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安心してください! 偽聖女だと私を追放した殿下の判断は正しいですよ!  作者: 桜井ゆきな


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(第12話)不敬罪で処罰されても本望だ!は強がりか?~クラウド王国~

 「それでも自分が生まれた国だぞ! 心が痛まないのか! そんな力があるのならスカイ王国に帰ってくるべきだろう!」


 いや、マジか? スカイ王国は頭おかしいと常々思っていたが、まさかここまでとは思っていなかった。

 こんな場所で、自分達が冷遇したあげくに国境に捨てた聖女相手に、こんな言葉が出てくるだなんてありえないだろう。

 しかもこいつ王太子だろ? ……救えないな。

 あとさっきからこいつの頭に聖白百合が咲いてるんだよな……。それが気になって仕方ない……。修業が足りないぞ、俺!


 「偽聖女だと私をクラウド王国に追放したのは、セドリック殿下ですよ」


 そう言うシエナ嬢の声は冷静だった。

 だけど……。


 ……俺は、クラウド王国の国王陛下や帝国の皇太子の前でも堂々としているシエナ嬢を見て、彼女のことを強いと決めつけていた。

 だけど、今、セドリック殿下と向かっているシエナ嬢は、自分の母親が殺された話をこんなに大勢の前でせざるを得なかったシエナ嬢は、その声は、態度は、冷静に見えるけれど、きっと心の深いところで震えている、とそう感じた。

 見当違いかもしれない、それでも俺は……。俺は、シエナ嬢を守るためにこの場にいるんだ!

 今まで一歩下がったところでシエナ嬢と周りの王子達との会話を見守っていた俺は、シエナ嬢の隣まで歩を進めた。


 「隊長さま……?」


 そういうシエナ嬢の声は、やはりどこか震えている気がした。

 俺にはシエナ嬢のように奇跡を起こす力はないけれど、俺に出来る精一杯で彼女を守りたいと、強くそう思った。



 「先ほどセドリック殿下は、シエナじ……様を追放したことを精査して謝罪したいと言ったが、クラウド王国に捨て……いらした時のシエナ様は、やせ細っていて温かくて柔らかいものを食べただけで花を咲かせた。スカイ王国では切ってもらえなかったという髪を切っただけで花畑が出来た。温かい湯船に浸かっただけで大浴場が花だらけになり、ベッドがフカフカだとまた花が咲いた。……聖女だとか、聖女ではないとか関係なく、一人の人間の尊厳を傷つけたことを謝罪すべきだ! です!」



 ……俺は、敬語は苦手だ。

 そもそも敬語がうんぬん以前に、セドリック殿下の瞳が『こいつ誰だ?』と言っていた。

 突然訳の分からない奴にイチャモンつけられた的な感じなのか、セドリック殿下はひたすら困惑していた。


 だがルイ殿下からの叱責を受けセドリック殿下の隣で死んだような顔をしていたアイリス(心情的に公爵令嬢とか敬称で呼びたくない)は、俺の言葉を聞いて口の端を釣り上げて傲慢そうに笑った。

 ……きっとこいつ、自分より低い立場のやつをいびるのが大好きなんだろうな。


 「たかがクラウド王国のたかが子爵の息子が、スカイ王国の王太子殿下に不敬ですわ!」


 さっきの俺の紹介覚えてたんだな。……べつに嬉しくないけど。

 それにしてもアイリス急に生き生きしだしたな。性格悪すぎないか?



 「俺は今ここに聖女様のパートナーとして彼女を守るためにいる! 聖女様を守るためであれば何でもするし、そのことによって不敬だと処罰されたとしても覚悟のうえです!」



 ひ~。気づいたら宣言してたぜ、俺! マジで不敬罪で処罰とかされるかもな。……セバスよ、骨は拾ってくれ。

 内心ではビビり倒してる俺のチキンハートを守るかのように、聖白百合が会場中に咲き乱れ、花びらさえも舞い落ちてきた。

 ……えっ? なんで……? 驚いてシエナ嬢を見ると、その可愛い顔を真っ赤にしていた。


 「隊長さま。カッコよすぎます~」


 えぇっ!? マジか!? えっ!? もしかして熊さん卒業!?


