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2度目の引退

 佐藤は2日間は動けなかった。ようやく関節とか筋肉とかが復旧してきたあたりで玄関から外の風景を眺める。


 一度作ったブランクは痛烈な老いを持ち込んでくる、本郷はほんとうによくやっている。そして自分をまだ競り合えていたころが続いていると考えていてくれた。

 

フレアが出るほどに赫灼する練磨に由来する照り映えるものは影を黒々とさせ、心臓がかいていた汗を擁護の効かぬほどに冷たくした。


 若い時期をつぶして頭打ちになったのは知っている、しかし消し炭のまだ白くなっていないところを燃やしてトーチほどにふただび復帰したいと思い疲労でかろうじてものが持てるか持てないかの手を弱々しく握りしめる。


 ためてしまった色々なことがあったからみぞれ雪を砕いたあの試合から4日後に稽古に復帰した。激闘であったのは間違いはない、だが門人たちは稼業とともにおのおのの武器をふるっているわけだから一週間が立たないうちでも死んだ話題である。


「10分休憩にしましょう」


門人たちはぞろぞろと防火の為の白い壁が貼られた体育館の端に置いた荷物から学生時代の遺物のビニル製の水筒を取り出したり、コンビニでかったペットボトル飲んだりしており、少し経ったら切れた息を治すため座るものもいればアキレス腱を伸ばすものなどがおり個性などはないがすることは多様であった。


「にしてもよく鉄道用のハンマーなんて持っていましたね、稽古に持ってきた時はそんなハンマーがあるって知らなかったのでびっくりしましたよ」


今日は来るのが始まるほんの少し前だったから荷物が後ろのほうになって長岡と防具入れが隣り合った。長岡は若いけれど親身なやつでスパイキハンマーを持ってきたときに稽古に乗ってくれた倶楽部では先輩にあたる年下の郵便局員だ。


佐藤が変なものを持ち込んですまないと言えば面白かったと顔をたてるためではないと感じさせる普段と変わらない声帯から来る声をして返した。


「この歳になると、あんまり言いたくはないんだけれども得物をもったようなパワーあるやつとの組み討ちが全然出来なくなってくるんだよ、もう次の日はうごけないのなんの」


長岡は剃り残し一つない滑らかな顎を人差し指と親指で軽く摘まんだあと同情の言葉をかけ、このあとの技練習の元立ちを頼みふただび防具をつけた。


 練習が終わり、汗が乾く前にはやく家に帰ろうと防具に雑菌抑止のためのアルコールをワンプッシュして頭部のマスクを軽く拭いていたところ普段はだいたい鍵閉め当番と談笑しながら帰っている長岡が帰り支度を済ませていた。


「長岡くん今日は早いじゃん」


佐藤は左手のプロテクターを消毒していた。たいていは根っからの真面目だから談笑のテーマはあの時はどうやって戦うべきだったか、ということだが今日は違った。


「トビジョーってわかりますか」


「いいや知らないね」


長岡のいうにはいくぶんか不自由となるが今やっているやつと大半は似ていて違うところは競技のルールが気絶するまで打ち合うシャクジョーと違い、ルールはポイント数を争うそうだ。


「おう、市民アリーナの駐車場にあさっての10時に集団な」


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