魔物の噂
アンフィニ祐です。
鬼神涼、片羽一透、薬袋佐奈のご先祖様のお話です。
江戸。その江戸の世が出来てから107年経った頃。ある事件が起こった。・・・魔物。
大昔から存在していた魔物と呼ばれるものが江戸の時代に一気に日本で広がった。
ただ、そんな魔物はかなり短期間で極滅された。
それは、彼の活躍があったからであった。歴史の教科書にも載った彼だが、消息を完全に絶っていたのだ。
そんな彼とその仲間達の物語が始まる―――――
「魔物?そんなやつが居るのか。」
彼の名前は正悟。歴史の教科書に載った英雄と言われている人物である。
「ああ。らしい。俺も分かってはいないが。」
彼は正悟の相棒、龍造である。正悟の武器をよく作っている。
「何の話?」
彼女の名前は薬袋 菊。幕府から姓を名乗ることを許された数少ない人間である。
「龍造どの、私の薩摩拵えの鞘、出来たでしょうか?」
こいつは雪薩摩から上京して来た奴だ。
「あぁ、完成した所だ。」
「ありがとうございます。」
そしてこいつの使ってる刀は特殊で薩摩拵えと言って「示現流」専用の刀だ。しかしこいつのは柄の長さが一般的な薩摩拵え物より長く、だいたい3〜4尺ほどの野太刀である。そして返角が殆ど付いていない。
「しかし、良くこんなもん振り回せるわね」
「柞木の木刀で慣れていますから。」
すると建物が倒壊して巨大な何かが現れる。
「なんだ⁉」
正悟と雪がすぐに刀を構える。
(なんだこいつは・・・!)
とんでもない力で二人共後ろへ飛ばされる。
「がはっ。」
「痛った」
正悟の意識が一発で飛ぶ。
(不味い。早く起きなければ・・・彼らが死んでしまう・・・!)
雪が起き上がり薩摩拵えを拾う。
正悟も意地でも起きる。意識を飛ばしてなどいられないという強い思いからであった。
「ここで気絶など・・・してられるか・・・!」
巨大ななにかを斬りにかかるが刃が通らない。
「チィ・・・!もっと力があれば・・・!」
「エイ!!」
雪も斬りかかるがあまり切れない。
汝に力をやろう。勿論。扱えればの話だが。
「・・・は?」
正悟にのみ聞こえていた。
我は鬼神、アドラード。貴様に魔物を打ち倒す力を与える。
我の力。存分に使え。
「・・・なんだ・・・これは・・・!」
(力が湧いてくる!まるで温泉のように!)
雪が巨大な何かに刀を刺すが吹き飛ばされる。
「・・・絶流斬・・・壱式!太刀!」
その強大な斬撃は巨大ななにか、いや魔物を真っ二つにして討ち倒す。
「やった・・・のか・・・。」
「ゲホッ、ガハッ」
雪が吐血する。
「大丈夫か?」
「ゲホッ、大丈夫だ、問題は・・・」
雪が気絶して倒れる。
「・・・そうだ。龍造と菊は!」
「大丈夫だ。」
「私も。」
「そうか。」
胸をなでおろす。
「貴方は・・・。」
「⁉誰だ!」
人が気づくとすぐそこにいた。それに気づいて刀を引き抜き、構える。
「そう身構えないでください。私は退魔隊と言う組織の者です。出張に来ていたのですが・・・貴方達。退魔隊に入りませんか?特に貴方。貴方なら魔物を絶滅させられるかもしれません。」
「はあ。」
「・・・ところで退魔隊の本拠地は?」
龍造がそう聞いた。すると
「退魔隊の本拠地は一番魔物の発生が多い備後の國にございます。」
「なるほど。」
「そして。貴方がたは退魔隊に入隊なされますか?」
「・・・ああ。そうさせていただこう。」
「俺も出来るなら。」
「広い世界を知りたい・・・。私も行くわ。」
「わた・・し・・・も・・・」
声がかすれている。
「じっとしてて」
「分かりました。それでは備後の國へご案内しましょう。」
「ところで、名前は?」
少し考えて答える。
「・・・改名しよう。俺の名前は勝。鬼神勝だ。」
「そうだな。俺も改名する。片羽 龍造。片羽は勝と一心同体の意味があるんだ。」
「私はそのままでいいかな。」
雪は手当てをして寝込んでいる。
次の日――――
「出発には時間があるし、ちょっと練習でもするか。絶流斬の練習も兼ねてな。」
刀を構える。
「絶流斬弐式、廻し切り!」
回転しながら斬る。
「・・・こんなものか。けどこれはまだ欠点があるな・・・」
「綺麗な太刀筋ですね。」
備後絣の服を着た女性が笑顔で佇んでいた。
「私は退魔隊の者です。宜しくお願いします。」
「備後からわざわざ。」
「いえ、二日後に本部が置いてある備後に向いますので」
「ところで、どうしてここへ?」
「上の人に「迎えに行ってやって欲しい」と言われまして、お迎えに上がった所存です。」
「成程。ところでもし俺が断っていたらどうしていたのでしょう。」
「その時はその時です。」
「・・・弐式をもう少し改良するか。」
ふと呟く。
「それでは二日後に・・・」
早瀬さんが何処かへと行く。
勝はそれを見届けると刀を構えて改良技に挑戦する。
「・・・弐式、改!竜巻斬り!」
廻し切りを更に立体的に斬る。
「・・・よし。これなら柔軟性がある。」
「荷物、まとめ終わったでありますよ〜」
「そうか。」
2日後、
「お迎えに上がりました。」
早瀬さんが来た。
「どうも。」
「まず、港に向かってそこから鞆へ行く船に乗りましょう。」
「歩いては行かないのか?」
「ここから備後の國へですか?」
「ええ。」
雪が悪い事を思い出して顔が青くなる。
「・・・大丈夫ですか?」
「薩摩から武蔵の國まで歩いて来たので」
※台風と嵐で死にかけた。
「それは・・・ご愁傷さまです。」
「それじゃあ、ひとっ飛びしますか。」
背中に背負う。
「・・・絶流斬、陸式。空狩り!」
その言葉を告げると勝の体が宙を浮き、空を飛ぶ。
急加速で雪の首がゴキッと鳴る。
「首がっっ!!」
「少しばかりの辛抱です。俺も最初は首が捻挫しかけましたから。」
「おやおや」
そうして空を飛んで備後へ向かうのであった。
※福山まで600km
さあ。これから彼の本当の物語が始まる。
次回、備後へ。