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2.大金ゲット?


 結局、あの高校生たちのフルネームも知らずにあの場から追い出された俺は、兵士に連れられてとある一室に連れて行かれた。

 この部屋に入った直後は、使えないから処理でもされるんじゃないかと、後ろに立っている兵士の腰にある剣に、視線が釘付けになってしまったがそんなこともなく、かなり上等なソファーに着席を促された。

 部屋を見渡せば、ここもさっきの王の間からは格が落ちるが立派な一室だ。

 一見すると西洋風なのだが、所々にそれとは異なる意匠の施された、家具や装飾が見られる。

 なんというか西洋風の中にアジアンテイストを打ち込んで、ちゃんと融合しましたみたいなデザインだ。

 まあ、デザインセンスなんて皆無な俺の感想だから、見る人が見たら変てこに感じるのかもしれないが。

 そんなことを考えていると、部屋のドアが開かれる。

 視線を向ければ、恰幅の良い五十は超えているだろう男が、こちらに向かってきていた。


「貴方が他世界からやってきた方ですかあ。これはこれは、ほうほう、我々とは顔立ちが異なりますなあ。あぁ、あそこは何と言いましたか、えっと……あそこですよ、ほら、遠方にある国。小さいながらも兵卒からして精鋭を揃えている、あの国は何と言いましたか……」

「丞相、イグナーズではありませんか?」

「あぁ! それです! そこの者に顔立ちが似ていますなあ。あっ、これは失礼を、私はこの国で丞相をしております、ヤンスキル・ルードブックと申します。勇者――ではありませんな、えっとお名前をお聞きしてもよろしいですかな?」


 目の前に近づいてきた丞相とやらに、いきなり捲し立てるように喋られて驚いた。

 だが、話し方は丁寧だし笑みを浮かべている様子はとても友好的だ。

 先程考えていた、俺の処分とかはなさそうだなとホッとした。

 でも、一つ気になることがある。

 この人、笑顔だけど目が笑っていない。

 俺の経験上、こういう人には逆らわないほうがいい。

 可能な限り下手に出るんだ。

 ソファーの対面に腰掛けた丞相に、俺は頭を一つ下げる。


「ご挨拶遅れて申し訳ありません。私は古都里 大輝と申します」

「……ほうほう、これはご丁寧に。ではコトリ殿、早速ですが貴方にとても有意義なお話がありましてな。本来であれば、そこな兵からすでに軍資金が渡され、今頃はこの城から旅立たれていたのでしょうが、それではあまりにも不憫だと思い、私が直接会いに来たのですよ」

「えっと、何かして頂けるってことですか?」

「えぇ、えぇ、そうです。コトリ殿をお助けしようと思いましてね。しかしながら、どうでしょう? 仮にも一国の丞相がただ助けるといっても、貴方は気後れをしてしまうだろうし、何か裏があるのではと、考えてしまうのではありませんか?」

「ま、まあ、そうですね。甘い話はないといいますし」

「そうでしょう、そうでしょう。ですからね、ここは一つ取引でも出来ればと思いましてね。そう、例えば……貴方が他世界から持ってきた物をお譲りいただく対価として、私から個人的な支援をするという形にしようかと……思いましてね?」


 なんだかんだ言いながら、さっきからずっと俺の左手首へ、チラチラと視線を送ってたのはそういうことね。


「そ、そうだったのですか。はははっ、これはお心遣いに感謝しなければいけませんね。しかし、何をお譲りしたら良いのやら……。私程度の持ち物では、丞相様を喜ばせられるのかと心配になりますね」

「そんなことはありませんよ! その、腕の、それは、ねえ? それは何なのでしょうねえ?」


 やっぱり時計に興味があるようだから、腕から外して机の上においてみた。


「これは私の世界では一般的な、時を計れる機能を持った道具ですね」

「……これが時計ですか。これほどまでに小型になるとは驚きですな。手にとっても?」

「どうぞどうぞ、お好きに鑑賞してください」


 丞相が時計を手にすると、先程まで見せていた奥底では笑っていない瞳の色が変わった。

 これは完全にコレクターの目だわ。


 しかし、すまねえなこの世界。

 時計って概念があったのか。

 なめすぎてたわ。

 でも、この時計は地球を基準で動作してる訳だし、この世界じゃどうなるんだろうな。

 使えないってことはないだろうし、鑑賞目的としてなら蒐集欲を刺激するか。


「どうでしょうか? これは丞相様のお目に掛かる物でしょうか?」

「えぇ、えぇ、良いですなぁ、これは……。ため息が出てしまうほどの造形ですなあ。金属にこれほどの細かな細工を施せるとは、貴方の世界には、余程素晴らしい職人がいるのですねえ。あぁ、この時を刻む音が素晴らしい。これは、是非とも……」


