代表的な拳法流派とその系統
中国拳法の代表的な流派を系統別に紹介(史実と伝承が混在)。
<外家拳=少林系・武術的な剛・速・力を重視>
「少林拳」
河南省嵩山少林寺。達磨(菩提達磨)伝来説は伝説で、史実としては唐代に僧兵の武勇が記録され、明代に棍術などで名声を得たとされる。
「長拳(査拳・華拳・炮拳など)」
北方系の総称。査拳は回族(=イスラム教徒)の間で発展。
「洪拳」
広東省。清代の洪熙官が創始したとされ、南少林系を称する。
「蔡李佛拳」
広東省新会。19世紀に陳享が蔡家拳・李家拳・佛家拳を統合。
「劈掛拳」
河北省滄州一帯で発展。大きな腕の振りが特徴。
「八極拳」
河北省孟村で発展。呉鐘が伝えたとされる。震脚と肘・体当たりが特徴。
「翻子拳」
河北省で発展。連打が特徴。
「通背拳(通臂拳)」
腕を長く使う拳法。白猿通臂、祁家通背などに分派。
「蟷螂拳」
山東省。王朗が創始したとされる(伝承)。清初の王郎説が有名。
「地趟拳」
地面での転がり技が特徴。
<内家拳=内功・柔・意を重視>
「太極拳」
河南省温県陳家溝の陳氏が原型(陳氏太極拳)とされ、17世紀頃に成立。楊式・武式・呉式・孫式・和式などに分派。武当山の張三豊創始説は伝説で、史実としては根拠が薄い。
「形意拳」
山西省の姫際可(姫龍峰)が創始したとされる(17世紀頃)。五行拳と十二形拳が基本。のち河北・河南で発展。
「八卦掌」
河北省の董海川が19世紀に広めた。円周を歩く「走圏」が特徴。
「意拳(大成拳)」
王薌斎が20世紀前半に形意拳を基に創始。站椿(立禅)を重視。
※内家拳という分類自体は、黄宗羲・黄百家の記録(17世紀)に由来する概念。近代以降に太極拳・形意拳・八卦掌をこう呼ぶのが一般化。
<南拳=南方系・短打・低い構え>
「詠春拳」
広東省。厳詠春や五枚師太の伝承があるが、伝説色が強い。清代に成立。李小龍(=ブルース・リー)によって「截拳道」へと派生。
「白鶴拳」
福建省。方七娘(方種娘)が鶴の動きから創始したとされる。
「虎鶴双形拳」
福建・広東で発展。
「五祖拳」
福建省。明末から清代に成立。
「南少林拳」
河南省ではなく、福建省の少林寺(所在は諸説)を称する流派群。
「客家拳」
広東・福建の客家人が伝えた拳法(龍形拳、鶴拳など)。
「梅花拳」
河南・山東・河北で発展。梅花椿を用いる。
<象形拳=動物や特定の動きを模倣>
「猴拳(猿拳)」
猿の動きを模倣。
「鷹爪拳(鷹爪翻子拳)」
鷹の爪を模した擒拿技。河北省で発展。
「酔拳」
酔った動きを模す。
「鶴拳」「蛇拳」「虎拳」「豹拳」「龍拳」
少林五形拳の系統。
<内外の折衷・その他>
「心意六合拳」
河南省の馬学礼や回族の系統で伝承。形意拳との関連が指摘される。
「鷹爪門」「八極拳」「劈掛拳」の結合を行う「八極劈掛」的な統合流派もある。
「散打(散手)」
現代の競技格闘技。伝統武術を土台に20世紀後半に体系化。
補足)「内家・外家」「南拳・北腿」といった分類は、実際の流派の特徴を厳密に分けるものではなく、便宜的な区分。発祥の年代や創始者は、口伝や後世の創作が混じるため、史実と伝承を分けて見る必要がある。特に少林寺・武当山にまつわる話は、清末〜民国期に広まった物語的側面が強いとされる。




