22.決断
「ユフィーから離れやがれ!!」
突然現れた人影に俺は叫ぶ。
って、こいつらこの前絡んできた、ハゲと狩人帽子の冒険者二人組じゃねえか!
「お前ら、ユフィーに何をする気だ!」
「あぁ!? うるせええ!? ちょっと黙ってろ! てめえ、嬢ちゃんを死なすぞいいのか!?」
「ギャハハハ、良いからこっちを見ろゴンス」
奴らはユフィーの近くで膝を突くと、まだ矢が刺さったままの腕を持ち上げた。
「大丈夫なのかこれは。この嬢ちゃん死ぬんじゃねえだろうな? まだ何もしてねえんだぞ!?」
「あぁ~~これは遅効性の毒かぁ? ギャハハハ、やべえな!」
毒……?
あの矢に毒が塗ってあったってことか!?
あっ……だから、ユフィーはあれほど苦しんでたのか?
ふらふらとしていたのも、その影響ってことか。
まじか……
そんなユフィーを戦わせていたことに申し訳なさが込み上げていると、俺に向かって狩人帽子が声をかけてきた。
「兄ちゃんは、そっちの人族を探しやがりな。ギャハハ、ゴンスは――そっちの女を調べろ」
狩人帽子が何故か周りをキョロキョロと見渡しながらそう言った。
「……何をさせるつもりだ」
「良いから言われた通り、そいつの死体を探って、解毒薬を見つけろや!」
解毒薬……?
も、もしかして、毒を使う奴がもしものために持ってるってやつか!?
あの二人の目的が何にしろ、今はユフィーの毒を何とかすることを優先だ。
言われた通り、さっき俺が殺した男冒険者の持ち物を探るが、それらしき物がない。
焦りながら何かないかと鎧も脱がせて確認していると、狩人帽子が声を上げた。
「おっ、こいつが持ってやがったな。ゴンス、あったぞ! ギャハハハ」
狩人帽子が獣人冒険者の死体の横で、何かの小瓶を掲げている。
そういえば、あいつが弓を撃ってきたんだよな。
「おう、早速嬢ちゃんにくれてやれ!」
「そう思ったんだがよ、この嬢ちゃんの意識がもうねえ。これはまじでやべえな」
「おい、お前、早くこっちにこい! これを口うつしで嬢ちゃんに飲ませやがれ!」
こっちに来たゴンスが俺の首に腕を回してくると、ユフィーがいる方へと引きずりだした。
何つう馬鹿力だよ。
全く逃げ出せる気がしねえ!
がっしりと捕まりユフィーの前で解放されると、そこで狩人帽子から小瓶を渡された。
「ほら、兄ちゃんが飲ませねなら、俺がしちまうぞ? ギャハハ」
緊急時だから、出来るやつがやってくれと思うが、誰でも良いならもちろん俺がやる。
倒れているユフィーの体を起こし、改めてその顔を近くで見ると、彼女の顔は真っ青で苦しそうな呼吸を繰り返していた。
何時もは笑顔を見せてくれるユフィーの悲惨な姿に、心臓を鷲掴みにされたような思いに支配され体が固まってしまった。
「おい、早くしやがれ!」
ゴンスに後ろから急かされハッとした俺は、急いで小瓶の中身を口に入れ、意識のないユフィーと口を開かせそこに唇を合わせる。
そして、口内の解毒薬を少し流し込んでみたが全く反応がない。
どうにかしなければと焦っていたらユフィーの舌が俺の舌に触れた。
そして、彼女の舌が何かを求めるように動き出すと、コクリと口内の液体を飲み込み始めた。
急いで小瓶に入っていた全ての液体を飲ませ、この解毒薬が本当に効くのかと心配しながら腕の中のユフィーを見つめていると、段々と顔色が良くなり苦しそうな呼吸も落ち着いてきた。
……効いたのか?
