ねこまたぎ 【落鯖拳(らくしょうけん)】
民明書房刊『戦国・異形戦術の系譜』より抜粋
【落鯖拳】
戦国時代、北陸の難攻不落と言われた腐王寺城の籠城戦において編み出された伝説の戦法。
当時の守備兵たちは、兵糧として備蓄していた鯖をあえて初夏の炎天下に晒し、極限まで腐敗させた。この「熟成」された鯖を、攻め寄せる敵軍の頭上から一斉に投下。単なる物理的な打撃ではなく、その瞬間に発生する高濃度の硫化水素を含む臭気刺激を標的に浴びせることを目的とした。
医学的に見れば、この強烈な異臭は鼻腔から嗅神経を通り、大脳の「嗅覚野」を異常過熱させる。その結果、過負荷を起こした神経細胞が自己崩壊し、敵兵は一歩も動けぬまま脳死状態に陥ったという。
なお、この戦法を考案した軍師・左馬は、戦後、余った「毒鯖」の解毒を試みる中で、米と共に発酵させることで無害化し、芳醇な風味に転換させる技術を確立した。これが現代に伝わる「鯖のなれ寿司(鯖寿司)」**の起源である。
現代においてオンラインゲームのサーバーがダウンすることを「鯖が落ちる(落鯖)」と呼ぶのは、この時の「落鯖の衝撃によって、兵士の活動が完全に停止した」という故事に由来しているのは言うまでもない。
これについて、ドイツの物理学者シュトレン・カマンベール博士(1845〜1912)は、その著書『発酵と破壊の力学』の中で、「極限の悪臭(兵器)と極上の風味(寿司)は紙一重の存在である」と記している。
民明書房刊『暗黒武術・その過酷なる錬成』より抜粋
【落鯖拳・真の修行法】
「落鯖拳」の継承者となるためには、敵を倒す以前に、自らが発する想像を絶する悪臭に耐えうる強靭な精神と肉体を構築せねばならない。
その修行法は熾烈を極める。修行者は「鯖のなれ寿司」を三日三晩、一粒の米も残さず食し続け、全身の毛穴から発酵した鯖の成分を分泌させるまでに至る。この時、己の鼻腔を麻痺させるため、鼻の奥にある急所「無嗅穴」を自ら針で突き、一時的に感覚を遮断する秘術が用いられた。
この修行の最終段階において、ある悲劇的な逸話が残されている。 かつて落鯖拳の奥義を極めようとした修行者・腐乱には、どのような時も傍らを離れない忠実な愛猫がいた。しかし、腐乱が奥義を完成させた瞬間、その全身から放たれた常軌を逸した臭気に、猫好きで知られる猫ですら、恐怖のあまり毛を逆立て、一口も触れずに跨いで逃げ去ったという。
この「魚を愛する猫ですら、あまりの臭気に跨いで通る」という光景こそが、現代に伝わる言葉「猫跨ぎ(ねこまたぎ)」の真の語源である。
一般に「猫跨ぎ」は「不味い魚」を指す言葉とされるが、その本義は「落鯖拳の使い手が放つ、生命の危機を感じさせるほどの腐敗臭」を指す武術用語であったのだ。
なお、この時逃げ出した猫が、後に鼻の機能を発達させ、現代の麻薬捜査犬ならぬ「検鯖猫」の祖となったという説が、民明書房刊『生物進化の裏側』に詳しく記されている。
ぎにゃ~!!