 聖白百合のあまりの連打ぶりに、会場が騒然となった。

 おっ。このまま俺の不敬もなんとなく有耶無耶になりそうだ。

 ありがとう。シエナ嬢。結局守られたのはやっぱり俺の方だったな。……帰ったら修行だ……。


 「そのたかが聖女の護衛にすぎない子爵の息子は、不敬罪で捕えるべきです!」


 ちっ。アイリスしつこいな。やっぱり不敬罪か……。セバスよ、国境警備隊は任せたぞ……。



 「アイリス嬢。ラウスはクラウド王国の聖女から指名されたパートナーであり正式な招待客です。また、先ほどの発言の中で『たかがクラウド王国』という侮蔑があったことについて、クラウド王国から正式にスカイ王国に抗議させていただきます」



 うおおうっ! すっかり存在を忘れていてすみませんした! 第一王子! 

 俺を庇ってくれたのは我らがクラウド王国の第一王子だった! くー。頼もしい。


 「なっ!? わ、私はそんなつもりでは……。セッ、セドリック様……」


 さっきまでの傲慢さが一瞬で消えたアイリスは、縋るようにセドリック殿下を見つめた。

 いやいやアイリス、自分より身分が上の者からの叱責に弱すぎないか?

 きっと今まで自分より立場の低い奴とだけ関わって威張り倒してたから、こういう予想外の対応に弱いんだろうな……。

 いや、アイリスの性格ヤバすぎないか?


 「アイリス。もう何も話すな。……この度は失言を繰り返し大変申し訳ございませんでした。改めて謝罪させていただきます。……シエナ様にも、改めて謝罪の機会をいただきたく……」


 おお。なんかアイリスと絡んだ後だとセドリック殿下がまともに見えるな。

 いや、セドリック殿下もヤバい失言とかしてたけど、なんかこいつの一番の問題は女を見る目がないことなんじゃないかと思えるな……。ちょっとだけ同情するぜ……。



 「先ほどもお伝えしましたが、私がスカイ王国の偽聖女であることは事実なのでそのことに関しての謝罪は不要です。私のお母さんを殺した件については、調査のうえ事実の公表を求めます!」



 堂々とシエナ嬢は言い切った。

 やっぱり彼女はとても強いと、そう思いそうになったけれど、その手がほんの少しだけ震えていることに気づいて、こっそりと手を添えた。


 「……そして聖女であるかどうかは関係なく、スカイ王国の王宮で過ごした期間に私の人間としての尊厳が貶められたことについては、精査の上で構いませんので謝罪を要求します」


 さっきの俺の言葉だ……。シエナ嬢は、俺の心も汲み取ってくれた。



 「あっ、謝罪は文書で大丈夫です。もう二度とスカイ王国の誰とも会いたくないので」



 シエナ嬢のその言葉に、セドリック殿下は唇を嚙みしめていた。

 アイリスは……。うおっ!! ヤバい顔してる! 鬼みたいな形相してる! 

 セドリック殿下ー! 唇噛みしめて浸ってる場合じゃないよ! ちょっとでいいから隣見てみ!! 自分の婚約者が、公衆の面前で晒しちゃいけない顔してるぞー!! 

 何なら今までの失言なんかよりも一番ヤバいんじゃないかって失態だと思われるが……。


 セドリック殿下は自分の婚約者のヤバい形相に気づく様子がないし、アイリスの顔はマジでヤバかったので、これ以上シエナ嬢をこんな奴らに晒してはいけないと、俺は奴らからシエナ嬢の顔を隠すように一歩前に出た。


 「隊長さま」


 自惚れでなければ、今のシエナ嬢の『隊長さま』の後ろには『(ハート)』がついているように俺には聞こえた。

 ……うん、もう不敬罪で処罰されても本望だ! というのは強がりだが……。

 それでも少しでもシエナ嬢の心を守ることが出来たのなら、俺は本望だ!


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― 新着の感想 ―
他国で他国民を不敬不敬ってコイツら頭悪過ぎ。小国がそんなの適用できる訳ねぇだろ。それを言うなら公爵子女の醜悪な顔の方がよっぽど不敬だっちゅうに。
衝撃の事実。 残念な王国の残酷な王太子のパートナー。 招待客A「あの王国、終わりましたな。」 招待客B「名前を呼ぶ事すら憚られる国ですな、『聖女』を 虐待するばかりか、その母親を○害するとは。」 …
今更だけど隊長がヒロインな作品なのね。
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