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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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人呪穴三(ひとをのろわばあなみっつ)

人を呪わば穴二つ」という因果応報の格言は、民明書房の深奥に眠る古文書によれば、戦乱の時代、その生易しい響きを嘲笑うかのような、さらに悍ましい現実を突きつけていました。

挿絵(By みてみん)

それが、「人呪穴三ひとをのろわばあなみっつ」――憎悪が血肉となって暴走する、真の地獄絵図を指す言葉です。


人呪穴三ひとをのろわばあなみっつ ― 呪詛が掘り穿つ、三度目の破滅

大陸を焦土と化した「大混濁戦争」。そこでは、個人の復讐心は、もはや私的な感情の範疇を超え、国家という名の巨大な臓器に蝕まれた癌細胞のごとく、制御不能な増殖を遂げていました。


1. 憎悪の「残響」が穿つ、もう一つの墓穴

従来の「穴二つ」の教えは、あくまで術者と標的という「一対一」の閉じた空間での因果律に過ぎません。しかし、この時代の「呪術兵器」は、憎悪そのものを物理的な実体として増幅させ、時空間の歪みを引き起こす代物でした。


相手を根絶やしにするための呪詛が放たれた瞬間、その憎悪の波動は目標を滅ぼし、そして術者の肉体を蝕む二つ目の穴を穿つ。ここまでは常道です。しかし、この狂気の時代の呪術は、そこで止まりませんでした。


術者から溢れ出た憎悪の「残響」――その淀んだ瘴気は、時空の薄皮を裂き、何の関係もない、無垢な第三者へと吸い寄せられていったのです。


2. 「三つ目の穴」に蠢く地獄

民明書房刊『血塗られた因果律 ― 怨念の連鎖と無垢の犠牲 ―』には、こう記されています。


一の穴: 怨恨の対象。その肉体は腐敗し、魂は永遠の苦痛に苛まれる。その死は、呪詛を放った者の脳裏に、歓喜と同時に虚無を刻みつける。


二の穴: 呪いを放った者。憎悪は自らを焼き尽くし、生者の顔で死者の如く生きる地獄を現出させる。その肉体はやがて病に蝕まれ、精神は狂気に囚われる。


三の穴: しかし、最も悍ましいのは、この「三つ目の穴」に転がり落ちる者だ。それは、戦争の存在すら知らず、穏やかな日常を送っていた、遠き国の幼子、あるいは老いた農夫。彼らは、何の前触れもなく、突如として疫病に倒れ、飢饉に見舞われ、あるいは夜中に何者かに惨殺される。彼らの死は、誰の心にも残らず、ただ世界の片隅で静かに腐敗していく。彼らの墓は、**「無名の犠牲者の墓穴」**として、呪いの最終到達点に刻まれるのだ。


この「三つ目の穴」こそが、憎悪が自己の制御を離れ、宇宙全体を蝕む癌細胞へと変貌した証でした。


3. 「戦争」が持つ究極の邪悪

この格言が現代に訴えかけるのは、**「戦争という狂気は、決して『当事者間』だけで完結しない、無限の他者犠牲を強いる地獄の連鎖である」**という、人類への最期の警告です。


一人の怨嗟が、数百、数千キロ離れた無垢な命を何の理由もなく刈り取る。これこそが、民明書房が記す「人呪穴三」の真意であり、人類が「不為邪ふいじゃ」の精神を忘れた時、いかに凄惨な地獄が地上に現出するかを示す、生々しい戒めなのです。


「汝、呪詛を放つなかれ。その怨念が掘り穿つのは、汝の墓と敵の墓だけではない。汝の知らない場所で、汝の知らない誰かの、明日を葬る第三の深淵を穿つのだ。」


(民明書房刊『暗黒軍事秘録 ― 怨嗟が招く最終戦争 ―』より)

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