはなくて。近すぎず遠すぎずという絶妙な距離で、目に入ってきた彼の顔が可哀相なくらい真っ赤で純朴そうだったから思わず立ち止まっちゃった。
『そっ、のですね。えーと、よくこの道、通りますよ、ね?』
彼は何回か深呼吸してから話始めたのに、しどろもどろのつっかえつっかえ。そんな姿に警戒心の塊みたいな私なのに思わず笑っちゃって。冷静に聞いたらドン引きなセリフなのに。
『なあに? これってナンパ?』
くすくす笑うと彼はわたわた手を振って動揺し出して。
『あっ、えっ、ナンパじゃっ……! ああっ、でもこれじゃあナンパ、で、すね……』
自分の姿を振り返って落ち込んじゃった。
『あははっ。で、私に何の用かな?』
私は腕時計を見て約束の時間まで少し余裕があるのを確認してから尋ねてみた。なんとなく彼の話を聞いてみたくなって。
『うえっ! えっと、あなたを見かける度に気になっていました! 付き合ってください!』
下を向いていた彼は私の言葉にガバッと顔を上げたかと思うと、こっちが恥ずかしくなるくらい真っ直ぐに告白してきた。
『……わあ、ストレートね……』
短時間だけどさすがに彼が私に対して好意を持ってるくらい分かったけど、こんな直球に告白してくるとは思わずそんな言葉しか言えなかった。お昼だし、一緒にランチしませんか?とかだと思ってたのに。
『す、すみませんいきなり……。今日を逃したら言えない気がして……』
キョロキョロ、もじもじ。すぐに挙動不審になる彼。せっかくカッコよく告白して来たのになあ、と心の中で苦笑気味に呟く。勇気を振り絞って告白してきてくれたのは嬉しい。素直そうだしちょっといいなとも思った。でもねえ……。
『んーと……、告白、ありがとう。でもね、私君のことよく知らないし、それにね……』
私の雰囲気から断られるのが分かった彼は少し悲しそうな顔をした。それでも彼自身この告白でOK出されるとは思っていなかったようで仕方ないという風だったけど。
『……それに、なんですか?』
実は今私の服はオシャレのオの字もない、キャラクターがプリントしてあるTシャツに無地のクロップドパンツ。鞄もありきたりなトート。ネックレスだけが唯一のオシャレと言う、成人した女として残念な服装だった。
『君高校生っぽいけど、歳は?』
彼は、えっ?という意味が解ってない顔で教えてくれた。
『18、高校三年生ですけど……?』
やっぱり、と思いつつ今時こんな純粋そうな高校生がいるのね、と少し驚いた。
『私、今こんな恰好してるけど成人してるの。未成年の君と付き合ったら私捕まっちゃうね』
少しおどけながら言うと案の定びっくり顔の彼。
『えっ!? てっきり同い年くらいかと……』
んーこれは若いと褒められた意味でポジティブに受け取って置くべきかな?
『あははっ。と言う訳でごめんね』
少し残念に思いつつこればかりは仕方がない。それに私年下には興味ないんだよねー。
『そ、それなら! 僕が成人したらいいですか!?』
もう話は終わりかなと腕時計を見れば、結構時間が経っていた。やばい、待ち合わせギリギリになりそう。とか思っていたら、まさかのカウンター。
『え!? 成人ってまだあと2年あるじゃない。それにその時私に彼氏がいないとも限らないし。申し訳ないけど諦めて』
今だから分かることだけど、高校って広いように思えて実はまだまだ狭い世界。今は出会いはここだけだけどきっと大学に行けば否が応にも視界広くなって私のことなんて忘れるはず。なんてね。ちょっと大人ぶってみたり。
じゃあね、なんて言って歩き出す私。けれどその後ろから。
『せめて友達に、メアドだけでも教えてください……!』
切羽詰まった声が。いつもの私なら絶対に教えない。でもこの時は、教えても良い気がした。とは言え教える時間もない。だから、私らしくないことを言ってしまった。
『……なら今度、また会った時に教えてあげる。だから見かけたら話しかけてね』
返事は聞かず、駆けて行った。時間がなかったから。でも彼は何て言ったのか少しだけ気になった。
結局その日、少しだけ時間に遅れ早くに来ていた友達に怒られた。私だって本当なら早くに着いたと口を開いたけど、止めた。何となく、教えるのが勿体無い気がして。生まれて初めてナンパ告白されたからかな? 友達には変な顔をされたけど、やっぱり言わなかった。
それから数日、数ヶ月、数年経ち。
いつも覚えていたわけじゃない。けれどふと、あの道を通ると彼を思い出した。あの時一回しか会わなかった彼を。
純朴そうに見えたけどあれは友達との罰ゲームか偶々会った女をからかった悪戯だったのかな、なんて勝手に失望して、少しだけ期待してた自分にがっかりした。
それから私は……――――
「――――…………い……おーい、おっきろー!」
「ひゃうっ」
突然触られた脇腹にびくっとなる私。けれどそれだけでは終わらずそのまま擽られて脇腹がすごく弱い私はすぐに息が苦しくなった。
「どっか出掛けようって言ったのはそっちのくせに寝てやがってー!」
「あははははは! ちょ、ごめっん、って! やめてあはははは!」
笑いながらだけど謝るとすぐに擽るのを止めてくれた。息も絶え絶えの瀕死状態だったけど。
「幸せそーに寝やがって。人が必死に昼に間に合うよう仕事を片付けてたのにさー」
「だって待ってたら日差しがあったかくてさー。ごめーんねっ! でもねー」
無理言って急いで片付けてくれてたのに寝ちゃって悪いなーと思ったけど、今見ていた夢を思い出して顔がにまにま。
「全く。んで、何だよ。にやにやして」
「夢を見たんだ。なつかしーの」
「はあ? ゆめえ?」
「うん。それでね、今思えばあれって一目惚れだったんだなーって思ってにやけちゃったのだよ!」
「一目、惚れ……? だ、誰に?」
「そりゃあがっちがちに緊張した君にだよ! 初めて会った時初々しくて可愛かったなー!」
私がそう言うとあの時と同じくらい、顔を真っ赤に染める彼。いつまで経っても変わらない。
「な、っちょ、止めてくれー! あの時の俺を思い出すなー!!」
「あの時のって、やっと会えた二回目も同じようだったじゃない! 思い出すなって無理ー! あはははは!」
「わー! 全部忘れろー!」
「やだよーっ。それに君が変わってなかったから好きになったんだしー」
「ぐっ……!」
「これからも可愛い君でいてね、旦那様っ!」
読了ありがとうございました!
この話、実際に友人が有ったという出来事にモリモリに盛って書いちゃいました!
ネタをありがとう、友人!
そしてごめんよ、顔も知らない青年!
書いたこと友人には話さないでおくよ!(笑)
私:友達と会う時結構な頻度でどうでもいい恰好をしていた方。
ざっくばらんとした性格でたまに男らしい。
でも乙女なところもある。
年下は対象外だったため中々彼を好きだと気付かなかった。
彼:今日こそは!と勇気を出して告白したのに未成年無理とフラれる。
でも最後の私の言葉に好感触かもと浮上するも、それから全然すれ違うこともなく撃沈。
数年後、仕事で奇跡的に再会し、ものすごく頑張って私をゲットした。