第5話:全裸からの文明開化
第5話:全裸からの文明開化
帝国軍を退けた数日後。
島はかつてない活気に包まれていた。だが、その光景は相変わらず「全裸の美男美女がうろうろしている」という、文明人から見れば目のやり場に困るものだ。
「……まずはここからだな」
俺はバロウから没収した魔石と、帝国船の帆布を『素材』としてスキルに放り込んだ。
『スキルレベル:2に上昇。アンロック:【簡易織機】および【石組みの調理場】』
俺は村の中央広場で、スキルのウィンドウを操作した。
「設置工事、開始だ」
ズズズ……! と地面から石がせり出し、プロの左官屋も驚くほど精密な「石組みのカマド」が出来上がる。さらに、隣には帝国船の帆布を加工して糸に紡ぎ直す「魔導織機」を設置した。
「キロル、これは何? 食べられるの?」
母さんが不思議そうにカマドを指差す。
俺は苦笑いしながら、前世のソロキャン知識と、建設現場の炊き出しで培った「効率的な調理法」を披露することにした。
「これは食べ物を美味しく、安全にするための道具だよ、母さん」
俺は帝国船の備蓄から奪った塩と、島で獲れた猪肉、それに自生していたハーブをカマドに入れる。
直火で焼くだけだった島民たちにとって、**『じっくり煮込む』『蒸す』**という工程は未知の魔法に見えただろう。
出来上がったのは、香草が香る肉のスープと、蒸し焼きにした温かな果実。
「おいしい……! なにこれ、キロル。温かくて、口の中で溶けるわ!」
「こんなの食べたことない……。キロルはやっぱり神様だ!」
全裸の父さんが涙を流して肉を頬張る。
だが、俺の工事はここで終わりじゃない。
「次はみんな。これを着てみてくれ」
俺は織機から出力されたばかりの『麻の貫頭衣』を手渡した。
帝国船の帆布をリサイクルした、丈夫で清潔な白い服だ。
初めて「服」に袖を通した島民たちは、最初はソワソワと落ち着かない様子だったが、やがてその機能性に気づき始めた。
「これ……草むらを通っても体が痛くない!」
「夜になっても寒くないぞ!」
【島民の幸福度が上昇しました。これに伴い、スキルのリソース(魔力)供給効率が1.2倍になります】
脳内のアナウンスを聞きながら、俺はバロウが拘束されている『石の檻』へ向かった。
豪華な服をボロボロにし、自分の服を村人に奪われて下着同然になったバロウが、ガタガタと震えている。
「あ、悪魔め……。帝国が、この島を放っておくはずがない……。今ごろ、私の『連絡』が途絶えたことで、本国は異常に気づいているはずだ……!」
「ああ、そうだろうな。だから準備してるんだよ」
俺はバロウの目の前で、新しい設計図を開いた。
「服の次は『靴』だ。そして靴ができたら、次は『道』を作る。……あんたらの軍隊がこの島に上陸したとき、そこが『地獄の入り口』に見えるような、完璧な舗装計画を立ててやるよ」
一歩ずつ、だが確実に。
俺はこの楽園を、最強の「不落の城」へとリフォームし始めた。




