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4.護衛を求めて

 さて、神様と謎の邂逅も終えたことだし、今日をどうするか考えよう。


「まだちょっと腹が痛いし、あれをするのはもういいや。……じゃあ、とりあえず試してみるか。スキルの力ってやつを」


 床に落ちている2つの玉は、床からベッドの上へと放っておき、一発抜いたら次にしようと思っていた転移スキルってやつを使ってみることにする。

 たしか、王の間では鎧のおっさんが移動のスキルだと言っていた。

 これにロリっ子が追加で機能をくれたけど、今は条件が整わないし試せない。

 だから本来の機能を試してみるべきだろう。


「よし……えっと、こうか?」


 意識して自分の中にあるのであろう転移スキルを発動してみる。

 やり方は簡単で、今自分のいる場所を認識したら、次は行きたい場所を頭の中で思い浮かべるだけだ。


「行ける場所は……城は無理……えっと……あぁ、あの通りまでは行けるのか……」


 今、頭の中では先程城から歩いてきた道を逆走したイメージが浮かんでいるのだが、どうやら道中の半分程度までしか俺の移動範囲ではないらしく、その先をイメージしてみても霞がかかったかのように意識が薄らいでしまう。

 仕方がないのでとりあえずは試しに、この部屋のドアの外をイメージして転移を試みた。


「……っと。おっ、気が付いたらもう終わってるのかよ……。一瞬すぎて驚く暇もねえな。これ要するに短距離ワープってことだな。じゃあ、次は……って無理か」


 もう一度試してみようと思ったが、今さっき出来た場所のイメージが全く浮かばない。

 再び使うにはクールダウンみたいな時間があるっぽい。

 体感だから正確な時間は分からないけど、多分三〇分は無理だな。


「まあ、どんな力かは分かった。あれだな、行ったことのある場所なら飛べるってことだな。問題は距離と間隔だけど、これは……使えるスキルなのか?」


 実際に試してみたのだが、正直使えるのか微妙に思えてきた。

 なぜなら、歩いて五分もかからない程度の距離が移動可能な範囲の上、連続では使えないし、行った場所しか無理という制限がある。

 これは鎧のおっさんが、俺のスキルを見て狼狽えたのも理解できるわ……


「いやまあ、そうだよな。このスキルが連続使用できたら相当強いだろうから、あの場から追い出されることもなかっただろうし」


 もし連続使用が出来たならば、例えば戦闘時に「お前の後ろは取った」が簡単に出来てしまうのだから、役に立たないから出て行けなんて言われなかっただろう。

 これでスキルの実験は終わりだなと、部屋に戻ろうとしたところで、あることを思い出した。


「そう言えば、丞相さんは身を守る者を探したほうが良いとか言っていたな。どうせ部屋の外に出たし、宿の人にでも少し聞いてみるか」


 階段を降りて一階のロビーにやってきた俺は、この宿に連れてきてくれた兵士さんが宿の支配人と言っていた初老の男に話しかけた。

 彼は特に仕事もなかったのか、俺へと向き合い質問に答えてくれる。


「護衛でございますか。当方でご案内できますが、どれほどの者をご所望でしょうか?」

「えーっと、実はその辺の相場というか、どういった人を、とか全く分かってないんですよ。とりあえず、何をするにもそれなりの期間の間、護衛とか道先の案内とかを、お願いできる人が良いんですけど」

「長期間の護衛ということでございますか。そうしますと少なくない費用が必要になりますな。それに、当宿をご利用されるとなると、この地区でも通用するものとなりますので、そうですな……上は日に金貨一枚、下ならば銀貨二枚と言ったところでしょうか」


 えっと、この宿が一泊銀貨五枚だろ?

 ってことは高い方で金貨一枚は二泊分ってことか。

 いまいち金貨の価値ってのが分かってないからあれだけど、これ結構高いよな。

 話を聞いて考えていると、宿の支配人が話を続けた。


「それとも、奴隷を購入するかでしょうな。身なりさえ整えていただけば、当宿に入館させて頂いても構いませんので。そう言えば、今夜はオークションがございましたな」

「オークション? って奴隷のですか?」

「そうでございます。この宿をでて右手に少し歩いた先にある、奴隷商店でございます」


 やっぱりいるのかこの世界にも奴隷が。

 地球にもいたんだし別におかしくもないのか。


「奴隷の方が費用を抑えられそうですか?」

「本日はオークションですので、どれほどの価格になるかは分かりませんが、ある程度の教養と護衛が可能な力がある者ならば、金貨五十もあれば良い買い物が出来るのではないでしょうか。ただ、これは最低限ですので、質はあまり期待するべきではありません。あぁ、そう言えば、最近王家が大量の奴隷を購入したという噂がございましたな。もしそれが本当であれば、相場が上がっている可能性がございます」

「へぇ~、王家が奴隷を」

「えぇ、なにやら勇者の召喚を行うらしく、その者たちに充てがうとか何とか。まあ、噂話でございます」


 噂とは言っているけど、確信を持っているような話し方だ。

 もしかしたら、俺がその一人だと知っている可能性もある。

 だってこの人、宿屋の支配人と言う割には眼光が尖すぎる。

 絶対普通の人じゃないよ。


 それにしても、奴隷か。

 面白そうだし見に行くのもありかもな。

 目的地は歩いてすぐの場所だし、この地区ならば治安を心配する必要はないっぽいし。


 追加で色々聞いてみれば、そのオークションは後三〇分もすれば始まりだすらしい。

 思ったより早いなと思ったが、やたらと曇っているガラス窓に目をやれば、もう一時間もすれば日が落ちるのではないかと思えるような明るさだった。


「お帰りになりましたら、夕食をご用意させていただきます。いってらっしゃいませ」


 支配人に見送られ宿を出た俺は、言われた通り宿から出て右に進んでいく。

 初めての異世界一人移動でかなり緊張してしまうが、人の通りはまばらで、周りの人々はみんな身なりが良いと感じられるから危険な雰囲気は一切ない。

 むしろ、俺のTシャツジャージ姿が浮いていて、道行く御婦人に怪訝な目を向けられている。

 早めにこっちの服を買わないと駄目だな。


 そんな不審者はいつの間にか、松明の光にランランと照らされている石造りの建物の前に到着していた。

 入り口にはおっかない顔をした、いかつい男が二人。

 俺が立ち止まるとオークションで? と聞かれ、意外と優しく中に招き入れてくれた。

 その人の案内でドアを二枚を隔てた先にあったのは、二、三〇畳はありそうなホール。

 建築技術がまだ未発展だからだろうか、柱がやたらと多くその量が気になるが、それよりもこの空間の雰囲気のほうがやばい。

 どいつもこいつも金持ちそうな空気を出していて、護衛っぽいやつを背後に置いて丸テーブルを囲っている。

 俺の場違い感が半端ないわ。


 椅子は半分以上空いているのだが、あの中に入っていく勇気はないから壁際で待機する。

 異世界観光と情報収集としてホールの中を見回していると、しばらくしてオークションが始まった。

 会場の視線を集めるその場に視線を向けてみれば、太ったガマカエルのような顔をした中年男が壇上に上がった。

やる気に繋がりますので、是非お気に入り登録と評価を頂ければと思います。

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