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僕は王子様に恋をする  作者: はま乃
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王子様にはお姫様がお似合い

 悪魔との契約の日から、いつの間にか2週間も経っていた。その間、藤崎との接触は無し。一切無し。ただ教室で見るくらいだった。

 俺たちが話せるのは放課後、部活が終わった後のみだ。それまでは同じ空間にいても、全然相手にされない。目が合ってもそらされるくらいだ。

 そして部活は、2週間ずっと野球部の方が終わるのが遅くて、帰る頃にはもう陸上部の姿は見えなくなっていた。

 なんだよ。何も変わってねぇじゃん!

 ライ◯の方も、最初のメッセージが既読になったくらいで返事は無し。俺は王子様の暇つぶしにさえなれないのか。

「恭!ハンバーガー食べに行こうぜー!」

 シバと森がきた。今日も陸上部はいないし、もちろん藤崎もいないから、すぐに「行く」と返事をした。

 

 窓側の席に座って、3人でハンバーガーを食べる。

 ハンバーガーって身体に悪いのに、めちゃくちゃ美味(うま)い。

「悪いものって、なんでこんなに魅力的なんだろうな」

思わずつぶやくと、シバが真剣な顔になり、

「悪いものに惹かれるのは人間のさがさ。本能的にスリルを求めてしまうのだよ、恭くん」

すかさず森が

「何偉そうに言ってんだよ。それに恭、お前最近ぼーっとしてるよな。夏の地区予選まで数ヶ月で先輩達もピリピリしてんだからさ、火に油注ぐようなことすんなよな」

 森は結構辛口だけど、それは野球にかなり情熱を注いでいるからだということを、俺たちは知っている。

「悪い。気合い入れ直すわ」

 その時、シバが

「あれ、あそこにいるの藤崎望じゃね?」

「え!どこどこ?」

「あそこ!!向かいの店の前歩いてるやつ!しかもめっちゃキレイな女の子連れてる!!」

 シバが指さす方を見ると、制服姿の藤崎がいた。女の子は俺たちとは違う高校の制服を着ている。

「他校の美女かー!!やるなぁ!あいつ、見るからにモテそうだもんな」

 シバの声が右から左に抜けていく。

 なんなんだよ。あいつ、もうすでに彼女いたのかよ。

「俺の恋愛に干渉しないこと」

 そういうことかよ。

 いや、これでいいんだ。俺たちはまだ何も始めていない。何の関係にもなってないんだから。

 これで藤崎が俺に一切興味を持っていないことがはっきりわかった。今ならまだ傷もなく諦められる。

 その時、一瞬藤崎と目が合った気がした。

「あーあ。世の中は不公平だなぁ。俺も美男子に生まれたかったよ。そしたら今ごろは両脇に美女を抱えているだろうに」

 もうシバに突っ込みを入れる気力もない。

「おい、恭大丈夫か?顔色悪いぞ」

 森が心配そうに俺を見る。

「あぁ、大丈夫。ちょっと寝不足なんだ。今日は早く寝るわ」

「そうしろ。明日もボーッとされるのはごめんだからな」

 あぁ、と頷くと、俺のケータイがピロンっと鳴る。見ると新着メッセージの文字が。

 ライ◯を開くとそこには、

「ハンバーガー食べ終わったらNagomiに来い」

藤崎からの初めてのメッセージだった。

本当に、身体に悪いものは美味しいものが多い。

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