第6話:現場監督とお節介な助手
第6話:現場監督とお節介な助手
「よし、これで『排水計画』の第一段階は完了だ」
俺は額の汗を拭い、目の前の『石畳の道』を見つめた。
スキルレベルが3に上がり、施工範囲が広がったおかげで、村の中心から海岸までの「舗装」が一気に終わったのだ。
「キロル、また一人で難しい顔して土いじり? もう、せっかく私が『お弁当』持ってきたのに」
後ろから声をかけてきたのは、幼馴染のシシリーだ。
アルカ族の中でも一際明るい黄金の髪をなびかせ、彼女は俺の作ったばかりの「服」を着て立っていた。
だが……。
「……シシリー、その格好」
「え? キロルがくれた服だよ? 動きやすいように、ちょっとだけ自分流にアレンジしたんだけど……変かな?」
彼女が着ているのは、俺が支給した麻の服を改造した、ショートパンツ風のボトムスと、肩を大胆に露出したノースリーブ。
「服」という概念を知らなかった彼女たちにとって、布をどこまで切るかは自由らしい。白い肌が眩しく、俺は思わず視線を泳がせた。
「い、いや、変じゃないけど。……少し、露出が多くないか?」
「ふーん? さっきまで全裸で走り回ってた幼馴染に、今さら何を照れてるのかなー?」
シシリーはニヤニヤしながら顔を近づけてくる。
……これだ。前世の三十六年間には存在しなかった、この「幼馴染からの距離感」。正直、耐性がなさすぎて現場監督の威厳が台無しだ。
「と、とにかく! これからはシシリーにも手伝ってもらうぞ。この島を広げるには、俺一人じゃ手が足りない」
「うん、任せて! キロルのやることは全部応援するって決めてるから!」
彼女は天真爛漫に笑い、俺の腕に抱きついた。……柔らかい。いや、集中しろ、俺。
俺はシシリーを連れ、新しく開通させた道を歩いて島の奥地へ向かった。
道が整備されたことで、移動速度は劇的に向上している。それと同時に、スキルの「支配領域」も道に沿ってじわじわと広がっていた。
「キロル、見て! あの崖のところ、色が変だよ?」
シシリーが指差したのは、島の北側にある切り立った岩壁。
俺は操作画面の『地質調査モード』を起動した。
『資源反応を確認。――対象:【高品位・鉄鉱石】』
「……ビンゴだ。鉄鉱石か」
今までは帝国船の廃材をリサイクルして凌いできたが、自前で鉄を確保できるとなれば話は別だ。
鉄があれば、道具の強度が上がる。道具が強くなれば、さらに大規模な建築が可能になる。
「これが『鉄』になるの? キロルが言ってた、あの硬い剣とかの材料?」
「ああ。それだけじゃない。鉄があれば、もっと温かい家も、重いものを運ぶ車も作れる」
「すごい……。でもキロル、あんな高いところにある石、どうやって採るの? また穴を掘る?」
シシリーが真顔でツッコんでくる。
確かに、人力で運ぶには効率が悪すぎる。
「いや、道を作ったなら、次はこれだ」
『建設ユニット:【木製トラス橋】および【滑車式昇降機】――施工開始!』
岩壁と村を繋ぐ谷に、巨大な木の橋が架かっていく。
シシリーはその光景に、「わぁ……!」と目を輝かせ、無意識に俺の手をギュッと握りしめた。
「ねえキロル。この道がどんどん伸びていったら、いつか海を越えて、あの大陸まで届くのかな?」
シシリーの純粋な問いに、俺はバロウが語った残酷な世界の姿を思い出す。
「……ああ。届かせるさ。ただし、ただの道じゃない。誰もが奪われずに済む、平和へ続く道だ」
鉄を手に入れ、インフラを整える。
俺の「世界リフォーム計画」は、着実に、そして加速しながら進んでいく。




