悪魔との契約
思わず藤崎の肩を押して突き放す。
「お前、俺のこと嫌いなんだろ。なんでこんなことするんだよ」
なんだかわけがわからない。とにかく顔が熱い。
「嫌いとは言ってないよ。興味がなかっただけ。昨日までは」
そう言って藤崎はイスから立ち上がり、上から俺を見下ろす。
「俺、佐々木くんと“仲良く”してもいいよ。その代わり、条件がある」
「条件?」
藤崎はまたニヤッと笑って言う。
「まず、学校にいる間は話さないこと。キャンキャンまとわりつかれるの、嫌いなんだ。だから“仲良く”するのは、野球部と陸上部が同時に終わったときだけ。部活の後ならいいよ。でも俺が先に終わったら、待たずに帰るから。それと、」
藤崎は俺の顔をじっと見つめて、最後の条件を言った。
「俺の恋愛に干渉しないこと。それでもいいなら連絡先、教えるよ」
俺の心の声が「やめろ!こいつ変なやつだぞ!」と警告してる。谷の言葉も頭をよぎる。
「望に惚れると痛い目にあうよ」
これは絶対に関わらないほうがいい。頭ではわかっているんだ。悪魔と契約するようなものだ。最後には、魂を削られてボロボロになるに決まってる。
でも、どんな形であれ、藤崎に関わりたいという思いの方が強かった。
それに、関わっていくうちに、藤崎がもっと心を開いてくれるかもしれないという期待もあった。
俺はケータイを取り出した。
「ライ◯、教えてくれる?」
こうして俺と藤崎は、放課後だけの“仲良し”になった。