「ふぅ……危なかったな。俺らが来なかったら、嬢ちゃんは死んでたぞ?」
「ギャハハハ、良かったな兄ちゃん。俺という素晴らしい知識を持つ男がいてよ」
「流石だチャック。よく毒を見抜いた」
「ギャハハッ! だろ!? まあ、俺もこの手の物はよく使うからよ!」
「た、助かった……?」
「おう、顔色を見る限り薬は効いてるみたいだから、もう嬢ちゃんは大丈夫だろう。矢は街に戻ってから抜け。ここでやると無駄に出血するかも知れねえからな!」
「お、おう。そうします。ありがとう」
「新人冒険者を助けるのはベテランの仕事だからな! 気にすんな! それにな、お前らはギルドの姉ちゃんから頼むって言われてやがるからな。この嬢ちゃんに何も教え込んでねえのに死なれたら、俺が怒られちまう」
……え?
何こいつら、まじで助けてくれたの?
最高すぎるだろ!
後光が差して見えるわ。
特にゴンスなんて眩しくて直視出来ないぐらいだよ。
笑顔を見せていたゴンスだったが、その表情を急に真剣なものにすると、こちらを見た。
「で、お前がやったのか?」
そう言われたことで、俺は改めて二人の人間を殺したんだと思い出す。
……この手で人を殺したなよな?
でも、何故こんなに何も思わないんだ?
ユフィーに鍛えられたからか?
いや、それはもちろんあるだろうけど違うか。
あいつらが俺からユフィーを奪おうとしたから、その存在を排除することに何の躊躇もないってだけだ。
この世界で唯一心を許せるのはユフィーだし、彼女がいないこの世界なんてもう考えられねえんだからな。
依存、とまではいかねえんだろうけど、やっぱり相当大切な存在になってるよ。
でもまあ、言葉の通じる人間を殺して、ここまで何も感じないとは思ってもいなかった。
自分のことを呆れつつも、心の整理が済んだ俺はゴンスに返事をした。
「襲われたからですよ。正当な防衛だ」
「だろうなぁ、チャック、こいつらを見たことあるか? この女は誰だ?」
「何度かあるな。女の方は知らねえが、こっちは最近王都に来た二人組だろ? な~に新人襲ってんだ? ギャハハッ」
あの三人は元から仲間じゃなかったのか?
いや、それよりも何故俺が襲ったのだと思わないのだろう。
「……俺の言い分を信じるんですか?」
「こいつらが、お前らを追っていたのを見て、俺らも追いかけたからな。たまに出るんだ、この手の新人を狙ったゴミがな。間に合わなくて悪かったな」
死体に向かって冷たい瞳を向けるゴンスは、どうやらはこの襲撃者たちを新人狩りとでも思っているようだ。
真実は私怨からユフィーを狙った犯行なのだが、それを果たして説明するべきなのか。
ここまで助けてもらった相手だし、ある程度は伝えるべきかと悩んでいると、チャックが封筒のような物を持ってきて、中に入っていた紙をゴンスに手渡した。
「おっと、ゴンス。どうやらこいつらは、その手の野郎どもじゃねえみたいだぞ?」
「何か出てきたのか?」
「あぁ、これは兄ちゃんにも話を聞かねえとな? ギャハハ」
ゴンスが紙に目を通すと俺へと回ってきた。
視線を落として確認してみれば、そこにはユフィーの殺害を指示する内容が書かれていた。
対象の名前と特徴に、現在の居場所などが描かれた簡単な紙だ。
依頼主の名前など一切ない。
これって、女冒険者とは別に、男どもに依頼を出した奴がいるってことか?
得体の知れない存在に気持ち悪くなると同時に、そいつに対して怒りの感情が湧いてくる。
「そうか……この嬢ちゃんはアディキルトン家の生き残りなのか。それは、厄介なことだな」
「言い出せなかったんですよ。ユフィーの家は色々あるみたいだから」
「まあ、そうだろうな。ここでお前から率先して話をしていたら、馬鹿かとぶん殴ってたわ」
こわっ!
