アナグマに小石を
チガヤを火で炙ってやり、どこからか種が飛んできたヒナゲシを根ごと切り取ってどうようにやってから焼けずに生き残ったガスとしばしおさらばして佐藤が軽く休憩しているときののことである。
無頓着な味の氷の入った緑茶をビールジョッキに入れて飲んでいるときにかまぼこよりもいくぶん大きな毛のまんじゅうがチガヤと土のむき出しになっている境目あたりで一瞬見えたのだ。
「あのやろう」
しばしば根っこをかじられているから、仕返しをしてやりたいから小石の代わりに氷をジョッキからこぼして握り込んでから投げてやったところ、チガヤの中に紛れた氷はあたりの枯れた細い草と砂の衣をまとってからはたいそう見つけづらくなった。
まだ氷は3つか4つはあったから軽く飛ばしてやると、大概は空中で半分に割れて結局は何にも当たらないまま雑草のカーペットに落ちて染み込んでいく。アナグマはどこかへ行ってしまった。
視線を落ちた二つに割れた氷を水分のない土と砂のついた運動靴で軽く蹴って遊ぼうとしたところ、二つに割れた氷の間をたどると雑草で結構固くなっているはずの地面に拳がすっぽりと収まるくらいの穴が出来た。それに対して思うことはあるにはあったから肩をかるく回して、スズメとかカマキリに伝えるぐらいの声で佐藤はなにかぶつぶつと言っていたらしい。
ジョッキのそこに溜まった茶葉のくずを脇の水道で軽くゆすいでそばに置き、休憩はおしまいにしてまたガスのにおいのする仕事を再開した。