 この時計、五万も出せば買える高価とも安価とも言えない、日本製のメジャーな時計だ。

 それを丞相って確か王の次ぐらいにいる人が、うっとりとした目をして眺めている。


「丞相様、その時計を腕に装着してみてください。あぁ、お似合いになりますね。これなら、お譲りしても丞相様のお機嫌を損なわずにすみそうですね」

「に、似合いますか!? そ、そして、これほどの物を譲っていただけると!?」

「えぇ、もちろんです。使えないと放逐されてしまった私に、お声をかけていただいた丞相様の男気に応じぬ訳には行きません。どうぞ丞相様の物としてください」

「おぉ……何とも心の広い方ですなあ」

「お褒めいただきありがとうございます。……しかしながら、その時計は私としても思い入れがあり、手放すことはなかなか心苦しくありまして……。ですが、私としては勇者となった彼らが魔王とやらを打ち帰還の時を待つ間、それなりの生活が出来れば心が癒やされるのではないかと思っていまして……。どうか、その点を考慮したお心遣いを頂ければと」

「えぇ、えぇ、もちろんですとも! コトリ殿の心を癒やすためにも、良き取引になるよう計らわせていただきましょう」


 この様子ならばそれなりの金額を用意してくれそうだ。

 ならばと、俺は他にも持っていた物を見せてみるが、あまり反応がよろしくない。


「はぁ、力を失うと、光が灯らぬただの厚板になってしまうのですかあ……? それではいくら素晴らしい仕組みを持っていたとしても、役には立ちませんなあ。まあ、ツルツルとした触り心地は良いですし、見た目もこれまた奇妙なものですから、それだけで価値はとてもありますけどねえ」


 最初はスマホの機能を見てまた目を輝かせていたんだが、ちゃんと言っておかないと後が怖いと思い、電源のことも説明してみたらこうなった。

 まあ、日本でも電源の入らないスマホなんて文鎮って言われるぐらいだしな。

 中身を見せてみればまた興味が戻るかと思ったが、開ける手段もないからやめておこう。


 他にも、キーホルダー付きの鍵を見せたが、形状に興味を持ってくれたがそれほどもない。

 なんか単純に機械的な物が好きなだけなのかこの人は。

 近所のコンビニに買い物をしに行くつもりだったので、持っている物はもうなくなった。


「では、この時計とすまほという物をお譲りしていただきましょう。そうですなあ、これほどの物を手に入れられたのですから、礼は弾まねばなりませんなあ……。あっ、君。コトリ殿にはいく程の金をお渡しする予定だったのだ?」

「金貨二〇枚ほどと聞いております」

「ぬ? 王にしては珍しく気前の良いことだ。う~む、では、金貨を三〇〇枚ほど用意するよう伝えたまえ」

「な、何と、それほどの金額をですか!?」

「いいから伝えに行きなさい。君には分からないのでしょうが、これにはそれほどの価値があるのだよ。そうですよねえ、コトリ殿?」

「正直申しまして、私は金貨三〇〇枚の価値を存じてはおりません。ですが、丞相様の慧眼に間違いがあるはずはないと思いますので、相応の金額なのだと思います」

「そうでしょう? ほら、そういうことだから、君は早く行きなさい」


 丞相に促されて兵士の人が部屋から出ていった。

 金貨三〇〇枚か……

 この世界でどんだけの価値があるんだ?

 まあ、結構良さそうな鎧を着てる、兵士というより騎士っぽい人が驚いてるんだから、結構な額なんだろうけど、具体的な価値ってのを知りたい。

 でもなあ、流石にそれをここで尋ねるのは、無粋って感じがしちゃうねえ。


「そういえば、あの三人も向こうの世界の物を持ち込んでるともいますけど、交渉してみたらどうですか?」

「あぁ、勇者殿たちですか。あの三人はこれから王が目にかけるでしょから、不用意なことはできんのですよ。それに、下手をしたら機嫌を損ねる可能性もありますでしょ? いくら私でも、これから救国を行う方たちに、悪い印象を持たれたくはありませんからねえ」


 それ、俺なら別に機嫌を損なおうがどうでもいいってこと?

 気づいてないんだろうけど、ナチュラルにひでえことを言うなこの人は。


 兵士が部屋から出て少し立つと、ジャラジャラと音を鳴らせて戻ってきた。

 あの両手で抱えている袋の中に金貨が入っているのか。

 俺と丞相の間にある机にその袋が置かれると、重量があるのか鈍い音がした。


「では、どうぞコトリ殿、これをお受け取りください」

「はい、ありがたく頂戴いたします」


 礼を言いながら、どれだけの重さがあるのかと、机に乗った袋を軽く持ち上げてみる。

 って、持ち上がるが、普通に重いんだが!?


「二つに分けた方が良さそうですな。ほら、袋を用意してあげなさい」


 そう言いながら丞相が席を立った。


「私はここで失礼をしますねえ。コトリ殿は話が分かる方で良かった。実に有意義な取引が出来ましたなあ。あぁ、そうだ。これから城を出るコトリ殿に一つ助言をするとすれば、貴方は身を守る者を探した方が良いでしょうな。それでは、後はこの者の案内を受けてください」


 手に入れた時計をちゃっかり身につけた丞相が、部屋を出ていく姿を眺めていると、一つ疑問が浮かんできた。

 何故、彼は俺と取引をしたんだろうか。

 正直、俺から無理やり取り上げても余裕で隠蔽できそうな気がするんだよな。

 いやあれか、俺も一応は女神様の召喚で呼び出された奴だから、慎重になってるのか?

 ん~分からん。

 まあ、そんなことよりも、お金持ちスタートが出来そうなことを喜ぶべきだろうな。

やる気に繋がりますので、是非お気に入り登録と評価を頂ければと思います。

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