どう考えてもスキル値が高いさっきの力で殴られたら、俺の顔が陥没するっての。
まだ死にたくねえ。
「奴隷だったのか、この嬢ちゃんは……。捕縛した令嬢は見た目が良ければ、慰み者にされるっていうのに、持て余して売るとは貴族連中もアディキルトン家に物怖じしたな」
「物怖じですか? アディキルトン家ってのは何したんです……?」
「お前知らねえのか……? あの嬢ちゃんの家はな、先の戦において長い間抵抗を続けて、最後まで戦い続けたムグダム国の伯爵家でな、騎士団の質ではムグダム国随一と言われ、圧倒的不利な場面でも幾度とそれを退き王家を救った英傑達だ。他国民の俺でも知る貴族家だからな」
ゴンスはそう言うと、ユフィーの方をちらりと見た。
彼女の意識はまだ戻っていなく、それを確認したからかゴンスは言葉を続ける。
「まあ、本当に有名なのは、復讐鬼と呼ばれるほどの苛烈な忠誠心を持つ、騎士たちに対してだがな」
「……その物騒な名前は?」
「アディキルトンの騎士達はな主が討たれると、必ずそれを指揮した者やその兵たちに復讐をしたんだ。有名なのは当主とその夫人が討たれ、王都も陥落した後の話だな。王軍の指揮を任されていた公爵様とその側近たちが次々と殺害されてな。その手口が暗殺から始まり、自分もろともそいつを焼き殺したり、娼婦に紛れて寝屋に入り殺したりと、手段を選ばねえし自らの命を省みない手法を使うから、それに恐れをなして一時期は占領していた元王都から、軍全体が大きく後退させられたって話を聞いてるぞ」
……あのオークション会場で、アディキルトンの名前が出た時にざわついてた理由がこれか。
主を殺されたら絶対に復讐するマンになって、それを達成するとかおっかなすぎる。
「その後もな、捕虜となっていた嫡男を見せしめとして串刺しの刑にした時は、その実行部隊を率いた貴族から一兵卒まで全て同じ目に合わせて殺したっていうから恐ろしい連中だ」
なるほど、あの女冒険者の弟ってのはそこにいたのか。
「まあ、大部分は討ち取られたと聞いてるが、今でもその生き残りは血塗れの騎士団と呼ばれ、どこかに潜伏していると噂され、貴族連中はいまだにアディキルトンを恐れおののいてるらしい。……俺もあんな可愛い嬢ちゃんがそこの姫と分かって、少し冷たいものが走ったぞ」
ゴンスは平気そうな顔をしているが、その声色には若干の恐れを滲ませていた。
「俺がべらべらと色々教えちまったが、お前はこれぐらいのことを知っておかねえとまずいと思ったからよ。知らねえじゃ済まねえ話だよな? 嬢ちゃんが自分から言うのは難しいだろうしよ」
「そうですね。色々引っかかってたけど、詮索するのもユフィーを悲しませそうだったので、聞いてなかったんですよね。助かりました」
聞いていたところで今回の件を回避できたかと言われれば、それは分からない。
だが、もう少し冷静に動けたかもと思うと、知らなかったことはマイナスだったのかもな。
「それで、お前はどうするんだ? この様子だと、こいつらは金で雇われただけの使い捨てだろ。一度で終わるとは思えんから、俺なら王都には戻らねえぞ?」
そう言われて少し考えてみれば確かにそうだ。
俺達でも倒せるようなこんな冒険者なんて、他にも捨てるほどいるはずだ。
街に戻れば、そんな奴らがいつ襲ってくるかも分からない。
ゴンスの言うことは正しいと思える。
「そうですね。ユフィーと相談してからですが、王都へは戻らない方が良いと思ってきました」
「それが賢明だな。チャック、回復薬を出してくれ。嬢ちゃんの矢をここで抜くぞ」
「ギャハハ、そう言うと思って、もう出してんだわ」
チャックがいつの間にか、手にしていた陶器の小瓶を俺に渡してきた。
「矢が突き抜けてりゃ尻の方を切って楽に抜けたんだがな。一気に引き抜くから、お前はすぐにそれを傷口にかけろ」
