第1話:備後
そうして備後の福山城が見えてくる。
「あれか。」
「はい、そうです。」
「備後があれなのは分かったが、肝心の本部はどこなんだ?」
取り敢えず鞆の浦に着陸する。
「こんなに長距離飛行したのは初めてだ。流石にしんどい。」
「お疲れ様です」
雪が勝を担ぐ。
「で、備後はどっちなんですか?」
「海沿いに東に行けば着きます。」
そして備後の久松台にある退魔隊の拠点に到着する。
「ここです。只今戻りました。」
「帰ったか。」
「どうぞ、遠慮なく上がって下さい。」
「おじゃまします。」
全員が屋敷に入る。
「まぁ、まずは休んで下さい。この後、各自の力量を図るために勝さんと雪さん模擬戦があるので。」
早瀬さんが夕食の準備をしながら言う。
「はい・・・模擬戦は誰とやるのですか?」
「私とです。」
「「ゑ?」」
(一瞬で終わるな)と勝が心の中でそう思う。
「それじゃあ仕込みも終わった事ですし、中庭の訓練場に行きましょう。付いてきて下さいね。」
そうして中庭の訓練場に行く。
「使用するのは木刀です。ちゃんと大太刀もあるので大丈夫ですよ。」
「大太刀なんて俺は使わないが・・・。」
「私が薩摩拵えを使っているからね。」
「成程。」
「それじゃあ2対1でやりましょうか、そちらの方が手間が省けますので。」
「・・・いいんですか?」
「はい。一応、負けるつもりはありませんので。」と早瀬さんが笑顔で言う。
「それでは、そちらのタイミングで始めましょう。」
早瀬さんが構える。
「・・・俺はいつでも構わない。」
雪が蜻蛉の構えで突っ込む。
「チェストォォォ」
「・・・絶流斬、伍式・・・」
(空気の流れを読む。でないと当たるなど言うことはない。)
早瀬さんが雪の攻撃を交わして、
「2式、鍾馗!」
雪にクリティカルダメージが入る。
「速く威力が高いですけど、直線的ですね。」
「電撃斬。クロス。肆式、狂わしの舞。」
「速いですね。」
(生物的には反応できないはずなんだが・・・この人なにかおかしいぞ?)
早瀬さんが後ろを取ってからの1式隼でダウンさせる。
そのはずだが、消える。
「おやおや、「4式狂わしの舞」ですか。」
(さっきの見たら分かったが、あれ当たったらかなり不味い奴ー!)
「7式1型、烈風。」
(あれは確実に不味い!急げ!)
「絶流斬!漆式!無化ぁ!」
「あっ」
早瀬さんと勝の持っている木刀が両方とも折れる。
「あら、また壊してしまいました。もう何本目でしょうか。やはり、手加減って難しいですね。」
「木刀を折るて。」
「私が本気であの技を撃ったら木刀が技を撃つ前に壊れてしまいますからね。」
「・・・強すぎ。」
(真面目に勝てる気がしないんだが・・・)
「あと、絶流斬ですが。あどらぁどさんに教わったのですか?」
「いえ、違う人に教えてもらった技ですけど。・・・あと、アドラードを。・・・何者です?」
「彼は鬼神ですね。何回かやり合った事があるんですが毎回刀が壊れて最終的に殴り合いになってますね。でも、殴り合いなら数枚上手ですよ。」
「鬼神・・・そう言えばそんな事を言ってたような・・・」
「そう言えば此処って他に人って居ないんですか?」
「私と、おやっさんだけですね。今迄、それでどうにかなって来たので・・・」
「・・・退魔隊の戦力が増強されたのか。」
「そのようです。」
羽を持ち、角を持つ者たちがそのような会話をしている。
「ハッ。ただ、我々魔族からは痛くも痒くもない。蟻がいくら群がろうとも絶対的強者によって潰されるのが運命。」
「そのとおりです。我々の理想とする世界のための踏み台になってもらいたいものです。」
長と思われる者の側近がそう答える。
「ただ、万に一つの可能性でここを攻められてしまったらどうするのでしょう。」
「問題ない。秘策があるのだ。」
「そうなのですね!」
「我々はこれより退魔隊の本丸のある備後へ向かう。奴らは福山城に居る退魔隊の頭を討ち取るのだ。目標は来月。それまでに準備を整えるのだ!」
「まずは私めが行って参ります。」
「頼んだぞ。」
「ハッ!全ては、魔族の繁栄のために!」
「魔族の繁栄のために!」
そうして、夕食を食べた後・・・
「此処が貴方がたの部屋になります。」
6畳間2つである。勝と龍造、菊と雪で分けられる。
「明日から仕事を始めますので、今日はゆっくり休んで下さい。」
「ありがとうございます。」
「それでは・・・」
早瀬さんが自分の部屋に行く。
「勝。なーんか少しばかり嫌な予感がするんだが・・・。」
「そうか?」
「こういう勘は当たるんだよ。」
「そういうもんか?」
「そういうもんだ。」
「・・・さて俺の嫁さんが身ごもってるのは知ってるな?」
龍造が勝に言う。
「まあ・・・知ってるが。」
「そろそろ出産らしいんだ。」
「それはめでたい!」
「そういえば薬袋はもう産んだんだよな。」
「そうだと聞いてる。」
「お前の嫁さんはどうなんだ?」
「つい最近出産したよ。」
「お前さんもめでたいじゃないか。」
「Zzzz」
と隣の部屋で二人が寝ている。
次回、初戦闘。
ちなみに退魔隊は退魔自衛隊の前身です。