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民明書房刊 役に立たないネコのコトワザ図鑑   作者: ロータスシード


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ネコキック

 猫鬼駆ネコキック

挿絵(By みてみん)

現代の格闘技界において、背後からしがみついた状態から放たれる凄まじい連撃蹴り「ネコキック」。この技が、かつて中世ヨーロッパの社交界を裏で支配した「淑女の暗殺術」であったことは、歴史の闇に葬り去られて久しい。


この武術の祖は、14世紀フランスの貴族、アルベール・ド・ルナール伯爵である。彼は「戦場において重装騎士を凌駕するのは、百獣の王・獅子の如き跳躍と柔軟な四肢である」と確信。獅子の強靭な後肢の動きを極めるべく、私財を投じてアフリカより取り寄せた凶暴な獅子と寝食を共にするという狂気の修行に没頭した。


しかし、運命は非情であった。ルナール伯爵が「獅子の魂を我が脚に宿した」と豪語し、全裸で獅子に挑みかかった瞬間、そのあまりに完璧な獅子の模倣フェイントが裏目に出る。本物の獅子は伯爵を「美味しそうな若鹿」と誤認し、伯爵は奥義の完成を見る前に、喉笛を食いちぎられ絶命したのである。


この惨劇を目撃した伯爵のメイドや愛娘ら弟子たちは、師の遺志を継ぎつつも、賢明な判断を下した。「獅子は物理的に食われる。我々は、より身近で、かつ俊敏な猫に学ぶべきである」と。


こうして誕生したのが『猫鬼駆ネコキック』である。この武術の最大の特徴は、筋力に頼らず、猫特有の柔軟な関節と、相手にしがみつくことで自重を安定させる「寄生型打撃」に特化した点にある。非力な少女であっても、一度相手の胴体に組みつけば、瞬きする間に腹部や急所に数十発の破滅的打撃を叩き込むことが可能となったのである。


この技の流行は、当時のファッションにさえ革命をもたらした。従来の長いドレスでは、この神速の蹴り技を放つ際に布が絡まり、致命的な隙が生じる。そのため、動きやすさを追求した結果、裾を極端に短く切り詰めた「護身用戦闘衣」、すなわち現代に続く「ミニスカート」が誕生したのは、もはや歴史的常識と言えよう。


驚くべきは、その後の歴史への影響である。当時、一人前の「淑女レディ」として認められるための卒業試験として、「野生の獅子を猫鬼駆のみで屠ること」が義務付けられた。貴族令嬢たちは舞踏会の合間に山野へ繰り出し、次々と獅子を「ととのえて(屠等納)」いったのである。

挿絵(By みてみん)

その結果、当時ヨーロッパ全土に生息していたライオンたちは、淑女たちの可憐な、しかし冷酷な連撃の前に完全に駆逐され、絶滅の憂き目に遭った。現在、ヨーロッパに野生のライオンが一頭も存在しないのは、彼らが自然淘汰されたからではない。ひとえに、ミニスカートをなびかせた乙女たちの「猫鬼駆」によって、その生存圏を奪われたためであることは、疑いようのない事実である。


(民明書房刊『知られざる欧州・淑女の殺人作法』より抜粋)

今日はネコの日 

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