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神と話すのもメンドクサイ

今回はちょっと長めです。

 気が付くと、俺は何も無い場所にいた。

 幸恵め、俺の人口知能を復元しやがったな。

 最悪だ。きっとあいつのことだから今後自殺ができないように改良まで施してるんだろうな。あー、やだやだメンドイ。

『残念だけど、君の予想は外れだよ』

 俺が幸恵に悪態をついていると馬鹿にしたような声が聞こえた。

『誰だ』

 そう思っていると、目の前に光が集まり、やがてそれは人間の子供(小学生)ぐらいの大きさの人間の形になった。

「やあ、初めまして江田総一君」

 人間の形をした光は、片手をあげながら挨拶あいさつをしてきた。

「僕はこの魂が集まる場所の管理人、君たちの世界で神と呼ばれている存在だよ。そして、君の自殺は成功しているから安心してほしい」

 俺は、このとき多少驚いていた。

 何故なら俺が疑問に思っていたことを質問する前に答えられたからだ。

「この世界の魂の考えていることは管理者であるぼくに筒抜けだからね。それに、君は面倒臭がって、自分から質問したがらないだろうからね。喋れないのは、きみが今魂だけの存在だからだよ」

 良くお分かりで。

 さすが神。

「ついでに、あと一つの疑問も答えておくよ」

 ありがたい。こっちから質問せずに済む。

「君が疑問に思っていることは、何故作り物として死んだはずの自分が魂として存在しているということでしょ」

『その通りだ』

 人間じゃあるまいし、作り物である俺に魂なんてあるわけがない。

「じゃあ君は、付喪神というのを知っているかい」

『知ってる』

 確か付喪神というのは、物に神や霊魂が宿ったものの総称だ。

 ということは、もしかして――。

「そのもしかしてだよ。君は人工知能として生まれたばかりの江田総一に霊魂が宿って付喪神となった存在が君だ。そして、魂としてここに連れてこられたんだよ」

 まじか。

 じゃあそいつが人工知能に宿らなければ神とこんなメンドクサイ会話しなくて済んだのか。

『よし神様ちょっとその魂連れてきて。話し合い(肉体的な)したいから。大丈夫一撃で終わらすから、たぶん死なない。』

「だからその魂が君なんだって」

 そうだった!

 畜生、紛らわしすぎるわ!

「あと君と話すのが長いのは別の理由。いつもなら天国行きか、地獄行きか宣告するだけだから」

『別の理由?』

「天国行きか、地獄行きかで君がどちらに行くのかで他の関係者がめているんだよ。僕はその間に君が質問したいことに答える役割をしている」

『何故揉めているんだ』

「君が犯した罪は七つの大罪の一つの怠惰なんだけど、それを打ち消すぐらい働いていた時期もあったから、今君はプラスマイナスゼロていうぐらいなんだよ」

『天国と地獄は俺が考えているのものであっているのか』

「だいたい合っているよ。天国は何もしなくていいし望む物は何でも手に入る楽園みたいなところだ。地獄は、生前犯した罪をつぐなうために罰を与えられるところだね」

『償うということは、罰が終わった奴は天国に行けるのか?』

「もちろん。まあだいたいの魂は壊れていくから天国に行くことができないんだけど。そして、壊れた魂は、壊れた魂同士を合わせて一つにしてまた罰を与えられる」

『……ちなみに俺が地獄に行くことになったらどういう罰が与えられるんだ?」

 恐る恐る聞いてみた。

 罰の無限ループとかメンドクサイのはごめんだ。

「君の場合さっき言った通り罪が打ち消されるから、そんなに重い罰じゃないと思うよ。たぶん強制労働一か月くらいだと思うよ」

『俺にとっては十分じゅうぶん重い罰だわ!』

 うわー、絶対に地獄に行きたくねー。

 地獄メンドクセー。

 俺が地獄に変な(?)恐れ方していると、神の体が足元から少しずつ消えていった。

 そしてまたすぐに元に戻った。

「君の処遇が決まったよ」

『どっちだ』

 地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくない地獄には行きたくn――。

「あーもう五月蝿うるさいな!全部聞こえるんだから静かにしてよ!」

『……さーせん』

「全く、では発表します。…………君は地獄には行きません」

 ヨッシャアアアアアアアアアアアア!キタアアアアアアアアアアアアアアアアア!

 これでようやく俺は自由に怠惰な生活を送れるぞー。

「話は最後まで聞けえええええええええええ!」

 大声で注意をしてきた神に、俺は反論する。

『神様、喜んでいるときに水を差すのはどうかと思うけど」

「それはごめん。……じゃなくて、君は天国にも行かないの」

『……え?』

「だから、君は天国にも行かないの」

『……え?』

「だから、君は天国にも行かないの」

『……え?』

「だーかーら、君は天国にも行かないの」

 どうやら俺の聞き間違いじゃなさそうだ。(心なしか神の頭に血管マークが見えたのは気のせいだろうか)

 ええー、まじかー。

 俺天国に行けないのかよ。

 さっきまでの喜びを返せよ。

 ん?ちょっと待てよ。

『神様、地獄にも行かない天国にも行かない。じゃあ俺はいったいどうなるんだ。』

「それを今から言おうとしてたんだよ。いいかい君は――」

 少し溜めてから神は言った。

 俺がその言葉に抱いた感想は――

「異世界転生することになりました」

 ――いつも通りメンドクサイだった。

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