第3話:追加工事はオプション料金だ
第3話:追加工事はオプション料金だ
「ふざけるな、ふざけるなッ! 貴様ら、何をしている! 早くそのガキを殺せ! 穴など飛び越えれば済む話だろうが!」
バロウ子爵の絶叫が砂浜に響く。
だが、穴に落ちた仲間が上げた「ボキッ」という嫌な生音を聞いた兵士たちは、恐怖で足がすくんでいた。
この穴はただの穴じゃない。断面が鏡のように滑らかで、這い上がるための足がかりが一切ないのだ。
「……飛び越える? 無理だな。あんたらの足元、もう『地盤沈下』が始まってるぞ」
俺は冷徹に操作画面を操作する。
落とし穴の底を指定し、新しく解放されたユニットを流し込む。
『建設オプション:【設置物・ウッドパイル(防衛用尖り杭)】を選択。――既存の穴へ追加施工します』
ズシュッ!!
「ぎ、ぎゃあああああああああああ!?」
穴の底から、今まで聞いたこともないような悲鳴が上がった。
バロウが恐る恐る穴を覗き込む。
そこには、先ほどまで呻いていた兵士たちが、下から突き出してきた「鋭利な木の杭」によって串刺しにされ、もがいている地獄絵図があった。
「な……な、な……っ!?」
「悪いな。うちの現場は安全第一なんだ。許可なく立ち入る不審者への対策は、マニュアル通りにやらせてもらう」
俺が指をパチンと鳴らす(演出だ)と同時に、残りの穴にも一斉に杭が「生えた」。
ボシュッ、ボシュッという鈍い音と共に、さらに数人の兵士が絶叫を上げる。
「ひっ、化け物……! このガキ、化け物だ!」
「退け! 船へ戻れ! 立て直すんだ!」
バロウは震える足で、砂を蹴りながら船の方へと逃げ出そうとする。
だが、逃がすわけがない。
俺の家族を「猿」と呼び、母さんにその汚い手を伸ばそうとした報いだ。
「逃げるのか? 現場監督に背中を見せるもんじゃないぜ。……おい、そこは『立ち入り禁止』だ」
俺は逃走経路の砂浜を広範囲にドラッグした。
『一括建設:【簡易バリケード・逆茂木】を設置』
ドゴォォォォンッ!
逃げ道の砂の中から、今度は巨大な木の柵と、鋭い杭の束が壁となって突き出した。
船へ続く唯一の道を、一瞬で封鎖してやったのだ。
「あ、あ、ああ……」
バロウは膝から崩れ落ちた。
逃げ道はない。部下は穴の中で全滅寸前。
目の前には、まだ十歳にも満たない子供が、冷たい「職人の目」をして立っている。
「さて、バロウさん。不法侵入に、器物損壊未遂、それに不当な労働勧誘(拉致)……。あんたがこの島に負った『負債』、どうやって精算してもらおうか?」
俺の後ろでは、腰を抜かしていた父さんと母さんが、呆然と俺の背中を見つめていた。




