15 マジ
早朝、アルセリア王都の周囲をぐるりとランニング。
老師の教えを守って、日々の鍛錬は欠かさない俺。
なんて言うのかな、鍛錬すればするほど身体が自分の思い通りに動くようになるのが嬉しいのです。
もう歳なんだけどね。
『ホント、いい歳してさ』
おや、おはよう、リリコーネさん。
ずいぶん朝早くの登場ですけど、もしかして急ぎの任務ですか?
『急ぎじゃないけどさ……』
おやおや、珍しく歯切れの悪いお言葉。
何か相談ごとですかな。
『とりあえず止まってくんないかな』
『走りながらだと疲れるんだよ』
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東門の側で休憩しながら、リリコーネさんからお話しを聞きました。
えーと、かなり厄介な相談ごとですよ、これ……
『にゃんこの恋の"キューピッド"』
リリコーネさん、どうやらストリーケさんに一目惚れしたようで。
まあ、分からないでも無いです。
ストリーケさん、めっちゃ美猫ですし。
ミッドナイトブルーの美しい毛並みといい、
知性と情熱を兼ね備えた、凛とした佇まいといい、
一目惚れしちゃうのも分かりますが……
『高望み、なのかな……』
いや、リリコーネさんならお似合いだと思いますよ、
見た目だけなら……
『口悪いもんな、俺……』
いやいや、態度も悪いですよ、充分。
『少しはフォローしろよ』
いえ、コトが男女間の問題ですし、あやふやなまま進めちゃうのだけは禁物ですから。
『何だよ、妻帯者の余裕かよ』
何とでも仰るがよろしい。
コレに関しては、ごまかしや嘘いつわりは絶対にNGですよ。
『応援、してくれないのかよ』
これまでの俺とリリコーネさんとのお付き合いでの情報を、
正確にストリーケさんに伝えることが、おふたりのためですよ。
虚飾とか上げ底とか見えっぱりとか、そんなのすぐにバレますって。
『なんか、普通に歳の功って感じ』
『たまには頼りになるね、おっさん』
で、どうするんですか。
首根っこ掴んで、このままストリーケさんのところに連れてく?
『……もうちょっと考えさせてくれ』
はい、この件に関しましては、リリコーネさん自身が行動するまで、
俺は一切動きませんので。
『ありがとな』
行っちゃったよ。
ちょっと厳しすぎたかな。
でもこういうのって、なあなあで進めちゃダメだよね。
いや、ねこだから、にゃあにゃあ……




