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後半 国の行く末

「それじゃ引き抜いちゃうよ~!」


 現在、水責めに兵糧(岩盤)攻めによって見事にガバガバとなった岩盤に刺さっている王剣を取るため、1人の勇者アーズヴェルドは剣を抜く体制を取っていた。


「ああ、過程はともかくついに王の誕生か」


 アニサキスは正気に戻った後、現在の行く末を静かに見守っていた。もうなるようになれとも思っていた。


 こうして民衆が見守る中、アーズヴェルドが剣を抜こうとした瞬間、突如信じれないことが起きる!


「待ていぃぃぃぃ!」


「なんじゃおまえはぁぁぁぁ!?」


 なんと剣の中から王様の亡霊らしき物体が飛び出してきたのだ。アニサキスはすぐに書物を漁り出し、歴代の王様が描かれているページから亡霊になっている人物を特定した。


「そなたは、この西ホムラ国の初代国王インテレオン!」


 民衆は総じて酷く驚いた。初代国王インテレオンは100年前この国を建国し、その英智で他国との戦争にも度々打ち勝ったという英雄だったからだ。それに加えて人望も厚く、いい政策を多数生み出したし奴隷問題に一石を投じるなど国の礎を築き、生前から名君の1人として数えられていたりするほど人気が高い国王だった。


 そんなわけでアニサキスはもちろんアーズヴェルド以外の民衆が地面に跪く異常な光景に現在なっているわけなのである。


 当のアーズヴェルドもかなり驚いた様子だったのだが、その後初代国王の後ろにまだ誰かいるのを見つけ、また驚くことになる。


「おい、アニサキス! まだ初代の後ろに誰か居るんだけど誰なんだあいつらは!?」


 アニサキスは凄まじいスピードで特定した。


「その後ろにいるのは特に何もしなかった、2代目国王インテレオン2世! 最後に居るのは異常な浪費癖に加え他国の宗教にハマって国を滅ぼした挙句、捕虜になって東ホムラ王国に処刑された3代目国王ムノウレオンですな!」


「歴代国王の霊が!」


「国を守るために出てきてくださったんだ!」


 民衆は王の帰還にここぞとばかりに歓声を上げる。無論、国が滅んだ原因である3代目の国王に対してはブーイングの嵐だったのだが。


 そんな渦中の中にいるアーズヴェルドは歴代国王に一歩も引かず、ケラケラと笑いながらこう言い放ってみせた。


「違うね! 偉大なる王の誕生を祝いに来たんだ!」


 そしてアーズヴェルドは剣を力いっぱい引き抜こうとする。いくらアーズヴェルドが枯れ果てたもやしのような体型だったとしても、子供でも砕くことが出来そうなぐらいガバガバになった岩盤に刺さっている剣を抜くことはもはや難しいことではないだろう。実際ミシミシと音をたてながら剣が動きだしていた。


「ちくしょう、霊体じゃ触れない!」


 現在、3代目がアーズヴェルドに剣を取られまいと抵抗を試みているものの悲しいかな、霊体には実体が無く剣を触れることができなかったのだ。


「フハハハハ! これでこの国はお終いだ!」


「え? 王になるんじゃなかったの?」


 アーズヴェルドは高らかに勝利宣言を行い、剣を思いっきり引っ張る!


 しかし、その時異変が起きた!


 邪なる者から玉座を、国を守らんとしたのか! 王剣は目を貫くほどの眩い光を放ち大地が揺れた!


「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?」


 アーズヴェルドは剣を引き抜くはずがその下の地盤ごと引き抜いていた。するとその下から栓が外れたように勢いよく大量の温泉水が噴き出したのだ。


「この国から出て行けぇぇぇ!」


 初代国王インテレオンは欠泉水をアーズヴェルドに当て、そしてぶっ飛ばす。初代は死んでも有能だった。


 アーズヴェルドが吹っ飛ぶ瞬間、アニサキスはこう思ったという。ああ……これからの国の再建方針、王が不在の中マジでどうしようと。




       ◇




君と夏の終わり

将来の夢

大きな希望

忘れない


──アーズヴェルドの体が、宙を舞う。さながら、夜空に打ち上げた、花火のように。


10年後の8月

また出会えるのを

信じて


──アーズヴェルドは最後に、はっきりと見た。岩盤ごと剣が天高く飛んでいったり温泉が噴き出たことに驚く民衆と頭を抱えた状態でぼんやりと自分を見つめているアニサキスを。


最高の

思い出を……

 これにて完結です!


【※読者の皆様へ】


「面白い」


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