14 問題
実は、本来俺が受けていた依頼、
『アルセリア王都に潜伏中の脱走勇者の調査』は、
ネコリさんの件で完了、では無かったのです。
ってか、探してるのは男の召喚者だって、最初に言って欲しかったよ。
---
"スイカバー"を出ての帰り道、ちょいとふたりにご質問。
こちらに来てからネコリさんには、他の召喚者からの接触はありませんでしたか?
「特には……」
「普段は、ずっと人目をさけて目立たないよう生活していましたし」
「仕事の際は、リーケさんが依頼を厳選してくれましたので」
ストリーケさんは、ここで暮らしていて怪しい召喚者とかには会いませんでしたか?
『このアルセリア王都はとても平穏だったし、変な連中には極力近付かないようにしていたので』
なるほど。
安全のために、これからもそんな感じでお願いします。
ってことは、俺の依頼は振り出しに戻る、ですね。
「私との付き添いを優先すると、ノアルさんのお仕事の方に差し障りが……」
それは全然平気ですよ。
『おじさまはいつもこんな感じで行き当たりばったりだから、気にしないでね』
そうそう、いつもこんな感じ、
って、行き当たりばったりは酷いな、アンチさん。
まあ、事実ですけど。
---
夕食も済み、お風呂も済ませて、子供たちはご就寝。
最近はストリーケさんが抱きまくらにゃんこされていたようだけど、
今日は解放してもらえたようですね。
俺は、"ケマネコさんの召喚者通信"のバックナンバーを確認しながら、
依頼についての今後の方針を検討中。
行き当たりばったりだって、歩みを止めなければ進展があるかも、ですよ。
……ふむ、基本的には、各家庭で起きたイベントの紹介。
誰それちゃん、お誕生日おめでとう、とか。
誰それさんたち、ご結婚おめでとうございます、とか。
どこそこさんご一家の皆さん、お引っ越し頑張ってください、とか。
確かに、微妙に個人情報流出ではあります。
ナーシェミさんのパパさんが楽しみにしていたのも分かりますし、
悪意を持って情報を扱えば、悪用出来る程度の。
こちらの世界には、新聞のような定期刊行物は無いですし、
スマホのような個人が気軽に携帯出来る情報端末も、まだ一般的では無いのです。
でもこれからはこの異世界でも、この手のプライバシー問題が増えていくのでしょうね。




