第4話:平和のための世界征服
第4話:平和のための世界征服
穴の底で串刺しになった兵士たちの断末魔。
先ほどまで威張り散らしていたバロウ子爵は、今や失禁し、砂に額を擦り付けていた。
「助けてくれ! 金なら出す! 命だけは……命だけは助けてくれぇっ!」
俺は冷めた目で、バロウを見下ろした。
スキルのウィンドウを開いたまま、彼に問いかける。
「金なんて、この島じゃただのゴミだ。それより教えろ。あんたらはどこから来た。この世界はどうなってる?」
死の恐怖に支配されたバロウは、よだれを垂らしながら吐き出した。
彼が語ったのは、俺の前世よりもずっと醜悪な、**『徹底した弱肉強食』**の世界だった。
この大陸を支配する「ガルド帝国」は、周辺の小国や未開の島を「資源」としか見ていない。
力のない者は奴隷となり、美しい者は慰み者となり、抗う者は家畜として処理される。
バロウのような無能な貴族ですら、帝国の威光を背景にすれば、他人の人生を指先一つで踏み潰せる。それがこの世界の「常識」だというのだ。
「……なるほどな。前世の社会もクソだったが、この世界はそれ以上の欠陥住宅か」
俺は空を見上げた。
隣では、母さんが怯えながら俺の服(と言っても、スキルで即席で作った布切れだ)を掴んでいる。
もし、今回バロウを追い払っても、帝国は必ず来る。
彼が戻らなければ「反抗的な猿がいる」として、次は軍艦を連ねてこの島を焼き払いに来るだろう。
(家族を、この笑顔を守るには……島を要塞にするだけじゃ足りない)
俺の心に、前世の現場監督時代には微塵も持たなかった野心が芽生える。
「バロウさん。あんたの言った『常識』、俺が全部リフォームしてやるよ。基礎から叩き壊してな」
俺が決意した瞬間、スキルのUIが激しく明滅した。
『オーナーの殺意……もとい、向上心を確認。――長期プロジェクト【世界征服:格差なき理想郷の建設】を承認します』
『文明レベル制限を一部解除。建設ユニット:【製鉄所】【織物工房】【魔導通信塔】の設計図が解放されました』
「世界征服……だと? 猿の分際で、何を……!」
バロウが絶句する中、俺は島民たちを見た。
全裸で、槍すら持たない心優しい彼ら。
「みんな、聞いてくれ。これからこの島を、世界で一番頑丈で、一番豊かな場所に作り替える。……まずは、全員に『服』を着てもらうところからだ」
俺は帝国船から奪った魔石を素材に変換し、砂浜に巨大な建物のホログラムを投影した。
『施設建設:【多目的防衛拠点・アルカ村役場】――施工開始!』
轟音と共に、島に初めての「石造りの建築物」が建ち上がる。
帝国の本格的な侵略まで、おそらく時間はそう多くない。
俺の「爆速内政」が、今始まった。




