異世界に行くのもメンドクサイ
『一つ目の願いは身体を前世のロボットの身体にしてくれ』
「お安い御用さ、ほい」
神が俺に向けて軽く光でできた腕を振るうと、何かに包まれる感じがした。
懐かしいなこの感覚。初めて人工知能をロボットの身体に移されたときもこんな感じだったか。
「さあさあ二つ目の願いもちゃっちゃと叶えちゃうよ時間がないから」
若干早口で神が捲し上げた。
『何故急に急かすんだ』
「君の処遇が決まったから君との話す時間が制限されちゃったんだよ。他にもたくさんの魂がここにくるからね」
『なら残りのお願いは一気に叶えてくれ。どうせ願いの内容はわかってんだろう』
元々改めてお願いしたのは願いの内容を確認するためだったからな。
神様が願いを叶えたかは、自分で身体の変化で気付けばいいし。
「分かった。……で、さっきから思っているんだけど」
『ん?どした』
「なんで身体が戻ったのに喋らないの?」
『メンドクサイからに決まっているだろうJK』
「…………………………………………」
しばらく沈黙していた神が口を開いた
「……君これ以上喋るの面倒臭がっていたら僕が直接お願いして怠惰の罪で地獄行きに変更してもらうよ」
「すいませんしたあああああああああああああああ!」
光の速さを超える速度で土下座しました。
だって本気なの丸わかりですもん。
私はあなたを裁判権により、利害関係人を訴訟当事者として関与させて審判します(おこのレベル200を表す言葉)丸わかりですもん。
顔が無いのっぺらぼう状態で表情は分からないけど、拳を鳴らすような動作とドス黒い声で分かるもん。
「はあ、まったく。それじゃあいくよー。ほいほいっとな」
神が2回連続で腕を振るう。
最初に頭の中に大量に情報が流れ込んでいき、次に身体が何かで満たされていくのを感じた。
「これで君が行く世界のすべての情報を与える願いと、君の身体を動かすエネルギーや武器の消耗品を無限にする願いを叶えたよ」
どうやら願いの内容に間違いは無いようだな。
俺が安心していると、再び神が腕を振るう。
すると俺の目の前に巨大な扉が現れた。
「ごめんね、もう時間だから無理矢理あっちの世界に送るよ」
神がそう言うと扉が開いて謎の引力が発生して俺の身体を吸い込んでいく。
おおこれはいいな。
・扉を開ける。
・扉の向こうまで歩く。
というメンドクサイ動作が見事に省略されているじゃないか。
「いってらっしゃい」
俺が最後に見たのは元気そうに手を振る神様だった。
そして俺の身体は完全に扉に吸い込まれた。
やっと主人公を異世界に行かせられた。