「わ、分かりました」
ゴンスは俺と目を合わせると視線を掴んでいる矢に向け、目にも止まらぬ速さで引き抜いた。
あまりの速度に度肝を抜かれてしまったが、急いで血を溢れさせるユフィーの腕に回復薬をかけると、その薄赤い液体の効果か見る見るうちに矢傷がふさがっていく。
以前に一度、軽い切り傷を回復薬で治療したが、この薬の効果はそれ以上に思える。
一瞬ユフィーは痛そうに眉をひそめたが、回復薬ですぐに治療したからか、穏やかな表情に戻った。
「これ、相当いい薬なんじゃ」
「良いってことよ! 薬代は、あいつらの身ぐるみを剥がせば、どうにでもなるだろうよ! ほら、漁るぞ」
笑顔のゴンスが倒れている女冒険者へと向かっていくと、膝を突き死体を漁りだした。
「それって犯罪にならないんですか……?」
「あぁ? 襲ってきた奴らの身ぐるみを剥いで、何が駄目なんだ?」
完全に倫理観とか価値観の違いってやつだな。
腕の中にいるユフィーを優しく地面に寝かせ、俺も働くべく男冒険者の死体を漁る。
若干申し訳ない気持ちがないわけではないが、もう死んだ奴だし、俺のユフィーを殺そうとした奴なんだから気にする必要もないんだよな。
とはいえ、何を取れば良いのか分からないから、取りあえず持ってる物は全部回収した。
査定はこの人達に任せよう。
死体を埋めるべきかと聞いてみたが、少し離れた場所に並べてそのままほっとけと言われた。
三人分の穴を掘るなんて、道具もないし無理だよな。
「ん~、予想してた通りだな。特に良い物は持ってねえよ」
「まあ、こいつらは二本剣だから、この程度だろうな」
ゴンスとチャックの二人が、地面に並べられている回収した品を眺めている。
金貨八枚に武器防具、それに少量の食料と飲み物と、ロープやら火起こしの道具などの小物。
この後は王都へ帰るつもりだったのか、かなりの軽装だ。
ちなみに、二本剣とは右手にあるギルドの紋章に書かれている剣の数だ。
女神の周りで剣先を外に向けて描かれているこの剣は、ある程度の活動をしたり活躍をすると実力の証明として増やしてくれるらしい。
前にゴンスが自分は三本剣だと言っていたのが気になって、ユフィーに教えてもらっている。
「じゃあ、俺らは回復薬代として、装備を貰ってくぜ? 魔道具なんかはなかったからいいよな。殺したやつらの装備を使うなんて、縁起が悪りいからいらねえだろ? お前らじゃ持っていくのにも苦労するだろうし、売るってのも面倒だろうからよ!」
手軽な現金に手を付けず、手間のかかる装備を持っていってくれるとか、まじで神かよ。
自分が殺した相手の装備なんて、呪われそうで持ちたくないから助かるわ。
厚意に甘えて金だけ貰っておこう。
「じゃあ、俺らは行くからよ。嬢ちゃんを大事にしてやれよ!?」
「次に会った時には良い酒でも飲ませろよ? ギャハハ」
剣や鎧を担いだゴンスとチャックが、もう用は済んだと颯爽と背中を向けて去っていった。
最初に会った時に二度と現れるな、とか思ってごめん。
もう一度会って、できる限りの礼をしたいよ。
二人が去ると静かな森の中に俺とユフィーだけになった。
まだ目を覚まさないユフィーの隣に腰を下ろし、しばらく彼女の可愛らしい顔を眺めていると、まぶたがピクピクと動き出す。
その瞳がゆっくりと開かれ、近くにいる俺へと視線が向けられると、形の良い唇が開いた。
「ダイキ……様?」
「目が覚めたか。もう大丈夫か?」
「えっ……私は……はっ!? あの者たちはっ!?」
急に目を見開いたユフィーがガバッと体を起こすと周囲を見渡した。
「安心しろ。もうあいつらは排除したよ」
「さ、三人を相手に勝利されたのですか!? 流石です、ダイキ様!」
「いや、ユフィーが一人倒しただろ……? 覚えてないのか?」
