第1話:建設員、全裸の楽園に産まれる
第1話:建設員、全裸の楽園に産まれる
三十六歳、独身。
十五年尽くした建設会社が倒産し、無職になった俺。趣味のソロキャンプ中に土砂崩れに巻き込まれ、俺の人生は実にあっけなく幕を閉じた。
(……ああ、次はもっと『運』の良い人生がいいな)
そう願って、次に意識が覚醒した時。
俺を包んでいたのは、泥流の冷たさではなく、柔らかな温もりと芳醇な花の香りだった。
「……ア、アウ?」
視界がぼやける。だが、目の前にいる存在だけははっきりと分かった。
神話から抜け出してきたような、黄金の髪とエメラルドの瞳を持つ絶世の美女。彼女が慈愛に満ちた表情で、俺を抱きかかえ、豊満な胸を貸している。
(……女神様か?)
と思ったが、どうやら違った。彼女の横では、これまた彫刻のように端正な顔立ちの男が、涙を流して俺の小さな手を握っている。
「アパ! キロル、アパ!」
男は俺を「キロル」と呼んだ。
どうやら俺はこの美男美女夫婦の息子として、この世に生を受けたらしい。
――しかし、赤ん坊の俺はすぐに気づいた。
俺を抱く母さんも、喜ぶ父さんも、布一枚身につけていない「全裸」だということに。
それから数年。俺はこの「名もなき島」の日常を理解した。
この島に住む「アルカ族」は、誰もが驚くほどの美貌を持っていた。だが、文明レベルは驚くほど低かった。
住居は木に蔓を巻き付けただけの簡素な雨よけ。
衣服という概念はなく、せいぜい大切な場所を大きな葉で隠す程度。
火は起こせるが、調理はただ焼くだけ。
元建設員の俺からすれば、ツッコミどころ満載の環境だったが、彼らは優しかった。
運の悪かった前世とは違い、俺は溢れるほどの愛情を受けて育った。
俺は決めた。この二度目の人生、この家族と仲間たちのために、前世の知識を活かして最高の「キャンプ生活(拠点作り)」を楽しんでやろうと。
文字を教え、石を積んだカマドを作り、効率的な排水溝を掘る。
俺が何かを作るたび、島のみんなは「キロルは神の子だ!」と全裸で飛び跳ねて喜んだ。
だが、そんな平和な日々は、突然の「外敵」によって踏みにじられる。
十歳の誕生日。水平線の彼方から、巨大な帆船が現れた。
島に降りてきたのは、鉄の鎧に身を包み、腰に剣を下げた「大陸の人間」たちだ。
「……なんだ、この島は。猿どもが群れていると思ったが」
先頭に立つ、豪華な服を着た太った男が、嫌悪感を隠さずに鼻を鳴らした。
彼は俺たちの美しい母さんや、島の女たちを卑俗な目で見定めて言い放つ。
「顔だけはいい。これなら王都の奴隷市場で高値がつく。おい、言葉の通じぬ家畜どもだ。抵抗するなら殺して構わん。捕らえろ!」
無慈悲な命令。兵士たちが、怯える母さんに手をかけようと迫る。
父さんが家族を守ろうと前に出るが、鉄の剣の前に、木の棒ではあまりに無力だった。
「やめろ……触るなッ!」
叫んだ俺の視界が、突如として変質した。
地面に無数の青白いラインが走り、世界が「設計図」のようにグリッド分割されていく。
『思考言語の整合性を確認。――全領域領土開発スキル【悠久の箱庭】を起動します』
『現在、この島全体をあなたの「領土」として認識しました。初回特典により、魔力消費ゼロで【レベル1ユニット】が設置可能です』
俺の目の前に、前世で使い慣れた建設用CADのようなウィンドウが浮かぶ。
そこには**【防衛用:強化石壁】や【自動迎撃:投石機】**のアイコンが輝いていた。
「……猿だと? こっちはプロの建設屋だ。タダで帰してやると思うなよ」
俺は震える指で、母さんに迫る兵士の足元に「トラップ」のアイコンをドラッグ&ドロップした。




