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Feeling  作者: 遠藤 敦子
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 自分のことをどこにでもいる平凡な生徒だと、石川(いしかわ)菜緒(なお)は思っていた。目立つ方ではないけれど友達もいて、成績も普通くらいで美術部にも所属し、中学校生活での困りごとはない。そんな菜緒は同じ美術部の「紗良(さら)ちゃん」こと宮下(みやした)紗良(さら)を尊敬していたのだ。

 紗良ちゃんは天使のように優しい性格で、くりくりした目が特徴の可愛らしい女の子だ。菜緒は他の友達が紗良ちゃんの悪口を言っているのも聞いたことがなかった。また紗良ちゃんが誰かの悪口を言ったり、怒ったりしているのも見たことがない。紗良ちゃんは勉強ができ成績も上の方なので、そんな彼女を菜緒はすごいと思っていた。


 そんな紗良ちゃんは県内で2番目に偏差値が高い進学校の普通科ーー英語教育に力を入れているというーーに進学することになる。一方、菜緒は公立高校入試に合格できなかったため私立高校に進学が決まった。行きたかった高校に合格した友達の話を聞くと心が痛んだけれど、菜緒はこの私立高校に通うのを楽しみにしていたのだ。中学3年生の夏休みにここのオープンスクールに行き、校風が自分に合っていると思ったからだった。ここなら平和な雰囲気でのびのびと勉強も部活もできそうだと菜緒は確信していた。

 そうこうしているうちに菜緒は高校生になる。小学校から中学校まで9年間同じクラスだった河村(かわむら)寛人(ひろと)が同じクラスにいて、また寛人と一緒かよと菜緒は考えた。寛人もきっと同じことーー「また石川と一緒か」とーーを思っていそうな気がしたけれど、お互いに面と向かっては言わなかったのだ。菜緒は菜緒で女友達ができ、寛人は寛人で男友達がいて、お互いが別の世界にいたから。


 菜緒が仲良くなった中村(なかむら)こずえは152cmの菜緒より少しだけ背が低く、牝鹿のような目をしている。こずえは雰囲気も話し方も中学の時の紗良ちゃんにそっくりで、菜緒は思わず紗良ちゃんが同じ高校にいると錯覚してしまった。

「こずえって私が中学の時にいた可愛くて天使みたいな友達に似てる」

 と菜緒はつい、こずえ本人にそう言ってしまったのだ。その時こずえは、

「菜緒の好きな友達に似てるって言ってもらえて嬉しい」

 と言ってくれた。菜緒はそれを聞いて驚く。菜緒の中学の同級生とはいえ紗良ちゃんはこずえからすれば知らない人なので、知らない人に似ていると言われても微妙だろうかと思っていたからだ。

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