「朦朧としていたので、余り記憶が……」
「まじか……すまないユフィー、無茶をさせた。本当にすまない……」
「っ!? 何故謝られるのですか!? 頭をお上げください!」
記憶があやふやになるほどの状態で戦わせていたことに、本当に申し訳ない気持ちだ。
頭を下げた俺をユフィーが必死の様子で止めさせようとするので顔を上げ、弓で撃たれてから今に至るまでを簡単に説明をすると、彼女は次第に思い出してきたようだ。
「それで、以前会ったあの方たちが助けてくれたのですね……」
「あぁ、あの二人が来なかったら、やばかった。毒なんて俺には分からないからさ」
最後にゴンスとチャックの話をして次の話をしようとか思っていたのだが、急にユフィーの瞳から涙があふれ出した。
「あ、あの、ダイキ様……。私のせいで、ダイキ様を巻き込んでしまい……。一歩間違っていれば、ダイキ様も殺されていたかも……。ごめんななさい……ごめんな……さい……」
ユフィーが俺に縋り付いて泣き出した。
その表情は絶望の縁にいるような悲痛なもので、見ているだけで心が痛む。
俺はユフィーの肩を掴み、ボロボロと泣く彼女を抱きしめた。
「そんなことを気にするな」
「でも、でもっ! うぅ……ダイキ様、私を手放してください……」
「馬鹿言うな、そんな必要はない」
「そ、そうだっ! ダイキ様、あの者たちに依頼をした者に私を引き渡してください! そうすれば、幾らばかりかの報酬も手に入るはずです! お願いします!」
「……まじで何を言ってんだよ。はぁ~~益々、お前を手放したくないわ。俺はやるなと言われるとやりたくなる性格だからな、お前にそんな手放せ手放せと言われたら、絶対に嫌だと言いたくなっちまうんだよ」
「しかし、それではまたご迷惑を……」
「たしかに、お前を狙う奴がいるのかもしれない。どこかに移動しても追跡されるのかもな。だったらさ、この国を出ちゃおうぜ?」
俺の言葉にユフィーが目をパチクリとさせた。
「えっ……何故ですか……? ダイキ様は帰還の時を待っているのではないのですか!?」
「それなんだが、俺にはどうも怪しい話に聞こえててな。本当に帰れるのか疑問に思ってんだよ。だから、いっそのこと、この国を出よう。国から出れば流石に追いかけて来ないでしょ。俺さ、行きたい場所があるんだよね。だからさ、ユフィーも付いてきてくれね?」
「い、行きたい場所ですか……?」
「そそ、俺はダンジョンに行きたいのよ。そこならスキルオーブが手に入るんだろ? そんでもって俺らがもっと強くなれば、刺客だろうがなんだろうが跳ね返せるだろ? 一石二鳥ってやつよ。ユフィー、俺は嫌だと言っても連れていくつもりだから、もうそんなことを言わないでくれ。俺のことを嫌ってるのかと思って悲しくなっちゃうよ?」
「っ!? ……グスッ。……分かりました。ダイキ様にずっと付いていきますっ!」
涙を流しながらもようやく笑顔を見せてくれた。
可愛い女の子にはやっぱり笑顔の方が似合うよ。
正直、ユフィーが俺に付いてくることが本当に良いことなのかは分からない。
でも、俺が手放したとして、その後彼女がどうなるかを考えたって、それも分からねえ。
だったら俺と一緒にこの国を出た方が良いはずだ。
まだ、どこに行くべきか、どうやって行くべきかさえ分からないけれども、ユフィーを連れての移動なら、どんな道でも苦にはならないはずだ。
「全く……ようやく泣きやんでくれたな。それじゃあ、行こうか。ユフィー」
「はい、ダイキ様!」
俺たちはまだ死の気配が残る森を立ち去り、街道を目指す。
そして、俺を召喚したナイヘッド国から立つべく、まだ見ぬ未知の場所へと目指して歩み始めたのだった。
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