プロローグ
かつて花形であった剣と魔法はいかんせん燃費が悪いということで、構造に差異はあるもののみなさんもご存知の大砲やらライフルへと近づいていき、結局は格闘技としての興行であったり太極拳のような健康体操であったりへと移っていった。
「本郷さんはこれまで公式戦28勝2敗3引き分けという輝かしい戦績とのことですが、東口さんにも再戦したいお相手がいらっしゃるということをお伺いしました」
休憩時間にわずかに油の浮いたスープを麺にからめて時々メンマとか練り物とかの音を啜る音に混ぜる労働者達は酸化した油がうっすらとついたテレビを見ていた。
「佐藤さん、灼杖やってたんだろ?」
「シャクジョーなんかやってもあんま良いことないですよ。いまでも低気圧とかになると結構じんましんとかが出やすくなるんでやってられんのですよ」
佐藤は国に帰ってから家業の畑の土と虫をいじる生活が始まる少し前のことを回顧する。あれは辛かったものの十二分に楽しませてもらった。
とにかく体質的に花形の魔法をばんばんと撃つことはできなかったからとにかく捨て身で肉を切らせて骨を切れるところまで突貫するさまをおぼろげながら眼の前の靄に映し出す。
届いた半ラーメンに半ライス、にんにく餃子によって靄は散っていったが、耳からとばしとばしに来ることと店内では最も対抗できるということへの優越は消えることはなかった。
佐藤が半ライスに餃子のタレを染み込ませて口に掻き込むことに夢中になったいるとき、視線がいっきにきて飲んでいたお茶の温みを忘れることとなった。
「佐藤タダアキさんには大苦戦した思い出があります。ぜひ、再戦をしたいです」